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リア充大ギャンブル計画 完結

リア充への階段

更新:2017/11/7

佐伯春人

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少年はバラ色に輝く高校生活を夢見ていた。
しかし現実は陰キャラグループの窓際学生。
そんな俺が学校内で一世一代の大ギャンブルに挑戦する物語。

10分で読めるよ。

1位の表紙

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高校生になれば勝手に彼女ができると思っていた。

だがすでに高3の夏、俺は未だに女の子と手を繋いだこともない。そう童貞だ。

ルックスが極めて悪いわけではない。むしろ標準的な顔だと思う。しかし女子と話すといい人止まりで終わってしまう。会話が続かないのだ。これでは男として駄目だ!!

「渡瀬~、昨日の魔法少女・セリカ見た?ちょー感動しない?」

俺のうしろの席のメガネで小太りの大平が休み時間に話しかけてくる。

「感動しない」

きっぱり言い放つ。悪いな大平よ。今日、俺は陰キャラグループから退会する。

「なんだよ、つれないなー」

スクールカーストはやはり俺の通う学校にもあり、うちの学校では他の追随を許さない圧倒的トップに君臨する天使がいる。

三年間同じクラスの綾崎真菜だ。黒髪の長いストレートに人形のような整った顔、ワイシャツからさり気無く見えるハートのネックレス、制服の着こなしもオシャレでリア充としか形容できないほどだった。

日々クラスで様子を見ていると本人に女子の中でトップという自覚はない。

それをむしろ疎ましく思っているようにすら見える。

そう俺は今から綾崎さんに声をかける。

綾崎さんと話したのは高1の冬、俺が落としたシャーペンを取ってくれたときに交わしたほんの一言。

勝率なんて限りなくゼロに等しいと思うだろ?

だがしかし……見てろ。俺のバラ色に輝く高校生活のために一世一代のギャンブルにでる。

失敗すれば、クラスだけでない。マンモス校だけあってAからF組のすべての人間に笑いものにされるだろう。

―――放課後

偶然を装い、綾崎さんが教室から出ると同時に俺も下駄箱に向かう。

下駄箱のある出入り口にはラッキーなことに俺と綾崎さんしかいない。

タイミングだ、タイミング。

カチャ。

床にアニメキャラのストラップが落ちる。

「あ、マキシマ少尉」ポツリと綾崎さんが床に落ちた、そのストラップを見て言った。

キタ――――――――――!!!俺はその瞬間、心の中でガッツポーズをした。

「え、綾崎さん、戦艦アーミーズ知ってるの?」俺はきょどらないよう気をつけながら話しかける。

「うん。弟が家で見てて、一緒に見てたらハマっちゃたんだよね」

少し控えめだけど笑いながら話す綾崎さんはまさにこの世の天使だった。大平どもと戦艦アーミーズの話をしている時、綾崎さんがこっちを見ていたのを俺は見逃していなかった!!

……よし。いくぞ俺。

「ねぇ、もしよかったらなんだけどさ、この後ゲーセン行かない?」

「え?」

綾崎さんに一瞬の沈黙が生まれる。しまった!いや、しまったのか?いや、しまってない!押せ、押すんだ、俺!!

「いや、前の教室でさ、綾崎さんたちがUFOキャッチャーやって人形とったって話してたじゃん?戦艦アーミーズのフィギュア取りたいんだけど、俺、下手でさ。アドバイスもらえないかなーなんて…」

ああ、俺取り乱してるし。恥ずかしいし、なんか耳が熱いし。

「いいよ。どこのゲーセン行くの?」

「へ?」

――――――――――――――――ゲームセンター・スポッタ

まじか。これは現実か?

俺の隣にいま、綾崎さんがいる。そして一緒にゲームセンターに来ている!!

奇跡だ。傍から見たらこれカップルに見えない?見えるよね!!うっしゃ――!!

「あ、これだ」俺と綾崎さんは戦艦アーミーズのUFOキャッチャーの前に来た。

「渡瀬くん、何取りたいの?」

「これ。イカルガ大佐」

何気なく発した言葉が天国のようなこの場に静寂を生んだ。

「イカルガ大佐。私、嫌いなんだよね」ムスッとした表情で綾崎さんはイカルガ大佐のフィギュアを見つめる。

「え?なんで……?」

「だってさ、この人、ユウマの幼馴染殺したじゃん。アニメで見てた時サイテーって思った」

「いや、違うんだよ。主人公の幼馴染のクロトは政府のスパイでさ、イカルガ大佐はユウマに恨まれるのを承知で殺したんだって」

イカルガ大佐は戦艦アーミーズで俺が一番好きなキャラだった。相手が綾崎さんだというのについ熱くなってしまう。

「でもユウマにとっては大事な親友だったじゃん。だいたいイカルガ大佐も正直にユウマに言えばいいのに、『罪は私がすべて背負う』とか言っちゃって。格好つけすぎ」

よく見てるな、この子……。

「9巻で大佐は死ぬんだよ。最後にユウマに謝って」

「え~!!大佐死んじゃうの!?それもなー……、帰ったら弟に漫画借りよ……」

夢のような時間はあっという間に終わり翌日、学校―――――――――――

「はー、ねむ……」昨日は中々寝付けなかった。まぁ嬉しさのあまりだろうけど。

どうせ、あれは昨日だけ。今日からはまた……。

机でボッーとしていると綾崎さんが教室に入ってきた。入るや否や、なにか様子がおかしい。目元が少し赤くなっている気がする。

そんな綾崎さんを目で追っていると、なぜか俺のほう目がけて一直線で歩いてくる。

「私、勘違いしてた」綾崎さんが低いトーンで俺に話しかける。

その光景を見て、ざわめきが起こる。登校してるすべてのクラスメイトの視線がこっちに集まっているように感じた。

「へ?」

「大佐……すごい格好よかった。一晩中、泣いた……」

「え?ああ!そっか、読んだんだ。原作」

「今日、放課後時間ある?」

「あるけど?」

「今日こそやるよ、渡瀬くん!」

そういってガッツポーズとすると綾崎さんは自分の席に着いた。

まじか…。

「ぐぇ!!」

うしろから肉厚な腕が俺の首を挟む。

「おい渡瀬、何事なんだ!」

「はい?」

「なんでお前が綾崎さんと会話してるんだ!!しかも格好いいって!!うらやま……」

大佐が、って言葉が抜けてますが。

ああ、でも……そっか。

もうリア充になりたいとかじゃない。

綾崎さんは俺が思い描いてた理想とはちょっと違って、意外とよく笑うし、話にも乗ってくるし、まじになると怖いし、少し腫れた目もなんだか可愛かった。

勝手に壁作って話せない側の人間って決めつけていたのは俺のほうだったんだ。

そうだ、俺は……。

もっと話したいんだ、綾崎さんと。

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