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アイドル対決!? トップグループ『インフィニティ・ピース』!! 完結

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2200年、アイドルグループ『インフィニティ・ピース』は、世界的人気を誇っていた。
世紀末記念ワールドツアーの最中、100年前に地球を訪れアイドル対決宣言を残して去って行った謎の宇宙人が再び現れ、『インフィニティ・ピース』は地球の存亡をかけたアイドル対決をすることに・・・!!

1位の表紙

2位

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 2200年――ハワイ上空 空中ライブスタジオ

 世界に平和をもたらしたのは、政治力でも核でもなく……そう、アイドルだった。

 何本ものスポットライトによって照らされた空中スタジオの更に上空を浮遊するのは、〝スカイヒール〟を履いたアイドルたち。

 夢の空中歩行を実現した〝スカイヒール〟を最も有効的に扱っている職業は、間違いなくアイドルだった。

 煌びやかな衣装に、輝くアクセサリー。地球上の全てのファンに声を届けるマイク。そして圧倒的なパフォーマンスと、絶世の歌唱力。

 世界平和を象徴する最高のアイドルグループを継いだ10代目『インフィニティ・ピース』のメンバー3人によるライブ映像は、全世界の浮遊モニターに同時中継されていた。

 世紀末記念ワールドツアー第1回目のハワイ上空ライブ最後の1曲を歌い終え、空中を自由自在に飛行していた3人のメンバーが、スタジオの中心に集まった。彼女たちのライブを観覧していた全世界のファンたちは熱狂し、ライブ終了が近いにもかかわらずボルテージは最高潮を維持していた。

「みんなー、ありがと~、とでも言うと思ったかー! ありがと~!」

 10代目〝インフィニティ・ピース〟リーダーのクイーンアリアは地上でペンライトを振るファンたちに向け手を振った。

 アリア――チャームポイントはクセのあるブロンドヘア。強い喉による声量と、高い身体能力が強みのトップアイドル。

「みんな、遅い時間までありがとー!」

 メンバーのダイヤモンド。黒いロングヘアと、すらりと伸びる長身によって決められるポーズは世界遺産とまで言われている。

「次のライブも、観に来てねー!」

 メンバーのサニー。ボーイッシュな外見からは想像がつかない天真爛漫なキャラによるギャップが世界中に受けている。

 名実ともに世界1位の最高のアイドルグループ……彼女たちこそ、まさに地球を代表するアイドルと言えた。

 ライブ終了後 インフィニティ・ピース 楽屋

「今日の結果発表~!」

 サニーの掛け声に合わせ、メンバー3人は順に手を上げていった。

「ゼロ」

 と、ダイヤモンド。

「わたしもゼロ!」

 サニーが続く。

 最後のアリアは、剥がれかけたネイルをいじりならが言った。

「1。あ、2かも」

「え」

「あれま」

 ライブ終了後、自分のミスの回数を申告し合うのが、彼女たちのお決まりだった。

 サニーは目を丸くした。

「え、どうして? ねえどうして? アリアいつもノーミスじゃん?」

 ダイヤモンドは感心するように唸った。

「あなたにも調子が悪い時あるのね」

 ネイルから2人に目を移して、アリアは言った。

「いや、違くてさ。今回のツアーから導入された小型飛行カメラ……だっけ? 世界中継されてるやつ」

「うんうん」

「あれさ、ハエかと思って手で潰しそうになるんだよね」

 ダイヤモンドは呆れたようにアリアを嗜めた。

「普段、あなたが虫を素手で潰してるってファンが知ったら悲しむわよ?」

 アリアは真顔で言った。

「あと、全世界同時中継なのにワールドツアーをする必要があるのだろうか」

「やめなさいアリア。それ以上言っちゃダメよ」

 着信音を鳴らした小型フォンを手に取り、サニーが声を上げた。

「マネージャーからだ……えっ!」

「どうしたの、サニー?」

 サニーは慌てた口調で2人に伝えた。

「この後のスケジュール、ていうか明日のスケジュールまで、全部キャンセルだって!」

 3人は顔を見合わせた。

「え、なんで?」

「どうして、サニー」

 サニーは息を呑んで言った。

「ヤツが……来たって」

「………」

「………」

 アリアがぽかんと口を開けた。

「ヤツって誰?」

               ♡

 話はちょっと100年くらい前にさかのぼる。

 100年くらい前、ある宇宙人が地球に降り立った。

 単身、生身で地球に降り立ったその宇宙人は、人類に勝負を申し込んだ。

「君たちが勝てば、友好的な関係を築こう。私が勝てば、君らを滅ぼす」

 宇宙人が提示したのは、その単純なルール1つだけだった。

 高い知能と圧倒的武力(腕っぷし)を備えた宇宙人は、ハンデとして地球上から勝負するものを選ぶと言った。

 何で勝負するかを決めるために、宇宙人はしばらく地球で過ごし、そして――

 アイドルにドハマリした。

「私の星で最高のアイドルを育て上げ、君らのナンバーワンアイドルと勝負させよう! それでこの星の命運を決める!」

 宇宙人の去り際の台詞はこうだった。

「私の星まで片道100年かかるから、200年後に最高のアイドルを連れてまた来る! じゃあな!」

 それから100年。宇宙人とコミュニケーションをとった当時の人間たちも、現代の者たちも、まさか本当にあの宇宙人がアイドルを連れて戻って来るとは思っていなかった。

 しかし、その宇宙人はホントに来た。

 しかも予定より100年早かった。

「技術の発展により、到着が100年早まった」

 そうである。

 アリアはため息を吐いた。

「文明の利器ってすごいね。100年早まるって……」

「それで、その宇宙人さんが来たから急遽アイドル対決することになったってこと?」

 サニーの問いにダイヤモンドは頷いた。

「ええ。しかも対決の様子は世界に生配信するそうよ」

 サニーは嬉しそうに飛び跳ねた。

「すごいね! また最高視聴率更新するんじゃない?」

「そうも言ってられないわよ、2人とも」

「文明の利器……」

「アリア聞いてる?」

「え、なになに?」

 ダイヤモンドは2人の顔の前に、人差し指を立てた。

「いい? わたしたちは平和の象徴。世界のガーディアン。相手はライバルのアイドルじゃなくて、宇宙から来たアイドル。いつもやってるアイドル勝負とはわけが違う。わたしたちが負けることは、地球が負けるってことになるのよ。世界に生配信される以上、負けることは許されない。ナンバーワンの威信にかけてね」

 サニーが深々と頷いた。

「なるほどぉ~」

 アリアは首を傾げた。

「でも、威信とかそれ以前に、負ければ地球滅びるんだよね?」

「………」

「………」

「そうとも、言うわね」

「ちょっ、ダイヤさん?」

 かくして、地球代表アイドル〝インフィニティ・ピース〟と宇宙人が連れてきた向こうの星のトップアイドルとの対決が、始まったのである。

 メンバー3人は、宇宙人が用意した、太平洋のど真ん中に浮かぶアイドル対決特設ステージに招待された。

 広々とした特設ステージの中心に待つよう指示された3人の前に、あの宇宙人が現れた。時間ぴったりだった。つまり決して5分前行動とか、意識高い系ではない。

「君たちがこの星のトップアイドルか」

 100年の時を経て再び地球を訪れた宇宙人の身なりは、教科書で習ったものと違っていた。歴史で伝えられた宇宙人は、ほぼ全裸だった。

 しかし、目の前にすたすたと歩いてきた宇宙人は、スーツをぴしっと決めていた。

 宇宙人は手を広げ、背後に立っていた女の子を紹介した。

「この子が私が連れてきた、我が星のトップアイドルだ。私が育て上げた、最高のアイドルだよ」

 ふわふわとした派手な衣装を身にまとった女の子はぺこりと会釈した。しかし、アイドルというには笑顔がなく、ちょっと暗い印象だった。

 なぜかスーツを着て現れた宇宙人に、アリアはおそるおそる挙手した。

「あ、あのぅ……宇宙人さん」

 宇宙人はビシッと手を伸ばし、アリアを手で制した。

「待ちたまえ」

「はい?」

「わたしのことは、プロデューサーと言いたまえ!」

「思ったよりばっちり染まってらっしゃる!!」

 ダイヤモンドがアリアの肩をがしっと掴んだ。

「ちょっと黙ってて、アリア」

 宇宙人は顎に手を当ててふむふむと頷いた。

「フン。3人がかりか。まあ、いいハンデだろう」

「いえ、もともとそういうグループなので」

「アリア黙ってて」

 宇宙人は両手を大きく広げた。

「さあ! それでは始めようか! この惑星をかけたアイドル対決を!」

「急に始まった!」

「アリアあなたほんと命知らずね! 相手は核より強い宇宙人なのよ!」

「ヨッシャー!」

「サニーもやめてよっ、この宇宙人マジで怖いから!」

「プロデューサーと呼べと言っているだろう!」

「キレるポイントが謎過ぎる!」

              ♡

 宇宙人プロデュサーが退場し、メンバー3人と宇宙アイドルプラネットちゃんだけがステージに残された。

 サニーがきょとんとして尋ねた。

「それで、どっちからやるの? やっぱりステージ勝負だよね? やけに広いステージだけど……」

「たしかにそうね。ステージっていうより、むしろ闘技場みたい……」

 アリアが上空の観覧席に向かって声を上げた。

「プロデューサーさ~ん」

「なーあーにー?」

 ダイヤモンドは頬をひくつかせた。

「この100年でものすごく毒されているわね、あの宇宙人」

 100年前は恐怖の大王みたいなテンションだったというのに、いまではアイドルプロデューサーというかアイドルオタクだ。

「プロデュサーさん。どっちからステージやるの?」

 事前説明をしないスタイルの宇宙人は、あっけらかんと答えた。

「順番などないよ。君たちはそのステージで一緒に踊るんだ」

「え?」

 メンバー3人は顔を見合わせ、首を傾げた。

「どういうこと?」

 宇宙人は高らかに叫んだ。

「刮目せよ地球人ども! 我が星のアイドルと、君たちの希望との戦いの始まりだ!」

「だから事前説明をしてって!」

 3人の前に棒立ちしていたプラネットちゃんが、急にバッとポーズを取った。

「えっ、本当にここで踊るの?」

 大きく息を吸うと、プラネットちゃんは高らかに叫んだ。

「変☆身!!」

「ん? 変身?」

 アリアは首を傾げた。

 よく透き通った美しい声だったけど、セリフにちょっと違和感があった。変身とは?

 突如、プラネットちゃんの衣装が変形し、スポーティな引き締まったコスチュームに早変わりした。

「んんんん?」

 動揺する3人をよそに、プラネットちゃんは拳を構え、そして言った。

「参ります!」

「プロデュサーとアイドル揃ってマイペースだね!」

 次の瞬間、プラネットちゃんがもんのすごい腰の入った正拳突きを、アリアに放った。

 プラネットちゃんの拳が、護身用システム〝アイドルガード〟によるシールドによって、アリアの目と鼻の先で寸止めされた。

 アリアとダイヤモンド、サニーは鳩が豆鉄砲を食ったように、その場で硬直した。

「……えっ?」

 プラネットちゃんが拳を引き、再び殴りかかろうとしていた。

「ちょっとストップ! ストップ!」

 サニーが慌てて手を振った。

 ダイヤモンドもかなりパニックになっていた。

「ちょっといきなり殴りかかって来たんですけど!?」

 アリアは観覧席に向かって言った。

「ちょっとプロデュサーさん!? アイドル対決ってそういうこと!?」

 宇宙人のちょっといい感じの低い声が返って来た。

「なにを言っているんだね? これこそがアイドル対決だろう? 存分に対決できるように、遮蔽物のないバトルフィールドを用意したんだ!」

 アリアは眉間にしわを寄せた。

「バトルフィールド……?」

 ダイヤモンドは腕を組んで考えた。

「待って。あの宇宙人がアイドルにハマったきっかけって、たしか……」

「プロデュサーと言いたまえ!」

「ちょっと黙っててプロデューサー!」

「よし!」

 サニーが手をポンと叩いた。

「たしか、日本の女児向けアニメだったはず。授業で習った」

 ダイヤモンドは呟いた。

「そのアニメって?」

 アリアは唇を震わせた。

「まさか……」

 アリアはバッと観覧席を見上げた。

「プロデューサーさん! プロデューサーさんが100年前に観たアニメってなんてタイトル!?」

「んん? 聞くまでもないだろう!」

 宇宙人は答えた。

「『変身☆ヒロイン すとろんぐ♡まぐなむ』だ!」

 宇宙人の口にしたタイトルを聞き、アリアは口をわなわなとさせて頭を抱えた。

「ああああぁっ! そういうことかああああああっ!!」

 サニーがアリアのことを振り向いた。

「どうしたのアリア!?」

 アリアはサニーとダイヤモンドに早口で言った。

「『変身☆ヒロイン すとろんぐ♡まぐなむ』は、アイドルを目指す主人公が、1話Bパートで突然謎のアイテムに選ばれ、変身して超パワーで謎の敵と戦うことになる、予告詐欺&OP詐欺&次回予告詐欺で世間を震撼させた伝説的美少女アニメ!!」

 ダイヤモンドがぼそっと言った。

「さすがアニメオタク……100年前の作品も知っているとは」

「後世に伝えられるくらい凄いアニメだったってこと!」

 アリアは宇宙人を振り返り、全力で叫んだ。

「プロデューサーさん! あなたが観たのはアイドルじゃない!

「な、なにぃっ!?」

「あなたが観たのは、かなりキツめの美少女戦士アニメだッッ!!」

 宇宙人の仰天する声がステージじゅうに響き渡った。

「あれはアイドルではなかったというのか!?」

「あれは最終兵器だ! 美少女と言う名の!!」

「では私の育てたアイドルは!?」

「美少女戦士だよ!!」

「なんということだ!」

「こっちのセリフだあ! こちとら普通の女の子だっての! 変身して戦うことなんかできるか!!」

 ダイヤモンドがアリアの肩を叩いた。

「アリア、口調。これ生中継だから」

「あ、ごめん。でも、さすがにもう対決続けないよね」

 宇宙人が言った。

「しかし、対決は続行だ!」

『なんで!?』

 3人の声がハモった。

 アリアは絶叫した。

「どうして続けるのプロデューサーさんッ!?」

「その子は私のアイドルだからだ!」

「だからこれはアイドル対決じゃなくて……」

「私がアイドル対決と言ったらアイドル対決になるんだよ!」

「横暴すぎる!!」

 プラネットちゃんが拳を構えていた。

「では、参ります!」

「参ります! じゃないよ!」

「参ります!」

「マイペースか!?」

「参ります!」

「人の話聞いてよ! プロデューサーよりタチ悪いねこの子!」

 高密度エネルギーを纏ったパンチを、プラネットちゃんが放った。アリアたちはシールドごと、ステージの上を吹き飛ばされた。

「うわあっ!」

「きゃあ!」

「わっ!」

 シールドに守られたおかげで直接的ダメージはないものの、吹き飛ばされた衝撃はアリアたちの体に伝わっていた。

 サニーが涙目で言った。

「うわあん。どうするのアリア~、ダイヤぁ~」

「どうするって、あんなのに勝てるわけないじゃん」

 ダイヤモンドが汗を垂らして言った。

「でも、わたしたちが負けたら、地球は滅びるわ」

 アリアが頭を抱えた。

「そうだった。忘れてた」

「忘れないで!?」

 サニーは観覧席でペンライトを振りまくっている宇宙人を見上げた。どこをどう間違ってああなってしまったんだろう? あの宇宙人は。

「うぅ~。あの感じじゃ対決種目変えてくれなさそうだし~。どうするのぉ~」

 ダイヤモンドは険しい表情でプラネットちゃんを見た。

「あのパワー。パンチ力はトン単位よ。地球人じゃ誰でも勝てっこないわ」

 プラネットちゃんは拳から煙を放ちながら、アリアたちのもとへ歩いて来ていた。

 あんなに可愛いのに、まるで恐怖の大王か破壊神のように見えた。

「ああ……」

 アリアがガバッと立ち上がった。

「ああもう!」

 サニーとダイヤモンドは顔を上げ、アリアを見た。

「アリア?」

「どうしたのアリア?」

 アリアは近づいて来るプラネットちゃんの前に立ちはだかった。

「アリア! 無茶だよ」

「いくらバリアがあっても、敵わないよ!」

 アリアは怒鳴った。

「そんなのわかってる!」

 2人はびくっとした。

「アリア……」

「アリア、じゃあどうするの?」

 アリアは額の汗を拭い、震える手を強く握りしめた。

「決まってるでしょ……」

 アリアはヘッドマイクのスイッチをオンにした。

「わたしたちはアイドル! 歌って踊るパフォーマンスで対抗するに決まってるでしょ! それが! わたしたちのお仕事なんだから!!」

「……アリア……っ!」

「そうね……その通りだわ!」

 プラネットちゃんは首を傾げていた。サニーとダイヤモンドは立ち上がり、アリアと肩を並べてプラネットちゃんの前に立った。

 アリアとダイヤモンド、サニーの地球ナンバー1アイドルグループは、ダンスのポーズをとった。

「いくよ! 2人とも!」

「うん!」

「ええ!」

「ミュージックSTART!」

 と、アリアが叫んだ瞬間、プラネットちゃんが容赦なく殴りかかって来た。

 軽快なステップでなんとか躱した3人だったが、プラネットちゃんの拳はステージの床を粉々に粉砕した。

「威力おかしいでしょ!」

 宇宙人が説明した。

「攻撃力は『すとろんぐ♡まぐなむ』のエンジェルフォームを参考にしている!」

「それクライマックスの1番強いやつじゃん!」

 アリアは負けじとマイクを口に向けた。

「歌うよ、2人とも!」

「待って、アリア! あれ!」

 ダイヤモンドが指さした方向を見ると、プラネットちゃんが砕いた床の破片が、ステージの巨大スピーカーに突き刺さっていた。

「これじゃあ曲が流せない……!」

 アリアはヘッドマイクを外し、床に捨てた。

「アカペラで歌う!」

 宇宙人が驚いた声を上げた。

「いまどきにアカペラだと!?」

「100年跨いだ人にいまどきとか言われたくない!」

 アリアはサニーとダイヤモンドと、手をつないだ。

「2人とも。自分を信じて、自信が持てなかったら、わたしを信じて! わたしたちは地球で1番のアイドル! 最っ高のアイドルなんだから!」

 アリアは満面の笑みで言った。

「3人そろえば、わたしたちは最強だよ!!」

 サニーとダイヤモンドは次第に笑顔を取り戻し、アリアの手を強く握り返した。

「そうだね……そうだね! アリア!」

「歌いましょう! 響かせましょう! わたしたちの歌を!」

 アリアは拳を構えるプラネットちゃんにほほ笑みかけた。

「聴いて、プラネットちゃん」

「?」

「わたしたちの歌を――心を」

 3人は声を揃え、音のないステージに跳び上がった。

『みんな! 今日は楽しんでいってね! 特別ゲストは、宇宙からお越しのプラネットちゃんです!!』

 人類最高の踊り、地球最高の歌を、パフォーマンスを、3人は披露した。

 音楽の流れないステージに、3人の声が響く。

 3人の笑顔が輝き、広大なステージを広々と使って、その姿は世界中で中継を見ていたファンの心を鷲掴みにした。

 やがて、曲が流れていないはずのステージに、〝インフィニティ・ピース〟の曲が聴こえ始めた。

 曲など、要らなかったのだ。

 3人が全世界に向けて、魂を込めて歌い続けてきた歌は、みんなの心の中にずっと響き続けていたのだから!

 プラネットちゃんは、いつの間にか拳を下ろして、3人のステージをまじまじと見つめていた。

「プロデューサー……」

 プラネットちゃんは目をまん丸に見開き、呟いていた。

「どうしてでしょう……鳥肌が止まりません。体が、動きません」

 宇宙人は、観覧席のガラスにへばりついてステージを眺めていた。

「これが、本当のアイドル……この星の2200年の、トップアイドルグループ!!」

 3人はステージをやり切った。

 歌い切り、踊り切った。

 息を切らし、爽やかな汗を流す3人の顔は清々しかった。

 それを間近で見ていたプラネットちゃんは、瞳を輝かせていた。

 〝インフィニティ・ピース〟は最後のポーズをバチッと決め、リーダーの声で締めくくった。

「みんな! 今日はありがとう! また次のステージで会おうね☆」

 その言葉は、プラネットの心に強く焼き付いていた。

「次の……ステージで……」

              ♡

 プラネットちゃんが戦意喪失し、アリアたちの不戦勝という形で、地球は滅亡の危機を免れた。

 アリアたちのステージに満足すると、宇宙人はそそくさと帰っていった。

 でも、帰り際、

「今度こそ本物のアイドルを育てて、リベンジしに来てやるからな! 今度は100年後だ! 待ってろよ地球人! 行くぞ、プラネット!」

 宇宙人が乗っていった宇宙船に手を振りながら、アリアたちは半笑いしていた。

「リベンジ来るってさ」

「懲りないね」

「今度はまた時間短縮して、50年後くらいに来そうね」

 宇宙船を見送った後、サニーがアリアとダイヤモンドに訊いた。

「2人とも、今回はどうだった?」

 3人は互いに笑い合いながら、手を挙げた。

「わたしは7回!」

 と、ダイヤモンド。

「わたしは8回!」

 と、サニーが続き、最後にアリアは――

「わたしは0回! ノーミスだよ!」

 本当に決めるべきステージで決めることができる――それこそが、アリアがトップアイドルグループのリーダーである、所以である。

               ♡

 世紀末記念ワールドツアーを再開し、ライブ後の楽屋。

「どうしたの、アリア?」

「今日はわたしたちから見ても、ミスが目立ってたわよ?」

 アリアは頭を抱えて答えた。

「いや……ステージやってるあいだ、客席に見たことのある女の子がいて……」

 その時、楽屋のドアがノックされ、スタッフさんの声がした。

「インフィニティ・ピースさん、お客様です。お知り合いだとかで……」

 ドアを開け、楽屋に入って来た人物を見て、3人は仰天した。

「えっ!?」

「ちょっ!?」

「プラネットちゃん!?」

 宇宙アイドル(ほんとは美少女戦士)プラネットちゃんが、地球の普段着姿で3人の前に現れた。

「今日のステージも素敵でした! 感激しました!」

 目をキラキラと輝かせて、プラネットちゃんは熱烈に感想を述べた。

 3人は驚きを隠せなかった。

「帰ったんじゃなかったの!?」

「帰ってません」

「宇宙船に乗ってなかった?」

「乗ってません」

「いままで何してたの?」

「グッズ集めてました!」

 わぁお。

 あの宇宙人プロデューサーさん、今頃慌ててるだろうなあ。

 でも、プラネットちゃんがいれば、地球は滅ぼされないかも?

 プラネットちゃんは光に満ち満ちた明るい表情で、3人に言った。

「わたしも、インフィニティ・ピースのような素敵なアイドルになりたいです! 是非、ご指導お願いします!」

『えええっ!?』

 驚きながらもアリアは、最初に見たプラネットちゃんの暗そうな顔よりも、ずっとアイドルらしくなったいい笑顔だと、思った。

 4人グループでも、悪くないかもしれない。きっとあの宇宙人も、喜ぶだろう。

 プロデューサーになってもらうかは、別として。

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  • 誤字、脱字の修正をおこないました。(2018/07/25)

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アイドルちゃんたちのツッコミ力と、宇宙人プロデューサーさん(元? 侵略者)のボケぶりに笑いますww
なにこの状況www
意外と(失礼)本格SFな設定なのがまたwww
そして四人組かあ...( = =) トオイメ

大久保珠恵

2018/7/14

3

コメントありがとうございます!(⌒∇⌒)
ハイテンションとハイテンポを目指しました。
アイドルあまり詳しくないのですが、変身ヒロインは大好きです。(^▽^)

作者:水月

2018/7/14

4

ボケがハイスピードで楽しく読めました!
プラネットちゃんがプ○キュアの初代ブラックに見えたのは内緒です。(初代しか知らない)

アメフラシ

2018/7/15

5

コメントありがとうございます!楽しめていただけてよかったです!
まさに変身ヒロインはプ〇キュアをイメージしてましたww(;^ω^)

作者:水月

2018/7/15

6

【モノコン2018物語部門 予選通過のお知らせ】
空中歩行を可能にする「スカイヒール」を履き、空中ライブをするアイドルたち。ライブ模様は浮遊モニターで中継されるなど道具立ても見事。宇宙人Pの出現、地球外アイドルとのバトル…と、展開も予想外でした。「プラネットちゃん」の倒し方に関しては、もう少し工夫が必要な気がしますが、ビジュアルを与えたら映える物語には違いありません。

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とじる

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