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あきほ軸

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私の娘、あきほのお話。2002年生まれ、けん玉ちょっと得意。小さいエピソードのまったり連載です。

1位の表紙

目次

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■ ユーカリの木(あきほ4歳)

 多摩動物公園は、当時住んでいた八王子からアクセスしやすく、よく娘を連れて遊びに出かけた。これは娘が4歳の時のお話。

 お目当ての動物を見ながら、園内奥のコアラ館を目指す。大体木の上で寝ている、と分かっていても娘はコアラさんが見たい。いつも混雑する日に出かけるものだから「立ち止まらないでください」と係員さんに促され、誰かの頭越しに歩きながら見ておしまいだったが、その日はコアラさんが良く見えるポジションでしばし立ち止まることが出来た。

 飼育員さんが、木の枝をわっさと運んで来ると、コアラさんたちはのそのそと起き出した。運が良かった。

「パパ、コアラさん、はっぱたべてる!」

「コアラはユーカリの葉っぱしか食べないんだよ」

 夫に抱っこされた娘は、視界を遮られることなくコアラさんの食事シーンを見ている。はしゃぎ気味の娘に、私もひとつ教えてやった。

「おうちのお庭の木、ユーカリなんだよ」

「わあ! あきほちゃんのおにわのき、コアラさん、たべれるね!」

「そうだね」

「あきほちゃんのおうちに、コアラさんこないかなあ」

 結婚の記念に買った鉢植えのユーカリだった。結婚当初の住まいは高層階で、鉢のままベランダで世話をするしかなかったが、庭のあるテラスハウスに引っ越したため、地植えにした。八王子は都心に比べて涼しいが、ユーカリは冬にも耐えた。虫の食害もなく、鉢から下ろすと成長を早めて、バルコニーに届く高さになっていた。

 ある日曜、お隣の旦那さんが「ユーカリの枝を切ってあげましょうか?」と持ちかけて来た。枝が張り出して迷惑だとか、日陰になって困るとかそういうことではなく、庭木をいじるのが好きな人で、樹形を整えてあげますよという親切心だった。夫が庭に出たので任せた。

 ユーカリは根元から切られてしまった。

「信じられない! 結婚記念の木だったのに切ちゃうなんて!」

「そうだっけ? いいじゃん、邪魔だったんだし」

 ユーカリの風にしなる枝が好きだった。記念樹の成長がもう見られなくなったと夫を責め、悲しんだが、私より落胆して泣き崩れたのは娘だった。

 庭のユーカリに、いつかコアラさんが来てくれると信じていたらしい。

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パンパン!コアラさん、来ますように!

sacman

2018/2/19

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とじる

■ 送り迎え(あきほ13歳)

 2速に落として校門に入り、駐車場にハンドルを切る。体育館が開くのを待っている運動部の男の子たちがこちらを向いた。これは娘が中学1年生の時のお話。

「わ、男子見てるし。気まずい気まずい気まずい」

「もっと奥に停めればよかった?」

「いいよ、ここで。見られちゃってるし、もう遅い」

「いってらっしゃい」

 私がいけなかった。こんなに注目されてしまうとは。娘を部活に送るのに軽トラックで出てしまったのだ。抵抗なく乗った娘だが、降りるのには勇気が必要だったようだ。娘はエイッとドアを開けると「いってきます」ではなく「早く行ってね」と言い残し、皆がいる方へ走った。

 軽トラックで出たのには理由がある。夏の愛車セラは、搭乗者に優しくないだからだ。車体の上部は、ピラー(窓を支える柱部分)以外はガラス張り。出かける前に、両方のガルウィングドアとリアハッチを跳ね上げ、羽を鳴らす鈴虫状態で30分以上の換気が必要だ。生物が耐えられる温度まで車内を冷まさないと、運転中ミイラ化しそうになる。木漏れ日のドライブなどは最高だが、基本、日光を浴びぱなしで走る。真夏はキツイ。

 それに私は軽トラックが好きだ。たとえ重ステでも、窓を開けるのがグルグルレバーでも、2号車のトラさんに乗りたい。走行音を聞きながら、草の匂いの交じる海風に吹かれるのは気持ちがいい。

 とは言え、娘に恥ずかしい思いをさせるのは嫌だ。部活が終わった娘を迎えに行くのはセラにした。

 学校の駐車場に入り、朝と同じ場所に停める。体育館の外で迎えを待っている集団の中から娘が駆け寄って来て、急いで車に乗った。ガルウィングあるあるだが、乗り降りする時はドアの開閉に注目される。外で男の子たちが「あきほんちの車スゲー」と騒ぎ出したのが聞こえた。

「もう、はずい! 早く行って早く行って」

「はずい? 何が?」

「いいから行ってってば。ドリフトとかやめてね」

「ドリフト?」

「男子に『あきほの母ちゃん走り屋』ってめっちゃ言われたし」

 朝、娘を降ろした後、トラさんの後輪を砂利でちょっと滑らせてしまった。男の子たちには、それがドリフトに見えたらしい。車がお尻を振ったことに目が行って、軽トラ登校をからかわれずに済んだのは、結果、よかったのかもしれないとホッとした。

「あんなんドリフトちゃうで」

 軽く笑ってサイドブレーキに手をかけた時、助手席の娘の背景に『ゴゴゴゴ……』が見えた。

「ぜってえ、今、やんなよ!」

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  • 誤字、脱字の修正をおこないました。(2018/02/13)

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お嬢さんの反応が楽しい。勝手に抱いていたかさぬさんの印象が上書きされていく……w

でもん

2018/2/13

2

でもん さま
上書き 笑 コントみたいな日常です

作者:花ミズキ重

2018/2/13

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