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次はあなたが相談者!?

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合計:6

あなたの恋を全力応援!
モテに前進せよ!本気の恋愛相談受付中!
詳しくは恋愛課まで。

1位の表紙

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 人生恋愛学部 卒業できない。

                         ささまる

 恋愛相談課には今日も、多くの人が訪れる。

 

 ああ、もううんざりだ。街コン十三連敗っ! 圧倒的敗北っっ、おらはモテねぇべさ。

 太郎丸は絶望の渦中にいた。

 最高の恋だと思っていた。

 一緒に遊んで、一緒にご飯を食べて、一緒に映画を見た。楽しかった。美菜子さんも楽しそうだった。デートも三回目だった。

 だからおらは告白した。

 だが、

「ごめん、私、彼氏いるから」

 美菜子さんはそう言った。理解できなかった。したく、なかった。

 おらは呆然と帰宅した。

 その夜、おらはやっぱり美菜子さんが好きです。とメッセージを送った。

 美菜子さんからメッセージが返ってくることはなかった。

 こんなことなら出会わない方がよかったべさ。

 もう何回目だろう。こんな展開は何回目だろうか。高いお金を払い、貴重な休日をを消費し、出会いの場へと攻め込む。そして敗北、圧倒的敗北。繰り返される敗北。

 おらの容姿では、逆立ちしてもイケメンには勝てない。それでも彼女が欲しかった。

 わかってるべさ、これが無謀な戦いだということは。でも、それでも諦めきれない。

 連絡先を交換して、ご飯に誘い、デート、行うことはシンプルだ。しかしこれが難しい。

 立ちはだかる突然のブロック、既読無視、疑惑の体調不良ドタキャン。そして運よくデートにこぎつけても、そのデートを次に繋げること、二回目のデートに持っていくことはモテない男にとっては至難だ。

 結局全ての街コンは、期待だけさせておいて、おらを無へと返す。

 最高の恋だと思っていたものは、全て最低の出会いだった。

「なるほど、それが今の太郎丸さんの現状ですね」

「そうだべさ」

 恋愛課職員はゆっくりと腕を組んだ。

「あなたの気持ちは、わかります。ですが、」

「ですが?」

「少々、独りよがりすぎますね」

「‥‥‥と、いうと?」

「まず太郎丸さん。あなたは【性格の合う彼女】【容姿が綺麗な彼女】、どちらを選びたいですか?」

「それはもちろん、性格だべ。外見は、まあ少しは綺麗で‥‥‥」

「そこですっ!」

「だべっ?」

「あなたは【性格】を選ぶと言いながら、同時に【容姿】という点を当たり前のように求めている。つまり性格の合う容姿の可愛い彼女を求めている。いや、それすら違いますか。あなたは単に可愛い彼女【容姿の優れた女性】を求めているだけです!」

「だべべ! そんなことは、ないべさ」

「思い出して下さい。あなたが最高の恋だと思っていた時、相手の容姿は可愛かったはずです」

「そ、それはまあ。いやでもクラスで四番目、五番目くらいだべ。とびきりアイドルみたいに可愛いってわけじゃ‥‥‥」

「愚か者―っ」

「だべ?」

「そういう女性が、一番モテるんですっ」

「だべ!」

 恋愛課職員は呆れかえっていた。

「また太郎丸さんのお話を聞いていると、もうひとつ大きな課題が見えてきました」

「おおきな、課題?」

「はい、あなたは終始、女性のことではなく、自分のことを考えている。いや、自分のことしか考えていない。相手をこのデートでどうやって楽しませるのか、どうやってエスコートするのか、全く考えていない。場当たり的に女性に対して、【つぎ、どっかいきたいところありますか、だべ?】と判断の責任を全て女性に押し付けている」

「そ、そんなことはないべっ。それは女性の気持ちを尊重しようと‥‥‥」

「違います。 あなたは怖いだけです。自分で決めたプラン通りにデートを実行する自信がない。加えて嫌われたくないから自分で決められない。臨機応変にできない、そして優柔不断」

「うっ」

 太郎丸は顔を覆う。

「あなたは自分のことしか考えられていない」

「うゥゥー」

 最高の恋を最低な出会いに変えていたのは女性ではなく、太郎丸さん、あなた自身です。

「しかしこれらのことを直していけば、希望はあります。頑張ってください」

 それではお次の方、どうぞ。

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恋愛は、ほんと、そうだと思います。結構的を得ていて、ちゃんとした相談していて、逆に参考になります。
とっても、面白かったべッ。

2

あふりかのそらさん、ありがとうございます!
不器用な恋愛経験を全力で生かし、読んだ方がモテに前進できるような作品を執筆したいです。

作者:ささまる二等兵

2018/9/1

3

恋愛は、本当にわからないです。
容姿については、女性も同じかもしれないですね。
口では「中身が重要」と言いつつ、結局外見も求めちゃってる気がします(^◇^;)
恋愛課職員さんの仰ることがグサグサ刺さりました笑

狸塚ぼたん

2018/9/2

4

ぼたんさん、ありがとうございます!
外見クリア(一次試験)→中身チェック(二次試験)
案外、真理のような気がしてしまいます。
まあ、人間だもの。仕方ない。。

作者:ささまる二等兵

2018/9/2

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とじる

 「二人目、モテすぎた男」

 拓真は女性にうんざりしていた。拓真には天性の才能があった。異性を引き付ける才能である。幼少期から女性にモテ続けた彼は、楽しい毎日を送っていた。

それは世のほぼ全ての男性が憧れるような、夢見るような毎日だったと形容していいだろう。

しかし彼にとってはそれが当たり前であった。

大学生になった彼は一人暮らしを始め、モテ生活、いやハーレム生活に磨きがかかった。複数の女性と仲良くし、恋愛恋愛し、チュッチュしていた。

彼にとって、それは当たり前だった。

彼は、あまりにも異性を引き付ける能力が高かったために、特定の女性と長続きしたことは一度もなかった。その事に関して彼は少しだけ悩んでいた。少しだけ。

 彼にはもう一つ悩んでいることがあった。それは男友達ができない、こと。

 モテすぎた彼は男を寄せ付けないオーラを無意識に放出していた。

それに周りの男達の嫉妬心やプライドが絡み合い、彼を敵対、あるいは神々しい視線で見られることが常だった。

 

 彼は心許せる友人や恋人が出来たことは生まれてきてから一度もなかった。

 

 彼は生まれ変わりたかった。最高の友情が欲しい、最高の恋がしてみたい。

 彼はモテすぎた。それは彼にとって幸であり、また不幸でもあった。

 モテなくなれば、オレは幸せになれるはずだ。

 恋愛課職員は腕を組んだ。

「つまり、まずはモテない男になりたいと」

「はい、モテてしまう原因を一つずつ改善していきたいんです」

「改善、ですか。‥‥‥そうですね、あなたにとっては改善という認識になりますね」

「オレ、ほんとに変わりたいんです!」

 拓真の抑揚のある話し方、爽やかな容姿は言わずもがな、ギャップを感じさせる低い声。似合いすぎるジャケット、そして漂う彼自身のフェロモン、甘美な香り。

彼の非モテ技術は絶望的に低かった。

「むむ。長い戦いになりそうですね」

「覚悟の上です」

 恋愛課職員は眼を光らせた。

「それでは具体的にアドバイスをしましょう」

「はい」

「まずは徹底的に清潔感を削り取りましょう。お風呂は三日に一度、髭そりは剃り残しを意識して残すこと。服は皺だらけ、埃が付着しているものを選びましょう、サイズの合わない萌えアニメシャツなどがおすすめですね。醤油などをこぼして染みを作っておくことも大切でしょう」

「なるほどっ」

「あと、爪は伸ばすこと、鼻毛は出すこと、この辺りも必要です」

「おおっ」

「それでも女性からデートのお誘いは絶えないでしょう。そんなときは三十分以上遅刻することや、食事は音を立てながら、会計直前にトイレに駆け込んでみることもいいですね」

「ドタキャンは駄目ですか?」

「悪くはないです。ただし人としていけません。それにあなたの場合ドタキャンすることで、もっと会いたいと女性に思われる可能性があります。一つ一つ確実に改善して嫌われましょう」

「ありがとうございますっ。オレ、変われる気がしてきました」

 よかったです。しかしあなたの目的はモテなくなることではないですよね。

「え?」

最高の友情を感じたい、最高の恋がしたい。ですよね?

「はい」

 モテなくなっても、最高の友情は手に入らないと思います。まして最高の恋は出来ません。

「どういうことですか」

 あなたはモテすぎるから駄目なのではなく、モテすぎることに甘えている。

ただ、それだけです。

今まで、あなたにとっての最低の出会いは、数えきれないほどあったかもしれません。

しかし、相手の女性にとっては最高の恋、だったのかもしれませんね。

「はい?」

そのことをあなたは一度でも考えたことがありますか?

「次元を越えた愛から覚めて」

 元太は二次元のアイドルが好きだった。特にセンターの小町ちゃん、愛称はコマ。揺れるツインテールと恥ずかしがりやな一面は元太を虜にした。【チェリーライブ第1話】

ステージ上では自信満々な強気な娘を演じながらも、実際のコマは気弱で恥ずかしがり屋でおっちょこちょいだった。【チェリーライブ第4話】

そんなコマが気弱な性格を克服するために活気がなくなった商店街でソロライブを披露する姿を見てさらに惚れた。【チェリーライブ第12話】

コマのキャラグッズを全て集めることはもちろん、コマの単独ライブ遠征では誰よりもサイリウムを振った。

それから数年経っても、元太はコマを応援していた。

ゲーム課金も数十万を使い、コマのコスチュームをコンプリートしていた。アニメ特番ラジオ。声優ラジオ。オーディオコメンタリー。全てだ。

あるとき事件は起こった。

 

コマの中の人【声優】波乃ナミの結婚が発覚した。

さらに、妊娠も発覚した。波乃ナミ本人の公式アカウントだった。

 

元太はショックだった。いつかこうなることは心のどこかで予期していた。ただ想像以上に堪えた。

 友人にこの気持ちを吐露しても「ただのアニメでしょ」「そりゃ中の人は結婚するでしょ、普通に考えてさ」「そんなもんだべ」と周囲の言葉は元太をさらに落ち込ませた。

 自分の感情の正体がわからない。ただ、つらい。

 こんなことなら、コマに出逢わなければよかった。

「失恋です。典型的な失恋ですね」

 恋愛課職員はあっさり答えた。

「え?」

「遠くから眺めていた憧れの先輩を新入社員にしれっと取られた。そんな感じですよね」

「いや全然違いますっ」

「いいえ、同じです。あなたは長い間、恋をしていた。コマを好きになり、そして波乃ナミを好きになってしまっていた。気付かないうちに」

「そんな」

「それだけのことです」

「それだけのことってっ!」

「新しい恋を見つけてください」

 恋愛課職員は言った。

「あなたは出会わなければよかったと、さっき言いましたが、失恋した直後、そんなことを仰る方は多いです。しかし私は断言します。元太さん、あなたは恋をしていた」

 それも、最高の恋を。

 元太は震えた。そうだった。そうだったんだ。

 ずっと、ずっと恋をしていた。

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とじる

「男を斬り続けた女」

 綾はモテる。綾自身そう思っている。そしてそれは事実だ。いや、事実だった。

 彼女は女子高、女子大出身。男性との出会いはその間ほとんどなかった。

 しかし彼女は大学卒業と同時に覚醒した。きっかけは婚活パーティだ。

 大学の先輩の誘いで断りきれず参加したパーティで、彼女は驚くほどモテた。

様々な男性からアプローチを受けた。男性参加者の大半が彼女に釘づけだった。

何故か。

それは綾の発する初々しさ、そして若さ、純粋さ。それらが合わさって男性に魅力的に映っていたからだった。綾はそのパーティで大学の先輩その他大勢の女性を圧倒した。

自分にこんなに魅力があること、男性を引き付けることができることに彼女は驚き、そして感動した。

その後、彼女は自発的に婚活パーティや合コン、街コン等出会いのイベントに参加し続けた。

その全てで彼女はモテた。スマートフォンを見れば、様々な男性から飛んでくるメッセージ。

よりどりみどり。その中から一番容姿がタイプの男性を選び、デートを続けた。

数年間、彼女は様々な容姿の整った男性と付き合った。

最初は楽しかった。とても刺激的な日々だった。

彼女は大学時代とは最早別人だった。純真な少女は、気高い姫となった。

美意識は格段に上がり、同時に複数の男とも付き合った。男達は彼女を精一杯エスコートしたし、彼女に高価なプレゼントを贈った。彼女はまさに姫だった、のかもしれない。

しかし、徐々に楽しさは薄れた。私はこの程度の男性では満足できない、と。

もっとかっこいい、もっと気が利く、もっと社会的地位のある人。彼女は常に上を目指すようになった。

気高く、美しく。

  

    恋愛課職員は腕を伸ばしてストレッチをしながら言った。

「失礼ですが、あなたは気高くもなく、美しくもありません」

「は、いっ?」

 綾は唖然とする。

「あなたは大変な勘違いをされています。非常に申し上げにくいことではありますが、失礼を承知で申し上げます」

あなたは、モテません。

「え?」

「あなたは男性にモテないどころか、女性の友人も減っていく一方でしょう」

 綾の唇がふるふると震えた。

「あなたはかつてはモテたのでしょう。純粋さ、初々しさ、そして若さ」

 今のあなたには、何ひとつない。

 あなたは男性を選びすぎた。少しでも自分の気に入らないところがあれば、振った。

 あなたは数々の男性とのデートをドタキャンしていますね。そして相手の男性を着信拒否、受信拒否する。一方的に連絡を絶つ。

 なぜこんなことをするのですか?

 簡単ですね、選び放題だからです。

手にとってやっぱりやめた、違うおとこー。そんな感じですよね。

「違う!」

 同性の友人には「あんな彼氏は駄目よ。こんな男を選ばないと」と上から目線の指摘を連発。時には友人の彼氏を寝取り、そして捨てた。

「ちが、う!」

 あなたは驚くほどモテたんですね。

かつては。

しかし今は、もう。

「違う違う違う!」

 綾は椅子を弾き、その場から走り去った。

 綾さん、あなたが【会う価値なし】と決めつけてドタキャンしたデートや食事は数えきれないほどあったでしょう。そしてそのなかには最高の恋に育つ種があったのです。

 しかし、あなたではその種を育てることは、いずれにせよ出来なかったでしょうね。

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【モノコン2018物語部門 予選通過のお知らせ】
出会いや恋にかんして思い悩む人たちが駆け込む、恋愛相談課。それぞれの話が短く、文章もわかりやすく、読みやすさ抜群。恋愛課職員の言葉には、ハッとさせられます。

2

プロの選考の方にこのような感想を頂き、とても喜んでいます。
予選通過、とっても嬉しい! です!
二次元の海を泳ぎ続けた私ですが、三次元の恋愛に参戦!
そこで出会う数々の受難。それらを生かし執筆します。

作者:ささまる二等兵

2018/9/1

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とじる

「最高の出会い、最低の恋」

元春はとても落ち込んでいた。それは何故か。

 

 生まれて初めてできた女友達に、彼氏がいたこと。

 そして、その彼氏は元春の親友だったこと。

元春は、生まれてから今に至るまで恋愛経験ゼロだった。

元春にとってたった一人の女友達、千秋。

そして親友、いや、その彼氏、竜也。

今、このとき、もう全てが手遅れ。

後悔は募る。

時はさかのぼり、

大学のサークル選びは重要である。その後の大学生活に少なからず影響を及ぼすからだ。

元春は竜也に誘われ、映画研究サークルに入部した。小さなサークルで部員は十人足らず。

しかも幽霊部員がほとんどで、実働部員は、元春と竜也、そして千秋だけだった。

千秋という女性は積極的に元春に接してきた。女性を前にして挙動不審になりがちだった元春。

案の定、千秋の前でも挙動不審になってしまった。

しかし、彼女はそんなこと気にもせず、しっかりと元春の言葉を聞き、元春の意見を尊重し、時には反対意見をぶつけた。

元春にとって、彼女はどこまでも自然体だった。

それは、とても嬉しいこと。

元春は相変わらず女性とは話せない。だが徐々に彼女とだけは自然に話せるようになりつつあった。コミュニケーションが取れるようになってきていた。

 サークルの部室では講義時間の関係上、元春と千秋、二人きりになることもあった。

 密室で可愛い女の子と二人きり。

 その状況は元春にとってかけがえのない時間だった。

 千秋と話す内容は他愛もない話。映画の話、苦手な教授の話、音楽の話、竜也の話。

 千秋は竜也のこともよく話す。

 元春は青春していた。

 女性と話すことさえ全くできなかった自分が、今は自信を持って話せている。

 千秋となら自然に話せる。千秋は最高の女友達。

 最高の出会いだ。映画研究サークルに入ってよかった。

 千秋とは、話せるだけで満足だ。そう、満足、なんだ。

 

三人で映画館に行った。三人でご飯を食べた。三人で買い物をした。ドライブした。

 まさに憧れの生活。そう思った。その時はそう思っていた。

 元春は幻覚から覚める。

元春は「TOTUYA」で千秋が面白いと言っていた映画をレンタルし、夜の街を歩いていた。

次のサークル活動ではこの映画の話で盛り上がったらいいな、と思いながら。

だがその帰路、

 

信じられない光景が視界に飛び込む。

 

キスをしているカップル。その二人、

千秋、と竜也。

 その二人は、ホテル【ハワイリゾート】に消えていった。

 

 【【「「「体が軋む? 体が動かない?」」」】

「見、間違い、だよ、な」

 そう自分に言い聞かせる。

 元春は、その場にずっと立っていた。一時間、二時間、そして三時間。

 果てしなく長い時間が過ぎていった。元春にとって地獄のように長い三時間だった。

 

 やっぱり人違いだ。もう帰ろう。

 そう思った時だった。

 ホテル【ハワイリゾート】から二人が出てくる。

 元春は体の芯から固まった。目を逸らすことが、できない。

 できない。

 千秋と、竜也っ。

 その距離二メートル。

 すれ違う、とき。

「二人ってさ! つ、つ、付き合ってんのか?」

 精一杯の声を出した。それは、体中の細胞の叫びだった。

 竜也と千秋は止まった。恋人繋ぎをしたまま。

「‥‥‥元春、すまん。言ってなかったけど、

 俺達、付き合ってるんだ

 ごめんね、もとはるくん。

 ほんとうはずっと前から付き合ってて、

 

 恋愛課職員は真剣な面持ちを崩さない。

「つまり、その二人は高校時代から付き合っていた、と」

「はい。ボクと千秋が初めてあった時、千秋と竜也はもう二年以上付き合っていたそうです」

「う、むむ」と恋愛課職員は腕を組む。

「僕は二人のデートに付き合わされていただけだったんです。二人のデートの盛り上げ役です。気付かないうちに、気付かないうちに、二人の掌の上で踊り続けていたんですっ!」

 二人はずっと隠していた。付き合っているという事実を。

 誤魔化し続けていた。悔しい悔しい、許せないっ

 恋愛課職員は自分の耳に手をあてた。そして降ろした。

「元春さん。ひとつ、質問しても?」

「はい」

 あなたは、一度でも、千秋さんと恋愛についての話をしましたか?

「え?」

 

 もう一つ。

 あなたは、一度でも、竜也さんと恋愛についての話をしましたか?

「それは、‥‥‥してないです」

 それが、すべて。それが、ぜんぶ。それが、こたえ。

「そんなっ」

 あなたは千秋さんと最初に出逢った段階で、少なくとも一カ月以内に恋愛話をするべきだった。

「でもっ」

 ですね。あなたには、恋愛話をする勇気はなかった。仕方のないことです。

 気付いた時には千秋さんを強く意識していた。しすぎていた。

だから恋愛話が怖くて怖くてできなかった。

「こわい?」

 そうです。あなたは怖かったんです。

 

 最高の出会い、最高の恋が消えてしまうことが。

 薄々、感付いていたはずです。

 もしかして、万が一、仮定の仮定、千秋と竜也は付き合っている?

 そんな疑念が初期の段階からあったはずです。

 しかしあなたは目を逸らした。逸らし続けた。

 なぜなら、直視すれば、最高の出会いは、最低なものへと変わってしまう。

 だから、あなたは自分自身のために、気付かない振りをした。

「違う」

「と、思いたいだけです」恋愛課職員は言い放つ。

 信じたいものを信じた。

 それだけです。

「あの、ボクは、これからどうすれば‥‥‥」

たくさんの女性と出会う努力、仲良くなる努力をしましょう。

恐らく、この先、傷付くことは数えきれないほどある。

ですが、その果ての果て、

あなたが勇気を出し続け、女性の心に踏み込み続けた時、

元春さん、あなたは、あなただけの「恋」を見つける。

「理由」

 彩夏は今の彼氏と別れたい。

最初はかっこいいと思った。

だけど服がちょっとダサい。たまに謎の帽子をかぶってくる。

 食事中にたまにものをこぼす。喧嘩すると言葉遣いが荒くなる。

 歌が下手。方向音痴。車の駐車が不安。よくお腹を壊す。

 満員電車に絶対乗らない。たまに作ってくれる手料理が超まずい。

 好きでもない洋楽の本やCDを押しつけてくる。あと面倒くさがり、そしてちょっと優柔不断。

 どちらかといえば、私の彼氏は甲斐性なしだ。

「今の彼氏とは、別れた方が、いいですか?」

彩夏は、真面目に聞いた。

それに対して恋愛課職員は困惑した様子だった。

「失礼ですが、彩夏さん。あなたは、何を相談しに来たんですか?」

「え? だから今の彼氏と別れた方がいいのかどうかを‥‥‥」

「ああ、いえ。そんなことは聞くまでもないです」

 あなたは、もう【別れる】と決めていますよね。

「え?」

「正直、あなたが申し上げた別れる理由は、取るに足らないものだと思います」

 もっと、別の、大きな理由が、あるのではないですか?

「そ、それは」

「例えば、恋人が職を失ってしまった、借金を抱えていた、重い病を患っていた、両親の介護をしていた、何らかの障害を持っている方だった」

「いえ、そういうわけではないです」

「では、恋人が職を偽っていた、ギャンブル、酒の中毒者だった、宗教、暴力団の幹部だった、前科持ちだった、とか」

「違いますっっ!」

「では恋人が浮気をしていたとか」

「違います」

 では、あなた自身に、他に好きな人ができた。

「っ!」

 彩夏さん、あなたには別の新しく好きな男性が出来てしまった。

 あなたは今の彼氏ではなく、別の男性に恋をしている。

 長い沈黙、その後。

「そうです。あたしには、‥‥‥」

 

 他に好きな人が出来たから、今の彼氏とは早急に別れたい。

 それだけですよね? しかしそれを認めたくない。

建前として、ここで私に助言してほしかったんですよね。

今の彼氏とは別れた方が良い、と。

 そしてあなたは何の罪悪感もなく、今の彼氏を振り、新しい恋に邁進できる。

「あ、あたしはっ」

 今の彼氏に、正直にその気持ちを、ありのまま伝えること。

 それができないなら、あなたは悪者のまま、新しい恋へと、進んでください。

 

ああ、そんなに深刻なお顔をしなくても大丈夫ですよ。

普通のことです。よくある問い合わせの一つに過ぎません。

 恋愛において悪者になってしまう方は、数えきれないほどいらっしゃいます。

 モテる男性や女性は、悪者にならないように、布石を打ったりしますね。

 あなたも今回、ここで布石を打とうとしていた。

 いいんです、それが、人間の恋愛だと思います。

 

基本的に美しくない。

だからこそ人は恋愛ドラマ、映画、漫画、そういったフィクション、虚構世界に憧れるんです。

 

 

 

「うそをついた男達」

 海斗はアニメや漫画、そして歴史が好きだ。特に戦国、幕末、近代史。

 類は友を呼ぶ。

 彼の周りも、アニメ、漫画、イラスト、特撮、歴史、ミリタリー、カードゲーム、TRPG、そういった趣味を持つ友人が多かった。

 彼らは常々言っていた。

「3次元の女に興味はない」

「彼女? 結婚? 必要ないだろww」

「海斗―、今の時代、一人で生きる方がコスパ良いって」

「コマさえいれば、何もいらない。やっぱ二次元さいこーーー」

「それよりチェリーライブの三期はよ」

「新作エロゲー 水族館学園♪ キタ――」

「船これアップグレードまだー」

「クトュルフ神話大戦4発売! 徹夜だーーーー」

 海斗は彼らと楽しい日々を送った。

 

海斗は地元を離れ、県外のパソコン会社に就職をした。

正月やお盆には地元に帰省して、仲間たちと盛り上がった。

そして時は流れ、海斗は地元に帰ってきた。

久しぶりに会う仲間たち。思えば、ここ数年あまり連絡が取れていない奴も多かった。

楽しみだ。

アニメや漫画、ゲーム、歴史、そんな話でまた盛り上がることができる!

「あー、海斗。久しぶり。俺、結婚したわww」

「海斗は変わってないな―。そういうところ好きやでー」

「今、二人の女性と付き合っちゃってるw どうしよww」

「老後考えると、一人はキツイかなって‥‥‥。そう思わないか?」

「一度、結婚はしとくべきだと思うぞ」

「アニメかー。最近は見れてないな―」

「やっぱ生身の女だろ。海斗はド―テー卒業まだ?ww」

「エロゲー? ああ、全部売ったわ。プレミア付いて、一六万! 割と良くね」

「ゲーム? うん最近は子供と一緒にやってるかな。クトュルフ大戦? 嫁と子供の前じゃできねーよw」

海斗は愕然とした。

 まるで浦島太郎にでもなったような気分だった。

 かつての仲間達は、

 もうどこにも、いなかった。

 恋愛課職員はコーヒーを出してきた。

「これ、北欧で有名なグリーナカフエのコーヒーですよ」

「はあ、あの、拙者、あまりコーヒーは好きでないのであります」

「まあまあ、飲んでください」

 仕方なく、海斗は熱々のコーヒーを頂く。

「にがっっ!」

「ははは」

 恋愛課職員は微笑む。

「何を笑っておるのだっ」

「まあまあ、この苦さが後々クセになるんです。また飲みたくなりますよ」

「はあ、‥‥‥それで、そんなことより拙者」

 ええ、あなたは、間違ってはいませんよ。

 ですが、海斗さんの話はいささか誇張気味です。

友人たちはあなたを馬鹿にしたくて、結婚しているというわけでもないでしょう。

彼らは彼らの選択をした。そしてそれが正しい選択だと思っている。

彼らは少しの優越感に浸り、あなたは少しの劣等感を抱えている。

「拙者、そんなことはわかっておるのです。それよりも」

 仲間が欲しい。二次元で盛り上がれる仲間が。

「海斗さん。地元の友人が皆、変わってしまったというのは誇張しすぎです。変わっていない仲間も必ずいると思いますし、変わったように見える仲間も、少し見栄を張っているだけだと私は思います」

 結局、恋愛課職員は、それっぽいことを言っただけで、拙者にとっては何の役にも立たなかったな。

 海斗はラーメン屋で一人。飯を食べていた。

 

 プルっプルっ、夢の時間はエスカレーター♪

 電話だ。

 おおー海斗か! 俺だ、元太だっ。

 皆、結婚して寂しいって聞いたぞーー。

「なんとっ! 何者に聞いたのだ」

 恋愛課職員の人だ。前に失恋した時、世話になってなー。

 そんなことより、今期は何見てるんだ。俺のおすすめは【マトンガ―ル】【博士の過去は女王様】【幼馴染に殺されそう!】。この辺りは面白いと思う。てか前期の【秋にも桜は咲いている】。ヒロインの加奈姫めっちゃ可愛くね、可愛いよなっ可愛かったよなっっ!

 てか、俺、定期的にアニメのオフ会主催してっから、海斗も来いよ―。折角地元戻ってきたんだしさー。俺はお前を待ってたぞ―っっ。

「喜びの嵐で候」

 あの恋愛課職員に、拙者、惚れそう。

「無傷で最高の恋」

 真希は失敗してしまったと感じた。

 気になる男性と、ケーキバイキングに行った。とてもテンションが上がってしまい、あるいは緊張からかもしれないが、食べきれない量のケーキをトレイに盛ってしまった。

結果、男性の前で大量に残すという事態を招いた。

 せっかく良い感じだったのに、台無しだった。

 そろそろ告白、

 

 【される】と思っていたのに。

 

 恋愛課職員は、ふむ、と考える仕草をしている。

「真希さん」

「はい」

 あなたは、一度でも自分から告白をしたことがありますか?

 それ以前に、

 あなたは、自分から男性に連絡を取ったことがありますか?

「‥‥‥、いえ」

 何故です?

「それは、‥‥‥」

 あなたは、無傷で恋愛を成功させようとしている。受身一択で勝とうとしている。

 違いますか?

「え? ちょっと意味がわかりません」

「あなたは今まで、苦労せずに恋愛をしてきた。恋愛の辛い部分を男性に投げ続けてきた」

 そんなことはありませんっ! 私だって、本当に大変で。

「今までの彼氏とは、全員と喧嘩別れになってしまったとお聞きしました。そしてその内容も全ては彼氏に原因があるように真希さんは仰いましたね」

「はい、だって事実ですから。どう考えても、相手が悪いですっ」

 喧嘩の後、一度でも、相手と話し合おうとしましたか?

「ぇ?」

【メッセージ】

 もう少し、あたしの気持ちを考えて欲しかった。あたしは、ずっと我慢してたんだよ。

 あたしの、辛くて、悲しい気持ち、察してほしかった。

 わかってくれなかったことが、なんだか、くやしい。

 あたしの立場で考えてほしかった。

 あたし自身にも少し、直した方がいいところもあるかもしれなかったけど、

 もう我慢できないから。

 今までありがとう。一緒に過ごして、楽しいこともあったよ。

 でも、お互いの為に、もう連絡しないでね。

 さようなら。

  あなたは彼氏と喧嘩をした際、一方的に、長文メッセージで自分の言い分を相手にぶつけ、ブロックしたりすることを繰り返していますよね。

 直接会うことを避け続け、スマホでメッセージを叩きつけて相手を受信・着信拒否する。

 あなたの弱さです。

 向き合うことができない弱さ。

 自分が傷つくターンをスキップし続けて生きてきた。

 違いますか?

「‥‥‥。そんなことは、ないですっ」

「そうですか。

では今ここで、その良い感じだった男性にこちらから連絡をしましょう。」

「え? こっちから?」

「はい。ケーキを残しまくったというのは失敗ではありますが、恋愛自体が終わったわけではない。だから、こちらから【話し合いたい】とメッセージを送るのです」

「そ、そこまでしなくても」

 いいえ、むしろそれでも足りないくらいです。

 ここで【何もしない】という選択肢を取るということは、愚かです。

 相手からの連絡を待つのではなく、こちらから送る。

 そして相手のメッセージを待つ。

 決してブロックしてはいけません。

 あなたは、相手と向き合うことから逃げてきた。

 ここで、それを終わりにしましょう。

 

修正履歴

  • 内容に影響のない範囲で、一部表現の変更や追記をおこないました。(2018/09/02)

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とじる

「無傷で最高の恋 その2」

 乙矢は嘆いた。

「彼女ができません」

 恋愛課職員は、大きく伸びをした。そして欠伸。

「真面目に聞いてくださいっ」

 乙矢さん、あなたは彼女を作るために、どんな努力をしてきましたか?

「恋人っていうものは自然にできるものですよね。会った時からお互い惹かれあうような、そんな恋が、僕には今まで一度もないんです。周りは彼女作って、そして別れることを繰り返して、

 

 何故か、僕には彼女ができないんです。

「ああ、もう一度お聞きします。あなたは彼女を作るために、どんな努力をしてきましたか?」

「彼女を作るのに、努力は必要ですかね。

 ああ、清潔感でしたら僕は完璧ですよ。しっかりとケアしていますし、

あと僕は身長が結構ありますから。努力とかはいらないと思いますね」

「確かに、そうかもしれません。容姿に関しては、ですが」

「たくさんの方が、彼女を作るため、日々努力をしています」

 清潔感に気を付ける。

「やってますね」

 毎週、出会いの場に行く。

「あ、合コンと街コンとか、ちょっとねー。人工的な出会いですから」

 ネット【SNSや婚活アプリ】で出会いを探す。

「そういうのは怪しいですし、人工的すぎます」

 女慣れするために、キャバクラ、ガールズバーで女性にアドバイスを求めてみる。

「いやー、理解できませんね」

 風俗に行って究極の女慣れを目指す。

「あほですね」

 結婚した友人やモテる友人に女性を紹介してもらう。

「そういうのは、ちょっと違うと思いますねー。そんなこと頼りたくないですし」

 身近な人間関係を見直して探す。職場や友人とかに彼女候補。

「職場は別れた時考えるとねー。女性の友人はいますけど、

やっぱり友人としてしか見れないですねー」

理想の女性像を下げて、恋愛対象の女性を広げる。

「いやー、妥協したら負けですよ。人生は一回ですからね」

 乙矢さん。

 あなた、彼女が欲しくない。そうですね。

「え?」

 本当に彼女が欲しくなったときに、お越しください。

【恋愛課創立者 たましいの訓示】

 上から目線で失礼。

 中学・高校・大学と、異性との自然な出会いは山ほどあったろう。

 彼女、彼氏を作るきっかけ、チャンスも腐るほどあったろう。

 ん? わしにはわっちには全然なかったって?

 きっかけ、チャンスは、自ら創るもの、掴むものじゃ。

 社会人になってからでは、そのハードルは一気に上がるぞお。

 ん? そんなこと耳にタコができるほど聞いた? 

   え? 知ってた? でも、無理だった?

 しかし、若人よ、諦めるな。

 傷付かない恋愛など、ない! (二次元も中の人の結婚とかで傷付く恐れあり)

 踏ん張れ。

 踏ん張らねば、結婚できぬっっ。

 あっしのように手遅れになる前に、おぬしたち、行動せよ。

 最後に一言、

   恋愛しない、結婚しない、という生き方も、案外、‥‥‥楽しいぞ。

「あなたがそれを言ってはダメだろー」 

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