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ものちゃんの潜入捜査? 完結

潜入捜査

更新:2018/10/7

時間タビト

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やっしー宅を潜入捜査します!

えっと、その、やっしーに喧嘩売ってる訳じゃないですよ!
あくまでも、うちのやっしーですから!フィクションですから!

1位の表紙

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 編集部七不思議のひとつ

・やっしーの部屋

「……何それ」

 やっしーではなく、他の編集者に聞かされたものちゃんが、呆れたような声を出す。

「だから、うちの七不思議」

 今日はやっしーが休みな為、この編集者がものちゃんの相手をしているのだが、休憩時間に聞かされたのが、七不思議だった。

「七不思議って、学校じゃあるまいし」

「人の集まる所には必ずあるんだよ、七不思議ってやつは」

「はぁ……ま、いいけど、何でそれがやっしーな訳?それも本人じゃなくて部屋とか」

 ものちゃんが訊くと、編集者は待ってましたとばかりに目を光らせる。

(あ、なんか嫌な予感)

「実は、誰もやっしーの部屋の中を知らないんだ」

「へ?」

(いや、普通、プライベート空間を公開することはそうそう無いと思うぞ)

 そう思いはしたものの、取り敢えずは話の続きを聞くことにした。

「編集部には中の良い奴もいるんだが、誰も部屋に入れてもらった事が無いんだよ。いつも玄関にも入れようとしない」

 そう話す編集者自身、やっしーの友人だったりする。その友人がそう話すのだから嘘ではないのだろう。

「……ゴミ屋敷になってるから見せられないとか?」

「それはない。ゴミ屋敷なら隠さないだろ。隠すって意識があるなら、そもそもゴミ屋敷にはならないって」

「まぁ……そうだよな」

 その言葉には頷くしかない。

「だったら何故だ?」

「それが分からないから、七不思議なんだよ」

「ああ、なるほど」

 言われて、ようやく納得した。

「で、編集部での見解はだな」

(個人じゃなくて編集部かい)

 心の中でツッコミを入れる。

「やっしーには同棲している彼女がいる!ってことなんだ」

「……それはないだろ、あの甲斐性なしに」

「ものちゃん、何気に厳しいな。まぁ、俺もそう思うけど、ここまで徹底して隠されるとそれしか思い浮かばなくてな」

 言って、あははと笑う。

「……ま、有り得るかもな。よく考えたら部屋に行ったことはないし」

 そう、やっしーとコンビになってから一度も、ものちゃんは部屋に行った事はなかった。

「……」

 考えれば考える程、怪しくなってくる。

「……怪しい」

「ものちゃんもそう思うだろ」

「まぁ」

「そこでだ、ものちゃんに探ってきて欲しいんだ」

「何で僕が」

「そりゃ、ものちゃんなら自在に出入り出来るから」

 実にあっさりと答えられた。

「今日やっしー休みだし家に居るって言ってたからさ、潜入捜査やってよ」

「出入りは出来るが、姿は消せないぞ?」

 ものちゃんはおばけだが、皆に見えるように色を着けている。色が着いていると姿を消す事ができないのだった。

「消せなくても、隠れるのは簡単でしょ」

「……」

 その言葉には反論出来ない。姿は消せなくてもすり抜ける事は出来る。見つかりそうになったら、どんな場所でも隠れる(逃げる?)のは造作もない。

「……分かった」

「ありがとう、ものちゃん!じゃ、早速お願いね~」

 言って、手を振られてしまっては行くしかない。

「あ、場所は……」

「分かるからいい」

 ものちゃんとやっしーは霊的波動が合うのか、やっしーの居場所はすぐに分かる。

「じゃ、行ってくる」

「いってらっしゃ~い」

『こちらものちゃん、現場に到着した』

 やっしーの波動を追って辿り着いたのは、とあるマンションの一室。

 ところで、ものちゃんがどうやって通信しているのか?それはスマホ。

 ものちゃんサイズの小さなスマホで通信しているのである。

 スマホと言っても、通信事業者と契約している訳ではない。電波ではなく念波だか霊波だかを飛ばして通信しているのだった。詳しい理屈は、ものちゃんにも解らない。

 礼儀正しく?玄関から中に入る。

『ターゲット発見……寝ているようなので部屋の捜査を開始する』

(本当に寝汚い奴だ)

 知り合ってからというもの、やっしーが居眠りしている姿ばかりを見ているような気がして仕方がない。

(ま、寝てるのは好都合)

 やっしーに見つかる確率がほぼないので、じっくり捜査という名の探索が出来る。

(最初は……洗面所だな)

 もし同棲しているのなら、歯ブラシが二本あるはず。ということで、ものちゃんは洗面所に向かった。

「……無いな」

 洗面所に歯ブラシは一本しかなかった。

「次は台所」

 他に生活感が出るのは台所ということで、今度は台所に向かう。

「……ここも無い」

 台所の小さな食器棚を見てみたが、一人分の食器しかなかった。

「というか、客用も置いてない」

 見事に一人分しかない食器に呆れてしまう。

(これじゃ、誰も呼べないな)

『中間報告。女っ気は全くない』

 全くに力を入れて、報告する。

「さて、次は……」

 食器がないから、という理由では弱すぎる気がして、もう少し捜査をしてみることにした。

「♪」

 何だか楽しくなってきたものちゃんだった。

(ふ~ん)

 風呂場やベランダを回ってみた。

『部屋は綺麗に片付いている。意外とマメなようだ』

 台所もそうだったが、掃除は行き届いていて洗濯物も溜まっていない。こまめに家事はしているようだ。

 そうなると、益々理由が解らない。

(本当に、食器が無いから……というオチか?)

 これだけキチンとしているのに、客用の食器が無いからというのは……やっしーらしいのかもしれない。

「部屋、見るか」

 最初に覗いた時は、やっしーが眠っているのを確認しただけで、部屋全体は見ていない。

 部屋に入ってベッドを覗き込むと、やっしーは未だ夢の中。

 それを確認して、部屋の中をじっくりと観察する。

「……」

 そして、ある物を見つけた。

「……これか」

 思わず声に出してしまう。

 壁に沿って置かれた机と本棚。そこに、それはあった。

(これじゃ……呼べないよな)

 ものちゃんが溜息をつく。

 そこにあったのは……沢山の動物のぬいぐるみ。それもリアルな物ではなくファンシーな可愛い物だった。

「……」

 可愛い物であるにもかかわらず、女性の気配は全くない。これは、完全にやっしーの趣味ということになる。

(……見なかったことにするか)

『こちらものちゃん、任務完了。帰還する』

 言って通信を切る。言葉は硬いが体はブルブル震えていた。

 急いで部屋を出て、マンションの空き部屋に飛び込んだ。

「あ、あははははは」

 堪え切れなくなって、大声で笑った。

 存分に笑い転げてから、編集部へ戻ってきた。

「おかえり~」

 ものちゃんを送り出した編集者が声をかけてくる。

「で、どうだった?」

「女っ気はゼロ。どうも客用の食器がなくて茶も出せないから誰も呼ばないみたいだな」

 思い切り呆れました、という声を作って報告する。気を抜けば笑ってしまいそうだった。

「な~んだ。でも、やっしーらしいか」

 報告を聞いて納得する。

「でもま、それなら暴露しても問題にはならないかな。これ、今日の呟きネタにしよう」

「了解」

 答えて、呟く為に自分のパソコンに入っていく。

『やっしー宅に突撃!』そんな言葉から始まり、男の独り暮らしだが部屋は片付いている事、掃除洗濯もキチンとされている事、そして、客用の食器が無かった事をオチとして呟く。これならば、イメージを損なうこともないだろう。

 呟き終わってものちゃんが出てくる。

 呟きに対する反応は良好。次々とコメントが入ってくる。

 それを見て、ものちゃんがニヤリと笑う。

「真実を隠すのは武士の情けだ」

 周りに聞こえないように呟くものちゃんは、実に楽しそうだ。

(さ~て、このジョーカーをどう使うかな)

 弱みを手に入れたものちゃんに、先の尖った尻尾が生えていた。

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おもしろすぎました。

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あふりかのそら さん、コメントありがとうございます!楽しんで頂けたようで嬉しいです(*´ω`*)

作者:時間タビト

2018/10/7

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とじる

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