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時給980円 完結

狂気タイマー

更新:2018/4/16

羽深 風流

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狂気がお仕事のパートタイマー=狂気タイマー

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アタシは狂気タイマー。

あ、これ、名前じゃないわョ。

お客サマの要望に合わせて狂気をご提供するオシゴト。

ちなみに、時給980円。

割に合ってるのかは知らないケド、好きでやってるから文句はないヮ。

え?狂気を提供するって意味がわからない?

そういう人って、説明しても大概わかってくれないのョねぇ~…

いいヮ。実際にどんなオシゴトか、先週あった依頼のことを教えてア・ゲ・ル。

もちろん、個人情報流出…なんてわけにはいかないから、お客サマの名前は変えて、内容も少しアレンジするけどネ。

 *****

今回のご依頼人サマは、見た所50代半ばのサラリーマン。

やり手の中間管理職、課長ってトコロかしら?

真面目そうな顔と弛みなんて微塵もない体つきで、大人の色気が漂っちゃってる。

ヤダ、アタシ、もちろん今朝もおヒゲはきれ~に剃ってきたけど、今はもう夕方。

そろそろヤバイ!メイクもっと濃くして来るんだったヮ。

「実は、知人から貴方のことをうかがいまして、私の娘のことでご相談をさせていただきたく…」

「あら、私の狂気をアナタにご提供できるわけじゃないの?ザンネ~ン」

唇に人差し指をあてながら流し目を送ったけれど、ひきつった笑顔で目を逸らされたヮ。

困った様子で額に当てた左手に、これ見よがしな薬指の指環。

脈ナシね。いいヮ。オシゴトモードに入りましょ。

「で、娘サンがどうしたのかしら?」

「あ、はい、私には17才になる娘がおりまして、お恥ずかしい話ですが、半年ほど前から不登校だったのですが、近頃おかしなことに夢中になっておりまして…

星の巡りがどうとか、前世がどうとか、そんなことしか話さないうえに、家の中でもフードや、時には覆面で顔を隠す始末でして、 私も妻も、どうしたら良いものか…」

「あら、オンナノコがおまじないや運命論に夢中になるなんて、よくあることじゃない?

その延長で儀式の真似事でもしてるんでしょ。」

「いや、あの、それはそうかもしれませんが、なんというか、いつも虚ろな目で、心ここにあらずといった様子で…」

可哀想に、お父様は今にも泣き出しそうなご様子。

でも、まだこれだけじゃアタシの出番って決め手がない。

「おかしなクスリとかに手を出してる可能性は?」

ちょっとイヂワルな質問だけど、これも必要なプロセスなのョ。

「ない…と思います。私ももしやと考えなかったわけではありません。しかし、娘はここ3ヶ月家から一歩も出ていないのです。もちろん、妻と私で四六時中見張っていられるわけではありませんが…」

「ってことは、怪しげな宗教団体に騙されてる、とかってセンも薄いのネ。」

「…だと思います。ですので、貴方に、娘の、その…」

「正気を確認してほしい?」

『正気』という言葉に息を飲むような緊張を見せて、お父様は無言で頷いたヮ。

正気と狂気は表と裏。光と影。外側と内側みたいなトコロもあるかしら?

狂気タイマーのオシゴトは、狂気を提供することで正気を測ることもできるのョ。スゴいでしょ!?

 *****

それから3日後、アタシはその娘サン、ルナちゃんとでもしておこうかしら。ルナちゃんに会うためにお家へうかがったの。

豪邸とまではいかないけれど、一戸建ての立派なお家。

チャイムを押すと、奥サマが出迎えてくれたヮ。

悔しいけど、なかなかイイオンナ。

きっとルナちゃんもカワイイ娘なんでしょうね。

リビングに案内されると、お父様が待ってらしたヮ。

今日は平日なのに、よっぽど娘が心配なのネ。

ルナちゃんは自分のお部屋に閉じ籠っているんですって。

最近の状況を確認して、2階のルナちゃんの部屋へ。

やっぱり、よっぽど娘が心配なのネ。

お父様もお母様も、階段の半ばで見守っているヮ。

えぇ、娘が心配なのでしょうとも。アタシを信用していないワケじゃないハズよ。

ドアをノック。反応ナシ。

中からは人の気配と衣擦れの音。

寝てるとかじゃなく、部屋にいるのは間違いないわね。

「入るわョ。」

後ろでお父様とお母様が慌ててるのがわかったけど、こんなトコロで時間を無駄に使うつもりはないヮ。

「何奴じゃ」

少し舌っ足らずな発音の高い声。

部屋の中はカーテンを閉めきってキャンドルの仄かな明かりで照されている。

真っ黒な薄布を頭から被って、なかなか雰囲気でてるじゃない。

「ここを暗黒神ダークスートの神殿と知っての狼藉か?」

真っ直ぐこちらに顔を向けているけれど、目は合わないわネ。

お父様は虚ろな目なんて言っていたけど、焦点が定まっていないワケではなさそう。

ちょっと話に乗って様子を見てみましょ。

「暗黒神の巫女ともあろうアナタが、アタシが何者なのかもわからないの?」

「…では、お主が」

ルナちゃんの目が微かに怪しい光を帯びる。

やっと理解者が現れたという喜び。

いいえ、この現実世界から抜け出せることへの期待かしら?

「お主が………」

「そうよ」

「お主が、あの……………」

「えぇ」

「あの…………………………」

ないんかい!

あらかじめ考えるのも面倒だから相手の言う設定に乗ろうと思って名乗らないでいたんだケド、言葉が続かないうえに目が泳いでるわネ。

もうちょっとくらいは設定があるかと思ったのに。

まぁ、家に一人で引き隠ってる分には「それっぽい」くらいでも充分だもの、こんなモンよネ。

現実が直視できない夢見がちなだけのコを狂人とは言わないのョ。

ま、世の中には、理解できない人=狂人で片付けてしまう乱暴な輩も多いけどネ。

ルナちゃんは、答えを探すようにこちらを見て、やっとアタシと目が合った。

そして、その瞬間に逸らされたわ。

顔を少し背けて横目でアタシを見る。

いいヮ。今日もメイクばっちりなうえ、この春の流行をちゃ~んと採り入れた完璧スタイルだもの。思う存分見るとイイワ!!

「…オジサンは、誰ですか?」

オイ!

ちょっと、それはないでしょ。失礼しちゃう!

どうやらここまでではあるけれど、念のためもう一度。

「暗黒神の巫女ともあろうアナタが、アタシが何者なのかもわからないの?」

「え、あ、いや…あたしは………」

体を縮ませてチラチラとこちらを見る。

あんまりイヂワルして泣かせても可哀想かしら。

「今までお父様やお母様に話してたことは嘘だったのかしら?

すごく心配なさってたわョ。」

「はい、あの、ごめんなさい。

……………だからもう帰ってください。」

瞳から、夢見がちな霧が晴れたのがハッキリわかったわ。

やっぱりこのコも冷静になっちゃった。

ひきつった顔で汚いモノでも見るみたいにアタシを見て、失礼しちゃう!

結局み~んな、ちょっとオカシなことしてみたって、本当に狂う気なんてないの。

つまんない世の中だヮ。

今回は、ルナちゃんが我に返るのが早すぎてアタシの狂気を見せるまでもなかったわネ。

まぁ、こんなコドモに魅せて戻れなくなっちゃっても困るもの。

お父様もお母様もしっかりした方みたいだから、せっかく愉快な狂気に目覚めても、すぐに隔離なんてされたら面白くないでしょう?

もっとも、アタシの狂気じゃシゲキが強すぎて、逆に正気になっちゃうかもしれないケドね。

 *****

どう?これで少しは狂気タイマーのオシゴトわかったかしら?

ちなみに時給980円のお給料は、お父様のお話を聞いた時間とルナちゃんに会ってた時間以外に、事前準備の下調べに必要だった3時間の分もキッチリいただいたヮ。

まぁ、今回のオシゴトはツマンナイけど楽な方だったわネ。

あぁ、そうそう、アタシの話で狂気タイマーに興味を持ったなら、一度お店にいらっしゃい。

お客サマも同僚も、アタシいつでもだ~いカンゲイだから!

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