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退勤/出勤 完結

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みんな、さいしょはそう思うのです。

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 もうすぐ朝だなあと思ってあくびをした。ひゅぅっと風が吹いて、澄んだ空気が肺を満たす。

「や、おつかれさん」

 退勤前の同僚から声をかけられて、少し顔が赤くなる。寝ぼけたところを見られるのは恥ずかしかった。

「もう?」

「ええ、交代……ふふ、目やについてるわよ」

 返ってきた声にそっか、と答えてやっぱり今日もお仕事ですかねぇなんて眼をこする。曇りがちだった空に切れ間が目立つようになり、太陽が姿を見せ始めた。

「そう言えば痩せた?」

「あらセクハラ?」

 上品に笑う同僚には、深い青色の仕事着がよく似合っている。体力勝負のお仕事に、彼女のようなタイプは似つかわしくないなんて、それこそセクハラになるのかもしれない。

「夜更かしが続くからかねぇ」

「まあ、この時期はしょうがないわよ。忙しいもの。それより寒くてやんなっちゃうわ」

 はー、っと彼女が息を吐くと、朝靄が辺りにかかった。美しい眺めだ、とうっとりしながら、それで、とつかの間の会話を続ける。

「特に異常は?」

「さあ、今のところは何もないわ。ちょっぴりせわしなくて、いつも通りやかましい。そうそう、新しい傘を買ったのよ。見てくださって?」

「おや、似合うねぇ。こりゃ今日は雨なんじゃない?」

「そうかも。そしたらお仕事楽になるわね」

「そうかなぁ」

 しかし本音を言えば、雨なんか降って欲しくなかった。良く晴れた日には、オフの彼女が遊びに来てくれることもある。普段と違って爽やかな青い私服をまとった彼女は、その肌の白さを存分に見せて、遠くからでも一目見るだけで一日を頑張ることができる。

「ふわぁ。眠いわ。そろそろ寝るわね。おやすみなさい」

「おやすみなさい。良い夢を」

 彼女を見送ってから、いよいよ仕事に取り掛かる。

 毎日同じことの繰り返しに、飽きることなく今日も少しずつ身を起こす。

――わあ、おひさま、おっきしたよ!

 早起きの子どもが大きな声で叫ぶ。馬鹿ねぇ太陽が昇ってきただけよ、と母親が騒ぐ我が子を笑い飛ばした。

 やれやれ。どんなものも擬人化すれば可愛いとは言うが、オトナだけは可愛げがない。

 不満げな子どもに向かって、僕はそっとウィンク。

 今日も、一日が始まった。

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