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鍵穴の風景 完結

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合計:8

アカって、いろいろありますよね。

1位の表紙

2位

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 「どうしよう。裏アカ見つけたよ。」

 (えっ?)

 「どうしよう、どうしよう私。私、裏アカ見つけちゃった。」

 そっと肩を抱いた。震えている。

 「落ち着いて瑞穂。このことを知ってるのは?」

 瑞穂は激しく首を振った。

 「誰にも、誰にも言ってない。今、秋葉に言った、それだけ。」

 「そっか。まずは落ち着こう。私も落ち着くから。」

 教室に自分しかいない時でよかった。

 「見つけたってことは、本当にあったってこと?」

 「うん。」

 裏アカ。どこの学校にでもあるような怪談話。

 「やっぱり、第一理科室の鍵穴を覗いたから?」

 瑞穂が震えた声で訊く。

 「そんなわけないでしょ。それにそのとき、私も一緒に覗いたじゃん。でも私、まだ裏アカ見つけてないよ?」

 瑞穂はまた首を振った。

 「違う、違うの。私も秋葉も一緒なんだよ。」

 瑞穂が何を言いたいのか、まだよくわからない。

 「第一理科室。あの話は本当だったんだよ。」

 第一理科室。今では使われることのなくなった教室。第一理科室での実験中に生徒が亡くなったという噂だったが、そんなニュースは聞いたことがなかった。

 『月曜日の一時間目に第一理科室の鍵穴を覗いてはならない。』

 そんなどこにでもあるような怪談話。月曜日の一時間目なのは、その時間に生徒が亡くなったからだとか。でも、この会談が広まってから、実際に四人の生徒が行方不明になった。それも何故か二人ずつ。

 「やっぱり、二人で見たのがいけなかったんだよ。」

 瑞穂が言う。

 「みんな鍵穴覗いて遊んでたもん。でも何も起きなかった。居なくなった子たちは、きっと二人で見たんだよ。だから、月曜日の一時間目、二人で第一理科室の鍵穴を覗いたらダメ、っていうのが正しかったんだ。」

 確かにあの日、月曜日の一時間目、私たちは文化祭の準備で授業がなかった。二人で怪談話で盛り上がり、第一理科室の鍵穴を覗いてみようと、どちらともなく言い出したのだ。

 鍵穴の中は、噂通りだった。

 「ただの理科室だったね。」

 私はそう言った。瑞穂も頷いた。しかし今思えば様子がおかしかった。

 第一理科室。先生によると鍵がなくなってしまったらしい。鍵の型が古くて修理が難しく、今では開かずの間になっているということだった。

 アカズノ間。

 「ねぇ、あの時、瑞穂は鍵穴から本当に何も見なかったの?」

 瑞穂はまだ震えている。そして何も言わなかった。

 『アカズノ間の鍵穴を覗くと、アカズノ間ノ裏へ送られる。』

 確かそんな話だった。通称「裏アカ」。瑞穂はそれを見つけたという。

 裏アカ。アカズノ間の裏?それは外ということだろうか。それとも裏の世界とか、そういう話だろうか。

 「裏アカって、何?」

 「ねぇ私たち、この話、何度してると思う?」

 急に震えの止まった瑞穂は冷静な声でそう訊いてきた。

 「え?初めてじゃないの?」

 でも考え始めると分からなくなってきた。

 「気づいたの、私たち、もう何度も同じ話をしてる。しかも何十回ってレベルじゃない。」

 「は?」

 わけがわからなかった。

 「私たち、とっくに行方不明なんだよ。それでずっと、もう何百回もここで同じ話を繰り返してる。」

 「落ち着いて瑞穂。何を言ってるの?」

 「私、鍵穴から見えたの、本当は。」

 やはり瑞穂は何か見ていたのだ。

 「何を見たの?」

 瑞穂は眼を合わせてきた。

 「私たち。」

 (え?)

 「震える私を、抱きしめる秋葉が見えた。」

 「え、何を言って…」

 瑞穂は私の言葉を遮って急に立ち上がった。

 「秋葉よく見て!ここ、私たちの教室じゃあない!ここが第一理科室なのよ!」

 大きな机、机ごとに備え付けられた洗い場、木の椅子、鍵穴から見た風景。

 「きっとここが、アカズノ間の裏。私たち、もう出られないんだよ!」

 瑞穂は泣きながら拳を硬く握りしめていた。

 「そんなことあるわけないよ。とりあえずトイレで顔洗ってきな。私は文化祭のパンフ折ってるから。まずは落ち着いて。そんなこと、あるわけないんだから。」

 「うん。でも秋葉もちゃんと信じてね。」

 パンフレットを折る。わら半紙で刷ったパンフレットを折っていると手がカサカサになってしまう。だから私は角と角を合わせたら、スティックのりで折り目を付けるようにしている。瑞穂に教わったやり方だった。折り目が綺麗に付くし、何よりも手が荒れない。

 「秋葉!」

 作業に夢中になっていると瑞穂が帰ってきた。

 「どしたの?」

 瑞穂の目が見開いていた。

 「どうしよう。裏アカ見つけたよ。」

修正履歴

  • 内容に影響のない範囲で、一部表現の変更や追記をおこないました。(2018/07/29)
  • 誤字、脱字の修正をおこないました。(2018/07/29)

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4

なんだかとても褒められていて照れてしまいます。
パンフ折るシーンはとても大事にしていたので、そう言ってもらえて嬉しいです。なんだかんだここまで「転」をひっぱってみました。僕もイイ仕事をしてくれた一文だと思っています。

作者:山羊文学

2018/7/29

5

【モノコン2018物語部門 予選通過のお知らせ】「月曜日の一時間目に第一理科室の鍵穴を覗いてはならない」というどこにでもあるような学校の怪談話。瑞穂と秋葉は面白半分で鍵穴を覗いてしまい――。その戦慄の結末は、二度読み必至。巧みな構成が光る、夏にぴったりなホラー作品。著者のホラー作品シリーズ化熱望。もっと読んでみたい。

6

ぎゃー!予選通過ありがとうございます!シリーズ化とか、私にはまだまだ、まだまだですー💦

作者:山羊文学

2018/8/1

7

山羊文学さん、はじめまして…!
表紙投稿させて頂きました…!
とても読みやすくどう展開するんだろうと思った矢先に、最後の一文の終わり方で、ゾッとして一気にひきこまれました!

よしとも

2018/9/8

8

とっても素晴らしい表紙です!私のアカウントとしては、初の女子高生となります。跪き方が個人的にだーいっぶ好みです。

作者:山羊文学

2018/10/2

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とじる

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