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七原探偵事務所の七姉妹と家政婦さん

家族全員名探偵

更新:2018/7/29

水月

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家政婦の八恵子が働くことになった、七原探偵事務所。

そこは個性的な七人姉妹が、互いの専門分野を活かして事件を解決する探偵事務所だった。

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第1話 七原家のみなさん

 キャリーバッグを引き、スマホの地図と景色を見比べながら、駅から徒歩約15分。

目的地の小ビルの前で、八恵子は立ち止まった。事前に教えられた住所と地図と、小ビルに掲げられた看板を照らし合わせ、八恵子は頷いた。

「ここか……」

 看板には八恵子の新しい職場の名前が書かれていた。

 七原探偵事務所。

              ♧

 初めに出迎えてくれたのは、ショートヘアで銀縁の眼鏡をかけた長身の女性だった。年齢は20代後半くらい。手足が長くて、顔は中性的な美形だった。

「よく来てくれたね。うちの事務所の所長の七原一華です。よろしくね」

 まずは第一印象! と意気込み、八恵子は明るく挨拶した。

「初めまして、家政婦の八恵子です。本日からお世話になります」

 八恵子は今日から、この家で住み込みで働くのだ。職務内容は、家事全般。七原家は7人家族で、みんな忙しいため家事に手が回らないとだけ聞かされていた。

 七原家は、八恵子が前に勤めていた所の家主の紹介だった。次の職場を探さねばならなかった八恵子にとっては願ったり叶ったりで、7人家族と聞いた時も、腕が鳴るとすら思った。

 そんなわけで、今日は張り切って七原家のご家族との、初顔合わせに臨んだのである。

 雇い主兼家主の一華に、八恵子はオフィスまで案内された。一華は仕草がいちいち紳士的で、スタイリッシュだった。

(きれいというか……かっこいい人だな)

 連れてこられたオフィスには、机とパソコンが幾つかと、面談用のソファとテーブルが1セット。必要なものだけを揃えたような印象のオフィスだった。

 室内には若い女の人が1人いて、パソコンに向かっていた。八恵子と一華がオフィスに入ってくると、パッと顔を上げて席を立ち、こっちへ歩いてきた。

 八恵子は礼儀正しく頭を下げた。

「本日からお世話になる八恵子です。よろしくお願いします」

 若い女性は、一華とはまた違い、ほんわかとしたタイプだった。服装もカーディガンにロングスカートと、ザ・女子という感じで、物腰柔らかかった。

 一華が紹介してくれた。

「妹の双葉だよ」

 双葉は八恵子をまじまじと見ると、笑顔で手を合わせた。

「ほんとうに若い家政婦さんですね! お幾つですか?」

「24です」

「わあ、年下だっ。珊瑚ちゃんと同じ歳だね」

(珊瑚ちゃん……?)

 一華が背後を振り返りながら言った。

「そうだね。ね、珊瑚」

(? 誰に向かって喋ってるんだろう? 後ろには誰も……)

 一華の視線を追って八恵子が振り向くと、真後ろに知らない女の人が立っていた。超間近で目と目が合い、八恵子はびっくりした。

「うわっ!」

 いつの間にやら背後に忍び寄っていた、Tシャツに短パンというスポーティな服装をした、ポニーテールの活発な印象のある女の人は、見た目通りの元気はつらつなテンションで挨拶してきた。

「はいっ! 初めまして! 七原珊瑚です! びっくりした? びっくりしたよね? 同い年なんだってね、これからよろしくぅー!」

 一方的に握手された手をぶんぶん振り回され、八恵子はぽかんとしてしまった。

「よ、よろしくお願いします……」

 びっくりしたぁ~。いつから後ろにいたんだろ……全然きづかなった。

 珊瑚はピストルの形に構えた指を八恵子に向けてウィンクした。

「いつから後ろにいたんだって思ってるね☆」

(心を読まれた!?)

 新たな別の声が、どこからか聞こえてきた。

「それは、最初からです」

「え?」

 珊瑚の背後から、ひょこっと小柄な女の子が出てきた。

(なんか続々出てくる!)

 コートに黒縁メガネと、珊瑚とは正反対の印象を与える女の子だった。

 あと、何故か手に一眼レフカメラを持っていた。

「七原依里です。最初からというのは、あなたが駅に着いた時からです。ここに来るまでずっと尾行してました」

「び、尾行!?」

 珊瑚が自慢げに親指を立てた。

「尾行はあたしの得意分野なんだぜ!」

 へ、へぇ~。

(わたしちょっと道に迷ったりしてたよね? 声かけてくれればよかったのに。ていうか何のために尾行を!?)

 珊瑚と違い落ち着いた口調で、依里は言った。

「あなたが側溝につまずいたところも後ろから見ていました」

(恥ずかしい!)

「写真も撮っておきました」

(!? 消して!)

 次々と登場する新しい人物と、明かされた事実にたじたじしつつ、八恵子は混乱する頭を整理しながら尋ねた。

「あ、あのぅ……なんで尾行なんて、してたんですか?」

 珊瑚は首を傾げて答えた。

「楽しいから?」

(そんな理由で!?)

 一華がおかしそうに笑い声をあげた。

「迎えに行くって言うから何してんのかと思ったら、やっぱり後つけてたんだね」

 八恵子はちらっと依里のことを見た。

「あと、なんで写真を……」

 カメラをシャキッと構えて依里は答えた。

「わたしの趣味です」

(やっぱりそうか!)

「コケたとこの写真はちゃんと印刷してお渡しします」

「やめてくださいお願いします」

 ふと、八恵子はあることを疑問に思った。

「あれ? でもどうして駅にいる時点でわたしだって気づいたんですか?」

 事前に顔写真を渡すようなシステムは、八恵子が所属している家政婦派遣事務所にはないはずだった。

 カメラをいじりながら、依里は言った。

「そこはまあ、事前情報からの予測というか、推理というか……」

(推理?)

 双葉が事務所の奥の扉に向かって小走りした。

「みんな呼んでくるね」

(みんな……ということは、ご家族全員!? みんなここに呼んじゃうの!?)

 八恵子はおどおどして一華に言った。

「そんな、わざわざお呼びしなくたっていいですよ……」

「いやいや。折角なんだからちゃんと揃って顔合わせしないと」

 一華はニカッと歯を見せて笑った。わあ、イケメン。

「みんなも八恵子さんに会いたがってると思うから」

「は、はあ……」

 わざわざ八恵子のために足を運ばせるのは忍びないけれど、そう言ってくれるのなら、しっかりと挨拶しよう。

 これから一緒に暮らすのだ。八恵子もご家族のことはよく知りたいし、仲良くしたい……!

「お待たせしましたぁ~」

 戻って来た双葉の後ろに、2人の女の子が付いて来ていた。

 1人はセミロングの髪を緩く結わえ、眠そうにあくびしていた。

 もう1人は小中学生くらいの小さな子で、八恵子と目が合うと行儀よく一礼した。

「伊月は?」

 一華が訊いた。双葉が苦笑いした。

「それがね、昨夜遅かったみたいで、まだ寝てたの」

「そうか、それじゃあ、仕方ない」

 次から次へと現れた住人たちが、ずらっと八恵子の前に並んだ。なんというか、壮観だった。

 一華が取り仕切った。

「まあ、1人抜けてるけど、改めて紹介するよ」

 七原家の皆さんが、右から順番に名乗っていった。

「長女の一華です。この事務所の名義はあたしのもので、一応所長ってことになってます」

「次女の双葉ですっ。普段は大学院生で、医学科に通ってます。あと、うちの経理も担当してます」

「三女の珊瑚ですっ! 勉強あまり得意じゃないけど、運動超得意です! さっきみたいな尾行と、あと格闘専門です!」

「四女の依里です。専門学生です。趣味で写真を売ってるのと、隠し撮りとか録音とか、証拠収集担当です」

「六女の睦子です。高校2年。え~と~……メンタリズムとか? 心理学とか、好きです。わたしの前でウソつくときは気を付けてください」

「七女の奈々枝です。中学三年、今年受験生です。パズルとか、あと複雑な計算とか好きです。よろしくお願いします!」

 一華が補足してくれた。

「五女の伊月はいま寝てるみたいだから……そうだなあ、部屋に行った時に、挨拶しておいて。人付き合いあまりよくないけど、感じ悪い子ではないから」

 八恵子は少々気圧されつつも、前の前に並んだ七原家を見回した。

(七人家族って聞いてたけど……まさか七人姉妹だとは……)

「前の家の人から聞いてると思うけど、うちは探偵事務所やってて、でもあたしだけでやってるわけじゃないんだ」

 一華は姉妹たちにむけて手を広げた。

「七原探偵事務所は、あたしたち七姉妹で探偵をやってるんだ。それぞれの得意分野を活かして」

「そ、そうなんですか?」

(すごい……)

 みんな、見た目はまったくタイプが違う姉妹たちだけど……。

 みんなで協力して、探偵をしてるんだ。

(なんか……)

 八恵子はにこやかに、力強く挨拶した。

(途端に、みんなかっこよく見えてきた……!!)

「八恵子です! これからよろしくお願いします!」

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よく考えたら七姉妹ってすごい!欲張りましたねー(^_^)
ごめんね、どーでもいい細かい指摘します!

>「そこはまあ、事前情報からの予測というか、推理というか……」

(推理?」

……カッコがすこーしばかり変!!

湊あむーる

2018/7/22

2

あ、たしかに。誤字ですね。指摘どうもです、直しておきます、(;^ω^)

折角なので欲張りましたよー!(`・ω・´)

作者:水月

2018/7/23

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とじる

第2話 七原家の晩ご飯

 家の中を一通り案内してもらい、八恵子は主戦場となるキッチンに通された。

 七原探偵事務所のビルは4階建て。

 1階が車庫兼倉庫。2階が事務所で、3,4階が居住スペースとなっている。

 キッチンがあるのはリビングのある3階。ちなみに事務所のある2階にもこじんまりとした給湯室がある。

 探偵さんたちの家ってどんな感じだろうと思っていたが、わりと普通だった。上手く表せないけど、沢山の姉妹が共同生活している、と言われて納得する感じ。片付いてるとこは片付いてるし、そうでないとこは生活感に溢れている。

 七原家のキッチンに立ち、八恵子はあることに気づいてしまった。

(こ、これは……っ!)

 八恵子が来るのに合わせて急いで整理整頓しました感が否めない、手ぬるく整えられたキッチンスペース。

(端っこの汚れとか、誤魔化しきれてない……!)

 この「全然使っていませんよ」アピールが虚しい。

 キッチンまで案内してくれた七原家次女の双葉が、恥ずかしそうに笑った。

「うちみんなお料理できないから、キッチンあんまり使ってないの」

 八恵子は動揺を必死に堪えた。

(双葉さん、そんな涙ぐましいウソつかなくていいのに……!)

 コンロにこびりついた油とか、壁のシミとか、誰かが料理にチャレンジして明らかに失敗した形跡が目に付いてしまう…‥!

「コンロとか、ちゃんと使えると思うんだけど……」

 双葉さああああん!

 あきらかについ先日使ってますよね、これ!

 七人も姉妹がいて1人も料理できないのか……別な意味でちょっと心配になるなあ。

「道具とか、好きに使っていいからね。あと、必要な物とかあったら、教えてね?」

「い、いえ、大丈夫です」

 その家に揃っている物で全てを為すのが、八恵子のポリシーである。

 付け焼き刃的な整頓がされたキッチンのことは、ひとまず置いておいて……八恵子に気を遣ってくれたことを喜ぼう。さあ、お仕事だ。集中、集中。

「冷蔵庫見ますね」

「あ、うん。やだ、物ちゃんと入ってる?」

 七原家のそこそこ大きめの冷蔵庫を物色し、八恵子は頭の中に献立を作った。

(充実はしてないけど……これなら明日の朝まで大丈夫そう)

 パタンと冷蔵庫を閉じて、八恵子は双葉に言った。

「大丈夫です。お任せください。アレルギーとか苦手な物も、事前にご連絡いただいて把握しているので!」

「わあ、頼もしい~」

 双葉はにっこり微笑んだ。

「七人分お作りしていいんですよね?」

「うん。本当に大丈夫?」

「はい!」

「ごめんね、忙しくてお手伝いできなくて……」

 八恵子は自信満々に言って見せた。

「いえいえ、わたしの仕事ですので、任せてください!」

 これでも八恵子はプロである。七原家での初仕事、まさしく腕の見せ所だ。

「じゃあ、晩御飯楽しみにしてるね~」

 可愛く手を振って双葉はキッチンを後にした。1人になった八恵子は、よし! と袖をまくり、エプロンを装着した。

 改めて、ぐるりとキッチンを見回してみる。

 備え付けはちょっと古い感じするけど、小物とか家電はわりと良いものが揃っている。

(家電には詳しい人が姉妹のなかにいるのかな?)

 冷蔵庫も大きくて、なかなか使えそうだ。

 食器もちゃんと人数分あるし、調理器具も清潔。家政婦的には好条件だ。

 冷蔵庫にある食材と七原家に合わせて組み立てた献立に則り、八恵子が料理に取り掛かろうとした時、キッチンに誰か入って来た。

「八恵子ちゃん! 八恵子ちゃんって呼んでいい? どう? 元気?」

「珊瑚さん」

 振り向くと、超元気な三女で八恵子と同い年の珊瑚がいた。Tシャツと短パンからのぞく手足の筋肉は引き締まっており、明るい表情からは内側から出るエネルギーが溢れている。

「いいですよ、好きに呼んでいただいて」

「じゃあ八恵子ちゃんね! あと、タメなんだから敬語使わなくていいよ」

 八恵子は首を振った。

「いえ。お仕事中はおうちの人には敬語です。そう決めているんです」

「ふーん、そっか。じゃあ定時過ぎたらタメ語で話してくれる?」

「……わかりました。どうしてもということでしたら」

「よっしゃ!」

 元気な人だ~。もしかして、料理を手伝いに来てくれたとかかな?

「それで、どうかされたんですか?」

 珊瑚は腕を組んで唸った。

「いや~。それがさ、うちで家事するの初めてでしかも七人前だから、大変だろうと思ったんだけど……」

 お手伝いなら断ろうとした時、珊瑚が笑いながら言った。

「よく考えたらあたし料理全っ然できないし、むしろ邪魔になるわ! ごめんね!」

(う、うん……)

「もう、卵とか触った瞬間砕けちゃうからさ!」

(力の加減下手なのかな?)

「ていうことで! また別のこと手伝うね! それじゃあ!」

「は、はい。ありがとうございます……」

 シュタッと手を振り、珊瑚はキッチンから出て行った。

 な、なんだったんだろう……。

              ♧

 料理を始めて少しした頃。

 また誰かキッチンに入って来た。

「あの、八恵子さん」

「はい?」

 七原家4女の依里が、もはや八恵子のなかでトレードマークとなりつつある一眼レフカメラを手に現れた。

「なんですか?」

 眼鏡をくいっと上げて、依里は言った。

「いや、その……いまちょっと忙しくて、手伝えなくて悪いなと思って、一言……」

(みんな優しいなあ)

 八恵子はにこっとした。

「いいんですよ。これはわたしのお仕事なので。全然気にしないでください」

 顔合わせが終わると、みんなすぐにオフィスから出て行ってしまった。珊瑚は別として、みんな何やら忙しそうだ。

「お忙しいんですよね」

 そう訊いた八恵子に、依里は苦笑した。

「そうなんだよ。いま資料整理してて……本当は午前中に終わる予定だったんだけど」

 カメラを握って依里は言った。

「八恵子さんを尾行してたら遅れてしまって」

「あら……」

「あと珊瑚が手伝ってくれなくて」

(さっき珊瑚さんすごい暇そうにしてたけど!?)

「あと、印刷したコケてるところの写真、ここ置いときますね」

「ん~、ちょっと別の場所に置いていただけると」

 むしろ印刷してて時間が遅れたのでは? ていうか印刷したんかい。

「では、また」

「はい。晩御飯楽しみにしててください」

 ぺこりと頭を下げて、依里はキッチンから出た。

(……結局写真そこに置いて行くし)

 八恵子は依里が印刷した写真を見てみた。

(側溝でコケた写真だ。ほんとに尾行してたんだなあ)

 写真をそっとポケットにしまい、八恵子は作業を再開した。

             ♧

 調理が中盤に差し掛かった頃。

「いい匂いですね」

 入口から、六女の睦子が顔をのぞかせていた。

「あ、睦子さん。もう少しかかりますよ」

 キッチンに入ってくると、睦子は邪魔にならないようにするためか、八恵子の背後に回った。

「………」

 背後から睦子がまじまじと八恵子を見つめている視線を感じる。

(や、やりづらい……!)

 なんで見ているんだろう。しかも無言で。

 せめて話しかけてくれれば……。

 妙な緊張を覚えながら作業を続けていると、睦子がぼそっと言った。

「手慣れてますね」

「え? あ、はい。まあ、お仕事なので」

「初めて立つキッチンなのに、凄いですね」

「そんなそんな」

「あと、八恵子さんの血液型はO型ですか」

「えっ」

 菜箸を握ったまま、八恵子は振り返った。テーブルに腰を乗せた睦子がじいっとこちらを見ていた。

「な、なんでわかったんですか……?」

「いえ、なんとなく」

(ぜ、絶対ウソだ……!)

 睦子はくるっと踵を返して、出口に向かった。

「すみません邪魔して。うちでキッチンに立つ人いないので、料理してるところちょっと見てみたくて」

「あっ、いいんですよ。いつでも好きに見に来てください」

「じゃあ、また来ます」

 八恵子はなんだか微笑ましい気持ちになった。

 みんな、心配して見に来てくれてるのかな?

 睦子がキッチンの外の廊下を指さして、八恵子に言った。

「あと、トイレならここの突き当りを右です」

「えっ。あ、はい。ありがとうございます……」

「では」

 立ち去る睦子の背中を見ながら、八恵子は妙な動悸を感じた。

(な、なんでトイレ行きたいってことわかったの!?)

              ♧

 料理をお皿に盛りつけている頃。

 七原家七姉妹の末っ子の奈々枝が、キッチンにひょこっと現れた。

「あ~。もう料理終わっちゃう感じですね?」

「あ、奈々枝さん」

 八恵子の作った料理を眺め、奈々枝は声を上げた。

「わあ、すごい。これ全部八恵子さん1人で作ったんですか?」

「そうですよ」

 歳もあるけれど、高身長の多い七原家の姉妹のなかでは小柄な奈々枝はちょこちょこしてて可愛かった。

 奈々枝は自嘲ぎみに笑いつつ頭を掻いた。

「宿題終わったら手伝いに来ようかなって思ってんたんですけど、依里お姉ちゃんの片づけ手伝ってたらこんな時間になっちゃって」

(ということは、珊瑚さんほんとに手伝ってないんだ……)

 廊下から依里の声が聞こえてきた。

「奈々枝~。ちょっとこっち来てー」

「はーい」

 奈々枝は会釈しながら、ぱたぱたとキッチンを出て行った。

「ごめんね、八恵子さん。また今度お手伝いするから!」

「いえいえ、構いませんよー」

              ♧

 それから少しして。

「八恵子ちゃん、調子どーうー?」

 双葉が再び様子を見に来た。

 なんていうか、

(みんな手伝いたいのか、邪魔しに来てるのかわかんないな……)

              ♧

 食卓に集まったのは、八恵子と七原家の6人だった。

「伊月は?」

「いま手が離せないって」

 五女の伊月のもとへは、あとで双葉が夜食を持っていくそうだ。

「忙しいときに挨拶するのもなんだから、また明日伊月に会いに行ってあげて」

「わかりました」

 八恵子の手料理が並んだテーブルを見ると、姉妹たちは「おぉ~」と歓声を上げた。

 珊瑚が握った拳をぶんぶん振った。

「すごい! これ全部八恵子ちゃんが!?」

「はい、そうです」

 食事の席にはさすがにカメラを持ってきていないと思ったが、依里はポケットに忍ばせていた小型カメラを取り出した。抜かりない。

「写真撮ってもいい?」

「い、いいですよ~」

「まともな手料理食べるの久しぶりだねー」

 そういいながら席につく睦子に、双葉が口の前で「しーっ」と人差し指を立てた。

(すいません、もうずっと前からバレてますよ双葉さん……)

「美味しそ~」

 一華が「あれ?」と声を上げた。

「八恵子さん、いつの間に買い出し行ったの?」

「いえ、行ってませんよ」

「え、じゃあ冷蔵庫にあったものだけでこれ作ったの?」

「はい」

 食卓に座った全員が驚いた顔で、一斉に八恵子のことを見た。

 ぎょっとしつつ、八恵子は言った。

「明日の朝食の分も、準備しておきました、けど……」

 すると、一華が険しい表情で顎に手を当てた。

「これに更に、明日の分までだと……?」

「は、はい……」

 その場にいた探偵姉妹6人全員が、神妙な顔で思慮を始めた。

「あの少ない食材でいったいどうやって……?」

 と、珊瑚。

「特に薄くカットされているわけでもない……」

 小型カメラで撮った写真を拡大して見ながら、依里がぶつぶつ言った。

「この豊富なレパートリーは……経験によるもの……?」

 睦子まで、何やら推理し始めた。うん、なにこれ?

「水分で体積を増しているのかな?」

 奈々枝に至っては、メモに何やら計算式を書き始めた。

「まさか、本当にあれだけで作り上げるなんて……」

 双葉は口をわなわなさせた。任せてって言ったのに、信じてくれてなかったの双葉さん!?

 一華が頭を抱えた。

「ダメだ、どうやってこれを作ったのかわからない!」

 全員がぐるっと八恵子を振り向いた。

((((((どんなトリックだ……!?))))))

 あ~……。睦子さんじゃないけど、今ならみんなの考えてることわかる気がするな~。

「あ、あはは……」

 八恵子は愛想笑いを浮かべて、食事の席をどうにかやり過ごした。

 名探偵さんたちでも、苦手な分野はあるみたいだ。

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専門特化!! という個々人のプロフェッショナルぶりに驚けばいいのか、七人いて誰一人料理がまともにできないことに驚いたらいいのか……?
どちらにせよ、萌え姉妹&萌え家政婦さん(ΦωΦ)フフフ…
御馳走さまです……!!

大久保珠恵

2018/7/22

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とじる

第3話 七原家の五女

 七原探偵事務所に来てから、1夜が明けた。

 八恵子にあてがわれた部屋は、4階の端にあった空き部屋だった。

 七原家の部屋の割り振りはこんな感じだ。

 4階……依里(四女)、伊月(五女)、睦子(六女)、八恵子

 3階……双葉(次女)、珊瑚(三女)、奈々枝(七女)

 2階書斎……一華(長女)

 3階にももう1つ空き部屋があるのだが、姉妹たち共用の物置として使われている。

 住み込みで働く契約だったのでもともと部屋は貸してもらう予定だったが、立派な部屋を与えられてちょっと贅沢だ。

 八恵子は七原家に、ほとんど新しい家族のように迎えられていた。

 いや、正確に言えば、あと1人――まだ会っていない人がいる。

 八恵子は早起きして7人分の朝食を用意したのだが、食卓にはやはり6人しかいなかった。

「ごめんね、伊月の分は取っておいて」

 双葉が手を合わせて謝った。

「わかりました」

 珊瑚が焼き魚を箸でつまみ上げながら言った。

「伊月まだ寝てんの?」

 双葉が答えた。

「ううん。さっき『部屋に来ないでくれ』ってライン来てたから、たぶん撮影してるんじゃないかな」

 調理器具を片付けつつ、八恵子は疑問符を浮かべた。

(撮影?)

 依里がお茶碗の最後の一粒まで丁寧に食べて、突き放すような口調で言った。

「見事に昼夜逆転してるねアイツは。健康に悪い。……ごちそうさま」

「あっ、わたし片付けますよ、依里さん」

 食器を手に立ち上がろうとした依里を、睦子が箸でピッと指した。

「依里姉も健康に悪いよー。噛む回数平均11回。もっと噛んでから飲まないと」

「人の食事の噛む回数を数えるな」

 一華が唇をきゅっと結んで腕を組んだ。

「うぅむ。でも確かに昼夜逆転してるのは体によくないな。注意しておいた方がいいか。なにより家族で揃う時間が減るしね」

 珊瑚と双葉が席を立った。

「ごちそうさまー」

「今朝もおいしかったよ、八恵子ちゃん」

 依里が食卓を去りながら一華に言った。

「イチ姉食べるの遅い」

 食器を下げつつ睦子が付け加えた。

「噛む回数はいいけど水分摂り過ぎ」

「ごちそうさまですー」

 奈々枝が席を立ち、長女の一華以外の全員が食事を終えた。

「………」

「………」

 姉妹たちが去り2人きりになった食卓が、沈黙した。

(……え、えぇと……)

 妹たちの容赦ないコメントに笑顔のまま固まる一華に、なんと声をかけたものか。

 ようやく、一華がご飯を一口食べた。あっ、たしかに一口が小さい。

「い、一華さん。その、ゆっくりでいいですからね」

 一華さんはイケメンの笑顔を見せた。

「うん、ありがとう。八恵子さん」

 ふぅ、と一華は憂いを帯びたため息を吐いた。

「みんな……食べるの早いよね」

「そっ……そう、ですね……」

 一華には悪いのだけれど、完全に一華が食べるスピードが遅すぎる。

 あと、そういうかっこいいリアクションのせいで、食べるの遅れてる気がする。

 今朝わかったこと。

 長女の一華さんは食べるのが遅い。

 出勤時間ゼロ秒の余裕ということにしておこう。

              ♧

 朝食の片づけをしていた八恵子に声をかけたのは、双葉だった。

「八恵子さん、いまいい?」

「はい、いいですよ。ちょうどいま終わったところです」

(わ、きれい……)

 双葉は化粧をして、外出用の服に着替えていた。これから大学だろうか。

「伊月のご飯、まだある?」

「はい、ラップかけてありますが」

 双葉の顔がパッと明るくなった。美人が映える笑顔だ。

「そう! じゃあ伊月の部屋に持っていってあげてくれる? さっき見に行ったらいま大丈夫だって言ってたから」

 遂に来た! と八恵子は心中で意気込んだ。

 七原七姉妹最後の1人と、ようやく対面できる。

「運んでくれなくても別にいいとか可愛くないこと言ってたけど、ほんとはお腹空いてるだろうから、挨拶ついでに持っていってあげて?」

 八恵子は張り切って言った。

「わかりました。任せてください」

「伊月は不愛想だけど、たぶんうちで1番八恵子ちゃんのお世話になる子だから……色々めんどうくさい子だけど、付き合ってあげて」

(……?)

 気になる点が幾つかあったけれど、八恵子は快く承った。

「もちろんです」

 というわけで、やってきました七原探偵事務所4階。八恵子の部屋の反対端の部屋。

 七原家五女、伊月の部屋。

 朝食を乗せたお盆を手にドアの前に立った八恵子は、深呼吸した。

 妙に1晩空いてしまったおかげで、ちょっと緊張していた。

 伊月は20歳。不愛想だとかめんどくさいとか姉妹からの評判は散々だけど、相手は八恵子よりも年下。

ここは年上のお姉さん的家政婦の仕事様をビシッと決めて、八恵子のことを認めさせないと!

(いや、まあ姉が4人もいるから年上のお姉さんは今更感があるけど……)

 八恵子はキリッとしてドアをノックした。

(さあ、行くのよ八恵子……!)

「おはようございます。昨日からお世話になっています家政婦の八恵子です。朝食をお持ちしました」

 ドアの向こうは沈黙しており、返事はこなかった。八恵子はもう1度言った。

「おはようございます。伊月さん? 朝食をお持ちしたのですが……」

 やはり返事はない。

 もしかして、寝ちゃってるとか?

 八恵子は抵抗感を憶えつつ、ドアノブを回してみた。当然だけど、普通に開く。

 そっとドアを開けて、八恵子は室内を覗き込んだ。

「伊月さーん?」

 何の反応も帰ってこない。

 寝てるのかとも思ったが、部屋の奥から物音がしていた。

 部屋にいて起きてもいるのなら、入っても大丈夫だろう。双葉から八恵子が朝食を運んでくることは聞かされているはずだから、伊月をびっくりさせることにはならないだろう。

「失礼しまーす」

 後ろ手にドアを閉め、お盆を手に八恵子は室内を進んだ。

(わあ、すごい)

 部屋にはぎっしりと棚が並べられ、迷路のようになっていた。八恵子の部屋と同じ間取りのはずだが、棚の迷路で歩く距離が増えるせいか、少しだけ広く感じた。

 カーテンを閉めているのか薄暗く、それに何やらちょっと蒸し暑い。物が密集しちるせいかな?

 八恵子は棚と棚の狭い隙間を通って行った。物音は通路の奥からしていた。

 前後左右に立ち並ぶ棚には、本やゲームソフトがずらっと並べられていた。ジャンルは多岐に渡り、本は有名な推理小説から古い伝記本まで。

八恵子はゲームはあまり詳しくないからわからないけど、これCMで新発売とか言ってた新機種のソフトじゃないかな……?

 迷路を奥へ進むと、声が微かに聞こえてきた。

「はっ……ふッ……!」

 何をしている声だろう。掛け声みたいな、意気込むみたいな声が聞こえる。

「ほっ……はぁッ……!」

 通路の先に明かりが見え、そこで動いている人影が見えた。

(あっ、伊月さんかな……?)

 やっと伊月に挨拶ができる、どんな人かなと八恵子は声をかけようとしたのだが……。

「伊月さ――」

「とりゃあっ!」

「んッッ!?」

 八恵子は思わず口を塞いでしまった。

 部屋の奥にあったのは机に並べられた4つのモニターと、2つのキーボード。左右に1つずつのマウスと、テーブルの下にセッティングされた大きなPC本体。

 カーテンの閉め切られた室内でモニターの放つ光に照らされた伊月らしき人物は――

 怪しいゴーグルを装着して、開けたスペースで見えない何かに向かって手に持ったリモコンを縦横無尽に振り回していた。

「ほあぁっ!」

 という掛け声をしながら。

(えぇ!? 何してんの!? この人何してんの!?)

 ちょっと怖い。なんだろう、何やってるんだろう。

「うおりゃぁっ!」

(ビクッ!)

 という感じで、さっきから周りをきょろきょろしては、リモコンを振りまくっている。何かと戦っているのか?

 八恵子は伊月が付けているゴーグルを見た。

(あれって……)

 詳しくないけど、最近テレビでよく取り上げられてる、VRとかいうやつで使うゴーグルに似てる気がした。

「おりゃあっ!」

(ビクッ!)

 見えない何かに向かってリモコンを振って戦っている……伊月がやっているのは、VRのゲームなのではないか?

 八恵子は落ち着きを取り戻し、伊月のことをよく見た。

 背丈は八恵子と同じくらい。リモコンを振る度に、サラサラの黒髪が揺れる。細身ですらっとしていて、肌が白くて……薄手のパーカーを着ていて……あれ?

(なんでビキニ着てるの!?)

 後ずさった八恵子の足が、棚にぶつかった。

 その音に反応し、ゴーグルをつけた伊月がバッと八恵子の方を向いた。

 怖っ!

 でも外のことは見えてないはず……。

 伊月がリモコンを振り上げ、八恵子の方に飛び込んできた。

「そこかぁっ!」

「違いますっ!」

 八恵子は咄嗟にお盆を床に置いた。顔を上げると、頭上から伊月が降って来ていた。

 ドタンバタンと、八恵子は伊月に押し倒された。

 八恵子は頭をそこそこ強めに床にぶつけた。伊月がバッチリ八恵子の上に乗っかっていた。

「いったたた……」

 痛みを堪えつつ、八恵子は片目を開けた。

 伊月の獲物であるリモコンが、八恵子の顔のすぐ横にあった。

(あぶな! ギリギリセーフ! ギリギリセーフ!)

 八恵子の身体の上で、伊月がごそごそと動いた。

「……うん?」

 訝し気な声を上げ、伊月がぐいっとVRのゴーグルを押し上げた。

 ゴーグルの下から露わにした両目で、伊月は八恵子のことを見下ろした。ゴーグルの痕が目の下に残っていた。

 八恵子を見下ろし、伊月は言った。

「……誰?」

 ぽかんとしつつ、八恵子は答えた。

「家政婦の、八恵子です」

 伊月は合点がいったように眉を上げた。

「ああ、昨日来たっていう。なるほどあんたがそうなんだ」

「は、はい。その、挨拶が遅れてすみません。よろしくお願いします」

 お腹の上に馬乗りになった伊月に、八恵子は仰向けに寝たまま挨拶した。

 初対面の挨拶のイメトレとか、昨夜寝る前にしてたんだけどなぁ……。

 どういう挨拶だこれ。

 なんでこうなった。

「――で」

 伊月は首を傾げた。

「なんで私の部屋にいるの?」

 え、え~……。

「と、とりあえず、その――」

「ん?」

「降りて、もらっても……いいですか?」

 何故かビキニ姿の伊月の諸々の感触が、直にお腹に伝わってくる。色々とダメだと思う、これ。たぶん。

「あ、ごめん。えっと……」

 八恵子から降りようとして、伊月は身動きを止めた。目をぱちくりさせる八恵子に、伊月は言った。

「あんた、名前なんだっけ?」

「八恵子です」

 早く降りて。

 ちなみに朝食は無事だった。ナイスわたし。

               ♧

 カーテンを開けて部屋に明かりを入れ、ようやく八恵子は伊月と面と向かって挨拶を交わすことができた。

「改めまして、家政婦の八恵子で――」

「別に改めなくてよくない? さっき言ったし」

(改めさせて……っ)

 さっきのは、あまりにも、もう、家政婦としての八恵子のプライドに、どうも納得が……ッ。

 八恵子が置いたお盆を見て、伊月が言った。

「あっ。ご飯持ってきてくれたんだ。ありがとう」

「い、いえ……」

 ファーストコンタクトがあれとは……年上のお姉さんとか目論んでた件は木端微塵に砕け散った。

 VRゴーグルを頭から外しながら、伊月は謝った。

「いやあ、さっきはごめんね。撮影は終わったんだけど、普通に遊んでて。ほら、初見プレイ動画に上げるとか恥ずかしいじゃん? 初々しい感じがさ。まずは一周しておこうと思って」

「は、はぁ……」

 どうやらさっき1人で怪しい動きをしまくっていたのはVRゲームらしかった。

 ゴーグルを撫でながら、伊月は肩をすくめた。

「さっき戦ってた敵が、一定時間透明になる難敵でさ。音聞き間違って突っ込んじゃった。悪いね」

「い、いえ……」

 まあ、危うくトドメを刺されるところだったけれど。無事だったからいい。色々それどころじゃなかったし。

 八恵子は遠慮がちに小さく手を挙げた。

「あ、あの……伊月さん。質問してもいいですか?」

「ん、いいけど」

「どうしてカーテンを閉めてたんですか?」

「カーテン? ああ、私の生活昼夜逆転しがちだから、いつも閉めてんだよね」

「昨夜もゲームを?」

「うん。夜通し撮影してたから、さすがに疲れたけど日中寝てたから眠くなくてさ。今度撮影予定の新作プレイしてたの」

「その、撮影っていうのは……?」

 伊月はパソコンとモニターを親指で指した。

「ゲームのプレイ動画。私あんまり声入れることないけど、イカすプレイすると観てくれる人多いから。サイトにアップしてるんだよね」

 ああ、なるほど。なんとかチューバ―ってやつだ。

「凄いですね。広告収入とか貰うんですか?」

「凄いってほどじゃないよ。趣味でやってる程度だし」

 よっこいしょと立ち上がり、伊月はマウスを操作した。モニターに映っていたゲーム画面が、別のブラウザに切り替わった。

「あと、引きこもってゲームしてるだけのニートだと思われたくないから、仕事してるアピールしておくと、私の仕事はこれ使って姉たちをサポートすること」

 伊月が何やら地図とか図形とかが色々と映し出されたモニターを見せてくれたが、八恵子には何が何だかわからなかった。

「えっと……これは……」

「ネット使った情報収集。現代じゃSNSにアップされた何気ない動画とか写真が重要証拠になったりするからね。それで大成功する人がいりゃ人生破綻する人もいる。インターネットはもはや道具どころか兵器だからさ。だから私らもこうやって利用してる」

 八恵子が見ていたモニターに、何かのサイトの画面が移った。相談窓口、みたいな感じのサイトだ。

「あと、ネットで依頼を受け付けたりとか。あと私独自でインターネット内の問題を解決したりね。私個人の収入ではこっちの方が多いかな」

「ネット内の問題?」

「そ。アカウントのなりすましとか、乗っ取りとかあるでしょ」

 伊月は不敵に笑った。

「セキュリティ会社とか警察に通報するより、無理矢理取り返して仕返しする方が手っ取り早いって、頼んでくる人もいるからね」

(うっ……これはあまり深く聞かないでおこう)

 とにかく、このちょっとしたやり取りだけでも、伊月が凄い人だっていうことはわかった。

 部屋はちょっとひどいけど、ちゃんと得意分野を活かして働いてるし、他の姉妹たちと同じで、探偵としてもしっかり活動している。

 ここの人たちはみんな凄いなあ……と月並みの感想を抱きながらも、八恵子にはまだどうしても気になることがあった。

「あと、もう一つ訊いてもいいですか?」

「なに?」

「あの、その――」

 八恵子は伊月から目を逸らしつつ、尋ねた。

「どうして水着なんですか?」

「え? これ?」

 伊月の姿は、ビキニにパーカーを羽織っただけという防御力の超薄いスタイルだ。

 初対面で狭いスペースに2人きりでこれは、ちょっと目のやり場に困る。

 伊月はけろっと答えてみせた。

「暑くて」

「いや、確かにこの部屋暑いですけど……」

「エアコン壊れてんだよね」

「ええ~」

「あと、パソコンの熱で温度上がるし」

「な、なるほど」

「これが1番涼しいし。裸でもいいんだけど、VR体動かすからあんまりねー」

「わ、わたしもその方がいいと思います」

 常時全裸でいられたら、食事を運ぶ時とても困る。

(ん?)

 なにやら、伊月がじいっと八恵子のことを凝視していた。

 な、なんだろう。何考えてるかわかんなくて、ちょっと怖い……。

 怯えつつ、八恵子は尋ねた。

「な、なにか……?」

 伊月は目を逸らして、頭を掻いた。

「いや……家族以外の人この部屋に入れたことないから、新鮮だと思って……」

「……?」

 伊月はぐい~っと伸びると、大きなあくびをした。

「ふあぁ。それにしても、やっぱ生活リズム狂うのはちょいときついね。適度に昼寝して、夜寝る生活に戻らないと……」

 壁に取り付けられたエアコンを見上げ、伊月はため息を吐いた。

「あぁー。でもやっぱりこの部屋暑いしなー。昨日はなんとか耐えれたけど」

「たしかに、ちょっと暑いですね……」

「んー」

 ちらっと八恵子を見て、伊月は言った。

「どの部屋で寝てるの? えっと、名前なんだっけ」

「八恵子です。この階の端っこの部屋です。反対側の」

 いい加減名前憶えてくれないかな?

「そっか。じゃあヤエコ、今夜ヤエコの部屋で寝ていい?」

「はい、いいですよ……って、えぇっ?」

「オーケイ? ありがとうヤエコ。このままじゃ屋内熱中症で死んじまう」

「ちょ、ちょっと待ってください。わたしの部屋でですか?」

 八恵子は慌てて手を振った。伊月は当然のように頷く。

「うん。エアコン付いてたよね?」

「ええまあ、付いてますけど」

「それなら安心だ」

「いえ、あの、そういう問題ではなく――」

「大丈夫、携帯ゲーム機も持ってるから」

「ゲームの心配ではなくてっ」

 伊月は自分の体を指さして言った。

「普通に服着ればそれでいい?」

「はい、それなら……じゃなくてっ!」

「よし、交渉成立!」

「ほんとにわたしの部屋で寝るんですか!?」

「不都合でもあんの?」

「いえ、ベッド一つしかないですし……」

「一緒に寝ればよくない?」

「え、えぇぇ~~」

「あと、『ヤエ』って呼んでいい? ヤエコじゃ長い」

「い、いいですけど……」

 その夜、ほんとに伊月は八恵子の部屋で寝た。

 流石に一緒のベッドは(八恵子が)耐えられなかったので、床に布団を敷いて寝た。

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どんな人かと思ったら伊月さん、大問題児でいらっしゃった……(;・∀・)
そして八恵子さんの貞操が危険に思えてきます……。
というか、なつかれた?
これはなつかれたということでしょうか……(;^ω^)

大久保珠恵

2018/7/23

2

伊月は実は姉妹には甘えたがりなのですが、八恵子はビビッときたみたいで、いい感じに懐いてくれました。
(;^ω^)

作者:水月

2018/7/23

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とじる

七原家七姉妹 紹介コーナー

七原探偵事務所 七姉妹

◆長女  七原 一華(ナナハラ イチカ) (27歳)

 七原探偵事務所所長。七姉妹のまとめ役。

 交渉が上手く、また会話を乗らせて相手に暴露させることが上手い。

 長身&中性的な美形のため、女性ウケがいい。銀縁メガネ。

◆次女  七原 双葉(ナナハラ フタバ) (26歳)

 経理担当。大学院生であり、専攻は医学科。

 医学知識が豊富であり、滅多にないけどいわゆる検死担当。

 ほんわか美人さんで、七姉妹の精神的支柱。

◆三女  七原 珊瑚(ナナハラ サンゴ) (24歳)

 七姉妹で唯一推理力が低く、代わりに運動神経がいいため、物理的実力行使担当。

 普段はスポーツジムでバイトしている。身体能力が高く、また非常に器用であり、挌闘に加えて尾行や張り込みなども得意。

 明朗快活。ザ・ムードメーカー。

◆四女 七原 依里(ナナハラ ヨリ) (21歳)

 専門学生。カメラや録音機に詳しく、証拠収集担当。

 常に一眼レフカメラを持ち歩いており、趣味で撮った写真を販売してもいる。

 姉妹にも容赦ないツッコミを入れる現実主義者。黒縁メガネ。小柄。

◆五女 七原 伊月(ナナハラ イツキ) (20歳)

 ネットによる依頼受付と情報収集担当。事務所の膨大なデータ管理も行っている。

 部屋に引きこもってゲーム動画をネットにアップしたり、ネット内のトラブルを解決して小遣いを稼いだりしている。

 滅多に部屋から出ることがなく、言葉遣いも乱暴だが、姉妹と八恵子には甘えたがりだったりする。

◆六女 七原 睦子(ナナハラ ムツコ) (17歳)

 高校2年生。メンタリズムと心理学に詳しく、人の真意を見抜くことに長けている。

 部活動には所属しておらず、探偵業に精力的に勤しんでいる。

 マイペースでぶれない性格をしており、七姉妹で最もメンタルが強い。

◆七女 七原 奈々枝(ナナハラ ナナエ) (15歳)

 中学3年生。パズルと数学が得意。語学も得意で、話せはしないが読める外国語なら10種類近くある。

 推理小説好きが高じて難解なパズル本やパズルゲームに熱中しており、暗号などを瞬時に解くことができる。趣味に没頭し過ぎて学業が疎かになっているため、成績はあまり良くない。

 素直な性格で姉たちが大好き。ふわっとしていて心身ともに幼いが、実は七姉妹で1番頭がいい。小柄。

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水月さんはなんでこう、わざとらしさが欠片もなく自然に可愛く素敵に思える女性の描写の仕方が上手いのでしょう……////
萌えさせていただきました。
一人に絞れません。
ハーレム主人公の気持ちがなんかわかる気がする今日この頃←

大久保珠恵

2018/7/23

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とじる

第4話 七原家の映画鑑賞会 出題編

 食事と入浴を終えた長閑な夜。

 八恵子がリビングに行くと、七姉妹全員がテレビの前に勢ぞろいしていた。

 テレビには画質の古い洋画が流されていた、テーブルに目をやると、空のレンタルDVDのケースが置いてあった。

「今夜はみんなで映画鑑賞ですか?」

 姉妹たちが座るソファに歩み寄りながら、八恵子は言った。双葉がにっこりして答えた。

「そうなの」

 七原家のリビングには、全員が座れる分のソファがコの字型に大きなテレビに向けて置かれている。

 1人用のソファが両端に2つと、L字型の大きな長いソファが一つ。

 右側の1人掛けのソファに双葉、その隣のL字の短い部分に一華、右から順に依里、珊瑚、睦子、奈々枝と座り、そして珍しくリビングにいた伊月が、奈々枝の膝枕で寝転がっていた。

 みんな真剣な眼差しで映画を観ていた。八恵子の知らない映画だった。どんな作品だろう?

 探偵さんたちが観る映画といったら、やっぱりミステリーかな?

 依里が人懐っこくにこにこしながら言った。

「むっちゃんがいいの見つけて借りてきてくれてね? うちの家族が誰も見たことないミステリー映画ってなかなか見つけられないから、折角だからみんなで観ることにしたの」

 むっちゃん……睦子のことか。

(へえ、意外……レンタル屋さんとか行くんだ)

 くるっと振り返った睦子が、じいっと八恵子のことを観ていた。八恵子はビクッとした。

 テレビの方に向き直りながら、睦子は言った。

「わたしも放課後寄り道くらいしますよ」

「か……顔に出てました……?」

「まあ、顔とかいろいろ」

「うぅ……心読まないでください……」

 一緒にいて心臓に悪いのは伊月だけれど、接する時に1番緊張するのは睦子だった。表情や仕草から何かと見破られていそうで、落ち着かない。

「すいません、癖なんで」

 そのうえ表情があまり変わらないから、こっちには睦子が何を考えているか全然わからない。口調も平淡だし。

 睦子から逸らした八恵子の目が、寝転がる伊月の目とばっちり合った。

「お、ヤエじゃん」

「今夜は伊月さんもこっちにいるんですね」

「まあ、たまにだけどね」

 八恵子は、一切恥じらう様子もなく5歳下の妹に膝枕してもらう伊月を眺めた。はじめの印象からは意外だが、伊月は家族には結構甘えるタイプみたいで、姉も妹も問わなかった。

 心を許してくれたことを喜ぶべきか、最近では八恵子との距離感もかなり近かった。

「あ、そうだ」

 奈々枝の顔を見上げ、伊月は言った。

「今夜はナナの部屋で寝るからね。エアコンまだ直ってないんだよね」

 エアコンが故障しているあいだ、伊月はほとんど毎晩、姉妹の部屋を泊まり歩いていた。

 昨晩は珊瑚の部屋に止まり、遅くまでゲーム対戦で遊んでいたそうだが……。

 ……他の部屋で寝ていたはずが、伊月は何故か朝になると必ず、八恵子のベッドにもぐりこんでいた。

 それも毎朝だった。

(あれ本当に心臓止まるかと思うんだよね……目が覚めたら伊月さんが目の前で寝ててびっくりする)

「いいよねナナ~?」

「いいよ~、一緒に寝るー?」

「そうしよう、そうしよう。ヤエは一緒に寝てくれないし」

(……また明日の朝、わたしのベッドに忍び込んでるのかな……?)

 一華が伊月に言った。

「たまにはわたしの部屋で一緒に寝てもいいんだよ? 伊月」

 伊月は嘲笑を返した。

「いや、ハンモックに2人で寝るとか無理だから」

(え!? あのハンモックインテリアじゃなかったんだ!?)

 一華を見ながら八恵子は密かに驚いた。

(座椅子で寝てるんだと思ってた!)

「あと、一華はゴツゴツしてて柔くないから、寝心地悪そう」

「なっ……!」

 一華が悲愴に俯いた。ショックだったんだ……。

 末っ子の膝に頭をぐりぐり押し付けて伊月は言った。

「ナナの膝、というか腿はいいぞ~、柔らかくて。寝心地最高」

(ほんとに恥じらいないな、この人……)

 くるっとこちらを振り向いた伊月が、八恵子を見た。

「……?」

 伊月がビシィッと八恵子を指さした。

「今度はヤエに膝枕してもらうからなッッ!」

「えっと……嫌です」

 依里が苛立たし気に貧乏ゆすりした。

「映画見ろよあんたら」

              ♧

 それにしても、映画はやはりミステリーものなんだ。

 伊月の部屋の棚にミステリー小説が沢山並んでいるのは、掃除の際に目にしていた。伊月の部屋の棚は七原家の図書室のような扱いになっていて、姉妹たちが自由に貸し出している。

 もっと難しい専門的な本は一華の部屋である書斎においてあり、主に依里や奈々枝が通っているようである。

 やはり探偵の性というか、推理ものには目がないようだ。

 奈々枝の膝枕で寝転がっていた伊月が、スマホを開いて声を上げた。

「時間だ。依里、停めて」

 すると、依里がリモコンで映画を途中で一時停止させた。

(どうしたんだろう?)

 姉妹たちには、特段驚いた様子はなかった。伊月が奈々枝の膝枕で寝たまま、姉妹全員に聞こえるように言った。

「開始から1時間25分。レビューによればここまでで明らかになった情報で、事件の犯人に辿り着けるという」

 リビングで観賞していたのは、ある屋敷を舞台に起こる殺人事件を、偶然居合わせた主人公が推理で解決するという王道っぽいミステリー映画だった。ということを、一華が手短に要約して教えてくれた。

「というわけで依里、頼んだ」

 伊月から進行を譲り受けた依里が、タイマーをセットしたスマホをテーブルに置いた。

「犯人を突き止める材料は揃い、条件は主役と同じ。ネタバレは誰も見てない。では制限時間10分。推理タイムスタート」

 タイマーが動き出すと、七原家の姉妹たちは一斉に真剣な表情で沈黙した。

 八恵子だけが、何やらそこに取り残された気持ちになった。

(? 推理タイム? なんだろう?)

 いつ話しかけてもウェルカムそうな、というか1人だけあまり真面目に考えずに人の顔をきょろきょろ見てばかりいる珊瑚に、八恵子は尋ねた。

「あ、あの……何してるんですか?」

「え、何って? ああ、八恵子ちゃん初めてか」

 ソファの背凭れに腕を乗せて後ろを振り向き、珊瑚は教えてくれた。

「うちでは恒例なんだよ。視聴者でも答えが出せるようなミステリー映画やドラマは、こうやって真実がわかる前に停めて、みんなで犯人を推理し合うんだよね」

 一時停止され、静止した役者たちを映したテレビを指さして、珊瑚は言った。

「容疑者は4人。メイドとコックと伯爵と旅人ね。主役はまあ探偵側だからノーカン。誰が1番正確な推理ができるかっていう遊び」

「へえ~」

 なんというか、このお家ならではの遊びだった。みんな本物の探偵さんだし、本当に推理が当たったりするんだろうなあ。

「八恵子ちゃんも参加してみる?」

「いえ、わたし途中からちょっとしか観てないので……」

 珊瑚が困ったような顔で、人差し指を振った。

「もう~。八恵子ちゃん、正式な勤務時間はもう終わってるでしょ? 敬語じゃなくっていいよう」

「え、でも……」

「前に約束したじゃん~」

 一華がほほ笑みながら言った。

「いいよ、八恵子ちゃん。もう仕事時間は過ぎたんだしさ。リラックスして」

 イケメンスマイル。くう~、かっこいいぜ、一華さん。

 珊瑚が笑った。

「そうそう、八恵子ちゃんの砕けた口調聞きたいな~」

 八恵子はちょっと恥ずかしそうにしつつ頷いた。

「う~ん。わかりました……じゃなくて、わかったよ。珊瑚ちゃん」

「わ~。八恵子ちゃんが〝ちゃん〟呼びするの可愛い~」

 双葉が嬉しそうに小さく拍手をした。あなたの方が可愛いよ双葉さん。

 珊瑚が空いた席を指さした。

「そこ座りなよ」

「あ、ありがとう」

 左端の空いていた1人用ソファに八恵子は腰かけた。

 合間合間で談笑を挟みつつも、みんな真剣に推理していた。

(でもなんか、珊瑚ちゃんだけ余裕そうだなぁ……)

 八恵子は、さほど考えている様子のない珊瑚に訊いてみた。

「珊瑚さ……珊瑚ちゃんはもう犯人が誰かわかってるの?」

「うん! もちろん!」

 珊瑚は力強く頷き、親指を立てた。

「あたしの推理では、犯人は伯爵かな!」

「どうして?」

 珊瑚は自信満々に答えた。

「伯爵を演じてるあの俳優、いい役者だからね!」

「そういう推理もアリなの!?」

 珊瑚は余裕たっぷりの笑みで言った。

「ふふ、あたしの目に狂いはないよ、伯爵は間違いなく犯人だね! トリックとかは何もわからないけど!」

(こ、こんなに自信満々なのに核心がなにもない……!)

 珊瑚はあまり頭脳系得意じゃないって言ってたけど、本当に推理苦手なのかな。

 他の皆はどんな推理をしているんだろう。

 タイマーが鳴り、依里が取り仕切った。

「じゃあ、双葉姉から順に、犯人を発表していって」

 双葉がおっとりした口調で言った。

「わたしはコックさんかなー」

 一華が続いた。

「わたしは旅人が怪しいと思うね」

「わたしも旅人」

 依里。

「伯爵ゥ!」

 珊瑚。

「メイド」

 睦子。

「わたしもメイドさん~」

 奈々枝。

 伊月はスマホをいじりながら答えた。

「わたしはコックで」

 八恵子は7人の推理を観覧することにした。

 それぞれが犯人と推理した人物を挙げていくと、姉妹探偵のあいだで意見交換が行われた。

「コックはないんじゃない?」

 依里がジェスチャーを交えつつ話した。

「被害者の出血量はかなり多かったから、犯人はかなりの返り血を浴びたと思う。コックの白い調理服なら汚れたらすぐにわかるし、着替えた様子もない」

「あの格好のまま事件を起こしたとも限らんだろ」

 伊月がスマホをいじりながら反論した。

「上から返り血を防ぐものを着るなり、殺すときだけ脱いだなり、いくらでも考えられる」

 睦子が依里と一華のことを見て言った。

「旅人は頻繁に服装が変わってて確かに怪しいけど、それは旅人が屋敷にある衣服を盗んでるからだよ。序盤から今までの言動を見るに、旅人は盗みで生計を立てている臭いがする」

 一華がうんうんとうなずいた。

「わたしも旅人が盗人である推理には賛成だな。だからこそ旅人には動機があるよ。殺された夫人の身に付けていた宝石に関心を示していただろう?」

 双葉が頬に手を当てて首を傾げた。

「でも、旅人さんは細身だったよ? 夫人は心臓を包丁で一突きで殺害されているけど、旅人さんにそんな力あるかな?」

 依里が言った。

「それならメイドにだって殺害は無理だ。容疑者のなかで唯一の女性だしね」

「えーそうかなぁー」

 と、声を上げる奈々枝の隣で、睦子がぼそっと呟いた。

「普段家事してる人の筋力を甘く見ちゃいけないよ」

 ちらっと睦子が八恵子に目をやった。

(え、なんでこっち見るの!?)

 それからも考察を話し合う姉妹たち。

「凶器を1番持ち出しやすいのはコックだよ?」

「その理屈ならメイドも条件はそんなに変わらないよ」

「そもそもずっと厨房にいたコックが誰にもバレずに2階に上がることはできないよ。行動範囲が1番広いのはメイドだ」

「はいっ! 睦子お姉ちゃんと同意見です!」

「八恵子ちゃん、みんなが何言ってるかわからない」

「珊瑚ちゃん……」

「脳筋は黙ってて」

「いま誰だあたしの誉め言葉言ったの!?」

「誉め言葉じゃねえだろ」

 ふと、一華が顎に手を当てて考え込んだ。

「いや、待てよ……コックにも2階に上がる方法はある……直接画面に映るシーンはなかったけど……」

「……!」

 一華の言葉に、依里もピンとしたように目を開いた。

「!!」

 双葉と伊月も、何かに気づいたように顔を上げた。

 4人がキリッとして声をハモらせた。

『ハッ! 非常階段か……ッ!?』

(面白いな、この人たち……)

 さあ、姉妹のうち誰の推理があたるのか?

 解答編へ続く

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こういうお遊びするのですな……。
解答編が楽しみです。
そして潔く推理を放棄して勘と好みで答える珊瑚ちゃん、勇者ですな(;^ω^)

大久保珠恵

2018/7/25

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とじる

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