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いつかのいつか 完結

変愛

更新:2018/2/13

でもん

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合計:4

なんの取り柄も無いわたしが憧れてしまったのは学校一の変人 いつかだった。

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―― っまたせー! 放課後自由クラブの時間だよぉぉぉ!』

 「お、イツカの奴、またか……」

 昼休みに鳴り響いた放送に担任の先生が苦笑をした。

 

『くぉーらー、イツカぁぁ! また放送室にぃぃぃ』

『……やばい! もうサトセンがもう来た。ごめん、みんなバイバイ~』

 ドタバタと何かが倒れる音の後、パタパタと走り去る足音。その後、プツリという音とともに唐突に放送は終了した。

 イツカが繰り広げる大騒ぎをBGMに勉強をするのが中学時代のわたしの日常だった。

 毎回イツカが率いる放課後自由クラブの面々が何かを始める。わたしの憧れのイツカ。いつも大騒ぎをした後、満面の笑顔で逃げ回っていた。

(いいなぁ)

 真面目だけが取り柄と言われてしまうわたしには、とても出来ないようなことを軽々とやってのける彼女の成績は学年トップ。運動神経抜群で――

『あはははははは』

 大声で笑いながら走る学校のカリスマ的存在だった。

 そんなイツカと同じ高校に進学できたのはとても嬉しかった。

 県下のトップクラスの進学校。

 学校トップだったイツカと、ひたすらガリ勉を続けたわたしだけが、この高校に進学したのだ。

 できれば同じクラスがよかったけど……

「ミチ、同中じゃん。一緒に放課後自由クラブをやろうよ! 高校生活を一緒に満喫しようぜぃ」

 同じ中学だったわたしを気にしてくれたのか、入学式の後にイツカは声をかけてくれた。

「え、あ、で、でも……わたし……地味だし……」

「そんなこといいからさ! ま、でも無理はしないでね。わたしの放課後自由クラブは自由がモットー! やりたいときに、やりたいことをやる……だからさ」

「う、うん。わかった、じゃぁ……気が向いたら……うん……イツカさん……ありがとう」

「イツカでいいよ。じゃ、またね!」

 イツカはニコっと笑い手を振りながら颯爽と去っていった。

 かっこいいなぁ……やっぱり。

 いまでも彼女はわたしの憧れだ。

『1年C組 岸田イツカ。生徒指導室まで至急来なさい!』

 高校生活も少し慣れた頃、同じような放送が何度もかかるようになった。中学時代のどこか呆れたようなそれとは違い毅然とした先生の声。

 イツカは放課後自由クラブを結成したのだが、賛同者はなく一人で活動していると風の噂で聞いた。県下一の進学校の学生には、そんなよくわからない活動をする余裕は無いのかもしれない。

『1年C組 岸田イツカ!』

「またあの子よ……」

「何かやったのかな。この間は部室棟に勝手に自分達の部屋を作ったらしいじゃん」

「まじかよ。ルールくらい守れよなぁ」

「顔とスタイルは最高なんだけど……あれじゃ男は近寄らないな」

「入学式のあと何人か告って撃沈したやつ、今じゃ黒歴史だよな」

 そう会話をしているクラスメートの声に、なぜか申し訳なく感じてしまって一人俯くしかなかった。

 夏休み前、期末テストの結果が廊下に張り出された。

 わたしの学校では入学時に提出した希望進路別にTOP30人までが張り出される。高2からはその進路毎に30人が特進クラスに振り分けられるのだ。

「お、ミチ、入ってるじゃん」

「う、うん……頑張ったから」

 新しくできた友人はわたしの名前が文系のTOP30に入っているのをみて、自分のことのように喜んでくれた。地道に頑張るしか無いわたしには、これくらいしか取り柄が無いし……なんて言いながらイチカの名前を探した。

(……無い……どうしちゃったのだろう)

 中学時代はトップを独走し続けたイチカの名前がそこには無かった。

『1年C組 岸田イツカ。生徒指導室まで至急来い!』

「岸田のやつ、全部白紙だったらしいぜ……いよいよ退学になるんじゃないか?」

 (え?)

 そんな男子生徒の言葉が耳に飛び込んで来た。

 

「い、いまの……ど、どういう……こと?……イチカが退学って」

「え? あ……(おい、誰だこのこ?)……あ、ああ、岸田の奴、問題ばかり起こすので次やったら停学って言われていたらしいんだけど、そこに白紙答案だからなぁ」

「そんな……イツカ!」

 わたしは走り出した。

「ちょ、ちょっとミチ? どこいくの……ねぇ」

 友人が背後から声をかけてくれたが、わたしは止まれない。

 そのまま一気に2階の職員室の横にある生徒指導室前まで走った。イツカがちょうど生徒指導室の扉に手をかけようとしているところだった。

「イツカ……さん!」

「ん? ああ、ミチ。おひさ~」

「お久しぶりです……じゃなくて、白紙答案って本当なの?」

「へへへ……噂になってる?」

「わたしは聞いたばかりだけど……そ、そんなことより」

『入れ』

「ごめん、呼ばれてるんだ。また……こんど? ね」

「う……うん。でも……なんで?」

「へへへ……ここだと自由なことできないみたいなんだよね」

 そう力なく笑いながら生徒指導室に入っていくイツカを止めることはできなかった。

 そして――

「C組の岸田、やっぱり退学らしいよ」

「へぇぇ……」

「1学期だけって短い高校生活だのぉ」

 そんな噂がわたしのクラスでも口にされるようになったまま、終業式を迎えた。

「岸田……クラスで挨拶したらしいよ」

「へぇ、やっぱりね」

 その声を聞いた瞬間、わたしは廊下へ飛び出していた。

(イツカ……イツカ……)

「……岸田さん……岸田さんは?」

「さっき帰ったよ……」

「そんな……」

「ほらあそこ」

   答えてくれた女子生徒が指差す先にイツカの後ろ姿があった。校則で禁止されている校庭を横切りながら校門へ向かっている。

「イツ……」

『岸田ぁ……校庭を横切るなぁ! 最後くらい端を歩けぇ』

 わたしの声は放送で怒鳴り散らす教師の声でかき消された。

 放送?

  私はその瞬間何かが乗り移ったのだろう。

  職員室まで駆け上がると全校放送設備のマイクを握りしめていた教師からわたしは無理やりマイクを奪った。

「お、おい……」

『イツカー!』

 そして校門を出ようとするイツカに大声で伝える。

『イツカー! ここじゃ自由はなかったかもしれないけど、わたしは― わたしはいつも自由なイツカが大好きだったよー! 今度会えたらまた放課後自由クラブ、誘ってくださーい!』

 わたしの声にイツカが振り返った。

 そしてニコッと満面の笑みを浮かべ、学校に向かって手を振った。

 それがイツカを見た最後だった。

 噂ではイツカは秋からアメリカの高校に進学したらしい。

 わたしは職員室でのマイクジャックの後、生徒指導室に呼び出されたが……

「まぁ、青春だからな」

 という訳の分からない理由ですぐに家に帰された。

 そして――

『―― このたび、日本への凱旋帰国となったクリエーターのキシダ・イツカ氏のインタビューが取れま……ちょ、ちょっとマイクを……』

「やっほー! ミチ、帰ってきたよ! 今度こそ放課後自由クラブは強制参加だからなぁ」

 どうやらわたしの青春は終わっていないらしい……

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  • 内容に影響のない範囲で、一部表現の変更や追記をおこないました。(2018/02/13)

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アニメになったらよりキャラ映えしそうですね^^おもしろかったです

枯葉猫

2018/2/13

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枯葉猫さま>
コメントありがとうございます。どなたかアニメ化していただけると…なんて夢見てしまいます。

作者:でもん

2018/2/13

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とじる

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