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瓢箪夜咄・ご 完結

怪談収集家

更新:2018/10/7

はた

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人喰らう山の章

***
見切り発車55作目。
どんどんよくわからない方向へ進んでおります。やっぱり一章で止めとくべきだったか…?

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◆◆◆

四方を山に囲まれた、だだっ広い平野の真ん中で、男はぐるりと周りを見渡した。

彼の声は未だ頭に響き、気配は後ろを付いて来る。はぁ、と溜息を一つ吐くと、男は真っ直ぐと前を向き歩を進めた。

目指すは一悔山の麓。

件の山は青々と萌え、野を見下ろしていた。

◆◆◆

男の行く手から、軽い足音が向かってきた。男が顔を上げると、小さな子どもが数人駆けて来るのが見えた。

「おじさん、そんなもの背負ってどこに行くの?」

「この先は一悔山しかないよ?」

男が通り過ぎようとすると、子どもの方から声を掛けてきた。子どもにも大人にも、やはりこの瓢箪は物珍しいらしい。

男は子どもらに目線を合わせ、問いかける。

「この辺の怪談を聞かせてくれないかな」

「かいだん?」

「そう。何か恐ろしくて、不思議で、怖い話。おじさんはそれをこいつに集めてるのさ」

男は瓢箪を指し、人好きのする笑みを湛えた。

「そんなら良いのがあるぜ」

子どもらの中でも年長と見える、十四、五歳の少年が口を開く。

「へぇ、そいじゃま、聞かせてくんなよ」

男は瓢箪を下ろし、栓を抜いた。

◆◆◆

この先には、ほんとに山しかないんだ。

一つの悔いと書いて、一悔山。

音でわかると思うけど、人を食う山さ。

山の中腹に、ぽっかりと空いた所があるだろ?

あれが口。ここからじゃ見えないけど、洞穴があるんだ。そこに行くと、山に食われて二度と帰れないって言われてる。

昔、ある男が山に入って迷ったんだ。

男は暫く歩いて、開けた場所に出た。

男は洞穴の辺りから、ぼんやりと光が漏れているのに気づいた。

男が穴の入り口から腕をそっと差し入れると、瞬間───

ものすごい力で引っ張られて、そのまま穴の中へ消えていったんだって。

そのままその男は帰ってこなくて、山の麓の皆は、そこへは行かないようになったんだってさ。

◆◆◆

「面白かったよ。どうもありがとう」

「こんなんでよかったの?」

「ああ、十分さ。さて、引き留めて悪かった。暗くならないうちに帰んなよ」

「うん、おじさんも気をつけてね」

おじさん、…おじさん、ねぇ。男は内心で苦笑いしながら、子どもらに別れを告げた。

◆◆◆

男は洞穴の前に立った。穴の中は暗闇が広がっている。

あの子どもは「引っ張られて」と言った。穴の中に何者かが潜んでいたことは確かだろう。

男は灯りを掲げ、穴を覗く。穴の中には、人ひとり暮らせそうなほどの空間が広がっていた。

男は穴から顔を離し、瓢箪を傍らへ置いた。栓を抜き、暗闇へ向かって語りかける。

「お前の無念ごと、連れていってやるよ」

ぶわりと風が吹き、木々を揺らす。男の袂が空気を孕んで暴れている。やがて風は瓢箪に収まり、山は静けさを取り戻した。

何者かを山に幽閉せねばならなかったこと。何者かは人を巻き込み、喰ってしまったこと。一つ一つ、人々は悔やみ、反省し、山に名を付けたのだ。

◆◆◆

鬼火、桜、刀、池に、山。

五行は揃った。

後ろの正面が何者か、確かめてやろうではないか。

◆◆◆

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