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ローザ 完結

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合計:11

美しい歌声のローザはある日魔法で楽器に変えられてしまう。むかしむかしのおとぎ話。

1位の表紙

2位

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昔あるところにそれはそれはかわいい女の子がいました。

その子は貧しい村の出身で身につけているものもボロボロでしたし、顔も髪も泥だらけでした。

それでも女の子の目はエメラルドのように輝いて、唇はバラの花が咲いているみたいに赤くツヤツヤとしていました。

村の人は唇の色にちなんで、その子のことをローザと呼んでいました。

ローザはなんといっても歌声が美しい少女でした。

村の大人たちはみんなローザの家に夜な夜な集まって彼女に歌ってもらいました。

村は貧乏なのでお酒がありませんでしたが、ローザの甘くとろけるような歌声を聴くと酔っているような気分になれるからです。

ローザの声は村の宝物でした。

ある日。

悪い盗賊たちが村にやってきました。

何かお金に変えられる高価なものはないかと村じゅうを荒らし回りましたが、貧乏な村ですからそんなものは何一つありません。

困った盗賊たちは最後にローザの家に行きました。ローザの家にももちろん何もありませんでしたがローザがあまりにもかわいかったので、盗賊たちは彼女を連れて行くことにしました。

盗賊たちのアジトでローザはひとり泣いていました。

村を離れて1週間毎日泣いていたので、エメラルドの瞳はすっかりくすんでしまっています。

ローザの部屋は盗賊たちが盗んだものを置いている倉庫でした。倉庫にはしっかりとカギがかけられていて外に出ることはできません。

盗賊に聞いた話では、ローザは次の日の朝遠い国の貴族の家に売られていくんだそうです。

ローザはその家の召使いになることが決まっていました。

村に残してきたお父さんやお母さん、小さな弟、隣の家のおじいさん、毎日家に来てくれた大人たち、学校で遊んだともだち……。いろんな人のことを思い出すと涙が止まりませんでした。

貴族の家はとても立派で、ローザは召使いではありましたがきれいな洋服を与えられました。

ローザの仕事は庭の手入れでした。

家も立派なら庭も立派で、朝から晩まで世話をしても時間が足りませんでした。

何ヶ月がたったとき、仕事が早く終わったローザはごきげんでした。庭に寝転がって、青空を見上げながら久しぶりに歌いました。

すると貴族が屋敷から出てきました。

ローザの歌声のおかげで、どんなにあやしても眠らず泣き叫んでいた赤ん坊がぐっすり眠ったと大よろこび。

貴族はローザに感謝して、彼女を子供の世話係にすることにしました。

歌うとどんなに聞かん坊な子供でもおとなしくなって眠らせることができる、というローザは町中の噂になりました。

貴族の家で働き始めてから2年がたったころ、お城から使いの者がやってきました。

ローザがお城に向かうと王様とお妃様が豪華な椅子に座っていて、その間にちょこんと男の子が座っていました。わがままで有名な王子様でした。

王様とお妃様に頼まれて、ローザは王子様の世話係になりました。

王子様はわがままだし、イタズラが大好きでした。

ローザと王子様は同い年くらいでしたので、いつもローザにいじわるをしました。

ローザが泣いてしまうまで、イタズラをやめないのです。

ただ王子様はローザの歌声は大好きでしたから、寝る前には必ずローザをベッドに呼んで歌ってもらうのでした。

王様もお妃様も国で一番偉くて忙しい人です。

王子様はいつもひとりぼっち。

誰よりさみしがりやだということを、ローザはわかっていました。

だから、どんなに王子様が悪いことをしてきても泣かされてしまってもローザは怒りませんでしたし、いつも王子様のために歌ってあげました。

王子様は最初は歌声だけが好きだったローザの優しいところも好きになり、そのうちにローザがかわいい見た目をしていることにも気がついて、彼女のことが全部大好きになりました。

2人が大人になったとき、王子様と、隣の国のお姫様がお見合いをすることになりました。

王子様はローザのことが好きだったのでお見合いを断りました。

すると隣の国の王様は怒って、召使いに命令をしてローザをさらってしまいました。

王子様はあわてて1人で隣の国に向かいました。

隣の国には魔女が住んでいました。

その魔女は、人間を楽器に変える魔法が使えました。

お城には楽器がたくさんあって、それはみんなもともと人間でした。

城にローザを連れ去った王様は魔法使いに言って、ローザを楽器に変えてしまいました。

元々の人間が歌がうまいと良い楽器になるのですが、ローザは今まで王様が聞いたことのない美しい音色を奏でました。

「すばらしい!」

王様はお気に入りの楽器隊を呼んで、ローザと他の楽器を使ってコンサートをすることにしました。

そこに、ローザを追いかけてきた王子様がやってきました。

「もしどの楽器がローザかわかったら、ローザを人間に戻してあげよう。もしわからなかったらローザは返さないし、王子様は娘と結婚してもらうよ。」

楽器隊は一斉に楽器を鳴らしました。

ピアノ

フルート

トランペット

チェロ

コントラバス

ガチャガチャのめちゃくちゃな演奏です。

楽器が悲鳴をあげているようでした。

その中で聞き慣れた音を王子様は見つけました。

王子様は舞台に上がると、演奏し続ける楽器隊の中に入って行きました。

前から4列目、右から6番目。

バイオリンの1挺(ちょう)。

「見つけた。」

悲しそうな音色を奏でるそのバイオリンは、真っ赤な薔薇の色をしていました。

王子様がそのバイオリンを持ち帰ろうとすると王様が言いました。

「待ってくれ。その楽器の音をもう一度だけ聞かせておくれ。」

王子様は断りました。

「バイオリンの音もきれいだけど、ローザの歌の方がずっときれいだよ。」

人間に戻ったローザの歌声を聞かせてもらった隣の国の王様は、人の奏でる歌声がどれだけ素敵なものなのかを知りました。

隣の国では、人間を楽器に変えるのはやめたそうです。城にあった楽器もすべて人間に戻して、今は楽器隊ではなく合唱隊を作って毎日城でコンサートが開かれているといいます。

王子様とローザはお城に戻ると結婚をしました。

王子様は結婚の印に、自分で作った曲の楽譜をローザにプレゼントしました。優しいメロディーの子守唄でした。

2人にはかわいい王子様とお姫様が1人ずつ生まれました。お妃様となったローザは毎晩、王子様の作ってくれた子守唄を子供たちに歌いました。

子守唄の名前はーーー……

【ローザ】

end.

修正履歴

  • 誤字、脱字の修正をおこないました。(2018/09/04)
  • 内容に影響のない範囲で、一部表現の変更や追記をおこないました。(2018/09/04)
  • 誤字、脱字の修正をおこないました。(2018/09/04)
  • 誤字、脱字の修正をおこないました。(2018/09/04)
  • 誤字、脱字の修正をおこないました。(2018/09/03)

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2

本当にヨーロッパの民話にありそうな不思議な恐ろしさと美しさのある物語だと思います。
ローザが転々と所属先を変えられるところ、そして魔女の魔法など、見どころが深い。
大人も楽しめる童話という感じがしました(*´`*)

大久保珠恵

2018/9/3

3

U.Zさん、コメントをありがとうございます。
率直な感想、ありがたいです。本当にありがとうございます。参考にさせていただきます。

作者:紗美

2018/9/3

4

大久保珠恵さん、感想をありがとうございます。
童話を考えるのが実は好きでして。楽しんで書かせていただきました。

作者:紗美

2018/9/3

5

【モノコン2018物語部門 予選通過のお知らせ】素敵なお話ですね。西洋の古くからある童話のような雰囲気を持つ美しくてちょっと怖い世界観。最後がハッピーエンドなのがほっとできて安心しました。物語がまとっている空気全部味わいました。

6

モノコン2018予選選考スタッフA様、予選通過のお知らせをありがとうございます。テーマから最後を考えて、その国の人たちが後の世になっても子守唄を歌うたびにローザが音になり記憶に蘇る……というシーンが浮かんでこのようになりました。おとぎ話風にしたのはチャレンジだったので通過したのは心から嬉しいです。本当にありがとうございました。

作者:紗美

2018/9/11

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とじる

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