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きれいなひと 完結

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どうかこれからのあなたの旅路が、平坦で明るく、やさしいものでありますよう

***
見切り発車54作目。

1位の表紙

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◆◆◆

きっと僕らの出会いは、他人から見れば最低で。

きっと僕の想いは、他人から見れば滑稽で。

それでも僕は、君に、最高の恋をしたのだ。

◆◆◆

山の中の、ひっそりとした葬儀場。

そこの広い部屋の壁際に、これまたひっそりと君はいた。そこかしこに置かれた花の香りと、涙にくれる人たちの捧げた線香の香りの中で、僕は君に釘付けだった。

僕はこの日初めて君に会い、柄にもなく一目惚れしてしまったのである。

白い花に囲まれる君は、今まで見てきた何者よりも綺麗だった。

◆◆◆

会場の外では、たくさんの君の顔を見た。その多くははにかんだ笑顔だった。子どもの頃の君も、今にほど近い歳の君も、変わらぬ笑顔をしていた。

今の君は、どこか安心したような、ようやく一息つけたような、そんな顔をしていて、それはとても会場の外で見たような笑顔ではなかったけれども、それでも確かに笑顔なのだと思う。君が笑っていられるなら、その空間を守ってやりたいと思った。

僕は君のしあわせを一心に祈り、願い、言葉を紡いでいた。

どうか、この人の苦しみも悲しみも全部、この人に降りかかる脅威のすべてが解けてなくなりますように。

◆◆◆

型通り、しきたり通りの葬儀も終わり、隣の火葬場に列は進んでいく。人々の慟哭は一層の激しさを増し、永遠の別れを自覚させる。

蓋を閉じられた箱は、ゆっくりとその役目を果たすべく窯の奥へ押しやられる。

僕は知っていた。君との別れがここなのだと。

時間にして、ほんの僅か。この二時間の中で、僕は確かに恋をした。

息絶えた君に、最高の恋をしたのだ。

扉が閉じられる。君は扉のあちら側で、この世界での容れものを脱ぎ捨て、旅を始める。僕は扉のこちら側で、もう少しこの世界の旅を続ける。

ゆっくりと閉められる扉を眺めながら、これからの君の旅路を想う。そして、それから。

◆◆◆

君の辿り着く先が、───なものであればいい。

◆◆◆

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