1

思い、重い、?って 完結

ポイント
28
オススメ度
0
感情ボタン
  • 3
  • 0
  • 0
  • 0
  • 0

合計:3

恥ずかしい話

投稿された表紙はありません

この物語の表紙を投稿する

すべてのコメントを非表示

いつもだいたい何も言わなかった。言えなかった。それはいつものことで。

いつもみたいに、お互いに講義が終わって、いつもみたいに、私の部屋に彼が上がる。自分の家ですよと言わんばかりの当たり前のような顔で。

私はよいしょとクリアテーブルに頬杖をついて彼を観察した。

こいつまじで何考えてんのかな。

いつもそう思うばかりだった。目まで覆うような真っ黒な髪。はえる白い肌が大学でもモテそうだな~、それが第一印象だった。

「服が萌え袖、あざと」

心の中でそう呟いた。

お互いになんでかはわからないけど、常に特段言葉を交わしたりしなかった

だから私は必死に彼の顔とか動作から今何考えてるのかっていうことを読み解こうとしてた。

彼というと、私の顔はあんまりみないし、目を合わせようともしなかった。たまにこいつ本当に私のことみえてんのかな?と黙ってるから。不安になって綺麗な白い顔に触れても嫌がる感じはなかったし、嫌いじゃないんだろうけど、いつもどこか不安になるばっかりで。

黙って布団の中に入ってこっちをじっとみつめてくるのはセックスの合図だった。彼とのセックスはあんまり特徴がなかったけど、あんまり特徴のないセックスだって安心感があって好きだったし、雑にしめたカーテンの隙間からもれるお昼の光だって余裕がなくて好きだった。

両方若くてどうしようもなく痛いはずなのに。

いつも違う次元に生きてるんじゃないかっておもってたから、触れ合ってると生きてるんだって思った。笑えた。

(生きてるんだね、私たち)

そんなダサい台詞絶対言わないけど。絶対言えないし、若いのに我慢してた。

私と彼とは、出会い系のアプリで知り合って。最初に会うって決まった時もワンナイトラブだって思ったから一回限りだと思ってたし、テキトーにラフな格好して行ったのをとてもよく覚えてる。

会った時意外に思った。

(綺麗な外見なのに出会い系なんて)

内心なんでだろうって思ったけど、彼はそのときから無口で葬式みたいな顔してたから、何も聞かないのが正解そうだなあ、って思った。

それから外は暑いな、とかじゃあ近くのうちに来る?とか、他愛のないことをしゃべってから家によんだ。出会い系で会うならラブホテルかなあって思ってたけど、思ったより外見がきれいだったから思わず家に上がらせてしまった。

ちょっと軽率すぎた、失敗だったかなあ、なんて思っていたらおとなしくちょこんとテーブルの横に座って、黒のもふもふが黙ったままじっとしていた。

「やらないの?」

って一言声掛けたら、

「え?やるの?」

出会い系で出会って、外はあついなあとかいって家まで来といて、白々しいなあと思った。絶対セックスする流れじゃん。少し笑いながらやるでしょって言って、セックスしたあの日が一回目。

最初はめんどくさいし何も言わないなんて思ってた。

思ってたのに、なにかつらいことがあったんだとしたら、なにも言わないで包み込んであげれたらなんていう風に変わったのが四回目。

本音を言うのは違うと思ってた。そういうのは彼も嫌いだって思ってたし、他愛のない会話しかしなかった。思えば重要なことなんて今まで一回でさえも伝えたことがなかったんじゃないだろうか。

初めて連絡がきたのに、それは最初だったはずなのに最後で。

絶対なんかあったんだ。ほかに本命ができたんだって思って彼の相互だったはずのTwitterのリンクページにとんだら現在地のとこにsinceの文字。ダサいじゃん、そんなことしないと思ってた。ダサいっていうと思ってたのに。だっさ。

いままでさんざんきめつけて格好つけてたのがダサくて笑えた。

どうしようもなく涙が出てきて、そんなことでさえ浸ってるなあと心のどこかで冷めた気持ちで思ってた。

昼間から占めっぱなしのカーテンの隙間から見える外の光をみながら彼のことを思いふけった。

そしたらいきなりガチャガチャ、ガタって音がした。

(え?なんで)

そう思って恐る恐る音がするほうを見たら真っ黒いもふもふの髪とうちのモノトーンベースの部屋と全く似合わないバラ。

「今日から僕と本当の恋愛をスタートしてください」

スタートのところで声がひっくり返って笑った。

ださ、ださださださ。なにそれ。

急に部屋に入ってくるのも、付き合ってないのにsinceってかいちゃうのも相当イタいよ。大学生のくせにバラとか、ふられたらどうすんの?重いよ。

だいたい、今日から僕と本当の恋愛をスタートしてくださいって、なにそれダサすぎ。

「ってかモノトーンベースのうちの部屋と全然合わないのに、しょうがないなあ、ほんと」

全部笑えて全部嬉しかった。

「めちゃくちゃ嬉しい。私でよかったらよろしくお願いします。」

典型的だと思ってたそのセリフを私は口にした。

修正履歴

  • 内容に影響のない範囲で、一部表現の変更や追記をおこないました。(2018/08/11)

修正履歴を見る

  • 3拍手
  • 0笑い
  • 0
  • 0怖い
  • 0惚れた

1

【モノコン2018物語部門 予選通過のお知らせ】出合い系アプリで知り合った二人は言葉を交わさない。黙って布団の中に入ってじっとみつめてくるのがセックスの合図だ――。作品は荒削りで拙くてぶっきらぼう、でもそれがすごくよかった。リアルに見せたフィクション、フィクションに見せたリアル。作者の顔を思わず想像したくなる、心ざわつく一作。

コメントを書く

とじる

オススメポイント 0

つづけて SNS でシェアしてオススメシポイントをゲットしましょう。

とじる

このページの内容について報告する

送信中

送信しました

文字数の上限を超えています。