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ばあちゃんとイケメン、ついでに猫 完結

死んだ猫がイケメンになって帰ってきた

更新:2018/2/14

舞殿王子

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近所のばあちゃんちに行ったら猫のタマが生まれ変わったというイケメンが来ていたお話。

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 久しぶりに家を出て、ばあちゃんのところに行ってみた。

 ばあちゃんといっても、俺の祖母ではない。

 散歩中に知り合った、近所の老婦人だ。子供たちは独立して家を出ており、旦那は何年か前に亡くなっている。今は一人暮らしだ。

 俺が時々ばあちゃんの様子を見に寄ると、すごく喜んでくれる。きっと一人で寂しいのだろう。帰りはいつも、家まで送ってくれる。

 一軒家の玄関は鍵が開いていた。不用心だと思うが、よくかけ忘れるようだ。

 玄関に、見慣れない男物の靴がある。来客だろうか。会ったことはないが、ばあちゃんの息子の物ではないと思う。

 一声かけて上がらせてもらった。

 奥の居間から声がする。ばあちゃんの声と、聴きなれない男の声。

 居間に入ると、見たことのない男が、ばあちゃんの向かいに座って茶を飲んでいた。

 俺はばあちゃんのそばに座って、その男を睨んだ。

 「ばあちゃん、コイツ、誰?」

 「それがねぇ、タマがいなくなったと思ったら、こんなイケメンになって戻ってきたのよ。ねぇ、イケメンでしょう?」

 俺にはコイツがイケメンかどうかよくわからないが、なんだか胡散臭い。

 言われてみれば、いつもいるはずのタマの姿がない。俺とは仲が悪く、いつも威嚇してきてかわいくないので、別にいなくても困らないが。

 ばあちゃんの言うとおり、コイツがタマなのか?いや、そんなバカな話があるわけない。

 「オマエ、本当にタマなのか?ちっともタマっぽくねえぞ?なんか言ってみろよ!」

 「まあまあ。そんなに吠えないの。ほんと、あなたたちって仲が悪いわねぇ」

 俺が来てから黙ったままだった男は、ようやく口を開いた。

 「ええっと、どこまで話しましたっけ?」

 「あなたがトラックに轢かれて死んで、猫の神様のところへ行って、人間にしてくださいってお願いしたところ」

 「ああ、そうでしたね。それで、せっかく人間になるなら、イケメンにしてくださいって、追加でお願いしたんです。おばあちゃん、イケメン好きだから」

 「あらあら、恥ずかしいわねぇ。猫の神様にバラしちゃったの?おとうさんにも呆れられてたけど、イケメン好きは仕方ないわよねぇ」

 ばあちゃんは昔から、夢見がちなところがあるようだ。まだボケてはいないと思うが、不思議なお話を受け入れる素地はあると思う。

 ばあちゃんが楽しそうなので、とりあえず俺は黙っておくことにした。

 しばらくはじっとしていたのだが、そのうち俺は、なんだかひどく不安になってきた。嫌な予感がする。俺の本能が、そう告げている。

 俺はそっと居間から玄関に向かい、男の靴を片方持って、外に出た。

 居間からは、ばあちゃんの笑い声が聞こえていた。

 俺の予感は的中した。

 大急ぎで走ってばあちゃんの家に戻ると、居間に駆け込んだ。

 「で、猫の神様にお礼をしなきゃいけないんだけど、ほら僕人間になったばかりでお金がないから……」

 「あらあら、それは大変ねぇ。いくらぐらいいるの?」

 ばあちゃんが財布から金を出そうとする。

 男はそれをのぞき込もうとして、俺の存在に気がついた。

 「あつ!」

 男の眼は、俺に釘付けになった。

 正確には、俺が運んできた、ボロボロになって死にかけのタマに。

 「ばあちゃん、こいつ詐欺師だ!騙されんな!タマならほら、まだ生きている。……もうすぐ死んじゃうけど」

 ばあちゃんは、タマを見て腰を抜かした。刺激が強すぎたか。しかし、もたもたしてられない。

 男は慌てて居間を出て、玄関に向かった。

 俺はばあちゃんが気になって、少し出遅れてしまった。

 玄関の扉が閉まる音がする。

 俺は、ひとまず男を追いかけることにした。

 外に出ると、少し先を男がひょこひょこ走っていた。

 俺が靴を片方持って行ったので、片足にしか履いておらず、走りにくそうだ。

 全速力で追いかけると、すぐに追いついた。

 俺は男に飛びかかり、地面に押し倒した。

 男の上に乗り、両腕を押さえつけ睨んでやると、男は怯えた表情で顔をそむけた。

 さて、どうしてやろう。

 首筋に噛みつこうか。

 「やめなさい、ポチ!そんなことしたら、あなた捕まっちゃうわよ!」

 いつの間にか、ばあちゃんが俺と男を見下ろしていた。

 腕には死にかけのタマを抱いていている。

 「ああよかった。まだ何もしてないのね。あなた、ただでさえ勝手に歩き回って、ご近所から怖がられてるんだから」

 それよりも先にこの男を何とかしないと、と思っていると、慣れ親しんだ匂いが漂ってきた。

 「ポチ!また抜け出したと思ったら、何やってんだ、お前!」

 やばい。ご主人に見つかった。

 「いい加減にしろ!そのうち保健所に捕まるぞ!……って、山田さん、どうしたんですか?タマ、怪我してるじゃないですか。それにこの男は……」

 あとはご主人にお任せしよう。犯人確保までが俺の仕事だ。ここから先、犬の俺には荷が重い。

 翌日、俺はご主人に連れられて、ばあちゃんの家に行った。

 「あの男、タマをいじめているうちに、詐欺を思いついたそうですね」

 「よくあんな話を思いつくわよねぇ。騙される私も私だけど。でもね、まるっきり信じていたわけじゃないのよ?タマが死んだのを知った心優しい人が、優しい嘘をついてるのかもなぁって思ったりもしたのよ。やっぱり私、お人好しなのかしら……」

 俺は、ばあちゃんの膝の上でおとなしくしているタマを見上げた。

 エリザベスカラーとかいう、へんてこなものを付けられている。

 「これ、鬱陶しいんだけど、今は全身痛くて外す気力もねえ」

 「てっきり死ぬもんだと思っていたが?」

 「勝手に殺すな!野良育ちをなめんじゃねえよ。それにしても、よく俺の居場所が分かったな」

 「あの男の匂いを追うぐらい、朝飯前だ。元警察犬をなめんな」

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