4

ハッシュタグを信じるかい? 完結

ポイント
326
オススメ度
60
感情ボタン
  • 10
  • 0
  • 1
  • 0
  • 0

合計:11

SNSで何気なく使っているハッシュタグ。
「それ本当に必要?」と思うものも多いけど、不思議な出来事に繋がっているかもしれません。
もしかしたら未来にも……?

1位の表紙

2位

3位

すべてのコメントを非表示

 

 私は今、とあるSNSにハマっている。

 ネットの世界に飛び込むと色んなSNSがあって、綺麗な風景がアップされていたり、コスプレ姿をを披露していたり、日常のできごとをつぶやいてみたり……たくさんの人が思い思いに発言している。

 そんな中で私がハマっているのは、見ず知らずの人と交流ができる『@friend』というSNS。

 機能自体は他のSNSと似たり寄ったりなんだけど、「友達を作れる」というコンセプトが気に入っているのでここを好んで使っていた。

 恥ずかしながら私、友達というのがほとんどいない。

 ううん。全然いない、って言ったほうが正しいと思う。

 今まで普通に生きてきたはずだけど、作り方が下手なのか、性格が悪いのか……休日に遊べるような友達を作ることはできなかった。

 そのせいで20歳を越えて大学生になった今も、せっかくの休みなのにダラダラとSNSを眺めているというわけ。

 まあ、そんな生活は嫌いじゃないからいいんだけど……。

 今日は天気が良くてお出かけ日和だけど、ベッドに横になって『@friend』のアプリを立ち上げてみる。

 一本の木にたくさんの小鳥がパタパタと集まってくる起動画面を見るたび、ほんわかした気持ちになれるところも気に入っているポイントだ。

 そしてメインページが表示されると、フレンドがどんな発言をしているか、自分の発言にコメントが付いていないかチェックしていく。

「へえ、あの人こんな素敵な雑貨を作れるんだ」

「うわぁ、この風景素敵!私もこんなところ行ってみたいな……」

「あ、やったー!お褒めのコメントついてる!」

 そんなふうにフレンドの発言を見ていたら、メインページに見慣れない文字が表示されていることに気付いた。

――新着メッセージがあります

 慌ててタップし確認してみる。

 中身を読んでみると、それはフレンドからではなく『@friend』の運営会社からの連絡だと分かった。

 どうやら最近流行っているハッシュタグを紹介してくれているようで、「# 友達募集」とか「# 一緒にライブに行ける人」みたいなタグがずらりと並んでいた。

 確かにハッシュタグは便利だけど、そこまで必要だと思っていない。

 それに興味がないからページを閉じようとしたが、「# 異世界勇者と繋がりたい」というハッシュタグが妙に印象に残った。

「異世界……勇者?」

 

 今、こういう設定のライトノベルが流行っていることは知っている。

 でも、こんなSNSでどうして?

 関連性のなさを疑問に思いながらも、面白そうなのでそのハッシュタグを使ってみることにした。

 飼っている猫がボールでじゃれている画像と、【この猫、可愛いと思いませんか?】という一言。そして「# 異世界勇者と繋がりたい」というハッシュタグを添えて。

「異世界なんてないし、こんなタグ付けたって意味ないもんね」

 そう思いながら投稿したけど、思ったとおりリアクションなんかなかった。

 その後に投稿したご飯の画像には、【今日のご飯も美味しそう】なんてコメントはあったけど。

【はじめまして、実は異世界から投稿してます。そちらの世界の猫は可愛いですね!】

 そんなコメントが付いたのは、画像をアップしてから3日目のことだった。 

 驚いてその相手のメインページを覗いてみると、甲冑を着た男性の姿が……。

 そしてプロフィールを見て、私と同年代で勇者をしていることが分かった。

 どうして分かったかって? 

 だって、ハンドルネームも職業も「勇者」と書いてあったんだもの。

「勇者、ねぇ。こんな中二病全開の人、本当にいるんだ」

 私は鼻で笑いながらも、【ありがとうございます。勇者さんは猫がお好きなんですか?】と返信をしてしまった。

 すると少し間を置いて【こっちにはこんな可愛い猫がいないので……ブサイクばっかりですよ、見ます?】という返事がやって来た。

 そこに添えられていたのは、確かにお世辞にも可愛いとは言えない猫の画像だった。

 鼻先が潰れていて、耳もぺったんこ。まるでパグみたいな……猫の画像。

 でもそれが本当に異世界の猫なのか、確かめる術はどこにもない。

 一つだけ言えるのは、私たちはその猫の画像がきっかけでフレンドになり、毎日コメントしあう仲になったということ。

 私たちは毎日のように会話を続けた。

 お互いに何かしらの画像を投稿するから、その日の日記のような一言も添えてアップする。

 私は【今日の講義は退屈だった】とか【帰りに食べたケーキが美味しかった】という普通のもの。

 それに対して勇者は【魔物が手強くて大変だ】や【新しい剣が欲しい】と……まるでRPGの中の人みたいなことばかり。

 そんな一言に対し、私は【剣の素材の推しってあるの?てつのつるぎとか?】など真面目にコメントをつけていく。

 他の人から見たらおかしなやりとりだろうけど、これが結構面白くて、アプリを起動する回数が何倍にも増えていた。

 そしてある日、それはやってきた。

――勇者さん から新着メッセージがあります

 いつもと違う連絡に戸惑いながら、メッセージを開封する。

【こんにちは。いきなりメッセージ送っちゃってごめんね。

 タイムラインで話すと他の人に見られるのが恥ずかしくてさ……。

 いきなりこんなこと言ったら嫌われるかもしれないけど、機会があったら会いたいな、なんて思ってます。

 なんとなくだけど、僕ら、いい友達になれる気がしない?

 会いたいって思ったらでいいからさ、そのときは連絡ください。】

 それを見た瞬間、私の鼓動は早鐘のようにかき鳴らされた。

 こんな経験初めてだったから。

 「会いたい」なんて言われて戸惑ったから。

 そしてなにより、嬉しかったから。

 

 でも、私はなかなか返事を送ることができなかった。

 内心、「本当に勇者が異世界の住人だったらどう会うの?」とも思っていたし、異世界の存在を信じていないこともあったけど、何より勇者の言葉を信じて裏切られるのが怖かった。

 そういうのを今まで何度も経験しているため、私は人を信じるのが怖いのだ。

 だからといってこのメッセージを無視するのも嫌なので、

【そうですね。会えたら楽しい時間が過ごせるかもしれないですね!】

と、無難な返事をしてからアプリをそっと閉じてしまった。

 勇者からの返信がないまま、朝を迎えた。

 なんとなく、いつもより目覚めが気怠かったのはきっと気のせいだと思う。

 あくびをしながら大学行きのバス停に着くと、いつも同じバスに乗る男性のすぐ後ろに並ぶことになった。

 スラリとした体型は今風で、サラサラの黒髪とプラスチックの黒縁メガネがよく似合う青年だ。

 行き先は同じ大学だけど、講義が被ったり校内で会ったことはないから学年や学部が違うんだと思う。

 無尽蔵に出てくるあくびを噛み殺しながらその男性のほうに目をやると、操作しているスマホの画面がチラリと見えた。

 そこには『@friend』のメインページが表示されていて、プロフィールのアイコンはどこか見覚えが……。

 

 

 講義中も、ひとりぼっちで過ごす休憩時間もその画面が気になって仕方がなかった。

 何度も「もしかしたら、あの人が……?」と考えたけど、答えなんて出るわけもない。

 

 そして私の中で出た結論は「考えるのはよそう」ということ。

 このまま『@friend』で交流を続けていれば、いずれ正体は分かるはず。

 それに、「# 異世界勇者と繋がりたい」なんて微塵も思っていなかったから、勇者が本物だろうが偽物だろうがどうでもよかった。

 大事にしたかったのは、フレンドである勇者との関係だから。

 その人がバス停で会うあの人だと分かったら、笑顔で「おはよう!」と声をかければいいし、本当に異世界の勇者だったら……初めての友達が異世界人なんて素敵じゃない?

 どちらにしたって、新しい友達ができるのは確実なんだから。

 さあ、今日はどんな話をしよう?

 口角をニッと持ち上げながら、私はアプリを立ち上げた。

 画面の中では今日も、小鳥たちが楽しそうに羽ばたいている。

修正履歴

  • 誤字、脱字の修正をおこないました。(2018/10/02)

修正履歴を見る

  • 10拍手
  • 0笑い
  • 1
  • 0怖い
  • 0惚れた

6

湊あむーる様
こちらでも、ありがとうございますと言わせてください(●´ω`●)

作者:文月八千代

2018/7/20

7

可愛らしいお話ですね!タイトルとのギャップが特に素敵でした!!

にう

2018/8/1

8

にう様
コメントありがとうございます(*´∀`*)
か、可愛らしい話!
そう言っていただけると本当に嬉しいです。
かすかな恋心を感じ取っていただければ……。

作者:文月八千代

2018/8/1

9

文月八千代様
はじめまして、僭越ながら表紙の投稿を失礼致します
ブサ猫ちゃんのくだりが可愛くて、読むたびほっこりさせて頂いてます
素敵な物語をありがとうございます´⌣`*

amai

2018/9/12

10

amai様
はじめまして、素敵な表紙をありがとうございます(*´∀`*)
ブルーがとっても爽やかで、異世界感満載の雰囲気がとっても素敵!
ちなみに猫のくだりは、私がパグと猫を見間違えたところからきています(´・ω・`)
本当にありがとうございました♪

作者:文月八千代

2018/9/12

コメントを書く

とじる

オススメポイント 60

つづけて SNS でシェアしてオススメシポイントをゲットしましょう。

とじる

このページの内容について報告する

送信中

送信しました

文字数の上限を超えています。