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お宝の行方 完結

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とある夫婦の休日、庭から出てきた缶の中身は…?

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「あなたー 業者の方見えたわよ」

日曜の昼下がり、ここのところ毎日続いてる暑さは衰えることなく、九月だっていうのにうだるように暑い。

良かれと思って晴れの日を選んだが、もう少し涼しい日の方が良かったな。

 爺さんの代から受け継ついでいる我が家には、素人一人ではちと身に余る広さの庭がある。

親父と爺さんはマメな性格が向いたのか楽しそうに庭をいじっていたが、俺の代になったらテニスコートでも作ってやろうと昔は思っていた。

そう思っていた筈なのに、いざ俺も五十代を折り返してみれば、仕事は落ち着くわ子供も手がかからなくなるわで、気がつけば親父達の後を追うように庭に出ていた。

始めは右も左も分からなかったが、段々と庭にある木や花を把握して世話にも慣れて来る。そうすると自分好みに庭を変えたくなるもんで、新たに2m弱の銀杏を庭に植えて貰う事にした。

それくらい自分でも出来るっていうのに妻は業者に頼めとうるさかった。まったく、自分の方が年上の癖して人の事を年寄り扱いして…。

「すいませーん、ちょっといいですかー?」

突然の呼びかけに思考を中断し玄関へ向かうと、業者の青年が何やら四角い缶のような物を持って立っていた。

「今軽く庭を掘ってましたら、こんなものが出てきまして、一応お渡ししておきますね」

言われて受け取ったのは、大分年季の入ったお菓子の缶。

どこか見覚えのあるようなないような…、記憶に靄がかかって思い出せない…… が、本能が警鐘を鳴らしている。これは良くないものだと。

「あらあら、なんですかそれは?」

さっきのやり取りを聞いていたのか、妻が寄ってきた。この感じは面白がっている。

「いやな、庭からなんか出てきたらしくてな…」

と言った瞬間、記憶に色がつく。何故直ぐに思い出せなかったのか、警鐘の意味も理解した。

「なんでしょう、お菓子の缶みたいですねぇ…」

「ん…あぁ、まぁゴミだろうから後で捨てとくよ」

俺の頭は一刻も早くこれを処分することで一杯だった。正確にはこの缶の中身、だが。

何を隠そうこの缶には、俺が若い頃の思い出のあれやこれやが詰まっている。

思い出といえば聞こえはいいが、入っているのはお店の姉ちゃんに貰った名刺だったり、当時お世話になった雑誌だったり、昔の女の写真だったり…。

ーーー言うまでもなく、こんな物は決してこいつには見せられない。

「何かお宝が入ってるかもしれませんよ、ちょっと開けてみましょうよ」

何がお宝だ。テレビの見過ぎである。

確かに当時の俺にとってはお宝なんだが、今になってみれば爆弾である。とてもご家庭で大事になすっていい代物ではない。

「ほら、ちょっと貸してみなさいな」

「あっ……………………」

いろいろ考えていたら取り上げられた。

すんなり、あっさりと。

こうなってはもう判決を待つのみ。

温情措置は…無理だろう。せめて情状酌量の余地くらいはあって欲しいが…。

「なぁんだ。何も入ってないじゃない」

え………??

そんな筈は無い、確かにその缶に入れて埋めたはず…。

「あらどうしたの、そんな変な顔しちゃって」

驚きを隠せないまま俺も見てみると、本当に缶は空だった。

何故だか理由は分からないが、どうやら結果として無罪放免になったらしい。

ーーー助かった。

「だからゴミだと言ったろう、ちゃんと捨てておいてくれよ」

精一杯強がって言ったが、今にも膝から崩れ落ちそうだった。

しかし、当時のお宝達は一体どうなったのだろうか。記憶違いではないはずなのだが…。

「まぁ、もし何かお宝が入っていたとしても、誰かが先に見つけて取ってしまったかもしれませんねぇ」

「…………………

「あぁそうそう、今夜は久し振りに美味しいお寿司でも食べたいわねぇ」

どうやらそういう事らしい。

まったく、いくつになっても敵わないな…。

そういえば、銀杏の花言葉は長寿らしい。

あの銀杏が大きくなるのを、こいつと見ていきたいと、いつまでも一緒に生きていきたいと、改めてそう思った。

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  • 内容に影響のない範囲で、一部表現の変更や追記をおこないました。(2018/04/16)

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1

”ご家庭で大事になすっていい代物ではない”がツボにはまりました。
………ギャグじゃないですよ?

爪隠し

2018/4/16

2

有難うございます! 長く続いてるあれなので伝わるかなーと思ってましたが 伝わって良かったです。
壺だけに… ですね笑

作者:榎本ナツキ

2018/4/16

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