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僕らのかぐや姫 完結

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夢はきっと叶うよ。出会うべくして出会った君と一緒なら。

1位の表紙

2位

目次

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☪ 不登校のはじまり

 毎日泣きたいくらいつまんない。だって、シュンくんがいなくなったんだもん。

 先生も友だちも、シュンくんのことを隠してるみたいで、どんなに聞いても、知らないって言う。誰も本当のことを教えてくれない。

 僕はひとりぼっちだ。学校に行くのをやめた。

 僕は自分の部屋で紙の工作ばかりして遊ぶようになった。本棚の上はもう、工作用紙のマス目模様の紙ロボットでいっぱい。ひとつ出来る度に、僕はお父さんに見せるんだ。お父さんは、僕が工夫したところや苦労したところを全部見付けて褒めてくれるんだもん。

「お? 新型は関節を動かせるように改良したのか! いいぞ、暁人。手先が器用なのは、お父さんに似たんだな」

 9歳の誕生日に、お父さんはプラモデルを買ってくれた。僕はプラモデルが大好きになった。おしゃべりしながら組み立てるのは、すごく楽しい。つい、シュンくんが隣にいるつもりになっちゃうんだ。

「シュンくん、そんなの先に切り離しちゃダメだよ。こっちのパーツが先」

「あ、ごめん。アキヒトくん、そっちのニッパー貸して」

「いいよ。じゃあ僕にそっち使わせて」

「うん、いいよ」

 ニッパーをとりかえっこした後は、一気に仮組み。シュンくんが得意じゃない工程は、僕が頑張らないといけないからね。新しいツールを使ってみたり、テクニック本を読んだりしながら組み立てるんだ。丁寧に何日もかけて、仕上げに汚し塗装をしたら、お父さんが買ってくれた模型専用の新しい棚に飾る。

「やった! うまくできたね、アキヒトくん」

 僕の隣で、シュンくんがそう言ってくれる気がするんだ。そして、急に寂しくなる。

「シュンくん、さよならもしないで、どこに行っちゃったんだよ…… 一緒に遊びたいよ」

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1

おや?
かぐや姫っていうからどんな? と思ったら、小さな男の子から話が始まるのですね?
こちらのシュンくんって、もしかして……???
お題……????

大久保珠恵

2018/8/15

2

大久保珠恵 さま
子ども時代のアキヒトが作った紙ロボットが、かぐや姫へのはじめの1歩です。

作者:花ミズキ重

2018/8/15

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とじる

☪ 再会

 4月になった。始業式の日も僕は学校に行かなかった。新しい担任の先生がお母さんに電話をくれたから、僕も少し話した。優しい声の女の先生だった。僕は4年2組になったみたいだ。

「アキヒトくん、学校からのお便りを届けに、学級のお友だちがアキヒトくんを訪ねて行っても大丈夫ですか?」

「はい」

 次の日の午後、同じクラスになった子が僕に会いに来た。

「はじめまして。アヒキトくん? 僕、桜庭俊です」

「シュンくん……」

「うん。アキヒトくんがお休みした日は、僕が学校からのお手紙、届けに来ることになったんだよ。よろしくね」

 一番の仲良しだったはずのシュンくんは、僕に『はじめまして』『よろしく』と言って、クリアファイルを差し出した。それには学級だよりが挟まっていて、転校生の紹介が載っているのが見えた。

「シュンくん、どこに行ってたの?」

「ん? どこから転校して来たかってこと? 北海道だよ。僕の家、すぐそこなんだ。アキヒトくん、友だちになってくれると嬉しいな」

(シュンくん、すごく会いたかったんだよ!)

 その言葉を飲み込んで、黙って頷いたのをよく覚えている。

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とじる

☪ もう一度親友に

 僕は不思議な子どもだった。出会う前から、俊と仲よく遊んだ記憶があった。今でも、あれは幻や妄想だったと片付けることは出来ないが、不登校の原因を俊に話したことはない。俊に再会して、そんなことはすぐにどうでもよくなった。

 俊は毎朝学校に行こうと誘ってくれて、僕は4年生からまた学校に行けるようになった。

 俊は、やっぱり僕の知っている俊だった。物知りで僕を笑わせるのが好きで、俊ともう一度親友になるのに、時間はかからなかった。

 授業中、問題を解きながら指先でシャーペンを回したり、図書室の本を読破すると言って机の上を本だらけにしたり、俊のすることは何でも面白そうで、格好よく見えた。僕は俊みたいになりたかった。何でも真似するなよと、俊はよく僕のことを笑った。あれこれ競っても俊にはかなわなかったが、僕にはひとつだけ、俊に勝てるものがあった。

 僕は相変わらず模型を作るのが好きで、めきめき腕を上げていた。学校教材の工作なんて簡単すぎて、バカバカしいくらいだった。俊は僕の部屋によく遊びに来たから、すぐに模型の趣味は感染した。ふたりで電車に乗って模型を買いに行き、初心者の俊にレクチャーしながら、一緒に組み立てた。

「暁人、そっちのニッパー貸して。やっぱり暁人のが使いやすい」

「いいよ。じゃあ僕にそっち使わせて」

「うん、いいよ」

「ははは。あの時みたいだな」

「ん? あの時?」

「何でもない。ちょっと思い出しただけ」

 中学、高校へ進んでも、僕らはいつも一緒。いつからか僕らの関心は模型からロボットへとシフトして行った。バイトして小遣いを貯めては、ロボットキットを買った。どうせ買うならいいものを買えと、父が僕らのロボット熱に投資してくれた。その内緒の小遣いは、母にとっては使途不明金。高校生の常識から外れた額の買い物は、すぐに母にバレて、父とふたり、よく叱られたものだ。

 僕と俊に、父も時々加わって、ロボットのカスタムやプログラミングに夢中になった。熱い高校時代だった。

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1

子供の趣味と才能に投資してくれるお父さん、とても素敵ですねえ。
こういう親御さんの元で才能ある若い人は育つのですね(*´`*)
そして、俊くんとの関係が不思議……?
んんん???
どういうことなんだろう……???
以前に会ってた人は誰???

大久保珠恵

2018/8/16

2

大久保珠恵 さま
情熱を持って子どもの才能を伸ばす親は、かっこいいです

作者:花ミズキ重

2018/8/19

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とじる

☪ 実現

 僕らは大学へ進んだ。僕は航空宇宙工学を、俊は精密機械工学を学んだ。ふたりとも我武者羅だったが『ガリ勉』というやつとは少し違った。新しい知識を得るのが楽しくて、勢いが止まらなかった。

「それに、今のAIじゃダメなんだ。勿論家庭用のおしゃべりロボットよりは格段にお利口さんではあるけどね」

「俊は口を開けば、ロボットロボットだな」

「暁人ほどじゃないと思うけど?」

「いやいや、僕はもう彼女の乗り物のプランに夢中だから」

「そうだね。暁人が頑張ってくれないと、僕の彼女が月に帰れない」

 酒を飲んで笑った。僕らの恋の相手は、かぐや姫に見立てた月探査ロボットだった。いつかふたりで彼女を月へ飛ばそうと、幾度となく夢を語り明かした。

 俊はすでに、将来を期待される開発者のタマゴになっていた。俊がプロトタイプの改良を重ね、経験を積む一方で、僕は知識を深めながら、開拓者を支える想像と企てを膨張させる時間を過ごしていた。大学にはロケットを飛ばす設備はない。

 社会に出た僕と俊は、それぞれの専門分野で研究に没頭し、開発に突っ走った。ふたりだけの夢物語だった『月姫計画』は、賛同者が現れる毎に現実味を帯び、大勢の研究者・技術者が関わるプロジェクトとなった。

「ツキヒメ、おいで。暁人のお船に乗る時間だよ」

「シュン、私、寂シイ。アナタトオ別レ、シタクナイ」

「お別れじゃないんだよ。心配しないで行っておいで。ツキヒメはいつでも地球と繋がってる。僕は月にいる君と、沢山お話ししたいんだ」

「ハイ。私モ、アナタト沢山オ話シシタイ。シュン、好キヨ」

 俊と抱擁を交わすロボットが、誰を模して作られたか。それを言い当てられるのは、俊の初恋を知っている僕だけだ。

「悪い開発者だな。俊にベタ惚れは、ツキヒメの仕様か?」

「学習に決まってるだろ」

「奥さんが妬くぞ」

「ははは。公認だよ」

 共に夢を築いた君の隣で今、ツキヒメの打ち上げを見守る。ふとよみがえる幼い頃の記憶。あれは具象化された導きだったのだろうか。僕はきっと、出会うべくして君と出会った。

「いよいよだ。落ち着け、俊」

「暁人こそ」

“3“

“2”

“1, booster ignition, and lift off of the TSUKIHIME” 

 歓声の中、炎色の光に乗って、僕らのかぐや姫は月へ発った。ツキヒメからの最初の映像が届くのは3日後。その7時間後、彼女は月の地を踏む。

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ロボット? のかぐや姫が、月に行く。
こういうこと、あとなん十年かしたら現実味を帯びるかも知れませんね。
その影でこんなちょっと不思議なドラマがあるのかもしれないと思うと、人間のめぐり逢いとか、偶然の運命とか、夢見る力とか、色んなものに思いを馳せてしまいますね(*´`*)

大久保珠恵

2018/8/19

2

大久保珠恵 さま
キーーンとひと飛びお月さま なアンドロイド、誕生してほしいです☆

作者:花ミズキ重

2018/8/19

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とじる

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