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山神様の成長日記 完結

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完結しました。最後まで読んでくれた方、拙い作品ですが、お付き合い頂きありがとうございました。
これが自分の精一杯のハッピーエンドです。

1位の表紙

目次

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あなたは山神様

○月×日

今日は、ちょうど前任の山神様が現山神様に変わってから4年が経ちました。今の山神様は、山神様としての力をつけるべく日々成長しています。あなた様に追い付くにはまだまだ時間はかかるでしょうが、私は、この命尽きるまで現山神様を支えていきます。だから、どうかあの方が立派な山神様になるまで見守っていてください。

「昔よりはましになったけど、まだまだ下手くそだ。」

自分の書いた文字を見て、ため息をつく。今の山神様が山神になってからずっと文字の練習がてら、日記をつけているけど、まだ字はなんとなくいびつだ。早く上手くならなきゃいけないのに。

筆を置き、うーんと伸びをする。そろそろ眠ろう。明日の朝御飯は今日天日干ししておいた魚を焼こう。ろうそくの明かりを消そうとした時、控えめに襖が開く音がした。

「…みっちゃー。」 

「どうされましか?山神様。」

可愛らしいクリクリとした目が潤んで、将来は凛々しくなるのだろうなと分かる眉が下がっている。襖の向こうから不安そうに、こちらを伺っている。

「今夜は冷えそうです。良ければ一緒におやすみしていただけませんか?」

「あい!」

確かに山の夜は夏でも冷えるがここはそんな高い場所ではないから涼しいくらいだ。だか、あんな顔をされては、ご自分の部屋に返すのも忍びない。そもそも、すでに私の布団に入ってきていた山神様はうとうとと眠そうだ。私はろうそくの明かりを今度こそ消し、山神様の横に眠る。山神様は私の手をぎゅっと握ってきた。私もやさしく握り返すと山神様はすやすやと寝息をたてる。

私も目を閉じ、眠りにつく。

これは、齢4歳の山神様が立派に成長するまでの話。

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  • 内容に影響のない範囲で、一部表現の変更や追記をおこないました。(2018/08/15)

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こんにちは
このお題でこういうお話が生まれるんですね。驚きました。
いい話しをありがとうございました

順手

2018/8/12

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順手さんコメントありがとうございます。
ひっそりと続けられたら、続くかもしれないので、もしよかったら、読んでくださるとうれしいです。

作者:amiy

2018/8/12

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とじる

不穏

さて、今日はお天気もいいし、お布団を干すことにしよう。そのためには、

「山神様、もう起きてください。」

「うーん、やぁだぁ!」

「そんなこと言わないでください。」

あぁ、機嫌を損ねてしまわれた。掛け布団を頭まですっぽり被ってしまっている。もうこれは、しばらく起きてくださらないかな。どうしよう…。

「山神様、もし今起きてくだされば、お昼にお饅頭を作りますよ。」

「まんじゅ?」

布団から頭だけをだしてくださった。この調子なら、

「ええ、甘いお饅頭です。」

「ぅうー、おきる。」

「はい、おはようございます。」

山神様は、目をごしごしと擦って、のそのそと起き上がる。よし、今日もいい日です。

山神様の朝御飯を用意して、一緒にご飯を食べる。山神様は、最近お箸の持ち方が上手になってきた。溢さずに一人で食べられるまであと一歩です。

お布団を干して、洗濯物を干していると、

「みっちゃー!やまちゃもおてつだいするー!」

「本当ですか?ありがとうございます。」

山神様は、今お手伝い週間です。お手伝いをすれば、ご褒美をもらえるとわかったみたいで、色々なことに挑戦しています。物干し竿に初めて手拭いを掛けられたときの山神様は、とても誇らしげでした。

白いお布団が風に揺れる。

○月×日

今日は山神様がたくさんお手伝いをしてくれました。現山神様は、前任の山神様と同じようにとても優しいお方です。だから最近心配でもあります。私のようなものが、あの方を支えていくことなどできるのでしょうか。そもそも私のような

そこまで書いて筆を置いた。これ以上書いてはいけない。これ以上書いては、私はあの方の傍にいる権利がなくなってしまう。

まだ幼い山神様、私にできることはなんでもします。

だからどうか、

「今度は私を捨てないで…。」

「ここか。山神の社というのは。」

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  • 内容に影響のない範囲で、一部表現の変更や追記をおこないました。(2018/08/15)

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とじる

はじめまして

『やぁ、初めまして、こんなところで何をしているの?』

「ここにくれば、やまがみさまにあえるから、ここにいないとなの。」

『そっか、でも駄目だよ。ここは君みたいな子どもが来るところじゃない。』

「だめなの?どうして?」

『山神はそんなことを望んでいないから。』

「そっか。」

『あぁ、だから里にお帰り。』

「かえるところがないの。やくたたずだから。だからやまがみさまもわたしはいらないのかな。」

『君も一人なのかい?』

「ひとり、ひとりぼっちだよ、ずっと。」

『そうか。なら私と来てくれないか?』

「…わたしをひつようとしてくれるの?」

そのお方は、もう起き上がることも壗ならない私を抱き上げて、とてもお優しい顔で笑った。誰も必要としてくれなかった私をあの方は拾い上げてくれた。

『人の子よ、もうお前は私のものだ。』

あなたがそれを望むなら、私は、

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  • 誤字、脱字の修正をおこないました。(2018/08/16)

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みっちゃって何者なんでしょうか……この子なのかな……。
そして色々と想像が膨らみます。
今後どんな話になるんでしょう?

大久保珠恵

2018/8/15

2

大久保珠恵さんコメントありがとうございます。
この話については自分でも書きたいことが多いので、暴走しないように続けたいです…。拙い作品ですが、お付き合いいただければ幸いです。

作者:amiy

2018/8/16

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とじる

探求者

なんだよ、普通じゃねぇか。本当にここで合ってんのか。せっかくこんな辺鄙な土地までやって来たというのに、ただの神社でした、なんて笑えないからな。

「おじちゃん、だーれー?」

「うおっ!」

そこには、まだ幼い子どもがいた。いつの間に…。

「おじちゃん、じゃなくてお兄さんな。俺はまだそんな歳じゃねぇわ。」

子どもは不思議そうに首をかしげている。嘘だろ、俺そんなに老けて見えるのか。というか、なんでこんなところに子どもがいるんだ?

「おい、お前家族は?母親とかさ。」

「かぞく?みっちゃはごはんつくってるよ。だから、やまちゃひとりであそんでるの。おじちゃんもあそぶ?」

手に持っている毬をこちらに差し出してくる。悪いけど今は子どもと遊んでいる暇はない。

「うーん、それはまた今度な。なぁ、それよりお前この神社の…」

「今すぐその方から離れなさい。」

背後から冷えきった女の声。腹の辺りに突き立てられた包丁はあと少しでも動かせば、簡単に俺をあの世に招待してくれるだろう。

「みっちゃー!」

「…おいおい、みっちゃは人間も料理できるのかよ。ある程度覚悟してきたけど、こんな命の危険は想定してないんだが…。」

「あなたは何者ですか。」

「とりあえず、その物騒なもん下ろしてくんない?怖いんだけど…。」

「あなたの要求に応える義務はありません。要求はこちらがします。」

「あー、俺はここに知りたいことがあってきた。それが分かれば満足なんだよ。あんたやこの子に危害を加えるつもりはない。」

「信じられません。」

「みっちゃだいじょーぶ。おじちゃんうそついてない。」

「…。山神様がそう仰るなら…。」

そう言って女は包丁を下ろした。ちょっと待て、今確かに山神って言ったよな、

「お前が、この子どもが、山神様か!?子どもの姿をした神は聞いたことはあるが、まんま子どもじゃねぇか!こんなことがあるのか!いや、実際に、現実に、ここにいる!知らない、知らない、俺もまだ知らないこと!アハハハハハハ!」

「あい?」

「山神様、離れて。やはり危険です。」

「えー、先程は失礼した。どうも興奮すると我を忘れちまうんだよなー。」

男は風土や伝承、民俗学などを研究している学者だと名乗った。そして、たまたまこの土地のことを知り、わざわざ足を運んだという。四年前に山神様が死んだという因縁のこの地に。

「神の死んだ地なんていうからもっと廃れてんのかと思ったが、成る程新しい神が生まれていたのか。しかも、こんな子どもの姿でとは予想外だった。」

「あなたの知りたかったことはそれだけですか。」

私の膝の上で山神様はすやすやと眠っている。

「知りたいことって言ったらもっと色々あるんだかな。当の山神は寝ちまってるし、…あんたがいる手前下手なことも出来ないしな。今日は帰るよ。調べたいことが増えたから、その諸々は次来たときに、な?」

「…あなたが山神様に手出しするつもりなら、今度は容赦しませんよ。」

「おー、怖い怖い。」

そう言って、立ち上がった男は、応接間から去る直前、こちらに振り返りにやりと笑う。

「あぁ、そうだ。あんたはその山神にご執心のようだが、覚えておくといい。神というものは、総じて気まぐれで残酷なものだぞ。」

○月×日

今日は、怪しい男がやって来ました。この四年間で初めてのことです。この土地のことを余所者が知るまでに、あなた様が居なくなってから月日が経ってしまったようです。現山神様はまだ幼い。でも、神であるということに変わりはありません。だから、私はそのすべてを受け入れましょう。

男は一人、山を降りる。にやにやとした笑みを浮かべ、静かに引き攣ったような笑い声をあげる。

俺も奇人変人と言われてきたが、あの女。

『ええ、それは私が一番理解しているつもりです。神とは、偉大で残忍、だからこそ畏怖され、敬われるのです。そして、神は孤独だ。』

恍惚とした顔で、眠る山神の頭を撫でる手は母のような慈しみを持ちながら、同時に神聖なものに触れる厳かさを感じさせた。

『神に私は必要ない。だからそのときは、』

せめて、あなた様の手で、終わらせてください。

「ありゃ、もうとっくに狂ってたみたいだな。」

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とじる

優しき日々は

季節は梅雨。ここのところ雨が降り続いています。山神様はお外で遊べなくてつまらなそうにしています。

そういう私もこの時期は洗濯ものが乾かないので、この時期はあまり好きではありません。でも、山々は雨によって得た潤いによって輝いているようにも見えました。

ぴちゃっ

ふと、外を見れば、誰かが立っている気がした。

白い衣が見えた気がして、思わず走り出す。

裸足で泥濘るんだ土を踏みしめて、それを探した。

でも、何かが見えた気がした場所には何もない。

「いないか…。」

雨は、私の希望を打ち消すように降り続ける。足元を見れば自分の足はどろどろで、着物の裾も汚れてしまっている。ふと足に力が入らなくなって、しゃがみこむ。着物はさらに汚れてしまった。

何をやっているのだろうか。今更、何に縋ろうというのか。

忘れるな、私は元々、

「…。要らない子。」

「みっちゃ。ないてる?」

鈴のような優しく響く声が耳に届く。ふと顔をあげれば自分が濡れてしまうことも厭わず、小さな番傘を私に差し出してくださっている。

「いらなくなーよ。」

『要らなくないよ。』

あぁ、あなたもそう言ってくださるのですね。

○月×日

今日は、雨のなかで前山神様をお見かけしたように思いました。あなた様はいったいどこにいらっしゃるのでしょうか。現山神様を見ているといつだってあなた様を思い出します。本当に、あなたはもういないのですか。

『人は雨に濡れると風邪を引いてしまうよ。』

「…。ごめんなさい。」

『失敗は誰でもするものだよ。』

「でも、」

あなたは、雨でびちょびちょだった私を抱き上げて、私が泣き止むまでずっと優しく背中をたたいてくれた。

『落ち着いたかい?』

「…やまがみさま、やまがみさま、わたしなんでもできるようになります。おりょうりも、おせんたくも、あといっぱいいっぱい。…まだできないけどあとちょっとだけまっててくれたら…だから、だから、すてないで、ください…。がんばるから、いらないなんていわないで。」

『             。』

『要らなくないよ。私はね、私の意志で君といるんだ。それにね、』

あの時、本当に寂しかったのは私の方だ。

だから、君がもし望んでくれるなら、

君の一生を私にくれないかな。

あなたの温もりも言葉も、すべて大切なものなのに。

あなたがくれた名も、あなたがいなくなった日のことも

どうしても思い出せない。

あなたはどこに消えてしまったの?

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  • 誤字、脱字の修正をおこないました。(2018/08/20)

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