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煙草と珈琲と作家の男 完結

才能に嫉妬

更新:2018/9/25

ジョセフ武園

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作家の男は、一服つくと珈琲を一口運び。
ふと、窓の外を眺めた。

1位の表紙

2位

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「……今日も連絡なし……か」

 そう呟くと、彼は咥えていた煙草を灰皿に押し付けぬるくなった珈琲を一口飲んだ。

 目の前には安物の白いノートパソコンが爛々とした明かりをこちらに向けている。

「9月25日……流石にここまでで連絡がなけりゃ……10月1日が発表なら……落選って事だよな」

 誰に聞かせるでもないのに、その独り言は誰かを求めて空中を彷徨う。

「ははは」

 乾いた笑い声が男から洩れた。

「くそ……受賞した奴ら今頃、ウキウキと1日を待ってんだろうな……むかつくぜ……」

 ぐしゃ。と珈琲が入っていた紙コップが潰れ、嫌な生温かさの液体が掌を濡らす。

 それは、とても醜い――嫉妬の具現だ。

 男もかつてはそれを受ける立場だった。

 その世界に居る者なら誰もが聞いた事のある、超大手出版社の新人賞。

 それを、初めて出した作品が――受賞した。

 奨励賞という、一番下の賞だったが、賞金と単行本の刊行も行われた。

 男は――初めて社会で『認められた』

 それまで、男は『存在』を『尊重』されていなかった。

 会社を回す為の『消耗品』として扱われた。

 誰かに認められるでもない。ただただ、虚無を生きるだけの毎日。

 そんな時――何気なく投稿したその10万文字の己の願いを写した文字達は『何か』をその社会に代弁してくれた。

 ――でも……それも一瞬の夢だった。

 刊行されたのは2冊。売り上げが伸びず、あっけなく打ち切られた。

 それから――担当編集から連絡はない。

 それは――つまり、その出版社からはもう……自分が認められなくなった。そういう意味だった。

 そんな時、WEB小説投稿サイトを知った。

 全力を込めて書いたその作品は……行われていたそこのコンテストの中間選考を通った。

 嬉しかった。

 もう一度、夢をみれると。

 男は自分に小説の才能があると……そう思いたかった。

「結局……今回俺は選ばれない……他者の才能の踏み台か」

 そう言うと、窓の外を見つめた。

 とても心地良い秋風が入ってくる。

 ほのかに残る珈琲の香りの中に、僅かに煙草のにおいが混じっている。

 見れば、もみ消した筈の吸い殻からくすぶる様に残ったオレンジの炎がこちらを見つめていた。

「……」男は、溜息を吐くとその吸い殻に珈琲を落して火を消す。

 ――そして、またキーボードに指を躍らせるのだ。

 幾度も――何度でも。

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2

まぁ、ふざけるだけじゃないよ。って事で……書かせてもらいました。ふざけたコメディ作品の方がmonogataryさんはポイントが集まるのでどうしても目立つんですよね。
青楊さんは、こちらの方がお好みの様ですから、ジョセフが過去に投稿した「わらまま」とか「兄妹」とか是非読んでみて頂きたいですね。

作者:ジョセフ武園

2018/9/25

3

ジョセフさんと頭の中で繰り返していたら、ジョセフィーヌを思い浮かべました。(ナポレオンの奥さん)関係なくて、ごめんちゃい

湊あむーる

2018/9/25

4

ナポくんとは、もう何百年も前に終わった関係だから……

作者:ジョセフ武園

2018/9/25

5

ジョセフ武園さん、ありがとうございます。
私はシリアスなのも、ふざけたのも両方好きです(^^)
私の表紙もふざけた?モノも多くあります(^^;
「わらまま」「兄弟」ぜひ拝読させて頂きたいと思います。
作者様自らのご推薦、ありがたいですm(__)m

青楊

2018/9/25

6

なんか、昨夜からすんごいバズッちゃったんで書いとくんですけど、この男はジョセフじゃないです。
ジョセフは彼の様に、怒りや歯がゆさを己の中に押し込めきれません。
モノコン落選してたら、運営さんにネチネチします。
ネチネチします。

作者:ジョセフ武園

2018/9/26

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とじる

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