9

【R15】 15歳未満の方は移動してください。この作品には <残酷描写> が含まれています。

みらくる★ナポリたん

家族全員名探偵

更新:2018/10/18

湊あむーる

修正履歴

  • 誤字、脱字の修正をおこないました。(2018/08/09)

修正履歴を見る

ポイント
763
感情ボタン
  • 45
  • 11
  • 0
  • 1
  • 1

合計:58

ツイッターで皆のお昼ご飯を教えて!ってね、モノガタリ―のアカウントが呟いた時、ボクはナポリタンと返信したのです。そうしたら、おそらくやっしーさんだと思いますが、2日くらいしてから「みらくる★ナポリたん」を書いてちょ、と冗談でリプライをくれましたヽ(^o^)丿
ええ!本気にしてみせますとも!
そう思って、モノコンのお題から「家族全員名探偵」を選び、書いてみようかと思いますた。
きっと恐らく、もしかして、探偵のお話だと思います。(そんな感じぜんぜんしないタイトルですみません笑)

週一更新を目指します。
でもね、座り過ぎて骨盤うっ血の思わぬ症状と闘いながらの執筆になってしまい、出来れば、のつもりの目標です。コマッタモンダ(>_<)

投稿された表紙はありません

この物語の表紙を投稿する

目次

すべてのコメントを非表示

1.真夏の夜の不審者と白ナポリタン

「……ったく、夏の警らは暑くてたまったモンじゃねえな……」

 夜だというのに気温は三十度を超えている。

 警ら用の自転車に跨り、担当区域内を巡回するうちに、制服は汗でびっしょりになっていた。

「夏服といっても、こう暑いんじゃサウナを身に纏って警らをしているのと変わらん!」

 片腕でハンドルを握りつつ、青いワイシャツの胸倉を掴む。

 汗ばむ生地は防刃の為のベストで覆われており通気性はよろしくない。

 それもそのはず、このベストの中には金属メッシュが仕込まれている。

 猛暑の夏とはいえ快適な仕様にするなどとあっては、人命軽視もいいとこだ。

「うむ?」

 キキッと軽くブレーキを掛け、自転車を止める。

 夜の暗闇の向こうには私立の高校のフェンスが広がる。

 その上を軽快に乗り越え、校外へと抜け出る黒い影。

「待ちなさい!」

 ピィーッと警笛を鳴らし、気が付けば必死に影を追っていた。

「くッ! なんてすばしっこい野郎だ!」

 全力でペダルを漕ぐも、視界を逃げる黒い人影はまるで猫のように素早い。

 そうこうしているうちに、影は隣接する児童公園の茂みの中に消えた。

「どこだ? どこに消えた?」

 自転車を乗り捨て、懐中電灯を手に遊具の裏へと回り込む。

「出て来い! 泥棒猫が!」

 ガサガサと茂みを掻き分け、灯りで照らす。

「にゃんで分かった? にゃーん!」

 その時、茂みの中の黒い人影がサッと懐から何か得体の知れない物体を取り出すと、大急ぎで自らの口の中へと運び込んだ。

「何だ? 貴様! 何を口にしたっ?」

 懐中電灯を黒い人影に向けたその瞬間だった。

「ぶわっはっはっは! だあーはっはっは!」

 警察官は唐突に腹を抱えて笑い始めた。

「あばばばっ……あばばばっ……」

 口から泡を噴き、白目を剥き出しにし、巡回中の警察官がその場に崩れ落ちる。

「かはっ……」

 喉を押さえ悶え苦しむ制服姿の警察官を尻目に、黒い人影がほくそ笑む。

「ふふっ」

 ブウンと虫の飛ぶ街灯の下、ただ一人、動かなくなった警察官が天を仰ぎ続けた。

  ◇

「ふわぁーい! 白ナポお待ちぃーっ!」

 ふざけた感じのやる気の無い声。

 少女のやや高めの声とともに目の前に置かれたのは、真っ白な麺がニンニクの香りを醸し出す、溶き卵でコーティングされた白ナポリタンだった。

「ちょっと? 那波里(なぽり)ちゃん? ボクが頼んだのはさっ、オムナポリタンだよ?」

 真夜羅(まよら)は襟首に結び掛けの紙エプロンをギュッと締めると、目の前のオレンジ髪の少女を睨み付けた。

「っていうか、真夜羅くんはあ、お客さんじゃないんだから、賄いの白ナポで十分だと思うんですけど? ってかてか、この白ナポだって今では表メニューの仲間入りした人気選手の代表格なんですけど?」

 首を傾げる少女の頭にちょこんと載せたホワイトブリムから、はみ出る橙髪のツインテールが揺れる。

 メイド服と見紛うような、明るめのオレンジ色のドレスに、純白のエプロンが輝かしい。

「ちぇっ。分かったよ! じゃあ、おとなしくオムナポリタンは諦めて、この白ナポリタンとか言うのを頂くことにするよ! ……って、うわあああああっ? な、なにコレ? すごい美味しい!」

 ブツクサと不機嫌そうに文句を言った少年も、その眼前の白い味覚に驚愕の雄叫びを上げた。

「に、ニンニクと、た、卵の超絶絶頂ハーモニーっ! 粉チーズとも良く合うっ! カルボナーラみたいだけど、ニンニクが効いていてスパイシーっ!」

 フォーク片手に少々行儀の悪い、少年の独り善がりな食レポが続く。

「あはっ。真夜ちん、明日終業式だからって、油断するなよーっ。食べ過ぎてお腹壊しちゃったら、夏休み台無しだぞー」

 コップに水を注ぎに来たのは、ショートの青髪が眩しい年下の少女だ。

 青いドレスに純白のエプロン、頭の上にはホワイトブリムを載せ、この少女の制服もナポリタン屋のウエイトレスというより、まるでメイド喫茶のメイドだ。

「未衣都(みいと)ちゃんだって、明日、終業式だろ。自分も人のこと、言えないだろっ……?」

 モグつく口の中にコップの水を流し込んだ真夜羅が、ショートの青髪の少女に抗議の視線を投げ掛ける。

「うふふ。真夜羅君。うちの娘二人と、夏休みに遊んでやって頂戴ね!」

 その時、店の奥の厨房から、白いコックコート姿の中年の女性の笑いかける声が聞こえた。

「え? あ、はい、そ、そうですね……できたら、そうしたいと思っています……」

 真夜羅がドギマギとした返答をすると、

「お母さん、わざわざそんなコト、厨房から言わなくてもいいじゃん!」

「そうだぞー。ママちんはヨケーナ世話世話なことばっかし言っていけない子だぞー」

 オレンジの髪と青い髪の姉妹が揃って厨房の中年女性に文句を返す。

「あらあら。二人揃って反抗期ね!」

 那波里と未衣都の母親であり、この店の副料理長である香流母(かるぼ)は、細長いコック帽であるトック・ブランシュの下に温和な笑顔を覗かせた。

「反抗はしても、犯行には巻き込まれるなよ! 夏のアバンチュールな事件は、かよわい女子高生と女子中学生を獲物にしようと狙っているんだからなっ?」

 続けて厨房から渋い男の声が聞こえる。

「お、お父さんっ? 何でボクの方を睨むんですかっ?」

 刺すような鋭い眼光が、真夜羅の首元の紙エプロンを射抜く。

 ハラリ、と気合いで切断され脱げ落ちる紙エプロン。

「ははは。こう見えて私は夏の夜の事件には敏感なんでね。ぐるぐるとフォークに巻き取られるパスタのように、どこぞの野獣に私の大事な娘たちが巻き取られたら敵わんからね……」

 そう言って、那波里と未衣都の父親、この店の料理長でもある威霞(いかすみ)が、口元に蓄えた髭を撫でながら、厨房から真夜羅に微笑みかける。

「ははは、とか笑って、脅迫じゃないですか、やってることは……」

 真夜羅が新たな紙エプロンをその首に巻き直そうとした、その時だった。

 ウーッ、ウーッと、けたたましいサイレンが店の外に鳴り響く。

「何だ? 何かあったのかなあ……?」

 真夜羅が店の入り口のドアを見れば、そのガラスには回転する赤色灯とともに走り去る緊急車両の列が見えた。

『警視庁から入電中! 警視庁から入電中! 巴素太(ぱすた)学園に侵入した不審者が、伊太利犬(いたりいぬ)公園へ逃走。巡回中の警察官一名が死亡した模様。繰り返す。巴素太学園に……』

 すると厨房の奥の方から、甲高い女性の声でまるで警察無線を聞いているかのような、緊迫した音声が聞こえた。

  • 11拍手
  • 1笑い
  • 0
  • 0怖い
  • 0惚れた

1

新連載! 続き楽しみにしています
今回の登場人物のお名前もナイスネーミングです(^-^)

Hinaminami

2018/8/11

2

えへへ(^^♪ありがとうございます!!!いい意味で、適当がモットーです笑……こちらの作品はすこし力を抜いて書かさせていただこうかと思っております笑(それだけギロチーヌちゃんはけっこう真剣に書きました(^^♪)

作者:湊あむーる

2018/8/11

3

登場人物の名前がユニークで引き込まれる面白さのある内容で、さすがと思いました。

4

あふりかのそらさん。コメントありがとうございます!!登場人物の名前、お褒め頂き、光栄ですヽ(^o^)丿

作者:湊あむーる

2018/8/17

コメントを書く

とじる

2.ナポリちゃんはフォークの使い手

「おっと! いけねえな。これは私達の出番のようだ」

 厨房の料理長、威霞がそそくさとコックコートを脱ぎ始める。

「ええ、そのようね。どう考えても、これは私達の出番としか思えない展開だわ!」

 すると、料理長に続くように、厨房の香流母もコックコートを素早く脱いだ。

「なになにっ? ねえ、キミたちのお父さんとお母さん、急にどうしたのっ?」

 真夜羅が厨房の夫婦の様子を訝しむと、

「合点承知で未衣とんも出動しちゃうぞー! ねねっ、那波たんも早く行こーっ!」

 すかさずビシッとオデコに手を当てて敬礼の仕草をして見せる青髪ショートの妹ウェイトレス。

「あたしはパス。しとこっかな……」

 ツインテールのオレンジ髪の姉は、店内をそそくさと見まわしながら、浮かない表情で答える。

「だからさっ! 出番とか出動とか一体どういうことなのさあっ?」

 真夜羅はワケが分からず、厨房の夫婦と、青髪ショートの妹ウエイトレスを見やった。

「あれっ? お父さんもお母さんも、いっ? 居ないっ……?」

 しかし、厨房を見れば、もぬけの殻だ。この店の料理長と副料理長は、一体、どこに消えたというのか。

「未衣都ちゃんも居ないっ……?」

 そして、つい今しがた目の前で敬礼をして、おどけていた青髪ショートのウエイトレスも店の中からその姿を消していた。

「那波里ちゃんっ! じ、事件だ! お父さんもお母さんも未衣都ちゃんも消えたっ! も、もしかして、ゆっ、誘拐事件っ……?」

 店内に残るツインテールのオレンジ髪のウエイトレスに、真夜羅が緊迫した面持ちで迫る。

「まさか。困るのよねっ。厨房にこんな無線傍受の仕掛けなんて作るから……」

 那波里が厨房の奥から一匹の大きなカタツムリを手に苦笑する。

 少女の掌からはみ出る程の渦巻き模様は、真夜羅の家で焚く蚊取り線香の渦巻きよりも大きそうだ。

  そんな異様な大きさのカタツムリが手の上を這っていてもオレンジ髪の少女は、嫌な顔一つせず平静だ。

「うわっ? ナニソレっ? なんでこんな所にカタツムリなんか居るんだよっ? ま、まさか、調理してメニューのナポリタンに混ぜる用?」

「ううん。造り物の機械よ。ココをこうやって回すとね……」

 そう言って那波里が掌の渦巻きをカチカチと回す。

 ウオンウオンと低いモーター音を鳴らし、その目玉の付いた触覚を互い違いに伸び縮みさせる巨大なカタツムリ。

 すると、ジジジジという耳障りなノイズとともに、その口元から警察無線のような音声が発せられた。

『あー。こちら、屁津波(ぺつぱ)警部である! ワシの覆面パトちゃんであるが、パトライトを点け緊急走行したくても、渋滞に巻き込まれ過ぎて動けんでいる! おまえら! 道を空けんかい! 空けんと銃をぶっ放すぞ! いいのか? ワシは本気だ!』

 カタツムリの口を通じ、しゃがれた男の怒鳴り声が厨房に響き渡る。

「うわあっ! なんだかコワそうな警部の声が聞こえるよっ? これ、本物の警察の無線なんだ?」

 真夜羅がカタツムリの声に怯えれば、ズギュンズギューンという拳銃の音らしき発砲音が無線越しに響いた。

「この警部、気が短くて、いっつもピストル撃つのよね……」

 那波里は、そのつぶらな茶眼を困惑の色に染め呟いた。

「いっつも警部がピストルを撃つのを知っているって、那波里ちゃんのお父さんお母さんたちは、いつも厨房で警察無線を盗み聞きしているのかいっ?」

 真夜羅の疑問はますます膨れ上がるばかりだ。

「ええ。その度にこうやって店をほったらかしてね。まったく、イヤになっちゃう!」

 厨房の橙髪の少女が溜め息混じりに店内へと目を向ける。

「ちょっと? 俺の注文したナポリタンまだかよっ?」

「オイオイっ! コック達がどっか行っちまったみたいだけど、ちゃんと作ってんのかよっ……?」

 テーブルでは殺気立った客達が罵倒の言葉を厨房の那波里にぶつけていた。

「どっ、どうすんだよっ? 那波里ちゃん! お客さん達、皆、すっごい怒ってるよっ?」

「でしょー。だからいつも、尻拭いの為にもあたしが店に残んないとマズイのよー」

 那波里は「ふぁ~あ」と欠伸にも似た溜め息を吐くと、エプロンからササッと一本のフォークを取り出した。

「仕方ないわねえー。いくわよーっ!」

「フォークなんか取り出して、いくってどこへいくのさ?」

 フォークを手に掲げ、那波里がウインク。

 すかさず首を傾げた真夜羅がツッコミを入れる。

「みらくるくるくるーっ! ナポリんちょ!」

 厨房で手にしたフォークを那波里がクルクルっと回せば、フライパンにボオッと火が点き、茹で置きしたパスタがクルクルと宙を舞い、瞬時に炒められる。

 並行してポンポンと浮き上がってもう一つのフライパンに飛び込んだベーコンやマッシュルーム、玉ねぎ、ピーマンがケチャップとともに炒められる。

 自動で飛び上がって絡み合うソースとパスタが、用意された皿へと盛られていき、瞬時に客の待つテーブルへと飛び込んでいく。

「おおうっ? いつの間に俺の目の前に大盛りナポリタンがあっ?」

「まるで魔法だっ! この店のウエイトレスは魔法を使うのかっ?」

 目の前に飛び込んで来た突然のナポリタンに、テーブルの客達が驚愕に目を丸める。

「うわあっ? 那波里ちゃんっ? な、何だよコレっ?」

 真夜羅も一連の光景に、ただただ口を開けたまま驚くのみであった。

「どぞ! ごゆっくりー!」

 愛想笑いのオレンジ髪ツインテールの少女は、客達にお辞儀をすると、いきなりグイっと真夜羅の手を引いた。

「な、なんだよ、いきなり?」

「いいから! 行くわよ!」

 そそくさと厨房の勝手口から外へと飛び出していく那波里と真夜羅。

「ホントはこんなところでこんな技、使いたくないんだけどねっ!」

 夜道へ飛び出すなり、ふたたびエプロンからフォークを取り出した那波里は、おもむろにオレンジ色のスカートの間に跨るようにしてフォークを挟み込んだ。

   その途端、ムクムクとフォークが膨れ上がっていく。

「さ、乗って!」

 フォークの爪の部分をお尻の側に向けてヒラリとスカートが靡けば、股の間に挟み込んだ銀色の輝きが真夜羅を誘う。

「は? 何、言っちゃってんの? っていうか、何で今、フォークが大きく膨れ上がったのさ?」

「うるさいわね! 乗るの? 乗らないの? 白ナポ食べて、食後のいい散歩代わりになるかもしれないわよ?」

 戸惑う真夜羅に、片目ウインクで切り返すフォークの柄の上の少女。

「こんな魔法使いの真似事のオママゴトにボクが付き合うわけないだろっ!」

「頭で分からないなら、身体で分からせてあげるもん!」

 憤る真夜羅の腕を無理やり引き、強引にフォークの柄の上に跨らせる那波里。

「ちゃんと乗ったわね? んじゃ、行くわよーっ! みらくるくるくるーっ! ナポリんちょ!」

 那波里が何やら意味不明な呪文のような言葉を唱えると、フワリとフォークが宙に浮き上がった。

「うわわわわっ? う、浮いた? フォークが浮いたっ?」

 真夜羅の驚きは止まらない。

 夜の住宅街の家々の屋根を超え、一気に空高く舞い上がる一本のフォーク。

「ど、どどど、どーゆーことだよっ? フォークが空を飛ぶなんて聞いたことないよっ? ボ、ボクは夢でも見ているのかあああーっ?」

「危ないわよっ? 暴れないで、ちゃんと私に掴まってっ? 落っこちないように、フォークの爪で突き刺しておいた方がいいかしらっ……?」

 動揺に身を震わせる真夜羅を、窘める那波里の言葉は、けっこう辛辣だ。

「フォークの爪で突き刺すって、ボ、ボクはベーコンでもソーセージでもないよっ?」

 少女の恐ろしい言葉に反論しつつ、真夜羅は目の前のオレンジ色の制服の肩を掴んだ。

「そんな犬のお手みたいに、ちょこんと肩に手を置かれても、なんだか危なっかしくて心配だなー。あたしの胸元に腕を廻してっ? 背中からねっ!」

「なっ? 何を言ってるんだよっ? そんなトコ触ったら、真夏の夜の事件だとかなんとか言って、那波里ちゃんのお父さんに目を付けられちゃうよ……?」

 大胆にも自らの胸に抱きつくことを同乗のクラスメイトに要求する那波里。

 しかし、真夜羅の方はと言えば、そんな胸キュンな展開よりも、クラスメイトの父親の存在の方が不思議に思えて仕方がなかった。

「肝心なこと訊いていないけど、お父さんたちさ、傍受した警察の無線を聞くなり、一体どこへ消えたのさ? そ、それと、ボクたちだけど、コレ、一体どこへ向かっているわけ……?」

 申し訳程度に軽く少女の胸に手を廻し、疑問のままに問い詰める真夜羅。

「もっと! ギュっと掴まないと、落っこちちゃうわよー?」

 夜風にオレンジのツインテールの髪を靡かせ、空飛ぶフォークを操縦する少女が笑う。

「あのね。『家族全員名探偵』っていう言葉がね、あたしの家には代々、受け継がれているの……」

 急に真剣なトーンを呈する低めの声で、少女が告げた。

「はいいっ? 『家族全員麺単品』って? な、ナポリタンの調理法のしきたりか何かかいっ……?」

 真顔で少女に返す真夜羅も至って真剣だ。

「ち、違うわよ、バカねー。探偵よ、探偵。警察でも手に負えないような難事件をね、あたしの家は代々解決してきた由緒ある家なの……」

 少女が核心に触れたのか触れていないのか、真夜羅にはよく分からなかった。

   しかし、荒唐無稽な事柄も、厨房で見たカタツムリや、フォークが科学的法則を無視してこうして空を飛んでいることを思えば、冗談として突き返す類のものでもないことが分かる。

「な、なるほど。キミの一家は探偵なんだね……」

 苦笑いに言葉を詰まらせつつ、真夜羅が相槌を打ち納得した素振りを見せる。

 パタパタパタパタ……。

 その時、後方からプロペラの回転する音が急速に近づいて来た。

修正履歴

  • 誤字、脱字の修正をおこないました。(2018/08/16)

修正履歴を見る

  • 8拍手
  • 1笑い
  • 0
  • 0怖い
  • 0惚れた

5

カタツムリに警察無線。料理の世界に視点がぐっと引き込まれた後のこのアイデアあふれる持って行きように
とっても勉強になります。

6

あふりかのそらさん。ありがとうございますヽ(^o^)丿カタツムリは小道具といたしまして、アナログ感が漂いますが、このほうが味があるように思いまして笑

作者:湊あむーる

2018/8/17

7

この作品もずーっと読みたかったのです。
が、表紙を作るに当たって完結したもののみを読んでいました。

今後は楽しく読むだけしまーす^ ^

湊あむーるさんの作品はほのぼのしていて好きです^ ^

そして、さりげなく行間が実に読みやすい♪( ´▽`)

青楊

2018/10/1

8

 青楊さま。コメントをありがとうございます!!!
こちらの作品は元々はツイッターでの運営さんとのやりとりのなかでの冗談から生まれました(^^♪
ナポリタンというキーワードは元々決まっている?ようなものでしたので、モノコン応募にあたり、作者が無理やり家族全員名探偵というお題に当てはめたら、こんな作品になりました(^^♪ほのぼのと言われて嬉しいのですが、この作品では単にバカバカしい雰囲気のみを大事に→

作者:湊あむーる

2018/10/1

9

→したいと思っております笑……行間もお褒め頂きありがとうございます!!

作者:湊あむーる

2018/10/1

コメントを書く

とじる

3.超ナポリ次元を誘発するりんちょ

「何だっ? 何か後ろから近づいてくるよっ、那波里ちゃんっ……?」

 ただならぬ気配に怖気づく真夜羅。

「っていうか、あたしがせっかく探偵の話をしているというのにいっ! なによおっ? そんなに後ろが気になるなら、人生ずっと後ろを向いて生きたらイイじゃないっ?」

 しかし大空でフォークの舵を取るオレンジ髪の少女は、不機嫌に振り返り真夜羅を睨み付けると、途端にそのつぶらな茶眼を強張らせ震えだした。

「ナニよアレっ? あんなのぶつかったら、ひとたまりもないわよっ?」

『あー。テステステス。只今、マイクのテスト中であるからして、ちょっと待ってからに!』

 驚く那波里に、ピイーッという耳障りな甲高いノイズが浴びせられたかと思えば、しゃがれた中年男の慌てる声が聞こえた。

「うわっ? ありゃ、ヘリコプターだなっ? なんだろう、変なオジサンが窓から身を乗り出しているぞっ?」

 震える少女につられて真夜羅も振り向けば、闇空に浮かぶ一機のヘリコプターの機体が迫り来るのが見えた。

 全体的に水色に塗装された機体。

 側面には機体を囲むように一本の赤いラインが入っている。

 機体側面の搭乗口が開かれ、その窓より身を乗り出すようにしたカーキ色のトレンチコートの男が口元にメガホンを当て、真夜羅と那波里の跨るフォークを睨んでいた。

『あーあーあー。ヨッシャ! マイク入っとるなっ? まったく! メガホンの分際で手間を取らせよってからに!』

 中年男は頷きながら口元にあてがうメガホンに向け喋ると、風で飛びそうになったカーキ色の中折れ帽を片手で押さえ込み、一気にまくし立てた。

『もしもし! そこゆくお二人さん! キミ達、夜も遅いので、家に帰りなさい! なんだね? 最近の若い連中はホウキに跨り空中デートなどするのかね? 不純異性交遊も甚だしいっ! ワシの若い頃はだなっ! 寝る間も惜しんで勉学に励み、男女で夜に街へ出て遊び呆けるなどもってのほか! 今風の言葉で言うとだな、リア王爆発しろ、だ!』

 メガホンから一方的に強めた語気をぶつけるトレンチコートの男。

「警部! 警部! それを言うなら、リア充、です! それに跨っているのはホウキではなく、フォークです!」

『うるさい! 貴様はワシの部下の癖に口ごたえするのか! 警視庁捜査一課のこの屁津波警部に逆らうなど、撃たれたいのか? いいのか? ワシは本気だ!』

 なにやらヘリコプターの中から別の男の咎める声がすれば、猛然と鼻息を荒げ怒り出すトレンチコートの男。

 その鼻息がメガホン越しに拡大されて空中に響き渡るなか、ズギューン! ズギューン! という銃声が虚空に響き渡る。

「うわあああっ? あ、あれはもしかして、さっきのカタツムリの銃乱射警部じゃないかあっ? 空に向かってピストル撃っちゃってるよっ?」

「出たわねっ? 夏でもトレンチコートの季節感まるで無し警部っ! どーして空なんかに現れたのかしらーっ?」

 振り返る二人の少年少女が、後方のはっちゃけ警部にその視線を釘付けにする。

「どうするの? 那波里ちゃん……?」

「ええ。それはもちろん! 逃げるわよ……」

 互いに目を合わせ頷き合う真夜羅と那波里。

「みらくるくるくるーっ! 全速ナポリん超!」

 那波里がフォークの柄の先をグイッと持ち上げる。

 すると、ギュルウウウーンとフォークが左右に激しく大回転。

「うわわわわっ? め、目が回るうううーっ!」

「ヘリコプターのプロペラと同じ原理よっ! ブルルウンと円を描くようにフォークが回転することで、通常のナポリを超えた超ナポリ次元を空間上に誘発するのーっ!」

 ブーメランのように回転しながらも、途轍もないスピードで空を飛ぶ二人を乗せたフォーク。

「へん! あの円盤みてえな回転は、まるで怪獣映画の巨大なカメだ!」

 まるで独楽回しの独楽か、空飛ぶ円盤のように、高速回転するフォークに、懐かしの昭和の怪獣映画を連想するトレンチコートの警部。

「ふん! そいじゃワシの覆面パトちゃんで叶わなかった緊急走行と洒落込むかよ!」

 小馬鹿にしたように軽く鼻で笑い、口元のチョビ髭を曲げてにやける警部が、機内から取り出した赤色灯を、ヘリコプターの屋根に取り付ける。

 ファンファンファン! ウーッ! ウーッ!

 けたたましいサイレンを鳴らし、警視庁航空隊の水色のヘリの機体がブウウンと旋回しながら、眼前の回転するフォークを追う。

『あー、そこのフォーク止まりなさい! 止まりなさい! キミ達は違法なスピードで飛行をしたあげく、不純に異性と交際する非行に走り、飛行と非行で二重に重罪だ! 即刻逮捕してブタ箱にぶちこんでブヒブヒ鳴かせてやるからして、おとなしくお縄を頂戴しなさいってからに!』

 メガホン越しに大音量の屁津波警部のダミ声が、東京の夜空にこだまする。

「ぎぃやあああああーっ! 目があーっ! 目があーっ! グルグル回り過ぎで逃げるどころじゃないよーっ! 地球があーっ! 宇宙があーっ! なにもかもグルングルン回っているよーっ……」

「んもおおおおおおーっ! うるさぁーいっ! オトコだったら耐えなさいよねっ! フォークがグルグル回ったくらいでネを上げていたら、ナポリタンを愛するナポリ伯爵の称号を手にすることなんて出来ないわよーっ!」

 しかし、警視庁のヘリコプターの追うその目標は、壮絶な絶叫を振り撒きながらヒュンヒュンと東京の夜空を旋回。

「ナポリ伯爵の称号って何だよーっ? 超ナポリ次元がなんちゃらとか、那波里ちゃんの言っていることは意味不明なことばっかりだよおおおーっ……」

「イヤあーっ? あたしもやっぱり目が回るうううーっ! もうダメぇーっ! これ以上飛んで飛んで回って回ったらナポリタン法典の御触れに反しちゃうかもーっ……」

 グルグルと目まぐるしく回転し、空中に大きな渦を作る少年少女を乗せた一本のフォーク。

 その竜巻にも似た大きな渦が、まるで宝石を散りばめたような家々の灯りの煌めく街並みの上空で、高圧線の鉄塔から伸びる送電線に触れた瞬間。

 ビリビリビリィッと青白い光を炸裂して、フッとその姿を一瞬で消した。

『そこのフォーク止まりなさ……なっ? き、消えたっ……?』

 あまりの衝撃に、口元に当てたメガホンが途中で大量の唾に詰まる。

「一体どういう事だっ! フォークが空中に飛んでいるだけでも科学的にはありえん国家的反逆行為であると言うのにだ! その上、突然消えただと? あの男女は一体どこに駆け落ちしたと言うのだ! こうなったら警視庁の威信に懸けても探し出せ!」

 ズギュン、ズギューンと真上の星空に向けて拳銃を撃ちまくる屁津波警部。

「お、お言葉ですが、警部!」

 ヘリコプターの機内から顔を出したスーツ姿の若手の男性刑事が、トレンチコートの上司の握る拳銃を制止する。

「……我々は渋滞にハマって動けなかったところをせっかくこうして本庁の航空隊のヘリで飛ぶことが出来たんです! すぐさま警官殺害事件の現場の伊太利犬公園へ飛ぶべきです!」

「うるせえ! んなこたあ、分かってんだよっ! てめえがちゃんと正解が言えるかどうか、ちょっと試しただけだってんだ! ワシは本当は今すぐ伊太利犬公園へ飛ばねばと、お尻のオデキがウズウズうずいて、じれったくて困ってたんだってからに!」

 冷静に上司に告げるスーツの若手刑事の言葉に、トレンチコートの上司が拳銃を夜空に向けて連射する。

 ガキン!

 その時、何やら金属音が弾けたかと思うと、パタパタと慌ただしく回転していたヘリのメインローターがピタッと止まった。

「あんれまあ。警部さんがペストルさ撃ちまぐるがらよ、ヘリのメインのローダーがイガレちまっだみでえでがらに……ほんだば、あどは墜落して落っごぢぢまうしかねえでやんすべ……」

 機内の操縦席から顔を覗かせる、オレンジ色の制服の操縦士が振り返り、ぼやく。

「なっ? 何だとっ? つ、墜落するとか、衝撃的過ぎること言うと、ワシの血圧に影響するってからに!」

「警部うーっ! 血圧なんて気にしている場合じゃないです! つ、墜落するんですよ? 命を気にしてくださいっ!」

 慌てる警部と、その部下とが叫んでいるうちに、急降下するヘリコプターの機体。

「うひゃあああーんっ! ワシはなんと不運な警部だってからに! 渋滞とか墜落とか、もっとマトモな捜査がしたいだってからにーっ!」

「あなたが銃を乱射するのがいけないんです! 少しは頭を冷やしてくださいよ! 警部!」

 この日の晩、東京の夜空に尾を引く火の玉を見た、という目撃情報が後を絶たなかった。

修正履歴

  • 誤字、脱字の修正をおこないました。(2018/08/23)

修正履歴を見る

  • 4拍手
  • 5笑い
  • 0
  • 0怖い
  • 0惚れた

3

暴走楽しみにしてますε=ε=(ノ≧∇≦)ノ

Hinaminami

2018/8/23

4

はい!キャラは常に暴走します(^_^)笑

作者:湊あむーる

2018/8/23

5

あ、っていうか、作者の手を離れてキャラが勝手に暴走するんです笑

作者:湊あむーる

2018/8/24

6

頭の中でアニメ化しながら読んで、爆笑です。さすが、動きの表現が具現化されたような感じで面白かったです。
本当に、勉強になる作品です。楽しめる要素をノリでここまで表現できるところが、さすが!

7

あふりかのそらさん、嬉しいコメントをありがとうございます(^^♪
僕は他の作品でもそうなのですが、書いている時に作者自身がマンガとかアニメのつもりで書いています笑……ですので、ある意味、話の展開がマンガとかアニメみたいな、現実的にはありえない展開になりがちです(^^♪
もちろん、いい意味でですが笑
 いろいろとお褒めいただき、ありがとうございます。くすぐったい気分です笑

作者:湊あむーる

2018/8/25

コメントを書く

とじる

4.夫婦は揃って迷探偵

「成程。ふむふむ成程。こりゃ、死んでるわ……」

 夜の公園に、細長いコック帽を被った男が膝を曲げて屈みこむ。

 まるでハンチング帽のようにチェックの柄の入ったコック帽の男は、茶色のインバネスコートに身を包み、口元に蓄えた髭を撫でながら、苦い顔で考え込んでいた。

「あら、あなた。ただでさえイカスミを潰したように、イカツイしかめっ面が、ますますイカメシイ顔になってしまうので、いかにもと言った態度で考え込むのは止めてくれません? どうせ事件の真相に辿り着けるのは、あなたでなく、この私、なんですから……」

 同じくチェック柄のコック帽の女が優しげな笑みを浮かべ、その表情とは裏腹な冷ややかな言葉を告げる。

 男と同様に茶色いインバネスコートを着込んだ女。

 周囲から見れば、かなり異様な出で立ちをしている二人に映ることだろう。

「って言うっかーっ? このお巡りさんさーっ、超幸せそうな笑顔で死んでるぞーっ? なんかすっごい楽しいコトでもあったんですかーっ? って訊きたくなっちゃうくらいなハッピーすまいるっ!」

 その傍らで、お盆のように大きく丸い特大虫眼鏡をジイーッと見つめる、ショートの青髪の少女が、釣り目の碧眼を見開き、首を傾げて不思議がる。

 青のドレスに純白のエプロン、頭の上にはホワイトブリム、まるでメイド喫茶のメイドとしか思えない、殺人事件の現場に不釣り合いの格好の少女だ。

 少女が覗く特大虫眼鏡のレンズの先には、口を開けたまま大きな笑い顔の警察官の死体が転がっていた。

「ううむ。自殺か他殺かの線から、もう一度考え直した方がいいのかな。他殺だとすると、犯人に殺される寸前にこんなにも嬉しそうにしているなんて、おかしいぞ。殺されるっていう時に喜んで殺される奴がいるか? だからな、むしろ、これは他殺ではなく、自殺……?」

「あら? あなた、オツムの芯までチーズフォンデュになってしまったのね? そんな蕩けた脳味噌で事件を解決できるとお思いですか? これは他殺に決まっています! 見てみなさい、この警察官のマヌケな笑い顔。これは男が惚れた女の前で見せる変態顔よ。だからね、犯人は女。そう、この警察官の恋人が犯人よ!」

 茶色いインバネスコートにチェック柄のコック帽という変質者級の服装の夫婦二人が、かなり的を外した推理に口角泡を飛ばせば、

「この人、ホントに死んでるのかなー? 死んでいるのにこんなにハッピースマイルなんて、ホントは生きてて死んだフリフリをしているだけかもしれないぞー」

 ショートの青髪ウェイトレスは、何を思ったか、警察官の遺体をくすぐり始めた。

「そーら、コチョコチョコチョ! 笑うと負けよー、あっぷっぽーっ!」

 遺体の腋の下を容赦なくくすぐる青髪ショートの少女に、周囲の「鑑識」と書かれた腕章を付けた、ブルーの制服の男達が苦笑する。

「おいおい、この連中、本当に屁津波警部の依頼で派遣された科警研の人間なのか……?」

「あーっ! おじちゃん達、未衣とんのコト、疑ってるーっ!」

 鑑識の男達が口々に疑問の声を呈すれば、ショートの青髪のウエイトレスは口を尖らせて憤慨。

「おじちゃん達も一人残らず容赦なくーっ! 未衣とんにコチョられてしまえばいいぞー!」

「だあーはっはっ! やめっ! やめてくれーっ!」

「ちょっ! ロープロープロープ! こんなくすぐり技、反則だっ!」

 青髪ウエイトレスが次から次に鑑識の男達の腋の下を、腹を、腰をくすぐる。

 くすぐられ、笑わされ、再起不能となった鑑識の男達が、美少女ウエイトレスに頬を赤らめながらも、公園の砂場へと崩れ落ちていく。

「笑いの絶えない、いい事件現場ね。あなた……」

「そうだな。君と初めて出会ったのも、こうして笑い声の響く白昼の銀行強盗事件の現場だったね……」

 おぼろげに空に浮かぶ満月を眺めながら、茶色いインバネスコートの夫婦が、それぞれブランコに座り、昔話にしみじみと入り込んでいく。

「そうよ。女子行員だった私は、あの午後が人生最後の午後になると思っていたわ。でも、まさか運命が味方する、なんてね。お客さまの中に名探偵のあなたがいて……」

「……ああ、すかさず犯人のパンツを脱がして、パンツの中にマカロニをたくさんぶちこんでやったら、どれが本物のマカロニか見分けがつかなくなっちまった。まさか犯人のアレがマカロニよりも小さいなんて、いくら名探偵の俺でも思いもしなかったさ……」

 キーコキーコとブランコの軋む音をさせながら、過去の出会いを回想し、懐かしむインバネスコートの夫婦。

「どおうわあああーっ? わ、ワシのデカの勘が当たっただろうがっ? あーっ?」

「け、警部! 流石です! 風に乗り、伊太利犬公園へ正確に着地するとはっ! ぼ、僕はあなたを見直しましたよ、警部うーっ!」

 その時、上空から突然、二つの物体が喧しい叫び声とともに落下してきた。

 ドスン! 

 ズザザザッ! 

 パラシュートに包まれた二人の男達。

「どわあああーっ! ワシの五十を超えた老体にこりゃ堪える拷問だあーっ……」

「耐えてください警部! もし墜落で殉職したら二階級特進で警視正! でも僕はあなたには生きた警部でいてほしいーっ……」

 公園の地面に激突するなり、スライディングを続け、泥の上を滑っていく。

「「「おおっ! あれは、屁津波警部でいらっしゃるぞ!」」」

 公園内に居る、鑑識の男達や、制服警官達が一堂に、泥の上のトレンチコートの中年男に擦り寄っていく。

「お待ちしておりました! 屁津波警部殿! ご紹介の科警研の方々ですが……」

 ビシッと敬礼をしつつ、制服警官がトレンチコートの警部の前で直立すれば、

「あーん? 貴様っ! 何を間が抜けた事を言ってくれちゃっているってからに? このワシが何故に事件現場に科学警察研究所の連中を招き入れなアカンってからに? 警視庁捜査一課の超エリート警部のこのワシが、警察庁直属の科警研の力などわざわざ借りん! 全て自力で事件を解決するってからにーっ!」

 ズギュンズギューン! と、天に向け屁津波警部の拳銃の銃弾が連射される。

「あら? あなたっ! 大変よ! あの銃乱射警部がもう事件現場に辿り着いたわよっ?」

「本当だ! あの渋滞とヘリの墜落とを併せて、俺の計算ではあと三時間はこの現場に到着するのが遅れる筈だったのに……どこで計算が狂ったのかな……?」

 キーコキーコとブランコを慌ただしく漕ぎながら、慌て始める名探偵の夫婦。

「なっ? 何だお前達はっ? この事件現場は捜査関係者以外、民間人は立ち入り禁止だっ!」

 トレンチコートの警部は、公園の片隅でブランコを漕ぐ、チェックのコック帽に茶色のインバネスコートの怪しげな男女の姿に、血相を変えて走り寄る。

「ああーっ! パパちんとママちんの一大ピーンチっ!」

 すかさず身を乗り出して、ショートの青髪ウエイトレスがエプロンのポケットから一本のスプーンを取り出した。

「い、いや、我々は実は探偵でして、警察には任しておけない難事件を解決してあげようと……」

「そ、そうよ、うちの主人はイカスミのように腹黒い悪を呑み込んでも、次の日の朝のトイレでは真っ白になって出てくるほどの名探偵ですの。そういう私もカルボナーラの生クリームのように、蕩ける女の魅力で今までに数々の大事件を解決して……」

 ブランコから慌てて飛び起きたナポリタン屋の料理長・威霞と、その妻にして副料理長の香流母。

「うるさい言い訳は署に帰って聞くってからに! ここにいるお前ら、全員逮捕するってからにー!」

 トレンチコートの懐から銀色に輝く手錠を取り出し、片手で天に向け拳銃を撃ち放つ屁津波警部。

 ズギュン、ズギューン!

 夜空に放つ銃声が場の空気に一層の緊張感を増していくなかで、

「みらくるくるくるーっ! ミートソーちゅ!」

 一本のスプーンを宙に向けかざして回す、ショートの青髪ウエイトレスの少女・未衣都。

 その瞬間、屁津波警部が天に向ける銃口から、ニュルニュルと茹でたスパゲッティの麺が押し出されるようにして出てきた。

「なっ? ワシの愛銃リボルバーちゃんがっ? 銃口から重厚ミートソースを噴き出したってからにーっ……?」

 拳銃の引き金を引けば引く程に、その銃口からはスパゲッティの麺だけではなく、鮮やかな赤味を帯びたトマト風味のミートソースが滴り出した。

「くそっ! ワシを馬鹿にしやがってクソガキ娘があっ……」

「警部! 未成年者とはいえ構いません! 公務執行妨害で逮捕しましょう!」

 トレンチコートの警部が怒り狂えば、それに同調するスーツの若手男性刑事が、未だスプーンを構える未衣都を捕らえるべく、その腕を掴み上げる。

「いやーっ! 放してよーっ! 未衣とんのコト気に入ったからって、ちょっと強引すぎるぞー! デートの誘いはもっとスマートにお願いするぞー」

「なっ? 何を言うんだ君はっ! 公務執行妨害は立派な犯罪なんだよ?」

 嫌がる青いドレスのウエイトレスに、スーツの男性刑事がたじろぎ、困惑の表情を見せる。

 ビカビカッ!

 その刹那、公園の夜空がまるで雷のように電気を帯びて光った。

 ビリビリビリィーッ!

 青白い稲妻が伊太利犬公園の空を走り抜けたかと思うと、

「げえほっ! げえほっ! 何なんだよっ? あの空間っ? げえほっ……」

「今夜の超ナポリ次元は具材が豊富過ぎてコスパ良かったわねーっ……」

 空中から突然、回転する一本の巨大なフォークが出現、

「うわあああーっ? バランス悪くて振り落とされるーっ……」

「お腹いっぱいでもうダメえーっ! 操縦なんてできなーいっ……」

 ドサドサと続けざまに若い男女を地上の公園へと振り落とした。

 全身、パスタ塗れになっている二人の男女。

 オレンジ髪のツインテールの少女は顔もドレスも無数のパスタとソースに包まれ、少年もソースに汚れた半袖Tシャツ、髪の毛には幾本ものパスタがまるで芋虫のように這っていた。

「那波たん! 真夜ちん!」

 未衣都が二人の男女の姿に歓喜して跳び上がれば、ヒュンヒュンと回転するフォークが地上の警官隊へと突っ込んでいく。

「公務執行妨害っ……ぐはあっ……」

 スーツの若手男性刑事を薙ぎ倒し、刑事をその柄の部分に引っ掛けたまま猛回転するフォーク。

「けけけけ警部うううーっ! 目があああーっ! 目が回るでありますーっ!」

「くっ、来るなっ! こっちに来るなってからにーっ!」

 部下を乗せて迫り来るフォークに、トレンチコートの警部が拳銃を乱射する。

 ニョロニョロと銃口から大サービスのように溢れ出るスパゲッティミートソース。

「ま、まだ手品が続いているってからにー?」

 溢れ出るミートソースを一身に浴びる、屁津波警部のその尻に、ブスリッと景気よくフォークの爪が突き刺さる。

「ぎゅわんっ! ワシのオデキがお出来になっているお尻にありがとうございますって、どんな拷問だってからに! こんな目に遭うならよっぽど二階級特進で出世したほうが手っ取り早いってからにーっ!」

 蹲る警部の尻に突き刺さるフォークの爪が、銀色の輝きに満ちて、夜の伊太利犬公園の敷地内を照らし出す。

  • 4拍手
  • 1笑い
  • 0
  • 0怖い
  • 0惚れた

2

 Hinaminamiさま。コメントをありがとうございます(^^♪そうですね、正確には「迷探偵」のようなのですが、この夫婦は自分達では「名探偵」であると思い込んでいるフシがありますね笑……でも、警察の人達もよーく考えれば、みんな間が抜けている気がしなくもない?どうもこの作品のなかの世界の人達は、みんなすこしおかしいようです笑……いつもお読みいただきまして、ありがとうございます(^^♪

作者:湊あむーる

2018/8/31

3

ハハ(о´∀`о)皆さん間が抜けてましても展開のテンポが良く面白いですわたしも巻き添え食らい「えー!」「そんなぁ〜」とてんやわんやこの先もしたいです

Hinaminami

2018/9/1

4

 Hinaminamiさま。テンポをお褒めいただき、ありがとうございます(^^♪今後ともよろしくおねがいしますヽ(^o^)丿

作者:湊あむーる

2018/9/1

5

まさにミラクル。オデキがいい。言葉遊びの中にスピード感があって、この回は、まるでオリンピックのようで、最後、笑いました。さすがのナポリタン魂を垣間見。大変に美味しゅうございました。

6

あふりかのそらさま。コメントをありがとうございます!!オリンピックとは!!!褒め言葉がユニークで、さすが、あふりかのそらさんですね(^^♪そういう褒め方をされるとは思わなかった笑てへへ

作者:湊あむーる

2018/9/2

コメントを書く

とじる

5.美少女名探偵みらくるナポリたん

「こ、ここは、どこなのっ……?」

 髪の毛を這うまるで蛆虫のような無数のパスタを払いのけ、真夜羅は周囲を見まわした。

「お店の厨房でカタツムリが唸っていた言葉を思い出すと、どうやらここが殺人事件のあった伊太利犬公園とかいう所みたいねーっ?」

 那波里は自らのツインテールの髪から垂れさがるパスタをモグモグと唇で吸い込みつつも、明晰な記憶力を披露。

「いっ、伊太利犬公園だって……?」

 ドキッとした真夜羅が何かに納得したかのような素振りを見せる。

「た、確かにそうだ! あの妙に長靴のような形をした滑り台! ベネチアの運河のゴンドラがそのまま空中へ滑り出しそうな形のブランコ! 傾いたピサの斜塔を両端から踏んづけて互い違いに起き上がらせようとしているような形のシーソー! こ、ここは、間違いなく中途半端にイタリアへの憧れを掻きたてようとさせながら、結局は近所のスーパーで冷凍パスタを買って食べる程度にしかイタリアに想いを馳せることが出来ない、超適当ヨーロッパークの伊太利犬公園じゃないか!」

 そう立て板に水のように喋る真夜羅の目には、自らが説明した通りの遊具が一通り映し出されていた。

 まるで、過ぎ去りし、古き良き昭和の時代を彷彿とさせるような、丸みを帯びた鉄製の遊具達。

「あらーっ? 真夜羅くんはあ、伊太利犬公園を知っているのーっ? あたし、そんなオカシナ名前の公園は知らなかったのだけど、フシギとこの公園には来たコトがあるような気がするのー」

 那波里は首を傾げながら、考え込んだ。

「うーん。あの中途ハンパなボンジョールノ顔の立体コケシは、何度か見たコトある気がするわーっ?」

 那波里の視線の向こう、暗がりの中に聳え立つ、異様な人型の柱。

 芋虫のように太く立派な眉毛が描かれた、イタリア人の男性のような少々、濃い顔つきの人の顔が何重にも積み重なったトーテムポール。

 公園の片隅に聳えるその柱は、見た者の心にある種のトラウマを植え付けずにはいられない程の不気味さを、闇の中で湛えていた。

「そりゃ見たことある筈だよ! 那波里ちゃん! だってさ、この公園さ、ちょっと離れたところにボクたちの学校があるんだよ……」

 真夜羅が公園の入り口の向こう、道路を挟んだその先に延々と続くフェンスを指差す。

 私立・巴素太学園。

 続くフェンスのその向こうは、那波里と真夜羅が通う高校である。

「まあーっ? あんなに近くに、あたし達の学校があーっ? じゃあ、この公園、あたしが授業を抜け出した時に息抜きによく来る公園なのねーっ?」

 那波里が自らの学び舎と、そこに近接する殺人事件現場の公園との位置関係とを客観的に把握すれば、

「何だと? 貴様ら、巴素太学園の生徒だってからにーっ?」

 尻に巨大なフォークが串刺しになったトレンチコートの警部が、いきり立つ。

「警官殺しのホシは、お前達の通う、その巴素太学園とかいう高校の敷地内に忍び込み、この公園内に逃走したところで今回の殺人に至った! いわばだな、この警官殺しの事件はだ、巴素太学園の関係者による内部的な犯行の線も捨てきれんではない!」

 突き刺さる銀色の爪が見ていて痛々しい中年男は、天に向けたフォークの柄の部分をフリフリと振りながら、那波里と真夜羅に近づく。

「ようし! やはりここはワシのワッパでお前ら二人を雁字搦めに結び付けて、離れないようにしてやるからに! 二人仲良く桜田門の警視庁で一晩中、事情聴取に取り調べに尋問に拷問をしてやるからに覚悟しろよ!」

 おもむろにトレンチコートの隙間から銀が眩しい手錠を取り出す屁津波警部。

「い、いや、未成年者を一晩中尋問とか、それこそ法に反するんじゃないかな。っていうか、拷問って何っ? そ、それ、重大な憲法違反だよっ?」

 真夜羅が闇に光る銀色の手錠に恐れを為して正論を告げるも、

「あー? うん? ワシも歳で耳が遠くなっちまったなあ? 聞こえんってからにーっ?」

 カーキ色の中折れ帽の縁から、はみ出る耳に、形だけ手を添える屁津波警部。

「二十一時十二分。被疑者逮捕だってからに!」

 ガチャリ。

 非情にも真夜羅の右手首に嵌められる手錠。

「うわあ。こんなの不法捜査だあ!」

 右腕を持ち上げてジャラリと鎖を鳴らした真夜羅が抵抗の意を示せば、

「はいはい! 次は空飛ぶフォークのお嬢ちゃんね! あんたもこっち来て、おとなしくこの坊やと揃いのワッパを手に嵌めるんだってからに!」

 手錠の輪っかの片割れを、今度は強引に那波里に引っ掛けようとする屁津波。

「あらー? あたしはタイホなんてされてる暇、ないわーっ! 今夜の捜査はイタダキよーっ!」

 クスクスと鼻で笑うオレンジ髪のツインテールの少女が、ドレスのエプロンのポケットから、折り畳まれた紙エプロンを一枚、取り出す。

「みらくるくるくるーっ! ナポリ探偵に変身りんちょーっ!」

 すかさずササッと紙エプロンを自らの首に巻く那波里。

「那波里ちゃん! ボクが逮捕されてるってのに、優雅に紙エプロンなんか巻いている場合かよっ!」

 真夜羅が、那波里の緊張感を欠いた振る舞いに猛然と抗議の声を上げれば、オレンジ髪の少女の首から巻かれた紙エプロンが忽然と輝き出した。

 ブワアアアーッ! と、黄金の煌めきを放ち始める、少女の胸を覆う一枚の紙エプロン。

「ぎぃやあああーっ? 一体、何だってからにっ? ワシのお目めちゃんがクラクラ眩んで、まーぶたも、まーつげも、開かないったらあーりゃせんって! なんちゅう黄金のイルミネーションだってからしてーっ!」

 あまりの眩しさに、目を眩ませ、手錠を持つ手を怯ませる屁津波。

「変身完了りんちょーっ! ナポリ探偵、シャーロック・ア・ラ・ナポリテーヌ参上よーっ!」

 黄金の輝きが消えると、そこには、オレンジ色のチェックの模様の入った鹿撃ち帽を被った那波里が佇んでいた。

 オレンジ色のチェックのインバネスコートを羽織り、その手には大きな虫眼鏡を持って、屁津波警部の顔を覗いている。

 そして、真っ赤に熟したトマトをもう一方の手で口へと運び、丸齧る。

「はあっ? ナポリ探偵、シャーロック、なんだって? 那波里ちゃん、急に紙エプロン首に巻き出したと思ったら、今度は名探偵のコスプレごっこかいっ?」

 ジャラリと手首から伸びる手錠の鎖を撓ませ、真夜羅は呆れ気味にオレンジ髪の名探偵を一瞥する。

「うっるさいわねーっ! これでも頭脳明晰! 見た目は大人、頭脳は子供、その名も名探偵みらくるナポリたんなんだからあーっ!」

「み、見た目は大人で頭脳は子供って、探偵として最悪じゃない? それ逆でしょ? それに、名探偵みらくるナポリたんって何っ? さっきはシャーロック・ア・ラなんとかって、すっごい長ったらしい名前、名乗っていたよっ? 急に名前、変わったの……?」

 決め台詞がダサすぎる、という訳ではないが、自信満々に言ってのける名探偵姿の那波里に、すかさず真夜羅が渾身のツッコミを入れれば、

「さ! 手首に手錠を嵌めたどこかのおバカさんは相手にしないで、あたしは名探偵としての推理を最優先してサッサと事件を解決するわーっ……」

 ツッコミに苛立つ名探偵が齧るトマトをガリガリッとスピードアップ。

「うわわわっ! 那波里ちゃん、トマトびちゃびちゃだよっ? 真っ赤な汁がボクの方にも飛び散るし、せっかくの探偵の衣装も赤く汚しちゃってるよっ? どっ、どーしてキミはそんなトマトなんて齧ってるんだよっ……?」

「うりゅさいわにぇーっ! ナポリタンと言ったらトマトケチャップじゃないっ? でも、ケチャップをそのまま舐めまわしていたら、格好つかないから、こうして生トマト丸齧りをしているんじゃない!」

 飛び散る赤い汁が、真夜羅の顔面を、那波里のインバネスコートを、赤く染めていく。

「っていうかーっ! フツー、探偵が口に咥えるアイテムと言ったらパイプだろっ? ダンディな紳士の名探偵が、プカプカとパイプの煙を燻らせているのを、キミは見た事ないのかっ? 那波里ちゃんっ?」

「バカねーっ! 大バカすぎて口から真っ赤なトマト光線が出ちゃうわよおっ! 未成年のあたしがタバコなんて吸ったら、健全な名探偵とは言えないじゃない? ゲホゲホ咳き込みそうな、煙たいタバコは美少女ナポリ探偵のイメージを著しく落とすバッドアイテムよーっ!」

 壮絶なツッコミと、可憐なボケとが織りなす、まるで夫婦漫才のような会話を繰り広げる、真夜羅と美少女ナポリ探偵シャーロック・ア・ラ・ナポリテーヌもとい、名探偵みらくるナポリたん。

「あーっ! 那波たんだけズルいぞー! こうなったら未衣とんも美少女名探偵に今すぐ変身しちゃ……」

「今日はそういうのいいからっ! 事件の解決が先よーっ!」

 負けじとエプロンのポケットから慌てて紙エプロンを取り出す未衣都を、いきなり制止する名探偵みらくるナポリたん。

「まかろにロニロニ摩訶不思議! 摩訶の力でロニっちゃう! 真実を見抜くマカロニ望遠鏡ーっ!」

 名探偵姿の那波里が、ササッと一本のマカロニをインバネスコートの懐から素早く取り出すと、その側からムクムクとマカロニが大きく膨れ上がっていく。

「なんだか秘密道具を取り出す時の、どこかの猫型ロボットみたいな口上だね……」

「うるさいわねーっ! 猫型ロボットはあんなに長ったらしい前置きしないわよーっ!」

 呆れる真夜羅を尻目に、望遠鏡サイズに変貌した巨大マカロニを抱え、那波里が横たわる警察官の死体へと駆け寄っていく。

「おおっ! 我が家の長女が本気を出したぞ! これでもう事件は解決したも同然だ!」

 那波里の姿を嬉々として見つめる威霞が、背中を向けて公園の出口へと歩き出す。

「ちょっと待ちなさいよ、あなた! なんで帰ろうとするのよ!」

 茶色いインバネスコートの裾を掴み、香流母が夫を慌てて留めようとすれば、

「だってさママ。那波里がマカロニでロニロニしちゃば、もう僕の出番ないもん……」

 急にシュンとうなだれ幼児のような言葉を吐く威霞。

「大事な我が家の長女の活躍する番なんだから、目をイカスミでよーく洗って見届けやがれ、あほんだらあ!」

 激昂した香流母が自ら着用するインバネスコートの懐から、一匹の生きたイカを取り出す。

 ブシューと真っ黒い墨を吐くイカの容赦の無い攻撃が威霞の両目を襲う。

「うおおおおおおおーん……」

 一家の大黒柱が顔面を真っ黒に染め、文字通りの大黒な柱人間へとその身を固めて変貌すれば、

「待ちなさいってからに! その遺体はじきに司法解剖を行なう為、警察病院へと搬送するんだってからに! 貴重な証拠を壊すことにもなりかねんから、民間人が触れることは許さんってからして!」

 トレンチコート姿の中年警部が、その期待の長女を捕らえようと必死に追いかけ回す。

「邪魔しないで! この摩訶摩訶マカローニでひとたび覗けば、どんな藪の中にだって、真実がすぐに浮かび上がっちゃうんだからあーっ……」

 オレンジのチェック模様のインバネスコートが屁津波の毒牙に襲われ、引きずられていくも、ズーム機能搭載の摩訶不思議な望遠マカローニ鏡は的確にそのターゲットを捉えていた。

 泥の上に横たわる制服警官の亡骸。

 その悲惨な犠牲者の遺体の上に、那波里の握るマカロニの穴がその照準を合わせる。

 すると、那波里の覗くマカロニの筒の中で、現実に存在する遺体の上に重なるようにして、とある映像が映し出された。

『出て来い! 泥棒猫が!』

 那波里が目にするマカロニの視界に、懐中電灯を手に暗闇の茂みの中をまさぐる、存命時の制服姿の警察官が、仄暗いビジョンとなって浮かび上がっている。

『にゃんで分かった? にゃーん!』

 すると茂みの中から現れた黒い人影が、突如として取り出した何かを慌てて口に運び、

『ぶわっはっはっは! だあーはっはっは!』

 急激な勢いで突然笑い出した警察官が、倒れて、死んだ。

「な? なによコレ? ぜんっぜん意味不明で分からないわーっ!」

 マカロニの穴に片目を突っ込んだ那波里が、首を傾げて唸り出す。

「はん! だから言わんこっちゃないってからに! からからからにいーっ! 貴様達は家族全員名探偵とかほざきよってからに、単に事件現場を混乱させて、事件解決の妨害を謀っているだけだからに! 今度こそ、家族全員、ならびに余所者の男子高校生一名と併せて、シチュー掻き回しのうえ、ウーッ乳首ご苦悶を申し付けるんだってからにーっ!」

「警部! それを言うなら、市中引き回しのうえ、打ち首獄門、です!」

 オレンジ髪の美少女名探偵の腕を捻じり上げる屁津波に、部下の若手刑事がすかさず間違いの訂正をする。

「うるさい! ワシが法律だ! シチュー掻き回しのうえ、ウーッと唸るまで乳首を苦悶させるのがワシ流の捜査だあーっ!」

 ズギュン! ズギューン! と屁津波警部の拳銃が伊太利犬公園の夜空を撃ち貫けば、

「ふん!」

 と唸る女の高い声が空中から聞こえた。

「なっ? 何だっ? 女かっ?」

 ズギュン、ズギュンと屁津波が女の声のする虚空を闇雲に拳銃で狙えば、

「ふふっ。当たりませんね」

 ヒュンヒュンと素早く身を空中で回転させ、屁津波の銃弾を躱す黒い人影。

「照らせ! サーチライトだ! 早くしろ!」

 屁津波警部の慌てたダミ声が夜の伊太利犬公園に響く。

「はっ! 直ちに!」

 バッ! バッ! バッ!

 伊太利犬公園内に運び込まれたサーチライトが、公園の上空を隅々まで照らし映す。

 

修正履歴

  • 内容に影響のない範囲で、一部表現の変更や追記をおこないました。(2018/09/14)

修正履歴を見る

  • 4拍手
  • 0笑い
  • 0
  • 0怖い
  • 0惚れた

1

サーチライトがいい雰囲気出していますね。さすが!

2

あふりかのそらさま。ありがとうございます!!たしかに雰囲気がいいですね(^^♪えへへ。褒められた!!!

作者:湊あむーる

2018/9/6

3

アニメが2つ出てきたと思いきゃ、別のお題まで!
湊あむーるさまの楽しそうな姿が浮かびます\(^^)/

青楊

2018/10/4

4

 青楊さま。ありがとうございます(^^♪ノリで書いておりましたもので笑

作者:湊あむーる

2018/10/4

コメントを書く

とじる

このページの内容について報告する

送信中

送信しました

文字数の上限を超えています。