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転がせ、青春! 完結

いつだって青春

更新:2018/5/3

りんこ

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これも、ひとつの青春かと思い、書いてみました。

1位の表紙

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「きゃあ~っ! 亀吉さああああん!!」

「がんばってええええ!」

 幾重にもなった観客――だいたいみんな婆さんだ――から、黄色い声が上がる。

 出番は、まだだというのに、亀吉のヤツは熱烈な声援を受けていた。

 すると亀吉は、緑のラインが入った揃いの白い帽子をヒョイと小粋に掲げて、片目をつむった。

「きゃああああ!!」

 ひときわ大きな歓声が上がる。

「おい、亀吉」

「ん?」

「……今日も、すげえな……」

 目をハートにしている婆さん連中を横目に、俺は前に立つ亀吉に声をかけた。

「ハハ、まあね」

 対する亀吉は、あくまで爽やか且つ気取らない。

 こうした声援に慣れているが故の自然体だ。

「つぎは、ウメさんか」

「そうだね、今日もアレが見られるかな」

 亀吉はクスッとしながら、つぎの打者、最年長94歳のウメさんを眺めた。

「ウメさーん、がんばれよー!」

「今日も例のアレを見せてくれ!」

「がんばって、ウメちゃん!」

 観客や選手たちから、口々に声がかかる。

「ほいよ!」

 ウメさんが、スティックを掲げて返事をし、90℃に曲がった腰をシャキイイイーン!と伸ばした。

「おお!」

 どよめきが起こる。

 そして、そのままウメさんは、ボールを勢いよく打った。見事なフォームである。

 が……ボールは、残念なことに第一ゲート手前で止まってしまった。

「おんや、まあ……」

 ウメさんは、至極残念そうにつぶやくと、ピンと伸ばしていた腰を再びしゅるるると元の90℃に曲げた。

「今日も見事だな」

「ああ、ウメさんのアレは、いつ見てもスゴイねえ」

 俺と亀吉は、うなりつつウメさんの変化に感心した。

 

 今日は、日出町(ひのでちょう)vs月隠町(つきかくしちょう)のゲートボール大会が、行われている。

 ちょうど町の境にある、大きな公園の広いグラウンドは、朝から多くの観客でにぎわっていた。

 両町の精鋭選手5人ずつ、計10人。そして、今回は、あいにくと選手に選ばれなかった両チームのプレイヤーたち。

 それから、選手の家族や友人、知人たち。

 ちなみに、俺は日出町チーム、“サンライズオールスターズ”の主将である。

 そして、亀吉は月隠町チーム、“ムーンライトセレナーデ”の主将だ。

 まあ、いわゆる“ライバル”というヤツだ。

 それも生半可なライバルではない。

 俺と亀吉は、親同士が友人という、生まれながらの幼なじみで、この世に生を受けてから86年という長きに渡って、友人兼ライバルを続けている。

 ゲートボールは、お互い退職してから始めた。

 かれこれ、26年ほど続けている計算になる。

 そのあいだ中、ずっと良きライバル同士だ。

 亀吉とは、きっと死ぬまで、このまま友人であり、ライバルであり続けるだろう……。

 やがて、亀吉の打順になった。

「亀吉さあああん!!」

「タオルを用意してるわっ!」

「ハチミツ漬レモンも、ほら、このとおり!」

「がんばってええええ!!」

 黄色い声援が、最高潮になる。

 亀吉はニッコリとして、ファンたちに手をちいさく振り返した。

「きゃああ!!」

「ぎゃあ~っ!」

「亀様!」

 金切り声が、グラウンドを満たした。

 亀吉は、子どものころから何故か良くモテた。

 そして、86歳になったいまでも、それは変わらない。

 歳を重ねてなお麗しい見目、物腰柔らかな態度――。

 それから、何と言っても“コレ”だ。

 コーン!

 亀吉の打ったボールは、難なく第一ゲートを通過し、カクッと角度を変え、そのまま軽々第二ゲートをくぐりぬけてしまった!

「きゃあああああ!!」

 グラウンドに、絶叫が響く。

 いったいどうやったら、こんなボールが打てるのか誰にもわからない。

 亀吉だけが打てる“魔球”である。

「よっ! 出たな! 亀吉さんの秘儀!」

 すこし離れたところから、そんな声も聞こえてきた。

 そんなグラウンドの熱い声援を背中に、亀吉は涼しい顔で、ボールの止まった位置まで足を運ぶ。

 優雅な物腰で、スティックを構える。

 キリリとした横顔は、緊張感に満ちていて、それまでにぎやかだった観客席が、シン、と静まり返った。

 コーン!

 次の一打が繰り出された。

 ボールの行方は――。

 俺は、それを横目に気合いを入れる。

「よし!」

 亀吉のヤツに負けないくらい、ミラクルなボールを打ってやろうじゃないか。

 手にしている愛用のスティックを、ギュッと固く握りしめると、グラウンドを吹き渡る爽やかな風に身をまかせ、鮮やかなブルーの帽子をかぶりなおした……。

 

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4

谷さん、読んでくださって、ありがとうございます! 楽しんでいただけて、とってもうれしいです(*´∇`*)
ですです、公園とかで、よく楽しそうにゲートボールをしている様子を私も散歩中に見かけて、素敵だなあと思ってました。
本当に、いくつになっても青春まっさかりっていいですよね!

作者:りんこ

2018/5/3

5

カンリさん、読んでくださって、ありがとうございます!
わあ、とても好きと言っていただけて、すごくうれしいです(≧∇≦)
続編を、とのこと、ありがとうございます、機会がありましたら是非書いてみたいです♪

作者:りんこ

2018/5/3

6

鈴木それなさん、読んでくださって、ありがとうございます!
切り口がいい、と言っていただけて、とってもうれしいです(≧∇≦)
ですね、年齢関係なく、そういうものなのかもしれませんね、青春って♪

作者:りんこ

2018/5/3

7

ダンディな亀吉さんもシャキイーンと腰を伸ばすウメさんも想像できて楽しいです。みんな青春真っ盛りで楽し気な様子が伝わってきて大好きです。ゼヒ続編をお願いします。

イチゴ姫

2018/6/30

8

イチゴ姫さん、読んでくださって、コメントとオススメもありがとうございます!!
亀吉さんとウメさん、想像していただけて、うれしいです(*´∇`*)
わあ~、大好きと言っていただけて、本当にうれしいです、ありがとうございます(≧∇≦)
続編、また機会がありましたら、ゼヒ書いてみたいです!!

作者:りんこ

2018/7/2

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とじる

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