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豪華客船サンタマリアナ号大群像劇 完結

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豪華客船サンタマリアナ・オブ・ザ・シーのセレモニークルーズ。そこでサンタマリアナ号の設計士・二階堂治道が言う。
この船の中に10億円のダイヤモンドを隠した、と。
探偵と泥棒とセレブと乗客たちが織りなす大群像劇。
ダイヤを手に入れるのは果たして……


※この物語はフィクションであり、実在の人物、芸術作品、団体等の名称含め一切関係ありません。

1位の表紙

目次

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1船出とセレモニー

<真田当麻の視点1>

ダイヤモンド輝くシャンデリアが釣り下がる船の大エントランスホール。

全長350m、収容可能人数は5000人は超え、世界最大規模の大きさを誇る。

ライブ会場、スパ、大型ジム、豪華絢爛な室内。世界のVIPも乗船しているという豪華客船・サンタマリアナ・オブ・ザ・シーの初船出の1000人限定のセレモニークルーズ。

「先輩、先輩!これ見てください!こんなローストビーフ、見たことありません!」

助手の倖月結依がフワッとした茶髪の猫毛を揺らし、大皿にローストビーフをたんまりとのせて僕のほうにやってくる。

「結依くん、こういう場所では走ってはいけないよ。努めてレディらしく振舞いなさい。せっかくのドレスが台無しだ」

「あ、はい!了解です。でも飼い猫を見つけただけなのにこんなところに招待してくれるなんて一条財閥の人達ってひうのは随分と太っ腹なんですへ~」

「それだけ僕の腕がよかったってことだよね。あと結依くん、ローストビーフを口に入れたまま喋るのはよしなさい、はしたないよ」

「はふ!でもよかったですよねホント!一条さんの依頼を受けなかったらうちの探偵事務所、倒産寸前だったんですから!」

「結依くん、僕はね、仕事を選んでるだけだよ。この名探偵・真田当麻が受けるに値する依頼なのかどうかをね」

「ははぁ~、なるほど……」

「お客様、シャンパンはいかがでしょうか?」

黒いベストに蝶ネクタイのクルーがシャンパンを勧めてきた。

「あ?ああ!大丈夫です、すみません……!」

にこやかに会釈し、その場を去っていく。

「あれ先輩、もしかして緊張してます?」

「なにを言うんだね。僕が緊張なんかするわけないじゃなかろー」

「ほうほう!語尾がおかしいですよ先輩!」

「やかまし!」

『ご来賓の皆様、お食事中失礼いたします。ここで、このサンタマリアナ・オブ・ザ・シーの設計・竣工まで携わった世界的建築士・二階堂治道よりご挨拶があります』

大きな拍手とともにホールの壇上にあるモニターに二階堂治道の姿が映し出された。

髪、ヒゲともに白髪交じりでかなりの高齢だったが、モニター越しにアップされる眼光は鋭い。

二階堂治道、言わずと知れた世界的建築家・芸術家でその功績は多岐に渡る。

10年ほど前に引退宣言をし、表舞台から離れていた二階堂がこの豪華客船・サンタマリアナ・オブ・ザ・シーの設計を担うことになり、それだけでニュースになったほどだ。

『皆様、サンタマリアナ・オブ・ザ・シーへようこそ』

モニター越しでも分かる重みのある重厚な声。

『この船は構想5年、開発・竣工まで3年をかけた私の生涯の最高傑作とも言える建築となりました。この日を迎えられたことを素直に祝福したい』

大量の拍手がパーティ会場から送られる。それを右手を上げ二階堂が静止する。どうやらこのモニターの映像は録画ではないようだ。

『さて、1時間前に東京湾を出発したこの船ですが、2泊3日、約60時間という船旅は意外と長いものです。そこで、このサンタマリアナ号を所有する一条郵船と協力し、今回ちょっとしたゲームを開催しようかと思います』

「ゲームってなんへしょうね?」

口にローストビーフを頬張った結依くんが言う。

「ビンゴとかじゃないかね?」

「むぉ!一等当てふぞ!!」

「だから、飲み込んでから話なさい」

『そのゲームとは宝探しです』

会場がフワっとした笑いに包まれる。

『ふふ、ただのゲームではありませんよ?1000人限定のプレミアチケットを手に入れた皆様には特別なものを用意いたしました』

『この客船のどこかに宝石を隠しました。ブルー・ダイヤモンドと呼ばれる世界でも滅多にお目にかかれない代物です。おそらく10億はくだらないと言われています』

大ホールにいる数千の人が息をのんだと思う。それくらいの静寂。

そして……

『そのダイヤモンドを最初に見つけた方に贈呈したいと思います』

いっせいに騒ぎ始める群衆。

僕の横にいたセレブそうな女性の顔が瞬く間に変わっていくのが分かった。

『皆様、是非このクルーズをお楽しみください。それでは……』

映像はそこで終わった。

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とじる

2行動開始

<加藤玲二の視点1>

おびただしい数が並ぶロッカーの前で黒いベストに煩わしい蝶ネクタイを外す。

豪華客船とは言っても裏方の仕事は地味だ。

スタッフへの連絡に使われるインカムを外し、事前に用意しておいたまったく同じタイプのインカムを耳にはめる。

「よぉ、丸雄(まるお)。俺だ、玲二だ」

『兄貴、そっちはどうでゲスか?』

「は?なんだ、お前、その喋り方」インカムから聞こえてくる丸雄の声はどこか変だった。

『いや、やっぱり泥棒らしく喋ろうかなって』

「ふざけんな。第2ホール・ヤコブの様子はどうだ?」

『そっちと似たようなもんスよ。乗客、浮かれまくり、騒ぎまくり。いや~、卑しい卑しい』

「……ふん。人間、金に目がくらんだらそんなもんだ。こっちはプロだ。冷静にいくぞ」

『それにしても兄貴、なんで分かったんでゲスか?二階堂がここであの話をすること』

「事前情報は掴んでいたからな。そっから逆算しただけだ」

1か月前、二階堂がパリの大豪邸を売りに出した。

それに伴い、パリで二階堂が今まで所有していた絵画・宝石等のオークションが行われた、しかしそこでブルー・ダイヤモンドは競売に出されなかった。

だからこそ、このサンタマリアナ号で何かしらのアクションがあると踏んだ。

確率論的にはそこまで高くもなく低くもない。

だが俺の勘は当たる。

『へー、さすが兄貴。でも思ったすけど乗客数、たしか1000人でしょ?すぐに見つかっちゃいそうな気もするんすけど?』

「あの二階堂が素人に見つけられるような場所にブルー・ダイアモンドを隠すと思うか?あの手の人間は見たいんだよ。この閉鎖された空間で人間たちのエゴが詰まったパーティを」

『趣味悪いっすね~』

「まずは事前に話した通り、そこをじっくり観察してろ」

『兄貴の話してくれたことが本当なら、大変なことになりやすけどね』

「ああ。もしかしたら人が死ぬかもな」

『え?兄貴、今なんて??』

警備員の服に着替え、俺はロッカールームを出た。

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わあ、ワクワクします!(*´∇`*)
続きも楽しみにしています(≧∇≦)

りんこ

2018/5/2

2

りんこさん、いつもコメントありがとうございます(^^)
群像劇なのでキャラ沢山出てきますが、続きも読んで頂けたら嬉しいですm(_ _)m

作者:佐伯春人

2018/5/2

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とじる

3一条財閥

<一条桜子の視点1>

サンタマリアナ・オブ・ザ・シー

6階層・ロイヤルスイートルーム

「母さん!一体、どういうことよ!!」

ドンと勢いよくスイートの部屋の扉を開ける。

私は高ぶる感情を抑えきれずに入ったのは母・一条紀子の部屋だった。

「なによぉ。せっかくいい気持ちで寝ていたのに……」

キングサイズのベッドに寝転がりながら、私の話す言葉を心底嫌がるように母は背を向ける。

「二階堂さんのあの映像は何って言ってるの!!聞いてないわ、あんなの!」

「いい余興じゃない。客も楽しんでくれるわよぉ」

楽しむ?

「10億のダイヤに目のくらんだ乗客が子供や老人を押し倒し、我先に見つけようと荒れ狂う様子が余興ですって?」

マスコミを乗船させなかったのは不幸中の幸いか。

しかし万が一、怪我人でも出てしまったらセレモニークルーズが終わったと同時に一条財閥の信用は地の底まで落ちる。

「いいじゃない。そんなの、どうでも……」

母が私のほうを向く。

いい歳して胸元が大きく開いたドレスに厚化粧、宝石の数々、見るに堪えない母の落ちた姿。

その顔は厚化粧の下からでも分かるほどやせ細り、憔悴し、病んでいた。

そうだ……父・一条幸之助が10年前に死んだときから一条財閥は壊れ始めた。

一族経営の功罪。父のカリスマ性、リーダーシップに頼り切っていた財閥は大黒柱を失い傾きかけていた。

創業初期から財閥を支えてきた一条郵船のこのサンタマリアナ・オブ・ザ・シーは財閥復権の切り札だったのに。

「……二階堂さんと母さんの間で一体どんな交渉があったの?」

怒りを心のずっと奥のほうに沈め、努めて冷静に私は聞いた。二階堂を建築家として呼べたのは母の助力もあった、だからこそ二人での内密の会話には多少目を瞑っていた。しかし、これは私の完全な落ち度だ。

「つまんないんだもの……」

「は?」

「毎日退屈なの。二階堂が楽しいことをしようと言ったのよ。私も楽しいことがしたかったから、全部任せたわ」

「…………」

今すぐにでも母を殴りたい気分だった。

でもそんなことをしている暇はない。警察、海上保安庁に連絡するか??

いや、それは悪手だ……。

この事態を収集するには船に隠されているダイヤを即刻見つける必要がある。

だがどうする??私を含め関係者が見つけたら乗客にはただの出来レースにしか見えない。

「ニャ~」

キングサイズのベッドの下から、母が溺愛するペルシャ猫のハーディが出てきた。

ハーディ……

たしか、今日のセレモニーにはこの猫を見つけた探偵を招いたと母は言っていた。

「……馬鹿げてる。でも……」

私が部屋を出ると第一秘書の瀬尾拓馬が扉のすぐ横に待機していた。

「二階堂への連絡は取れた?」

「いえ、一度も」

長身のオールバック。中々に迫力はあるが丸いメガネのおかげで幾分か緩和されている。

口数は少ないが信用できる人間だった

「引き続き連絡は取り続けて……あと乗船リストを持ってきて。時間がない。最優先で頼むわ」

「かしこまりました」

煌びやかな廊下に少し目がクラクラする。

一つ深呼吸をして、私は歩きはじめた。

会社は私が守るしかない。

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1

既に色んな登場人物の思惑が交錯してワクワクしますね!続き楽しみにしてます!

2

読んで頂いてありがとうございます!
書いてる本人が一番楽しんでます笑

作者:佐伯春人

2018/5/3

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とじる

4気まぐれな探偵

<真田当麻の視点2>

波だ、人の波。

一心不乱に金を見つけようとする人々の表情に冷静さはない。

子供の泣き声、奥では老人が倒れている。

人が瞬く間に散らばっていく。

まともに歩けない。

「まったく、金が人を変えるとはよく言ったものだ」

「先輩~、せんぱ~い!」

結依くんの声がどこからか聞こえる。

白いテーブルクロスをめくるとローストビーフが盛られた皿を持ちながらしゃがむ助手の結依くんがいた。

「何やってるのだね、君は」

「いや、怖かったんで」

「人も潜在的な欲求には勝てない動物ってことさ」

「でも10億かぁ……きっと見つけたらあんなボロい探偵事務所から、綺麗なビルの一室に引っ越しできますよ」

「結依くん、君はオブラートに包むという言葉を知らないのかい?」

「……あれ?なんだろこれ」

「スルーですかい」

溜息をつきながら結依くんの視線を追うと、テーブル裏に何か文字のようなものが刻まれている。

「かる……みあ?」

「カルミアと書いてあるね。ふむ……」

「カルミアってピンク色の花のことですかね?きゃあ!!」

テーブルの下から結依くんが出ようとすると、会場が突然暗転する。

悲鳴が上がったがほどなくして、会場のシャンデリアが点灯した。

しかし灯ったシャンデリアの色はイエロー、ブルー、グリーンなどさまざまだった。

「うわぁ、綺麗ですね……」

「結依くん、そういえば君、花屋で働いてたことがあるんだったね。カルミアというのはピンク色の花なのかな?」

「はい。そうですよ、ちなみに花言葉は裏切りです」

「そんなことでドヤ顔されてもね」

「う~、たまには褒めてくださいよ~」

「まぁ、助かったよ。知識があるに越したことはないからね」

僕はもう一度、テーブルクロスをめくり、結依くんが隠れていたテーブルとは違うテーブルの下に潜った。

「ああ……そうか。なるほど分かってきたぞ」

「え?どうしたんですか、もしかして推理モード突入ですか?」

「色が同じなのは結依くんが潜ったテーブルだけか……よし分かった」

「先輩、なんか分かったんですか!10億ですか!!探しますよ、いえ探しましょう!!!」

「結依くん、瞳がいつになく輝いているね。しかし短絡的に動くのは探偵として一番やってはいけないことだよ」

「でもでも、この船のどこかにその10億円の宝石はあるって言ってましたよ、あの髭のおじさん!」

「船のどこかに、ね。まぁ、とりあえずここから離れようか?ちょっとばかり危険かもしれないからね」

「え!?明らかにこっから推理ショーが始まる展開でしたよ!」

「いいから、行くよ」

僕は結依くんの肩を押さえ、半ば強引に大ホールを後にした。

「先輩、これセクハラですよ」

「人聞き悪いことを言うね、君!」

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とじる

5セレモニーカード

<加藤玲二の視点2>

警備服に着替えた俺は一番人が集まっているパーティ会場に向かっていた。

会場は想像した通りの混乱ぶり。

腕時計を確認すると二階堂のモニター越しのスピーチから3時間ほどが経過していた。

「ぼちぼちか……」

「てめぇ、何か知ってんだろ!!!」

ほら始まった。

会場の一室から怒声が聞こえる。

小太りの男が痩せたハゲ頭の男と口論になっている。

「何を言ってるのか、さっぱりだが?」

「見てたぞ、俺は!みんな船内を探しているのにお前はさっきからこの会場を出ていないよなぁ。事前に何か情報をつかんでたんだろ!だからそんな余裕なんだ!」

「言いがかりだよ。お前こそなんだ?10億がそんなに欲しいか?見てて醜悪だよ。ウチの会社はそんな金必要ないほど潤ってる。こんなところにまで来て金稼ぎか?金剛商店さんは随分と金に困っているようだ」

「てめぇ!!!!」

3時間、乗客1000人もいれば世界最大規模の客船といえど、立ち入り禁止場所を除けば、大まかな場所は見て回れる。

船内にダイヤがないという共通の認識が芽生えれば、人の心理は疑心暗鬼になっていく。

つまり、船内にないのなら船内にいる人間が所持している可能性があるのではないか、と。

だが、その読みは少しズレているだろう。おそらくは……

「きゃあああああ!!!!!」

悲鳴が上がる。

先ほどの小太りの男が手にナイフを持ち、痩せた男に向けている。

「お……おい。おかしくなったのか?」痩せた男が後ずさる。

「俺は正常だよ。知ってるんだろ?ダイヤの場所を?教えろよ、おい、教えろって!!」

「わ……分かった!正直に話すよ!これを見ろ!」

痩せた男がポケットから今日、入場するときすべての乗客に配られた名前入りのセレモニーカードを取り出した。

「それがどうしたよ!!!」

「このカードのうしろをよく見ろ!J-3と書かれている。俺はこの船に友人とともに乗った。そいつもカードの後ろにアルファベットと数字が入っていた。おそらくこれはダイヤに繋がる何かだと思った。友人はJのアルファベットを持つ乗客を探しにいった。俺はここでそいつの情報を整理する役目を担っていただけだ!」

小太りの男は自身のポケットを漁り、カードを出した。

「J-8……」

「あんたもJか……数字は今確認中だが1~9まである。表面をよく見てみろ。光の当て方次第で絵柄が浮かぶ。そのカードを9枚集めれば、何かしらのヒントになる仕組みになっているんだよ!つまり協力しなければダイヤには辿りつかない、分かったか!!馬鹿野郎!!」

「……協力だと」小太りの男の身体が震える。

「渡せよ」

男の手には尚もナイフが握られたままだ。

「は?」

「わたせぇぇえええーーーー!!!!!!!!」

小太りな男が痩せた男に走っていく。

その瞬間―――

パァアン!!!!!!!

銃声が会場に鳴り響いた。

パーティホールの壇上。

目だし帽をかぶった男が銃を天井に向けていた。

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うわぁ、恐ろしい展開になってきましたね……。
なんというか餓鬼道な感じ……
でも、見苦しいで終わりそうにもありませんね……(;´・ω・)

大久保珠恵

2018/5/6

2

大久保さん、読んで頂いてありがとうございます。
こういった閉鎖空間では人間の怖い部分が出る気がします。作者的にもこんな豪華客船乗りたくないなぁ、と書いてて思いました笑

作者:佐伯春人

2018/5/6

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