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愛のかたち 完結

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いつでもあなたを見守っている。
純粋で歪んだ愛のかたち。

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 同じ場所に居なくても、インターネットを通じて間接的に状況や感情を共有出来る。

 私はそんな時代に生まれたことに、心から感謝している。

 壁一面愛する人の写真で覆い尽くされている部屋で一人、今日も私はスマホの画面を見つめていた。

『今日の客ブスしかいねえ』

そう言われれば、確かに可愛い子は見かけなかったなあ。

『関取今日は髪巻いて花柄のワンピース着てたんけど、もはや服がかわいそう』

髪巻いたの気づいてくれてたんだね。今日の為に新しいワンピース買ってよかった。

『関取ってかもう少しで横綱やん』

初めて会ったときから7kgくらい太っちゃったからなあ。

『てか今日ガチャ更新じゃん!』

 唯斗くん本当にゲーム好きなんだから。もう二十四歳なのに子どもみたいで可愛いなあ。ここ最近ゲームの話題出てなかったから絡めてなかったけど、今日は久しぶりに唯斗くんとお話し出来る。

 打ち込む文章を考えながら慎重にスマホの画面を操るが、胸の高鳴りは抑えられない。

『可愛い子なら最高だけどブスばっかり相手にしないとならないとか、、アイドルも大変だな!ガチャ早速SS手に入ったわ』

 数分も経たないうちに、軽快な通知音が部屋に鳴り響く。

『ほんとそれ。俺もお前みたいに普通にサラリーマンしたいわ。まじで?!』

『まじまじ。めっちゃ強いぞ!』

 私の大好きな唯斗くん。職業はメンズ地下アイドル。

 初めて唯斗くんに逢ったとき、その美しさに息をするのも忘れていた。一目で彼の虜になった私は、それからというものイベントには毎回通い、イベント後は彼が無事に家に着くのを密かに見届けるのが習慣となっていた。

 唯斗くんの趣味、特技、好きな食べ物や女性のタイプ、ハマってるゲームのことだって、イベントに行けばいくらでも情報は手に入る。だからイベントで話している内容で、ゲームアカウントを作っていることなんて容易に予想出来た。でも私が知っている唯斗くんのアカウントはアイドルとしての表の顔。私はそんな作られた唯斗くんじゃなく、本当の唯斗くんが見たい。

 ゲームアカウントがあるのは確定だとしても、問題はどうやってそのアカウントを見つけるか、ということ。

 唯斗くんに少しでも近づきたくて、必死でネット中探し回った。鍵アカにしてるだろうから、簡単に巡り逢えないことはわかっていた。

 でも私は諦めない。

 唯斗くんのために私も同じゲームをやり込んで、少しでも唯斗くんの可能性があるアカウントと手当たり次第繋がる日々。そんな努力の甲斐あって、半年以上経ちようやく唯斗くんと巡り逢えたときは、感動でスマホを持つ手が震えた。

 唯斗くんと同じゲームが好きな、二十七歳のどこにでもいる普通のサラリーマン。

 それがもう一人の私の設定。

『毎回チェキ会に来るデブスいるんだけど、今日はツインテールにフリフリスカートでまじで鏡見ろって感じだわ』

『例のデブス「今日の香水いつもよりも甘い匂いでいいですね!」とか言ってきたんだけど、普通に怖すぎ』

『デブスってか関取って感じ』

 それが私のことだと気付くのに、時間はかからなかった。唯斗くんが語る『デブス』の服装も髪型も話した内容も、全部私とのことだったから。

 全くショックではなかったといえば嘘になる。でもそんなショックなんかより、嬉しさの方が大きかった。

 私という存在を唯斗くんが認識してくれていることが、唯斗くんの人生に私が少しでも関われていることが嬉しくて。

 だから今日も私は二十七歳の冴えないサラリーマンとして、唯斗くんを見守る。

「裏アカ見つけたよ。」

 その言葉を口にするのは、あなたを嫌いになったとき。

修正履歴

  • 誤字、脱字の修正をおこないました。(2018/09/18)
  • 内容に影響のない範囲で、一部表現の変更や追記をおこないました。(2018/09/02)
  • 誤字、脱字の修正をおこないました。(2018/09/02)
  • 誤字、脱字の修正をおこないました。(2018/09/01)
  • 内容に影響のない範囲で、一部表現の変更や追記をおこないました。(2018/09/01)

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【モノコン2018物語部門 予選通過のお知らせ】メンズ地下アイドル・唯斗の熱狂的ファンの「私」。アイドルとしての表の顔じゃなく、本当の彼が知りたい。そんな欲望から唯斗の裏アカウントを執念で見つけ出し……。主人公が大好きなアイドルから「デブス」と呼ばれていることを、むしろ喜んでしまう場面など、恐怖の連続。抑えた文体が主人公の狂気をより強く浮き上がらせていた。怖くてイヤーな気持ちになる秀作。

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予選通過のお知らせありがとうございます。

作者:ゆきだるま

2018/9/14

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