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言質

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合計:15

言ってしまったら、取り消せない。
言葉とは、そういうものです。

1位の表紙

目次

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美少女は俺を指さして、そう言った

「それ、それずーっと言って欲しかったの」

ハチ公前、じゃないな、ハチ公の左耳の斜め後ろに立っていた俺は、目の前に立っている小柄な高校生くらいの美少女に、こう叫ばれていた。

「はぁ?」

俺を人差し指でさしている美少女は、派手なTシャツと、派手なパンツを履き、左右色違いのスニーカーで踏ん張りながらニコニコと笑みを浮かべている。

「今の言葉を待ってたの。これで次の計画に移れるって。ありがと、じゃあね」

美少女は、俺に背を向け、歩行者信号が青になった渋谷ハチ公前交差点をスキップ気味に渡っていく。その背を見ながら、俺は今呟いていた言葉を遡り始めた。

「あ」

俺は、公差点のど真ん中をTSUTAYAに向かっているド派手なTシャツを目指して走り出した。ちょうどわたりきったところで、Tシャツの前に回り込んだ。

「おい、お前」

美少女は、首を右に曲げて

「なあに?」

と言う。俺の勢いと、美少女の美少女っぷりが周りの人の目に留まったらしく、ちょっと周囲の視線を浴びる形になった。が、俺はひるまずに尋ねた。

「言ってほしかったって、何のことだ。あそこで、独り言を言っていたのを聞いてたのか?」

「さあ」

「いろいろ独り言をぶつぶつ言っていたが、それは人に聞かせるためじゃない」

「そんなのどうでもいい。もう決まったことだから」

美少女は、渡りきった場所から、真上を指さした。その先には、TSUTAYAの大型ビジョンがあった。

”臨時ニュースを申し上げます。本日、全世界の政府関係に向けて、太陽系外からのメッセージがとどきました。それによれば、原住民がその母星を破壊したがっている場合には、その希望に応えて母星を破壊する用意をしてきた。そして、本日原住民の破壊希望を聞き取ったため、破壊することとした。地球滅亡のカウントダウンを始めた。とのことです。”

見渡すと、スクランブル交差点の誰もが、大型ビジョンのどれかを見上げている。

メンズ109の画面が、03:39:58という数字を映し出した。58が57,56と一秒ごとに減っていく。

”地球滅亡まで、あと”

と書かれている。地球滅亡のカウントダウンが始まったらしい。

美少女が、画面を見ている俺の耳元に、こう告げた。

「君が、”こんな星無くなっちまえ”、って言ってくれたから、こうなったんだよ。せいせいするね、この星がなくなると」

「え」

「だって、私の散歩ルートにこの星系があるんですもの。重力変調に対応するの、めんどくさいの。だから、言質を取りに来たの。そうそう、あとアルファケンタウリだっけ?あなたがたがそう呼んでる星もじゃまだから、これから原住民の証言をもらいに行くの。じゃあね」

美少女は目の前から消えた。

メンズ109のカウントダウンは、03:35:50に減っている。

口から出た言霊の責任を取るには、俺はどうしたらいいんだろう。

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  • 誤字、脱字の修正をおこないました。(2018/05/16)

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1

理不尽の極致に唸るお話ですね。
わざわざの言質は、ある意味律儀……なのかな、この人???

大久保珠恵

2018/5/16

2

宇宙にも、大人の事情があるのでしょう、

作者:たけじん

2018/5/16

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とじる

とりあえず大学へ行こう

「すまん、待たせたな」

聞きなれた山崎の声が、背中の後ろから聞こえて来た。スクランブル交差点の人混みに押され、ハチ公前の人だまりの中に、俺は戻って来てたようだ。そういえば、コイツが待たせてイライラしたから、いらない独り言言ったんじゃないか。その怒りともイラつきともつかない感情を、山崎にぶつけようと俺は振り向いた。

「お前を待ってる間に、俺はなぁ」

待てよ、

俺がこれの原因だって、誰も知らないんだよな。あの女以外。

切り替えよう。

「なんだか大変なことになってるな。聞いたか?地球滅亡って」

山崎は大きく頷いて、メンズ109のカウントダウンを見て言った。

「ああ、あと3時間半で地球が滅亡するって話だな」

「お前、あれ本当だと思うか?」

「本当じゃなかったら、このスクランブル交差点の人たちの反応はなんなんだ」

そりゃそうだ。公共放送が盛大なフェイクニュースを流すなんて、聞いたことないが。

「政府発表は本当らしい。ほら、官房長官が会見を開いてる

山崎は、手元のスマホで官房長官が会見している様子を映している。声は聞こえないが、深刻そうだ。やっぱりほんとだ、ほんとうなんだ。

「いや、なんだか変な話だからさ、ドッキリとかモニタとかウォッチングとかかと思って」

「それ、誰が引っかかるっての?この交差点の全員?俺とお前以外は仕掛け人?ありえないでしょ」

そうだよな。

「とりあえず、大学へ行こう。部室にみんな集まってる」

「ああ」

「車止めてるから、あっち」

俺は山崎について行った。スクランブル交差点の人たちは、何をどうすることもなくウロウロしている。半分くらいの人は、日常のまま行動しているようにも見える。パニック映画みたいに、みんなで暴徒になるなんてないらしい。

現実なんて、想像するほど派手じゃないんだ。車の窓から見える様子も、あまり日常と変わらない。タイマーは着々と進んでいるのに。

首都高、第三京浜を飛ばして、大学にはすぐ着いた。部室に顔を出すと、SF研究会のメンバーが揃っていた。

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1

平穏な中にじわじわ迫るタイムリミット感がたまりませんね。最初の章を読んで、おいそれとヘタなことは呟けないなぁ・・・って思いました。

よんちょうめ

2018/5/19

2

そうです。口は災いの元です。お気を付け下さい。
誰かのSNS動画に映っていて、読唇術で呟きを解析されたら… 怖いですよ…

作者:たけじん

2018/5/21

3

面白いです。

枯葉猫

2018/5/21

4

ありがとうございます。> 枯葉猫様
しばらくのお付き合いを。

作者:たけじん

2018/5/21

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とじる

地球滅亡のシナリオを考える

サークル棟1FのSF研の部室は、主要な部員で犇めいていた。

「お前ら暇なのか?地球滅亡だってのに、こんなとこにいていいのか?」

思わずSF研メンバーにこう言ってしまったが、ここに集まっている気持ちが、俺にもわかっていた。不安なのだ。

一番奥の萩原が口を開いた。

「どこに居たって地球は滅亡するし、何かできるとすればオレらは、変なSF的アイデアを繰り出すだけじゃないですか。だとしたら、いつものようにここに集まれば、突拍子もないアイデアを考えて、普通じゃ解決しないこの事件を、どこかのSF小説みたいに解決したいんですよ。な」

半分オタク臭のするメンバーが、バラバラにうなづく。だろうな、俺も当事者じゃなければここに来るしかないだろう。当事者としても、ここに来てるわけだが。

「だとすれば、今回どうやって地球が滅亡するのか、そしてそれを阻止するにはどうすればいいのか、アイデアを絞ろうじゃないか」

仕切り好きの阿部が今回も議長になっている。何かできるわけじゃないから、俺も参加しよう。

「SF的地球滅亡、母星破壊」

奥園がノートPCに表題を書き込む。壁面のTVに同じ画面が映る。

「母星を破壊することとした。って異星の誰かからの言葉だ。翻訳が正しいとすれば、太陽が消滅するか分解するかして無くなる様だ。恒星を破壊する、しかも短時間にとなると、どうする?」

阿部が画面を引き継いで聞く。ハードSF大好き竹内が口を開く。

「かんたんなのは、反物質持ってきて質量変換だよな。全部じゃなくても、一部がエネルギーになれば、爆散して終わり」

読書量半端ない高橋が補足する。

「必要な反物質の量と、3時間で星がなくなるのかってとこだな」

物理大好きな文系宇沢がなんとなく提案する。

「ブラックホール落っことせばいいんじゃないの?」

「星が消えるまでだと、時間がかかりそうだな」

「磁気を変動させて、巨大フレアとか発生させて、爆発的燃焼をさせる」

「太陽無くなるほどじゃないよねぇ。フレア浴びたら、地球滅亡はありだけど」

「恒星破壊ビームってのを打ち込むのはどうかしら?デススターみたいなの」

磯崎のよくわかんないけど言ってみたに、竹内が突っ込む。

「エネルギー加算だと膨張するだけっぽいし、反物質ビームならもう出てるし、謎のエネルギーなら議論にならないだろ」

磯崎は顔をゆがめているが、竹内は気にしていない。

「もう」

ちょっと待て、このペースで何とかなるのか?。あと3時間弱だ。

あの女は、太陽がじゃまだと言っていたな。星を消したいって。じやあ、これならどうよ。

「ネット状に展開したブラックホール群を、太陽表面に球状に貼り付けて同時に落下させる。球状のまま、その直径が小さくなって行くが、ネットの隙間を通過しようとする太陽の水素ガスは、ブラックホールのどれかに捕まって、ブラックホール球体から出られない。太陽の重力でブラックホールが落下するのにどれくらいかかるんだろう」

竹内が俺の顔を指さして、

「それ、いけるんじゃね」

奥園が何か計算をしながら、ぶつぶつと呟いている。

「オーダーは範囲内だな。時間的には無理がない」

話が理解の外に行ってしまったのか、隅の方で磯崎が何か呟きだした。

「大体、誰なのよ。地球を破壊していいって言ったのは」

「そりゃぁそうだな、一体誰なんだろう」

そう言いながら、竹内がパソコンを操作し始めた。

「ツイッターは、犯人探しか。おや?日本人かもって」

磯崎が画面を覗き込んで言う。

「渋谷で見たって呟いてる人がいる」

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  • 内容に影響のない範囲で、一部表現の変更や追記をおこないました。(2018/05/22)

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とじる

犯人探しをするんじゃない

何をだよ、俺は心の下の方で呟く。何を見たんだよ。

「すんげぇ美少女が、臨時ニュースの画面に何か言ってた。だって」

竹内のPCから、画面にツイッターを繋ぐ。

「動画が上がってる」

渋谷駅前スクランブル交差点、TSUTAYAの前だ。何かのCMを流している大画面ビジョンが映り、下に向かっていく。交差点の歩行者用白線が映ると、画面中央に、真上を指し示しているあの女が捉えられた。その指し示す方へ画面は再び上昇して、臨時ニュースが流れ始めた。

「スゲーかわいいなこの子」

「そうだな、可愛い」

たしかに顔立ちは整っている。アイドル歌手並みだ。だがそれだけだ。それより、この女の言ってることと、やってることが問題だ。

「この普通の女の子が、何をしたって言うのよ。画面指差してるだけじゃん」

「いや、画面を指しているタイミングと、臨時ニュースが現れるタイミングが、あまりによく一致しているからなんじゃないの」

いや、その前に、このことに俺がガッチリ関わっていることがバレるのが問題だ。こんな動画が上がっているようじゃ、俺をすぐにも特定されそうだ。

「でも、なんて言ってるか分からないし」

この子かわいいってツイートが、TLを大量に流れていく。そこに気を散らしてる場合か?地球滅亡の危機に、そんなことが頭をよぎるって?

同じ画面には、竹内がダウンロードした、地球滅亡カウントダウン表示アプリがある。刻まれた残り時間は、既に2時間半を切ろうとしている。このタイミングで考えることが、”この子かわいい”なのだろうか。

「その子なら、ハチ公前で見かけたって、別の動画が上がってる」

画面に別の動画が。

これは!

『それ、それずーっと言って欲しかったの』

部室にあの女の声が響き渡る。

「うわぁ、声もかわいい」

派手なTシャツに派手なパンツ、左右色違いのスニーカーを踏ん張って、誰かを指差している。

それは、俺だが、画面はその俺が映る方へ移動していく。

が、手前に立つ大柄な外人の影に入り、見えなくなった。

「誰なんだ、指さされてるの」

「そいつが、この星の破壊許可を出したって事?」

「そうだろう」

おいおい、破壊許可じゃない。こんなクソみたいな星無くなっちまえって、普通に言う言葉だろ。

「他の動画が上がってる」

ちょっと待て。画面右下のカウントダウンアプリタイマーが、俺の目に入った。

「おい、カウントダウンが」

「ん?」「どうした?」「あ」

「止まってる」

カウントダウンアプリは、こんな表示のまま、固まっていた。

地球滅亡まで、あと

  2:04:43

修正履歴

  • 内容に影響のない範囲で、一部表現の変更や追記をおこないました。(2018/05/23)

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