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始まりはバレンタイン 完結

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バレンタインは恋の始まり?

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下駄箱にはなにも無かった。

廊下ですれ違った女子はおはようすら言わなかった。

隣のクラスの乱暴者のせいで

僕だけロッカーの扉がなかった。

今年もなしか・・・

モテる要素ゼロの僕にバレンタインは無縁のイベントだと判っていても

いざ現実を突きつけられるとやっぱりへこむ。

人生に三度もあると言うモテ期は一体いつ訪れるのだろうか・・・

70を過ぎた頃に老人会のヒーローになれても全然嬉しくない。

そんなことを考えながら最後の悪あがきで

教科書を入れる振りをしながらこっそり机の中を探った。

カサッ。

そこにあるはずのない紙に指が触れた。

まっ、まさか!

僕はそれを目視する事なく制服のポケットにねじ込むと

トイレに駆け込んだ。

周りに誰もいないのを確認し、個室に入ると

しわくちゃになった紙を取り出した。

それは薄いピンク色の封筒だった。

机を間違えたと言う漫画にありがちなオチを否定すべく

宛名を確認したが

そこに書かれていたのは紛れも無く僕の名前だった。

興奮で震える手で中の便箋を広げた。

するとそこには

「授業後、○×公園に来て下さい。 Y・Y」

と小さな文字で書かれていた。

僕はガッツポーズをすると思わず口から漏れそうになる

声を押し殺し、心の中で

「やったぁあああああああ!」

と叫んだ。

ラブレター的なものを貰うのは初めてだったから

それだけでも十分嬉しかった。

だけど、それ以上に喜びを何倍にも膨らませたのは手紙の最後に書かれた

Y・Yのイニシャルだった。

イニシャルだけだったけどそれが誰なのか僕には直ぐ判った。

Y・Yのイニシャルが当てはまる女子は

クラスにも学年にも一人しかいない。

入学式で一目ボレしてから約3年間

ずっと想い続けたクラスメートの山崎有美。

彼女だけだ。

スポーツも勉強もまるでダメな僕だけど

1学期に一緒に図書委員をやった彼女には

僕の良さが伝わっていたようだ。

有頂天になった僕は

それから暫くの間、彼女の書いた短い文字を何度も何度も読み返した。

気付けば朝の会が始まる直前だった。

慌てて便箋を封筒に戻すと

決して落とすことのない様に制服の内ポケットにしまい

急いでトイレを出た。

すると運悪く隣のクラスの乱暴者に捕まった。

「おい。ウンコマンまてやぁ」

言われた通り立ち止まると腿の辺りに激痛が走った。

お決まりのローキックだった。

いつもならヤツの気が済むまで蹴られっ放しの僕だったが

今日からそうは行かない。

もう僕は一人ではない。

情けないままの僕だと彼女が恥をかく。

彼女に相応しい男になるべく僕は意を決して言った。

やめろよと。

するとローキックは止んだ。

言ってみるもんだ。

そう思ったのも束の間

代わりに胃が飛び出そうになるくらい

強烈なボディーブローをくらった。

泣きそうになった。

でも込み上げて来たのは涙ではなく優越感だった。

なぜなら、ヤツが好きなのも山崎有美だから。

どれだけ僕を殴ろうとも彼女は僕の物。

そう思うと笑いが止まらなかった。

うつむき笑いを堪えるその姿は泣いている様に見えたようで

ヤツは満足気に教室へ帰って行った。

蹴られた腿も殴られたお腹も一日中痛みは引かなかったが

3年間続いた冴えない日常も今日で終わり。

そう思うと気分は晴れやかだった。

授業中、何度も彼女に視線を送った。

それに気付いた彼女は一瞬だけこっちを見ると

恥ずかしそうにうつむいた。

かわい過ぎる・・・

僕は真夏のポケットに入れたチョコレートの様にとろけた

極上の甘い幸せをかみ締めた。

あの柔らかそうな彼女の唇にいつか触れる事が出来るかと

思うと僕の顔は自然とほころんだ。

授業が終わると一目散に教室を飛び出した。

しかし、安心するのはまだ早かった。

待ち合わせの公園は学校の直ぐ隣。

彼女が到着するまで誰にも気付かれないようにする必要があった。

公園のベンチに腰を掛けると

カバンで顔を隠すようにしながらうつむき彼女を待った。

それから5分、いや10分くらい経っただろうか。

まだ彼女は現れなかった。

きっと心の準備ってやつに時間が掛かっているのだろう。

そう言い聞かせながら

吹付ける北風に耐え待ち続けていると

ジョーズのテーマの様に僕に恐怖を知らせる

あの乱暴者の不愉快な笑い声が近づいて来るのが聞こえた。

最悪だ。

一瞬で手の平に嫌な汗がじっとりと広がる。

お願いだから今日だけは僕に構わないでくれ。

心の中で祈った。

もし山崎有美にチョコを貰っているところをやつに

見つかったら・・・

想像するだけでも恐ろしい。

嫉妬に狂ったやつは何をしでかすか判らない。

1ヵ月後に迫った卒業式を迎えられない可能性だってある。

だから僕は南無阿弥陀仏、何妙法蓮華経、アーメン、アッラー

それが祈りの言葉かどうかも判らなかったが

いろんな神様にお願いした。

すると祈りが通じたのか

朝殴られた甲斐があったのか

その笑い声は僕に近づく事なく消えた。

ほっと胸を撫で下ろしていると

背後から突然肩を叩れた。

山崎有美キタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━ !!!!!

僕はドキドキしながら振り返った。

「待った?」

振り返った僕の目に映ったのは

山崎有美ではなかった。

むしろ女子でもなかった。

だけどあの乱暴者でもなかった。

そこにいるのは同じクラス、だけど殆ど話した事もない

後ろの席の・・・

確か・・・

名前は・・・

やまだゆうすk・・・

その瞬間僕は目の前が真っ暗になって行くのを感じた。

そして遠のく意識の中で僕は

あの不愉快な笑い声の主が叫ぶのが聞こえた 。

「大成功」

「・・・君、・・・・か君・・・なか君!」

遠くで誰かが僕を呼んでる気がした。

でも放心状態の僕は灰色の冬の空を見上げるだけで

振り返る気力すらなかった。

「たなか君!」

今度は、はっきりと僕を呼ぶ声がした。

それと同時に視界に現れたのは

山崎有美だった。

「何してんの?」

「くぁw背Drftgyふじこlp;@:「」

驚き過ぎて呼吸が止まった僕は

奇声を発してしまった。

「ちょっと!きょどり過ぎ(笑)人の顔見てそんなに驚くなんて失礼じゃない(笑)」

「驚いたのは有美がキレイ過ぎたからさ。ベイビー」

なんて台詞が言える訳もなく

自分でもはっきりと判るくらい顔がジンジンと赤くなった僕は

咄嗟にうつむきそれを誤魔化した。

「あっ、そうだ。あまりもので悪いけどこれあげるよ」

そう言いながら山崎有美が鞄から取り出したのは

キレイにラッピングされた小さな箱だった。

「私の手作りだから、特別においしいぞ!」

彼女はそれを僕に手渡すとまた明日ね!とだけ言って立ち去った。

今日国語の授業で出てきた

「狐につままれる」

ってヤツはまさにこんな様子を表す言葉ではないだろうか。

僕は先ほどまでとは違う理由で放心状態になった。

再び遠くで山崎有美の声がした。

「もちろん義理だからねー。勘違いするなよぉー!」

既に僕の頭の中では彼女がくれたチョコレートへの

拡大解釈が始まっていた。

あれから16年。

山崎有美は田中有美となり今では3児の母。

どうやって僕と彼女が結婚したか?

それはまた別のお話。

俺「今度の月9はこんなシナリオで行きましょう!」

プロデューサー「却下」 

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おもしろかったです。個人的には深夜ドラマで見たいです(笑)

枯葉猫

2018/2/14

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とじる

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