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二人で見た雪 完結

夏に降る雪

更新:2018/8/2

大久保珠恵

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薙刀部所属の女子高生、鹿島景都(かしまけいと)は、偶然人外同士の争いに巻き込まれる。
そしてクラスメイト、龍口晶美(たつぐちあけみ)が、「氷晶の精霊」であることを知る。
そして、彼女にも人外と戦うべく、晶美の両親から呪具(じゅぐ)が授けられるのだが!?

1位の表紙

目次

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1 呪具をくれるって、つまりそういうこと?

 思い出す。

 口だけ巨大な、のっぺらぼうの化け物。

 生き物のように乱舞する毬。

 それが当たったところから上がる爆炎。

 そして。

 澄んだ氷の結晶の美しさの人外。

 ダイヤモンドを貼り付けたような鱗。

 霜のようにきらめく翼。

 宝石で飾られた短剣のような爪。

 それが、私が「普通の人間の世界」から踏み出した時に見た光景だった。

 ◇ ◆ ◇

 案内された、龍口晶美(たつぐちあけみ)くんの家は、この近辺でもひときわ高くそそり立つ、高層マンションの二十四階、すなわち最上階だった。

 本当だったら、クラスメイトがそんな明らかに超お坊ちゃまだったら、それなりに驚くところだ。

 だけど、さっき見たものの衝撃のせいで、なんだか現実味が上滑りしてどこかに流れてくみたいにふわふわしている。

「大丈夫、鹿島さん? やっぱり、暑い中、他人の尾行なんかするからだよ」

 龍口くんの自宅マンションのエレベータに乗り込む前、龍口くんに顔を覗き込まれた。

 彼としては心配してくれているのだろう。

「うん……ごめん。大丈夫。ちょっと……さっきのことでびっくりしていて」

 私は、何だか龍口くんの顔を真正面から見られなくて、つい顔を伏せた。

 龍口君は、今更ながら、驚くばかりの美少年だ。

 シャンパンゴールドというのか、繊細な淡い金色の髪は優雅にうねり、目は吸い込まれるような深い青に、よく見ると銀色の斑点が散ってる。

 くっきりとした目鼻立ちは、くらくらするような耽美さをたたえた美形だ。

 背もすらりと高く、均整が取れていてモデルみたいだ。

 見ていると、何だかきらきら光る、氷の結晶を思い出す。

 夏だというのに。

「まあ、普通の人間は、すぐには受け入れられないよなあ。鹿島さんは冷静で助かったよ」

 そう評されて奇妙な感じを受けた。

 多分、「そう見える」ってだけだろう。

 私は、自分でも自覚しきれていないほどに動揺している。

 薙刀の試合で、どんな強敵と出会っても、ここまで動揺したことなんかない。

 エレベータで最上階の龍口くんの自宅まで上がり、玄関を開けて中に招き入れられた。

「さ、入って。冷たいものくらいはあるから」

 内部の空気はむっとしていた屋外に比べて、ひんやりと快適だった。

 ほっとした自分の肉体の反応から、自分がどれだけ暑さに消耗していたのかが理解できる。

「あら、お帰り、アキ。そのお嬢さんが、巻き込んでしまったっていう子ね?」

 リビングダイニングで出迎えてくれたのは、目を見張るような美しさの、白人系の女性だった。

 女優だってここまでではないっていうくらいの、なんというか魔力があるようなくらっとする美貌だった。

 おとぎ話の、魔法で何でもできる妖精みたいだ。

 目鼻立ちの雰囲気や、目や髪の色が共通しているところから、龍口くんと血縁があることがわかる。

 それにしても若いな、と私は不思議に思い。

 すぐその疑問を打ち消した。

 考えてみれば、龍口くんは人間ではなく、人外なのだ。

 お母さんだって、当然人間ではないだろう。

「お母さん。彼女が、電話で話したクラスメイトの鹿島景都(かしまけいと)さん。この暑い中、結構激しいことに巻き込まれて驚いてるはず。何か冷たい飲み物でも、出してあげて」

 龍口くんがそう彼のお母さんに要請し、私を促して、食卓であろうゆったりした座席に着かせた。

 私は落ち着かず、明らかに私の実家とは数ランク違う龍口君の家を見回した。

 私の家だって、今日日有難いことに貧乏ではないけれど、流石にここまでではない。

「急なことでびっくりしたでしょうね。息子がヘマをして驚かせてごめんなさいね。私は晶美の母親で、ヴィーヴルのセレストという者よ。ヴィーヴルっていうのはご存知かしら?」

 涼し気な水面の模様のガラスの器に、盛りつけられたバニラのアイスクリームとパパイヤのソース。

 アイスのカフェオレが添えられていた。

「晶美くんの裏アカを見つけた時に調べて……。確かフランスの、額にガーネットを持っている、魔法の得意な精霊さんですよね?」

 私がどきどきしながら自分なりに調べたことを口にすると、セレストさんは嬉しそうににっこりした。

「ふふ、最近では若い人がヴィーヴルって種族を呼んでくれることもなくってね。私の故郷でも、この国でも。あなたのような若い子に、知ってもらえて嬉しいわ。だから、いいものあげる」

 セレストさんが軽くウィンクし、空中で何かを掴みだすような仕草をした。

 次の瞬間、彼女の真っ白な大理石みたいな手の上に、寒色系の宝石と貴金属の上品なパーツを連ねた、何か首飾りのようなものが出現していた。

「これ……?」

 私は思わず覗き込む。

「また今回みたいなことがあったらまずいでしょう? あなたをちょっとした衝撃や魔法からは守ってくれる、護符みたいなものよ。保険だと思って、身に着けていて。暑過ぎや寒すぎからも身を護ってくれるから」

 そう言われて、私はそれを受け取り、そっと首にかけた。

 ふわっと、肌の上を心地よい風が撫でたような気がする。

「何かに護られた」という感覚が、確実にあった。

「まあ、ほら、ゲームで鎧とか着るだろう? それみたいなもんだよ。普通の拳銃なんかで撃たれたくらいでは、びくともしなくなるから」

 龍口君にそう言われて、私はひぇっと奇妙な声が出た。

「えっ……いいんですか、そのような貴重なもの……」

「ああ、人間から見れば凄い性能なんでしょうね? でも、私たちくらいのランクの人外からすると、そう大したものでもないのよ。それこそ、身の危険がある人にお守り程度のものとして渡す品よ」

 セレストさんにそう言われて軽く肩をすくめられ、本当にこんな凄いものが、この人にとっては大したことがないんだと思い知る。

 私は深々と頭を下げた。

「ありがとうございます。大事にします」

 でもちょっとひっかかることがある。

「あの、身の危険て」

「ああ、それはね」

 龍口君が言いかけた時、この家の玄関の扉が開閉する音がした。

「あら、帰ってきたわ。龍神様よ。きっと、彼もいいものくれるわ」

 直後、リビングダイニングに入ってきたのは、背が高くがっちりした、精悍な男性だった。

 目元のあたりに、龍口君との共通点がある。

 彼が龍口君のお父さんだと、すぐに見当がついた。

 精悍で男性的だが、何だか妙に色っぽいような感じだ。

「御令嬢、あなたが息子を助けて下さった方か」

 そう言われて、私はその男性に向けてぶんぶん首を振った。

「いえ、私の方がご子息に助けていただいたんです」

「まあ、どの道、あなたは自分の力で戦わねばならなくなることは間違いない」

 どういうことだろう。

 私はかなり怪訝な顔をしていたはずだ。

「申し遅れた。晶美の父で、龍口忍と申す。さて、こういうことに首を突っ込まれたからには、最低限、ご自身の身を護る力が必要だ」

 私はきょとんとした。

「それはどういう」

「あのさ。一回こういうことに巻き込まれた人は、二度、三度と同じように、悪い人外なんかに襲われる可能性があるんだ。ほら、幽霊が見える人には寄ってくる、なんていうだろう? それみたいなもん」

 龍口君が、しれっと凄いことを口にした。

 私が目を白黒させていると、

「そういう連中に付け入らせないためにも。これをお受け取りいただきたい」

 忍さんが、奥さんのセレストさんと同じように、空中で何かを掴みだすような仕草を見せた。

「これ……?」

 私は目を見張る。

 彼が私に差し出したものは、一目で上等な作りとわかる、大ぶりな薙刀だったからだ。

 しかも、模造ではない。

 刃引きしていない、本身の薙刀だ。

 人を殺せるようなやつ。

「うちのお父さんさあ、八岐大蛇(やまたのおろち)とかの親類なんだよ。ほら、日本の神話で、八岐大蛇の尾から武器が出てきた、ってあるだろ? あれみたいなもん。さっき見た妖怪なんかじゃ、太刀打ちできない能力があるから」

 龍口くんに言われて、私はぎょっとした。

 それはひょっとして。

「それって……もしかして、あの、三種の神器とかいうアレ……」

「まあ、性能は近いものがあるの」

 しれっと、忍さんはうなずいた。

「どの程度能力を引き出せるかは、持ち主次第じゃが。御令嬢は、拝見したところ、かなり真面目に鍛えておられるようじゃな。十分に使いこなせるじゃろう」

 私があわあわしていると、龍口くんがつんつんと制服の袖を引っ張った。

「受け取ってやってよ。拒まれたりしたら、古株人外としてかなり立場悪いんだ」

 そう言われては、恥をかかせるわけにはいかない。

 私は一礼して受け取ることにした。

 と。

 どういう仕組みか、それは一瞬で私の左手首に、腕時計に変化して巻き付いた。

 私は目を真ん丸にするしかない。

「さあって、ここからが本番よ。あなたに、この世界の裏側について教えてあげる。小さな島から、巨大な海へと船出する準備はいいかしら?」

 セレストさんが、つん、と私の鼻をつついた。

 私の生唾を呑み込む音が、妙に大きく響いた。

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とじる

2 初めての実戦、私、高校生ですけど!?

 この世界には、いわゆる人類とは別種の知的生命体、大まかに「人外(じんがい)」と括られている生き物が、かなりの数存在している。

「人外」の人たちは、半分別世界の生き物のようなものだと、龍口くんのご両親は教えてくれた。

 ゆえに、この世界の物理法則に必ずしも従わない。

 魔法だの妖術だのといった怪しげな術が使えたり、人間にはない特殊な部位で戦ったりといった超常的なことができる。

 例えば、私が見た、龍口くんのあの冷気を操る術は、人外としての特殊能力なのだそうだ。

 そして、一部の上位人外は、自分の持っている特殊能力を、何か物品――武具や装飾品のようなもののことが多い――に込めて、他人に分け与えることができるということ。

 私がもらった護符と薙刀は、それだ。

 そしてここからが肝心なところ。

 人外の中にも、性質は色々な者がいる。

 人間に犯罪者や犯罪者傾向の人間が、ある一定の割合存在するように、人外の中にも、性質の良くない人外、というのが存在するらしい。

 龍口君一家のように、人間の中に混じって穏健に暮らしたい人外の人たちにとって、こうした性質の狂暴な人外は悩みの種だという。

 こうした存在を野放しにすると、あっという間に人外社会ばかりか、せっかく溶け込んでいる人間社会も荒れ果てて、住みにくくなってしまう。

 これは、今までの歴史が証明しているもので、議論の余地はないことらしい。

 今の時代に中世、と呼ばれるような時代区分の時は、かなりの数の凶悪人外が野放しにされたせいで、人間の社会が荒れた。

 そういう連中が直接的に人類を害するのもあるが、性質の良くない人間が、そうした凶悪人外を利用して悪事を行うということも多く起こったからだ。

 かくして、人外たちの間で協定が結ばれた。

 凶悪な人外は排除すべし。

 また、凶悪な人外と手を組みかねない邪悪な傾向の人間もまた、独自に取り締まるべし。

 この考えに基づいて、かなりの数の人外が、治安維持の活動に貢献しており。

 龍口晶美くんもまた、この考えに基づいて、凶悪な人間や人外を取り締まって回っているのだという。

 ◇ ◆ ◇

「はあ……」

 私は、大きく息を吐いた。

 夏の夕暮れ、まだ空気はむわりとしている。

 両親が子供の頃は、夕方になると涼しくなって、野外で時間を潰す、なんて夏の夜の過ごし方もあったみたいだが、子供の頃から暑さにやられていた私からすると、ちょっと信じられないくらいだ。

 もう数千年も生きている龍口君のご両親からすると、確実に地球は温暖化しているという。

「私が、悪質人外並びに人類の取り締まりに参加かぁ~~~……」

 目の前に長い影が落ちる。

 私と、並んで歩いている龍口君の二人分。

 歩道は人気が鳴く、車道を通り過ぎる車の音だけが響いた。

「あくまで、鹿島さんの日常生活に支障をきたさない程度でいいんだ。それ以上に、これは鹿島さんの身を護ることが第一の目的だ。人外を認識している人間に、なぜか悪質人外は『寄ってくる』んだよね」

 龍口君が、彼の家で説明してくれたことをかみ砕いて、もう一度説明してくれる。

「今日からトイレの窓を夜覗いたら、変な人影がぁ~~~って生活なのかあ……」

「あ、むしろそういうのはない。鹿島さんが身に着けてるくらいの呪具(じゅぐ)を持っていれば、その辺をうろついて気弱な人間を脅すくらいの下級霊は寄ってこないよ。むしろ、鹿島さんが認識できる人外がいたら、かなりの強力さの人外ってこと」

 これはほっとしていいのか、哀しむべきなのか。

 正直、ホラー系は大の苦手だが、こうなったら仕方ない。

 見た目がキショイくらいで、殴り倒す手段があるなら、よく考えたら人間と変わらないのではないか。

 そう考えると、少しは気が楽だ。

 ホラー系の何が嫌って、人間と違ってどうやって対抗していいか、わからないことなのだから。

 私は、隣の龍口くんの顔をちらっと覗き見た。

 うん、綺麗な顔だ。

 クラスどころか学校中の女子にもてはやされるのもわかる。

 本人は、ごく淡々としていて、告白されても断ってばかりいるっていう話は、聞いていたけど。

 私、そういえば、なんで龍口君の裏の顔を暴こうと思ったんだろう。

 考えてみれば、友達が告白してあっさり玉砕、泣きじゃくっているのを見ていられず、龍口君に腹を立てていたのだ。

 ――ちょっとイケメンだと思って気取りやがって。

 という訳だ。

 それが、なんでこうなった。

 龍口くん本人どころか、何だか神様クラスらしいご両親とまでご縁があった。

 本来なら神話クラスの試練をかいくぐらなければならないところを、龍口くんの側にたまたまいて、事件に巻き込まれたということで、あっさり呪具をもらった。

 私はアレか。

 スサノオかヤマトタケルノミコトか。

「あれ」

 龍口君が急に立ち止まった。

「龍口君?」

 見れば、そこは私の家にもほど近い、古い団地跡だ。

 建物は残っているものの、窓は破れていて、入口に鎖がかけられ、立ち入り禁止の表示になっている。

 もう少しで取り壊される……と聞いていたが、それまでにということからか、不埒な若者が、肝試しということで入り込むことが多くて、地域で問題になっていたはずだ。

「『いる』ね、ここ」

 龍口君の口調が引き締まっている。

「いる? 何が?」

「ここさ、誰か入り込んで戻って来なかったりしなかった?」

 龍口君に訊かれて記憶をたどる。

 確かに、ここに肝試しに行って、そのまま戻ってこなかった奴が去年いたはず。

 そう伝える、までもなかったかも知れない。

「!? ちょっと、あれなに!?」

 私は思わず裏返った声を上げていた。

 埃まみれの玄関扉がひとりでに開いて、その奥から人影が出てきたからだ。

 いや、それを人影と言っていいものか。

 枯れ枝を組み合わせた模型に、腐れかけの生肉を巻き付けたような。

 そんな不気味な「何か」が、ぞろぞろと出てきた。

 一体二体じゃなかった。

 二十体かそこいらはいる。

 いやもっと。

「ちょうどいい。鹿島さん、肩慣らししてみなよ」

 龍口君がそうさらりと口にして、渡された鎖をくぐり、廃団地の敷地に入った。

 鎖を持ち上げて、私にも入れと促す。

 ……マジ!?

 しかし、神話クラスの呪具をもらった手前、逃げる訳にはいかない。

 それにこいつら、ほっといたらまずいんじゃないだろうか?

 行方不明が、バカな肝試しの大学生だけに留まる保証はないんじゃないか?

「ち、ちゃんと、サポートしてよね……!!」

 私は意を決して、敷地に入った。

 龍口君のお父さんに説明された通りに、意識を集中する。

 私の左手首に巻き付いていた平凡な時計が、一瞬で人間の身長を超える大振りの薙刀に変化する。

「数が多いな。まとめて攻撃してみなよ」

「ええっと、まとめて薙ぎ払うイメージを薙刀に注げばいいんだっけ!?」

 私は薙刀に意識を集中した。

 数m先にまで迫っていた不気味な人外に、激しい稲光が降り注いだ。

 大音声。

 きっと周囲の人は、ゲリラ豪雨の前触れだと思うだろう。

 激しい稲妻が、薙刀の先から飛び出していた。

 無数の首を持つ伝説の大蛇みたいに、稲妻は、多数に分かれて、その人外たちを襲った。

 動物の死骸を露天で焼いた時みたいな、凄い悪臭が立ち込める。

 形容しようのない輝きに目を奪われていた私が、改めて見渡すと、白っぽい灰になった人外たちが、ずくずくと崩れていくところだった。

 後に残ったのは、強烈なオゾン臭と、灰の山。

 ひゅうっと、龍口君が口笛を吹いた。

「やるじゃない」

「……!! 龍口君!!」

 私は叫んでいた。

 ちょうど、団地の屋上から、ぼたぼたと何かが「降って」きていた。

 いままでそこにいた人外に、質感は似ている。

 腐肉みたいな赤黒い、だが、完全に骨のない、ゲル状の何か。

 見ると、それは団地の屋上から外壁から、内部のそこここまで、大繁殖していた。

 ぼたぼたと降り注ぎ、こっちに……

「鬱陶しいな!! 多けりゃいいってもんじゃないんだよ!!」

 龍口君が、さっきも見せたあの「氷晶の精霊」の姿になった。

 視界を、強烈な雪嵐が吹き過ぎ……

「ああ……」

 私はぽかんとした。

 そこにあるのは、まるで外国の氷河のような、巨大な氷の壁だった。

 団地の建物全体が、氷漬けになっている。

 目の前で、フリーズドライされたかのような脆さになったスライム人外が、ぼろぼろ砕けていくところだった。

 空気が凍っている。

 真冬の北海道みたいなダイヤモンドダスト。

 それに加え、夕立ちが凍ったのか、ちらちらと雪が降り出した。

 真夏の雪が、私たちの目の前にしんしんと降り注いでいた。

「綺麗だね」

 私が不思議そうな顔で、でもそんなことを言うと、龍口君は笑った。

「自分に誇りを持って進む人は綺麗さ。君みたいにね」

 なんで龍口君はそんなことを言い始めるんだろう。

 私は、頬の熱を、雪が冷ましてくれることを願いながら、真夏の雪を見ていた。

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  • 誤字、脱字の修正をおこないました。(2018/08/02)
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