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変身する彼女たち 完結

変身する彼女

更新:2018/9/12

舞殿王子

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つきあう彼女が変身してしまう男のお話。

1位の表紙

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 今日は一日、彼女とデートだった。

 あちこち遊びに行き、美味しいものを食べた。

 最高の一日だった。

 そして彼女を駅まで送ろうとした途端。

 地震のような振動と、耳をつんざく咆哮。

 地中から怪獣が現れた。

 「うわぁ! こ、こんなときに怪獣だなんて。ど、ど、ど、どうしよう?」

 「大丈夫! 貴方は隠れてて!」

 そういうと彼女は、鞄から眼鏡を取り出した。

 あれ? 彼女は目が良いはずなのに……

 そう思った瞬間、目の前がまぶしく光った。

 しばらくして目を開けると、そこには怪獣と同じくらいの巨人が立っていた。

 『でゅわ!』

 叫び声を上げて、巨人が怪獣を蹴り倒す。

 怒った怪獣が突進してくるが、巨人はそれを受け止め、一歩も引かない。

 ひょっとして、僕のいる方へ怪獣が来ないようにしてくれているのだろうか。

 巨人が僕の方を振り向き、小さく頷いた。

 ひょっとして、この巨人は、彼女?

 巨人は怪獣に殴る蹴るの暴行を加えたあと、腕を十字に組んで光線を出した。

 怪獣は断末魔の叫びをあげて爆散した。

 肉の焼けるいい匂いが漂ってきた。

 巨人が空の彼方へ飛び去ってしばらくすると、彼女が手を振りながら走ってきた。

 「大丈夫だった?」

 「う、うん」

 「実はね、私、宇宙人と融合してるの」

 「融合?」

 「うん。ちょっと前にね、怪獣を追っていた宇宙人とぶつかって死にそうになったんだ、私。で、宇宙人が責任を感じて、融合してくれたの。だから、さっきの姿も私なんだ」

 「……そうなんだ」

 「これからも、怪獣とか現れたら、私がやっつけちゃうから、ね」

 そう言って彼女は腕を組んできた。

 「そ、それは頼もしいなぁ。ははは」

 僕はぎごちない返事をした。

 たぶん、彼女とは別れることになるだろう。

 だって、彼女のあんな姿を見てしまったのだから。

 変身した彼女は、お世辞にもカッコいいとは思えなかった。

 腹の出た、中年太りのオッサンのような姿だったのだ。

 しかも全裸で、体のあちこちから白髪交じりの体毛がちょろちょろ生えていた。

 隣でほほ笑む彼女を見ても、ブルドッグを踏みつぶしたような巨人の顔が重なって見える。

 宇宙人って、あんな感じなのか。

 早朝の繁華街は、退廃の臭いがする。

 その中を、僕と彼女は腕を組んで歩いていた。

 朝ごはんはどこで食べようか、などといいながら、僕は昨夜のことを頭の中で反芻していた。

 最高の一夜だった。

 これまでつきあった、どの女性よりも素晴らしかった。

 思わず顔がにやけてしまう。

 と、そのとき突然、路地のあちこちから、全身黒タイツの男たちがわらわらと湧いてきた。

 何だ? 暗黒舞踏のストリートパフォーマンスか?

 しかしそうではなかった。

 黒タイツの後ろから、禍々しいデザインのロボットが現れたのだ。

 「ガハハハハ。オレハ 機械帝国ノ くれいじーさーばーサマダ! イマカラ ニンゲンドモヲ セイタイこんぴゅーたーニ シテヤルゾ!」

 黒タイツどもが、空き缶を漁っていたオッサンや、僕たちみたいな朝帰りのカップルを捕まえ、頭にUSBメモリのようなものを突き刺していく。

 「セイタイこんぴゅーたーニナッタ ニンゲンハ カソウツウカノ まいにんぐヲスルノダ! 機械帝国ノ シキンゲントシテ コキツカッテヤル!」

 なんて頭の良い、もとい、恐ろしいことをする奴らだ。

 とにかく逃げよう。

 彼女の手を引いて反対方向に走ろうとしたが、すでに黒タイツに回り込まれていた。

 このままでは僕も彼女も、生体コンピューターにされてしまう。

 どどど、どうしよう?

 「大丈夫! 貴方は隠れてて!」

 そう言い放つと、彼女はラジオ体操みたいに腕をグルグル振り回した。

 「変っ身! とうっ!」

 彼女は空高く飛び上がり、ビルの屋上に降り立った。

 その姿は、ぼんきゅっぽんのナイスボディをことさら強調する戦闘服に包まれ、顔は仮面で覆われている。

 「電波少女アタック、只今推参!」

 名乗りを上げた彼女は、ビルの上から舞い降りた。

 ……名乗るためだけに屋上に飛び上がったのだろうか?

 あと、少女というのはマズい。

 僕がいらぬ誤解を受けるではないか。

 そもそも彼女は、立派な成人女性だ。

 「エエイ ミナノモノ カカレィ!」

 ロボットに命じられ、黒タイツが一人、また一人と彼女に近づくが、殴られ、蹴り倒されて、鉄屑になっていく。

 しかし倒しても倒しても黒タイツの数は減らず、じわじわと彼女を取り囲んでいく。

 「もうっ! キリがないわね! 必殺!毒電波!!!」

 彼女が両腕を広げると、目に見えない波に襲われたかのように、黒タイツが倒れていく。

 それを数回繰り返すと、黒タイツはガラクタの山になった。

 「あとはお前だけのようね、クレイジーサーバー! くらえっ! 電波キック!」

 禍々しいロボットは、キック一発で見事に爆散した。

 ……その技、最初にビルから飛び降りるときに使えば良かったんじゃあ……

 闘いを終えた彼女は瞬時に姿を元に戻し、僕の元に駆けつけた。

 「大丈夫? 怪我はなかった?」

 「うん、僕は平気だけど、君は?」

 「私は機械の体だから平気。ごめんね、実は私、機械帝国に造られたロボットなんだ。私の生みの親のアキハバラ博士が、機械帝国に立ち向かえるよう、私の電子頭脳を改造したの」

 「そう……なんだ。じゃあ、君の体は、全部」

 「造り物だけど、生身の人間より気持ち良かったでしょ?」

 「う、うん」

 無理無理無理。

 あの艶めかしい体が、実は精巧に造られた機械だったなんて!

 僕は別れの挨拶もそこそこに、その場を離れた。

 僕が女の子とつきあうと、必ずこういう展開になるのだ。

 なぜか彼女たちは、ピンチになると変身して戦う。

 魔法のステッキを振り回す子もいたし、怪しげな呪文を唱える子もいた。

 変身が解けた途端、ウォーターサーバーの水を次々に飲み干す子もいた。

 なんなんだ、一体!?

 デートを終えてアパートに帰ると、助手のパンジーはパソコンで動画を見て笑っていた。

 「あ、お帰りなさい、チン博士。今日のデートはいかがでしたか?」

 「まあなんというか、普通だったな。平穏というか。一緒に昼飯を食って、映画を見て、散歩して、晩飯食って帰ってきた」

 「こんどこそ変身しない、普通の人だといいですね」

 「そうだなぁ」

 僕は地球人の擬態を解いて、本来の姿に戻った。

 「変身する者同士、惹かれあう何かがあるのかなぁ」

 「この星には『類は友を呼ぶ』という諺があるそうですよ?」

 パンジーが私の毛づくろいを始めてくれた。

 故郷の星を追われ、宇宙を旅して辿り着いたのがこの星だ。

 僕はこの星を支配し、僕を追放した連中に報復しようと考えている。

 そのためには、この星で僕の血縁を増やしていくべきなのだが。

 なかなかそれが上手くいかない。

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