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TENOHIRA IDOLS! ~笑顔を教えてくれた小さなアイドル~ 完結

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大人気AIアイドル育成アプリ「TENOHIRA IDOLS!」をプレイする一人の少女と、彼女のAIアイドル「アミ」の小さなお話…。

1位の表紙

目次

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夏色のカラフルキャンディガールと雪おねえちゃん

ー話しかけるコマンドを実行しますか?-

ーはいー

ピロンッ ピッ ピッ ピッ

「ふわぁ~~…もう朝かぁ。」 

「おはよう、アミ!」

「あっ!おはようマスター!今日も一日、よろしくね!」

「うん!ねぇアミ、今日はどのトレーニングしよっか?」

「そうね~、今日はダンスを頑張りたい気分かも!マスター、応援してくれる?」

「もちろんだよ、私、アミのダンス大好きだもん!」

「ホント!?ありがとうマスター!私、いーっぱい頑張るね!」

ーアミのモチベーションがアップしました!ー

 日曜日の朝早く、一人の少女がベッドに寝転がりながらスマートフォンを弄っている。小さな指ですいすいと文字をフリック入力しているのは、画面に映っている元気いっぱいな雰囲気のするAIへの会話文だ。

 少女が夢中になっているのは、今や知らない人はいないであろう大人気AIアイドル育成アプリの「TENOHIRA IDOLS!」だ。このアプリではプレイヤー達はAIアイドル達からは「マスター」と呼ばれる存在となり、自分だけのAIアイドルを育成していくというのがこのアプリの主な目的だ。

 AIアイドル達はマスターとの会話で言葉やマスターの好みなどを学習したり、仮想世界での外出ではショッピングに出かけたり、フレンドのAIアイドル達とミニライブを行なったりとアイドルとしての経験を積んでいく。

 そう、このアプリはただアイドルを育てるだけではなく、人とAIとの絆を築くことができるアプリでもあるのだ。そしてこの少女もまた、元気いっぱいのアミとの絆をじっくりと築いているところなのである。

 画面に映るアミと名付けられているAIアイドルの外見は、鮮やかな金色が眩しいストレートボブに小麦色の肌、ぱっちりとした青い海のような瞳には黒のアイライナーがキャットラインを描いている。ゴールドとブラウンのアイシャドウにオレンジのリップがぷるっとした唇を演出している。

 両耳にはポップな色が特徴的なアイスクリームのピアス。白い短めのTシャツに合わせ、足首が見えるくらいの丈のライトブルーのダメージジーンズを着こなしている。Tシャツのプリント黄色の大小異なる星の柄は、アミの活発な性格を表現しているといってもいいだろう。

 Tシャツの袖から見える左腕には小麦色の肌によく似合う南国風の花がモチーフになっているブレスレットがキラキラと輝いている。

 両手と両足の爪はレインボー色のマーブルネイルに仕上げられ、所々に小粒のラインストーンがワンポイントとしてデコレーションされており、少しヒールが高めのシンプルなレザーサンダルを合わせて上手にファッションの足し算と引き算をこなしている。

 まさしく夏の雰囲気がぴったりなコーディネートを身にまとうアミ、そんな彼女のコーディネートにタイトルをつけるならば、間違いなく「夏色のカラフルキャンディガール!」という表現が似合うのではないだろうか。アミのその笑顔はまさに太陽のように明るく、マスターである少女に弾けんばかりの笑顔を向けてマスターとの会話を楽しんでいた。

 二人がそうして会話を楽しんでいると、誰かが部屋のドアを数回ノックしてからそっと部屋の中に入って来る。

「小雪ちゃーん、おはようございまーす。」

「あ…おはよう、ございます…。」

「あ、アミちゃんとお喋りしてたのかな?」

「うん…。」

「そっかー。ごめんだけどちょっとだけスマホをお休みしてくれるかな?今朝の体温計ろうね。」

「はい…。」

 名前を呼ばれた少女は、白い服を着た女性から体温計を受け取り、慣れた手つきでそれを脇にそっと挟んでアラームが鳴るのを待った。その間も彼女の視線は、ベッドに取り付けられたテーブルの上に置いたスマートフォンの画面を見つめていた…。

 小雪(こゆき)、それがアミのマスターの名前。彼女が今いる場所は…とある病院の小児科の病棟だ。

 ストレートロングの黒髪に、俯き気味の少し切れ長の瞳、雪のように真っ白な肌にはほんの少しだけ頬に赤みはあるが、少しやせ気味の体は健康的とは言えないだろう。

 彼女はあまり体が丈夫ではなく、食も細いため成長期に必要な栄養を十分に摂取できずにいた。そのため彼女は長期間の入院の間に行う食事療法や点滴などで栄養を補いながら、一日一日を懸命に生きているのだ。

 

 小雪は同じ病棟で入院生活を送っている他の子供達から「雪おねえちゃん」と呼ばれていた。彼女の雪のように真っ白な肌が、子供達の目には本当の雪のように白く見えるからであった。

 普段からあまり笑わない彼女の大人びた雰囲気は、他の入院している同年代や年下の子供達から見ると少し憧れであり、自分達からは少し離れた場所にいるような存在と思わせていた。小雪は他の子供達と親しくなりたいと思いつつも、なかなか自分から声をかけることが出来ずにおり、いつも賑やかな談話室の声を病室の中から聞きながら、アミとの会話を文字入力で楽しむ毎日を過ごしているのであった。

 

 

 

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すごいですね!!わずか一日でここまでお書きになられるとは!!カラフルキャンディーガールのアミちゃんもとても魅力的ですね。かわいい女の子のアイドルで良かった!男性イケメンアイドルだと読んでいるボクも感情移入できそうになかった笑……物語ですが、文章に弾みがあってとてもイイですね、続きを気にさせるリズムがあります。やはり、今回のアイドルアプリのアイデアは単なる説明文より、こういうイキイキした物語が正解→

湊あむーる

2018/7/18

2

→だと思います(^^♪続きが楽しみです!!

湊あむーる

2018/7/18

3

湊あむーる様、コメントありがとうございます!
コメントで助言を頂いた後、話を繋げるならどうすればいいか考えまして…なんとかこうして形に出来ました…!続きも頑張って仕上げていきたいです\\\\ ٩( 'ω' )و ////

作者:夢猫

2018/7/18

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とじる

笑顔の花の子

 体温計のアラームが鳴り、小雪はそれを手に取って看護師に手渡した。看護師は体温を確認すると小雪の個別カルテに今日の日付のマスに数字を書き込んだ。昨日の体温と比べると、今日は調子がいい時の体温のようだ。

 このところ小雪の体調は安定しており、あとは少しずつ食事の量を増やし、少しでも食べ物から摂取できる栄養を体に蓄えていけば一時帰宅も可能になるようだ。あとは本人の心がけ次第だが、小雪の食事量はさほど変化はなかった。

 看護師は聴診器で心臓の音や呼吸に異変がないかを確認した。異変がないことが確認できると、看護師は笑顔で小雪に話しかける。

「小雪ちゃん、もし今日体の調子がいいなら談話室に遊びに行ってみない?他の子達とお話するのも楽しいよ。」

「……いい、です。お部屋にいます…。」

「…そっか。うん、わかった。もし気持ちが変わったら、声かけてね!」

「……はい。」

「じゃあ、もう少ししたら朝ごはん持ってくるから待っててね。」

 看護師は小雪の意見を尊重し、それ以上は何も言わずに病室を後にした。看護師が出て行くと小雪はすぐにスマートフォンに手を伸ばし、アミとの交流を再開した。

 画面の中のアミはマイルームで軽いウォーミングアップのダンスをしていた。小雪はトレーニングモードのコマンドをタップし、アミが頑張りたいと言っていたダンスのトレーニングを開始した。

 するとトレーニング前にアミが小雪にこう言った。

「マスター!私、皆が笑顔になるアイドルになるために頑張るね!応援よろしく!」

 そしてアミはマイルームから仮想世界にあるトレーニングジムに出発し、マイルームには「ただいまトレーニング中です」という文字が表示された。

 小雪はアミのある言葉が気になった。それは彼女自身も気にしているものでもあった。

ー皆が笑顔になるアイドルー 

 小雪は普段からあまり笑わない…いや、笑えないのだ。小学校に上がった頃から入退院を繰り返していたのもあり、本当に親しい友人もあまりおらず、強い孤独感を覚えてしまった彼女は、一時は生きることを諦めたくなったこともあった。しかし自ら死を選ぶということも出来ずに今に至っている。

 家族がお見舞いに来てくれる時だけは、ほんの少しだけ笑うことを心掛けてはいるものの、どこかぎこちなさを感じさせる笑顔になっているということは、小雪にも分かっていた。

 どうすれば、こんな自分でも笑顔になれるだろうか。どうすれば、他の子達のように笑えるのだろうかと考えつつも、一日の終わりが近づく頃にはまた今日も出来なかったと後悔することが殆どであった…。

(笑顔…どうしたら、作れるんだろう)

 TVを見ていても、漫画を読んでいても、自分の顔はぴくりとも動いていない気がしてならなかった。心から感情は出ているはずなのに、自分の表情には感情がない…そう、氷のように表情がピクリとも動かないと本人はそう感じている。

 そのせいか、小雪はアミの笑顔が本当に羨ましいと思っている。アミの弾けるような笑顔と笑い声は、小雪にとって憧れの存在でもある。

(…アミがトレーニングから戻ってきたら、アミに笑顔の作り方を教えてもらおうかな…?…ちゃんと答えてくれるといいけれど…)

 そうして色々と考え事をしていると、病室に小さな訪問者がやって来た。可愛いオレンジの花柄のパジャマに茶色のサラサラとしたおかっぱ頭の女の子、皆から花ちゃんと呼ばれている幼稚園の年少の少女だ。

 花はニコニコと笑顔を浮かべながら小雪のベッドのそばに近づいてきた。花の笑顔を見て、小雪は少しだけ口元に笑みを浮かべてみせた。

「雪おねえちゃん、おはよう!」

「花ちゃん、おはよう…。」

「花ね、今日ね、日曜日なのに頑張って早起きしたの!えらい?」

「そっか…。うん、花ちゃん偉いね…。」

「わーい!雪おねえちゃんにほめられた~♪」

 小雪に褒められて嬉しくなったのか、花はその場でくるくるっと回ってみせ、小雪もいつものように無邪気な彼女を見て心が和むのであった。

 見た目はそう病弱には見えない花だが、彼女は生まれつき心臓が弱く、今度の水曜日に大きな手術を受けることになっているのだ。この手術が上手くいけば花の体調も少しずつ改善されていくと、小雪は看護師の1人からそう話を聞いていた。

 しかし花は決して弱々しい姿を見せなかった。誰に対しても人懐こく話しかけ、入院したその日のうちに同室の女の子と仲良くなってしまうくらいに笑顔を絶やさない少女であった。小雪と初めて出会った時も花はすぐに彼女に懐き、それ以来談話室で他の子達と遊んでいても、必ず1日に1度は彼女の所に顔を見せにやってくるのだ。

 人付き合いが少し苦手な小雪も花が相手だと緊張しないのか、彼女が病室に遊びに来た時は絵本を貸してあげたり、時々「TENOHIRA IDOLS!」を遊ばせてあげたりと、お姉さんのように彼女に接するのであった。

 花はスマートフォンを持っていないのでこのアプリの事は知らなかったが、ライブステージモードで歌ったり踊ったりするアミの姿を見るのが大好きで、イヤホンで音楽を聴いていると自然と体を揺らしたり、アミの口調を真似してみせたりと、小雪と花が楽しそうにしているのを見た看護師たちは本当の姉妹のようだとほおを緩ませるのであった…。

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湊あむーる様、コメントありがとうございます!
人付き合いが苦手な小雪にとって、花ちゃんの存在はひそかな支えになっていると思います。実際小さな子の無垢な笑顔って、凄く胸に刺さるものがあります…!
ここからどんなふうにお話を書いていこうか、頑張って完結できるよう筆を進めたいと思います( ^ω^ )!

作者:夢猫

2018/7/20

3

【モノコン2018物語部門 予選通過のお知らせ】「TENOHIRA IDOLS!」なるAIアイドル育成アプリの魅力紹介からはじまるという発想がとても面白いです。アプリの起動後は学習のために数時間は音を聞かせる、覚える言葉のNGワードが設定できるなど細かい設定も◎。さらにアプリの説明に加えてストーリーが追加されるという構成の上手さも秀逸。AIアイドルとユーザーの更なるストーリーを楽しみにしています。

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モノコン2018予選選考スタッフC様、コメントありがとうございます!
続きの物語も、読んでくださる方が楽しんで貰える物語にできるよう頑張ります!

作者:夢猫

2018/7/25

5

夢猫さん、作品の予選通過おめでとうございます(^^♪!!素敵な物語を育くまれた結果の賜物ですね(^^♪今後の更新も期待しています!!作品化目指しましょう!!

湊あむーる

2018/7/25

6

湊あむーる様、コメントありがとうございます!
ありがとうございます、めちゃくちゃ嬉しいです!
昨日少し続きを書いていたところでして、本当に驚きました…!

作者:夢猫

2018/7/25

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とじる

花の笑顔の秘密

 小雪が朝食を食べてから歯磨きや洗顔を終え、新しいパジャマなどに着替え終わってから暫く経った頃、小雪は母親が持ってきてくれた学習プリントと筆箱をサイドテーブルの収納スペースから取り出し、ベッドに取り付けられているテーブルにそれらを並べると早速勉強を始めた。

 病室の外からは看護師たちが慌ただしく歩いている足音、別の病室から聞こえてくる誰かがぐずる泣き声や楽しそうな笑い声が聞こえてくるが、小雪の部屋からはカリカリとシャープペンシルを動かす小さな音、プリント同士が擦れて聞こえるカサカサとした音だけであった。

 しばらくプリントを黙々とこなしていた小雪が、少し休憩するためにスマートフォンに手を伸ばし、トレーニングから戻ってきたアミと会話をしようと思ったその時、病室のドアがそっと開かれた。

 そこにいたのは、小雪の母親よりも若くて可愛らしい雰囲気の女性が立っていた。小雪はその女性を知っている、花の母親だ。花と知り合ってからすぐに彼女とも知り合い、小雪の事も気にかけてくれる優しい女性である。

 花の母親はぺこりと頭を下げ、少し小さな声で話しかけてきた。

「こんにちは小雪ちゃん。今、大丈夫かしら…?」

「…はい。」

「ありがとう、お邪魔しますね。」

 花の母親はドアを閉めてから小雪のいるベッドの傍まで近寄り、備え付けのパイプ椅子にそっと腰かけた。髪の毛をお団子にまとめ、派手過ぎずカジュアルな雰囲気の動きやすい服装を着こなした彼女の顔は、毎日花の世話をしに病院に通っているせいか、少し疲れているような顔をしていた。

 小雪はテーブルの上のプリントをそっと片づけると、スマートフォンにアプリからの通知が画面に表示された。表示された画面には「アミがダンスのトレーニングで絶好調!ダンスのパラメータが大幅UP!やったね!」というものであった。それを見た花の母親はあっと言って小雪に尋ねてきた。

「アミちゃんって、もしかして…このアプリのキャラクター…なのかしら?」

「え?…あ、はい。あの、『TENOHIRA IDOLS!』っていうアプリの…AIアイドルです…。」

「そう、この子が…。どんな子か、見せてもらってもいい?」

「はい…えっと…この子です…。」

 小雪はアミの姿を花の母親に見せた。画面の中のアミは身だしなみを整えているような動きをしている。花の母親は何か納得したような顔になり、小雪にこう言った。

「…花ね、ここに来てから最初の頃はすっごく寂しがっていたの。ママとパパがいないから、夜寝るのが怖くて寂しいって…。そりゃあそうよね、だってまだ幼稚園の年少さんだもの…。」

 そう、いつもニコニコ笑顔な花だって本当は大好きな両親と一緒に過ごしたいと願い、そのためにこの病院に入院し、少しでも彼女の心臓の機能が良くなるようにと、あの小さな体で頑張って闘病しているのだ。

 しかし幼い彼女にとって両親のいない病院の日々は、まるで自分だけがそこに取り残されてしまったのではないかと言う不安を覚えるものであっただろう。その気持ちは小雪にもよくわかるものであった。病院での入院生活は、子供たちにとっては家族のいない孤独な世界での生活をしているようなものであるからだ。

 花の母親はその時の事を思い出したのか、少しだけ寂しげな目をするが話の続きをしようと口を動かした。

「でもね、ある日あの子が誰かの似顔絵を描いていたの。黄色の髪の女の子のアミちゃんっていう女の子の絵を。…この病棟には黄色の明るい髪の毛の子なんていないはず、もしかしたら花の空想のお友達なのかしらって、最初は思ったの。でも、花はアミちゃんは雪お姉ちゃんといつも一緒で、雪お姉ちゃんはアミちゃんとお話してる時はいつもニコニコしてるのって、教えてくれたの。」

「……!」

「アミちゃんは元気いっぱいでいつもニコニコしてて、ダンスもお歌もとっても上手なんだって。それにね、あの子…小雪ちゃんの事も言ってたの。」

「…え?わ、私の…事ですか?」

「えぇ。雪お姉ちゃんは白雪姫みたいにお顔が白くて綺麗で、でも笑うととっても可愛いお姉ちゃんだって。あの子ったら、アミちゃんと小雪ちゃんみたいな女の子になりたいって言ってたのよ。」

 意外な事実だった。小雪は自分でも知らないうちに笑顔を作っていたのだ。アミと会話をしている時の自分の顔はどんな表情をしているかなんて、彼女は興味もなかったし、知る由もなかったのだから。

 そして自分とアミが小さな花の憧れの存在になっていただなんてと、小雪は少しだけドキッと鼓動が跳ねるのを感じた。

 花の母親によると、花はその後寂しがったり母親にべったりと甘えすぎることが徐々に少なくなり、他の病室の子供達や顔見知りの看護師達とすっかり仲良くなったという。そして母親と二人で話をするときは、必ず小雪とアミの事を話して聞かせてくれるのだと言った。花は小雪とアミの事も自分にとって大切な友達という認識を持っているのだ。

 それを聞いた小雪は、胸の奥から自分の事を友達と思ってくれる存在がこんな近くにいたのだという驚きと喜びの感情が、みるみるうちに溢れてくるのを感じた。

 本当は寂しくて堪らなかった花の心を、てのひらサイズのアイドルのアミは知らないうちに救っていたのだ。そしてアミのマスターである小雪の存在は、花にとって憧れのお姉さんで、大切な友達の一人になっていた事を知り、小雪の瞳から嬉し涙がほろり、ほろりと零れ落ちていった。

「こ、小雪ちゃん?!大丈夫?無理させちゃったかしら…?」

「い、いえ…大丈夫です…。あの、その、すごく…嬉しくって…。驚かせて、ごめんなさい…。」

 小雪はボックスティッシュからティッシュを一枚取り、溢れる涙を押さえた。そして自分も入院生活が長く友達と言える存在が少ない事や、花が毎日のように自分の病室に顔を見せに来てくれること、そして二人で一緒に『TENOHIRA IDOLS!』を遊んだりしていることを、花の母親に話して聞かせた。

「そうだったのね…。…小雪ちゃんも、アミちゃんの事が大好きなのがよくわかるわ。だって、アミちゃんの事を話している時の小雪ちゃん、花と同じ笑顔になっているもの。」

「…え?本当…ですか?」

「えぇ。二人とも笑顔がよく似てて…なんだか本当の姉妹みたいね。」

 自分と花の笑顔がよく似ている…そう言われた小雪は、自分だってちゃんと笑顔になれるんだ、自分もいつの間にかアミに救われていたという事を知った。

(私も花ちゃんも、アミに教えてもらっていたんだ。笑顔は作るんじゃなくて、自然に出来るものなんだって…。私も…私もアミみたいに、誰かを笑顔に出来るかな…?)

 この時、小雪はある小さな計画を立てた。そしてその事を花の母親に小さな声でひそひそと話して聞かせると、花の母親は喜んで協力すると約束してくれた。そしてありがとう、と礼の言葉を彼女に伝えるのであった。

 小雪はどんな計画を思いついたのだろうか。

 その詳細は、花の心臓の手術が終わってから数日後に明らかとなるのであった…。

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  • 内容に影響のない範囲で、一部表現の変更や追記をおこないました。(2018/07/29)
  • 内容に影響のない範囲で、一部表現の変更や追記をおこないました。(2018/07/28)

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花ちゃんの心情を間接的にお母さんが語るという手法がとてもイイですね。また、三人称のナレーションの語り口が引き込まれます(^_^)今後の展開に期待します!

湊あむーる

2018/7/25

2

湊あむーる様、コメントありがとうございます!
母親だから知っている花ちゃんの本当の姿や気持ち、そして小雪とアミへの憧れと二人は彼女にとって心の支えにもなっていることを、小雪に伝えられたらと思い、こういった展開にしてみました!
次の物語も頑張って筆を進めていきますー!

作者:夢猫

2018/7/26

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とじる

小さなあの子からのプレゼント

 長い長い夢を見ていた花は、ゆっくりとまぶたを開けた。まだ視界はぼんやりとしているが、自分の頭の上の景色が自分がいつもいる病室の白い天井であることに気付いた。

 あの瞬間から、どれくらいの時間が流れたのだろうか?ベッドごと運ばれていく自分から目を離すまいと歩く大好きな母親の顔と、頑張ってね!と応援の言葉をかけてくれた看護師たちや友達の顔が、大きなエレベーターの扉の向こうで消えてしまったあの瞬間から。

 今から自分の身に何が起こるのかは、何度も母親にも主治医の先生にも聞いていたけれど、それでも花にとってはお化け屋敷に一人で行かされるよりも怖いものであったが、自分の口にマスクをあてられると、やがてそれは花に怖い現実を見せまいと優しい夢の中へと引きずり、花の目が覚めるまでの壮絶な手術の時間を彼女の記憶に残さないようにしたのであった。

 目を覚ました花の意識は徐々にはっきりとし始め、小さな声で「ママ…」と呟いた。するとベッドの傍で椅子に腰かけたままうとうととしていた花の母親がはっと目を覚まし、花の顔を覗き込むと…嬉しそうに微笑みながら涙を流し、よく頑張ったねと労いの言葉を何度もかけた。

 それからしばらくすると主治医が病室を訪れた。主治医によると手術はとても順調に進められたことや花の心臓の状態も良好であり、花の体調次第では少し早めに退院も可能だろうという事であった。

 朗報を聞いた花の母親は主治医に何度も礼の言葉を告げて頭を下げた。主治医も「花ちゃんも本当によく頑張ったね、お家に帰れるまでもうちょっと頑張ろうね。先生も看護師さん達も皆応援するからね。」と、まだ少し眠たそうな花に優しく声をかけてから病室を静かに出ていった。

「花ちゃん、よかったね。もうちょっと病院にお泊りしなくちゃいけないけど、元気になったらいっぱいお外で遊べるからね。」

「うん…。ままぁ…はな、えらい…?」

「勿論だよ、花ちゃん頑張ったもん…いっぱいいっぱい抱っこしてあげたい…!」

「ままぁ…ありがとぉ…。」

 花はまた少し眠くなってしまうが、口元はいつもの彼女の笑顔の形になっていた。それを見た花の母親は、幼い娘のその笑顔にまた涙を流し、娘のこれからの明るい未来を強く願うのであった。

 手術から数日後、花の腕から痛み止めの点滴の針が外れるとようやくベッドの上から動いてもいいという自由を得ることが出来た花は、久しぶりに小雪の病室へ行きたいと母親にねだった。

 すると花の母親はその言葉を待っていたように頷き、ちょっと待っててねと花に言ってから病室を出てどこかへ向かっていった。

 数分後、病室のドアが開くと…なんと車椅子に乗った小雪と車椅子を押す花の母親の姿があった。小雪の手には彼女のスマートフォンとイヤホンコードが握られており、花の顔を見た小雪の顔は前よりもほんの少しだけ血色が良く見えた。

 今までならば花の方から小雪の病室に訪れていたが、小雪の方から彼女の病室にやってくるのは実に初めての事であった。思いがけない来訪者に驚くも、大好きな小雪との再会に花の顔はたちまち笑顔になった。小雪も花のその笑顔を見て、いつものように…いや、いつもとは違って更に優しい微笑みを返した。

「雪お姉ちゃん!花、すっごく会いたかった!」

「花ちゃん…私も、花ちゃんに凄く会いたかった…!」

「花ちゃん、実は雪お姉ちゃんとアミちゃんが花ちゃんにプレゼントを持ってきてくれたんだって。花ちゃんがベッドから動いてもいいって言われるまで、ずっと準備してくれていたんだよ。」

「ほんと?」

「うん…。花ちゃん、これを耳に付けてくれるかな?」

 そう言って小雪はまず車椅子のロックをかけてから、スマートフォンにイヤホンコードのプラグを接続し、「TENOHIRA IDOLS!」のアプリを起動する準備をした。

 花の母親はベッドの上でうずうずとした様子の花を抱っこし、車椅子に乗っている小雪の隣に置いた椅子に座り、姿勢を整えてからそっと娘の小さな体を膝に乗せた。

 小雪は花の耳にイヤホンを痛くないように入れてやり、音が大きくなりすぎないように音量の設定を控えめにしてから、「TENOHIRA IDOLS!」のアプリをタップした。すると花の耳にアプリの起動音と大好きなアミの元気な声で「TENOHIRA IDOLS!、始まるよ!」という声が聞こえた。

 スマートフォンの画面に見慣れたアプリのタイトル画面が表示され、小雪が「マイルームへGO!」の表示をタップすると、そこにはいつもとは違う衣装を着たアミが画面の向こうの花に手を振って立っており、花も思わずアミに向かって小さな手を振った。

 いつものアミの服装は夏をイメージさせるカラフルポップな衣装であったが、今のアミの服装は花も初めて見るものであった。

 細かい花の透けレースが裾に施された白いキャミソールワンピースに、首からはひまわりのネックレス、金色の髪から覗く両耳にはキラリと輝く金色のシンプルなピアスが輝いている。足元も低めのヒールのサンダルだが、飾りにはひまわりのコサージュが鮮やかな色を差し色にして咲いており、アミの両手と両足の爪もオレンジ色のグラデーションに花のネイルシールがワンポイントとしてデコレーションされていた。

 そしてアミのメイクもいつもならもっと元気いっぱいなイメージの色使いだが、今日の彼女のメイクはとてもナチュラルなものであった。

 アイメイクは優しい雰囲気を漂わせるナチュラルブラウンのアイシャドウに控えめなアイライン、青い両目を閉じるたびにドキッとする長い睫毛が揺れて見える。

 頬にはふんわりとした桜色のチーク、唇は透け感のあるクリアピンクの中に控えめなパールの光がチラチラと輝き、それが程よい艶感を唇に乗せていた。

 いつもとは違う雰囲気のアミに、花はまるでお姫様を見るようなキラキラとした瞳でアミに見入っていた。

「わぁぁ…アミちゃん…可愛い…!花、いつものアミちゃんも好きだけど、今のアミちゃんもすっごく好き!」

 嬉しそうにはしゃぐ花の姿を見た小雪は「話しかける」コマンドをタップし、文字入力で「アミ、私のお友達の花ちゃんが元気になったよ」と入力した。するとそのメッセージを受け取ったアミがぱぁっと笑顔になってこう話しかけてきた。

「わぁ!花ちゃん、元気になったんだね!よかった~、私も早く元気になりますようにってお願いしてたんだよ!」

「アミちゃん、花、元気になったよ!…ママ、なぁに?…あ、えへへ…ごめんなさーい…。」

 つい嬉しくなって声が大きくなってしまった花に静かにするようにと言うように、口に人差し指をあててたしなめる花の母親であったが、嬉しそうな娘を見てほっと安心した顔になった。

 小雪は「アミ、今日はあの歌を花ちゃんに歌ってほしいの」と入力すると、アミは頷いて画面に表示されている『鑑賞モード』をタップしてね!と知らせてくれる。

 小雪は『鑑賞モード』コマンドをタップし、画面が鑑賞モードのものになると、画面の右に表示されている音符マークをタップした。すると画面に「花ちゃんの歌」という曲名のデータが表示された。

 花は自分の名前が付けられているデータを見て首を捻っているうちに、小雪は音符マークをタップした。

ー「花ちゃんの歌」を再生しますか?ー

ーはいー

ピッピッピッピッ ピピピピピッ!

 ピピピピッという音が終わると、アミが画面の中央に立ち、すぅ…はぁ…と深呼吸をするジェスチャーを数回繰り返した。

 そして画面の向こうの花に向かって笑顔を見せると、彼女の歌声がイヤホンを通して花の耳の中に入って来た…。

修正履歴

  • 誤字、脱字の修正をおこないました。(2018/08/01)
  • 内容に影響のない範囲で、一部表現の変更や追記をおこないました。(2018/07/29)

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順調な執筆をなされているようですね!!!・・・花ちゃんも手術が無事に済んでよかったですね(^^♪小雪の思いついた計画と言うのも、もうそろそろ明らかになるのかな?細かいことですみません。前回の更新では花の手術の次の日に明らかになると書いてありますが、実際、小雪が花の病室を訪れたのは数日後かな?野暮なことを言いすみません。すこしだけ気になって笑(^^♪

湊あむーる

2018/7/28

2

湊あむーる様、コメントありがとうございます!そしてご指摘もありがとうございます、話のつなぎ方がずれてしまっているのでこの辺りを修正致しようと考えています。小雪が計画したものについても次で明らかにできるように進めていきたいと思います!

作者:夢猫

2018/7/28

3

小さなスマホの中のアイドルがもたらしてくれる「笑顔」。
夢猫さん流の優しく心地よく、そして新鮮な世界が美しいです!!
そして、小雪ちゃんと花ちゃんの、AIアイドル・アミちゃんを通じた交流が素敵です(´;ω;`)
誰もが笑顔にと願わずにはいられません(´;ω;`)ウッ…

大久保珠恵

2018/7/29

4

大久保珠恵様、コメントありがとうございます!
ありがとうございます、そう言っていただけてとても嬉しいです(*´ω`)
未来のアイドルがこういった形で、沢山の人達を楽しませたり癒してくれたりと、笑顔をもたらしてくれる存在になったらいいなぁと私もしみじみ思ってます…。
小さな子供たちの笑顔って、胸にぐっとくるものがありますよね~…いつまでもその笑顔を忘れないでほしいと思うことが多々あります。

作者:夢猫

2018/7/29

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とじる

花ちゃんの歌

*童謡のような明るくて可愛らしいメロディーが流れて来る

*左右にサイドステップを始めるアミ、手拍子をしながら歌い始める

あのこのえがおはキラキラおひさま

みんながふりむくすてきなえがお

いつもげんきなあのこはだーれ?

(いないいないばあのジェスチャーを見せる)

みんなにげんきをくれるあのこ

えがおってとってもすてきなの

それをおしえてくれたのはだーれ?

(その場でクルリと一回転してから両手の人差し指で口の両端をきゅっと上げる)

それはあなた ちいさなおはなみたいなあなた

(画面の向こうの花を指差す)

みんなだいすき あなたのえがお

キラキラまほうみたいにかがやくの

(両手を顔の横で表裏と動かしてキラキラしているように見せる)

どんなにつらくたって

どんなにさびしくたって

(泣いてるようなジェスチャーをしながら後ろを向く)

あなたのえがおをみたら

そんなのすぐにわすれちゃうんだ!

(とびっきりの笑顔で振り向くと、カメラがアミに画面にぐんと近づく)

ピカピカえがお だれにもまねできない

みんながしあわせになれるまほう

わたしにゆうきをくれたの

(後ろに数歩下がって、サイドステップを踏みながら楽しく歌っている)

(胸の辺りで両手でハートマークを作り、ドキドキしているジェスチャーをする)

ドキドキハート ほっぺがあかくなっちゃう

なきむしなかおにさよならしちゃえ

えがおのまほう かけられちゃった

(右手の人差し指を魔法の杖をくるくる回すように動かすと星のエフェクトが指先に現れる)

(メロディーが次第に小さくなっていき、アミの動きもそれに合わせて小さくなる)

(メロディーが終了すると、最後にアミが花に向かってこう言った)

「花ちゃん、これからも笑顔が素敵なあなたでいてね!だーいすき!」

(画面の向こうの花に向かって両手を振り、最後にぺこりと一礼した)

ー「花ちゃんの歌」の再生を終了しましたー

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