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しあわせへの招待状 完結

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これを幸せと呼ぶかは人それぞれ。
ちょっとオカルトチックな話です。
手紙のひらがな部分には一応、隠れた意味があります。あなたはどちらを選びますか?

1位の表紙

2位

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(今日も疲れたなぁ…)

 精神的に疲れる職場から戻って、いつものようにマンションの集合ポストを覗き込む。

 基本的に手紙がくることは無いのだが、マンションのお知らせが入っていることもあるので確認だけはしている。

(あれ?)

 ポストにあったのは、白い洋型封筒。

(今時、珍しい)

 それは、亡くなった母が好んで使っていたせいで、私には馴染みの物だった。

「誰だろう?」

 私がここに住んでいる事を知っているのは、家族と会社くらいだ。

 表書きは、このマンションの住所と私の名前。だけど、裏に差出人の名前は無かった。

 普段ならば無視してしまうけど、この封筒のせいか、何故か気になって部屋へと持ち帰った。

 着替えもそこそこに封を切る。

 中にあったのは、白い便箋と二つに折られた封筒。

 返信用なのか、その封筒には名前が書かれていた。

「え、お母さん!?」

 亡くなったはずの母の名前。

(配達日指定郵便ってやつ?)

 母が亡くなったのは、私が中学の時。

 亡くなる少し前に、母が病室で手紙を書いていたのを思い出す。

「これって、あの時の?」

 慌てて、便箋を取り出して開く。

 そこに書かれていたのは、とても綺麗な文字。

「お母さんの字だ…」

 懐かしい文字に、ゆっくりと目を落とす。

これは、しあわせへの招待状です

 そんな言葉で始まっていた。

 最後まで私の事を想ってくれていた母らしい。

あなたはいま

しあわせ?

たのしい?

いまの

きずなは

るびーかな?

 ひらがなばかりのちょっと変わった手紙。

 ひらがななのも、短い言葉なのも、体が辛かったからなんだろうな。手紙を書いていたのは、亡くなる数日前だったから。

 でも、書きたい事…訊きたい事かな?はよく解る。

 るびーはルビーの指輪。

 誕生石がルビーな私は「ルビーの指輪でプロポーズしてくれた人と結婚するの」と、いつも母に話していた。

 でも、今、私の指に指輪はない。

 出会いのないまま今日まで生きてきた。

あなたの

しあわせは

たいせつな

しろいウサギの

ぬいぐるみ

 今度は、はっきりとは意味は解らなかったけど、その言葉にはドキッとした。

 小さな頃から大事にしていた、白いウサギのぬいぐるみ。

 自分の分身だと言っていた。

 一度だけ、母に訊かれたことがある。『私がもし死んでしまったら、あなたはどうするのかしら?』と。

 その問いに『お母さんが死んだら、私も死ぬの!』そう即答した。

 でも、母が死んでも私は死ねなかった。

 だから、白いウサギのぬいぐるみを棺の中に入れた。

 私の代わりに…と。

 私がそうするだろう事を、母は解っていたのだろうか?

 一枚目はそれだけで、二枚目に続きがあった。

あなたが今、生きて幸せになっているのなら、この手紙は送り返して下さい。

 突然、普通の文章になって驚いてしまう。

 最後の力を振り絞った?

 それとも、一枚目の文章に何か意味があるのだろうか?

もし、幸せじゃないというのなら、手紙はこのまま持っていて。

あなたの望みが叶うから。

 手紙に書かれていたのは、それだけだった。

 それでも、涙が零れ落ちる。

「こんな報告しか出来なくてごめんね、お母さん。私、幸せじゃないよ」

 母が亡くなって一年もしないうちに父は再婚した。

 新しい母親は優しい人だったけど、認める事が出来なかった。今も『お母さん』と呼ぶ事は出来ない。

 今でも時折メールを送ってくる。…手紙じゃない。

 頑なになっているせいなのか、母が亡くなった後は良いことは何もなかった。望まない方向にばかり道は向かっている。正直、全てに疲れていた。

 嫌な想いを打ち消すように頭を振って、同封されていた封筒をもう一度見た。

「送り返してって…住所書いてないじゃない」

 呟いて、苦笑する。

 切手が貼られていないのは構わないけれど、住所がなければ送る事は出来ない。

「もしかして、家の住所を書けってことかな?」

 幸せになっているのなら、実家と疎遠になっていることはない。お母さんから手紙が来たよ!って報告をしに行ってるだろう。

 そうなっていることを願っていたのかもしれない。

「これ、幸せへの招待状なんでしょう?お母さん」

 そういえば『招待状』は漢字だったな。

「だったら、大切に持ってるよ」

 大好きな母からの手紙。

 大好きな母の形見。

 手放したりなんてしない。

「望み、叶えてくれるんでしょ?」

 気づいたら、涙は止まっていた。

 お母さんの力ってすごいな。

 

 今日は久しぶりに幸せな気分で眠りについた。

 翌日、マンションの一室で女性の遺体が発見された。

 白いウサギのぬいぐるみを抱きしめて、とても幸せそうな笑みを浮かべていたという。

『お母さんが死んだら、私も死ぬの』

 願いは、叶えられた。

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このお話引き込まれました!手紙の◯読みもわかりやすくもう1回読み直しました(∩´∀`)∩

犬犬

2018/8/30

4

犬犬さん、コメントありがとうございます!
あれ、気づいて頂けたんですね。嬉しいです(*´ω`*)
それだけでなく読み直しても頂けたなんて、もう嬉しすぎて涙が止まりません(T▽T)

作者:時間タビト

2018/8/30

5

おおお。。。この展開。。。
なんとも言えないこの感じ。。。

その感じが面白かったです。

おおお。。


あ。私はるびーの方で。

青楊

2018/10/27

6

青楊さん、コメントありがとうございます!面白かったと言ってもらえて嬉しいです(≧∇≦)

るびーの方なら、手紙は忘れずに送り返して下さいね。でないとウサギちゃんが来ちゃいます(笑)

作者:時間タビト

2018/10/27

7

いえいえこちらこそ
きっと
るーまにあまでおくりかえします

青楊

2018/10/27

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とじる

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