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ギャグ小説:褒めたら貴方は何をくれるの? 完結

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合計:8

ハッピーエンドの物語です。
バカだと思って頂けると有り難いです。

1位の表紙

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 いつもの公園で手を繋いで夕日を見る。

 もう帰る場所は同じ家なんだけども、これが付き合いたての頃からのお決まりだ。

 彼はふと、こんなことを呟いた。

「褒めたら100円くれるジジイ」

「えっ」

「褒めたら100円くれるジジイ」

「……そうねっ」

 きっと、私と彼の出会いは最低だった。

 町内で有名なジジイなんて、どこもかしこもいるもんだと私は思うんだけども、うちの町内に住む有名なジジイは特に変わっていて、それは褒めたら100円くれるジジイだった。

 だから私はよくそのジジイを褒めて褒めて褒めまくって、100円、200円、300円、400円と手に入れて、それでスクラッチくじを買って100万円が出る日を待っていた。

 そんなある日、いつも通りノーヘル・バイクでかっ飛ばし、褒めたら100円くれるジジイの元へ行くと、褒めたら100円くれるジジイはホクホク顔でこう言い放った。

「悪いね、モヤコちゃん。今日はもう100円玉無くなっちゃったんだ」

 ヘルメットを被っていたら、地面に叩きつけたいところだが、あいにくノーヘルで風を浴びることが楽しみなので、八つ当たりするモノは無い……いやある、褒めたら100円くれるジジイから100円玉を全て奪ったバカを殴り倒すんだ。

 そう思い、褒めたら100円くれるジジイに、どこのどいつに褒めちぎられたのか聞くと、横断歩道を1つ越えた自動販売機の前に立っているヤツを指差した。

 私はすぐさま走って、信号は無視し、急いで横断歩道を渡り、そいつの肩に手をかけ、言ってやった。

「褒めたら100円くれるジジイは1人400円までだ!」

「そんなルールねぇだろ」

 私は愕然とした。

 いや確かに、肩の感じも、そうか、筋肉質だ、そしてその声、間違いない、コイツ……男だ……。

 肩に置かれた私の手を払いながら、その男は振り返った。

 パッチリ二重で、毛先を遊んださわやかな美男子、その男は片手一杯に缶ジュースを抱えていた。

「当たりも出たのにツイてねぇな、こんな女に逆ナンされるなんてよぉ」

「なっ……ナンパなんてしない!」

 私は気丈に振舞ったが、体が芯から熱くなってきたことを抑えられなかった。

 決して、好みがドストライクな男性だからというわけではなく、褒めたら100円くれるジジイの件で怒っているということにして、私は彼をまくしたてた。

「1人で褒めたら100円くれるジジイを独占するなんて最低ね! 貴方に助け合いの精神は無いのっ? そもそも男でしょ? ジジイを褒めるのは女性って相場が決まってるもんでしょ! 貴方は褒めたら10円くれるババアでも見つけて、駄菓子屋へ通ってなさいよ!」

 面倒クサそうに俯きながら私の言葉を聞いていた彼は、顔をスッと上げ、私のことをじっと見ながら、こう言った。

「オマエ、よく見たら結構美人だな」

 あまりにも予想外な発言に、私は完全に顔が爆発してしまい、赤くなって、クラクラしてきた。

 そのまま地面へ倒れ込みそうになったその時、彼は持っていた缶ジュースを手放し、私が倒れないように支えてくれた。

「そんなに褒めたら100円くれるジジイから、100円もらえなかったことがショックだったか。全く……ほらよ、これで涼め」

 彼は地面に落ちた缶ジュースを1つ手に取り、その冷たい缶ジュースを私の頬に当てた。

 一回地面を経由した缶ジュースは、砂が少しついていて、頬が少し痛かゆかったけども、そんなことはあまり気にならなかった。

 そんなことよりも私は、彼のことが気になって気になって仕方なかった。

「オマエさっき、ノーヘルでバイクかっ飛ばして来てたヤツだろ、ヘルメットは日射病にならないために付けないとダメなんだぜ」

 彼は私が熱さでこうなってしまったとずっと勘違いしていた。でも確かに熱さなのかもね、貴方への。

「俺さ、まだバイクの免許は受かってないんだけども、何度か運転したこともあるし、俺がオマエの家に送ってってやるよ」

 そう言うので、ここは甘えちゃおうかなと思いながら、バイクのほうを見ると、なんと私のバイクに褒めたら100円くれるジジイがまたがっていて、そして、そのまま走り出して、どこかへ行ってしまったのであった。

 私の盗んだバイクは盗まれてしまった。これも運命なのかなと思って、天を仰いだ。

「バイクはどこだ?」

「褒めたら100円くれるジジイに、盗まれちゃった」

「……じゃあもう、褒めたら100円くれるジジイは、この町に帰ってこないかもな」

「私もそう思う、あーあ、100円くれるジジイがいなくなっちゃったなぁ」

「暇になるな」

「そうだね、暇になるね」

「……じゃあ付き合っちゃう?」

「何それバカみたい、付き合っちゃおうかっ」

 出会いとしてはきっと最低、でも私はこの出会いを誇らしく思う。

「褒めたら100円くれるジジイ」

「うん」

「褒めたら100円くれるジジイに……」

「うん?」

「褒めたら100円くれるジジイに、俺もなろうかな。モヤコはどう思う?」

「別にならなくていいよ。その代わり、褒めたら私に愛をくれるジジイになってよ」

「何それ、逆ナンの次は逆プロポーズ? ジジイになっても一緒にいて、的な」

「逆ナンではなかったって言ってるじゃん。でも確かに今のは……」

 そうかもねっ。

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6

>さなお様
 コメント有難うございます!
 最後まで読んで頂き、有難うございますっ。
 オチは苦手意識が強いのですが、褒めて頂けて、大喜びです!

作者:空也卜全

2018/8/18

7

このお話好きです!
なんだか“彼”に惹かれます。

カンリ

2018/8/21

8

>カンリ様
 コメント有難うございます!
 彼は天然なのか何なのか、書いた僕にもサッパリ分かりませんっ。

作者:空也卜全

2018/8/21

9

【モノコン2018物語部門 予選通過のお知らせ】
「褒めたら100円をくれるおじいさん」を介して、男女が出会う。ユーモア爆発で、おもしろかったです。おじいさんが「私」のバイクを盗んだあたり、意表を突かれました。

10

>モノコン2018予選選考スタッフ様
 コメント有難うございます!
 震えるほど嬉しいですっ! 大きな大きな叫び声を上げました!
 そして「おじいさん」と優しく言い換えて頂き、有難うございますっ。

作者:空也卜全

2018/9/5

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とじる

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