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詐欺フライ 完結

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語り継ぎたい料理って、その裏にエピソードが隠されていたりして……。
我が家の料理はこちらです。

1位の表紙

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 油の処理が面倒だから、我が家の食卓に揚げ物はなかなか登場しなかった。

 それに加えて母が「脂っこいものは苦手」と言うので、その頻度は他の家庭に比べるとやはり少なかったように思う。

 そんな母がある時からハマり、揚げ物のときは必ず使う食材が……。

 いきなりだが、『モロ』という食材をご存知だろうか?

 私の故郷、栃木で愛されている食材だ。

 近頃はテレビで取り上げられることも少なくないため、知っている人もいると思う。

 栃木には海がない。

 そのため、昔は海の魚が貴重だった。

 冷蔵技術が乏しい時代に重宝されていたのが、この『モロ』である。

 『モロ』には尿素が多く含まれていて、時間が経つとアンモニアに変化し防腐剤の役割を果たしてくれるらしい。

 尿素やアンモニアと聞くと臭いが気になるところだが、ほかの魚とあまり変わらないと私は思う。

 

 さて、ここまでの説明で『モロ』とはなにかお分かりいただけただろうか?

 ちなみにアジ科ムロアジ属のモロを想像するかもしれないが、それとは完全に別物だ。

 『モロ』の正体はサメである。

 サメの一種のネズミザメ(モウカザメ)が栃木では『モロ』という名で流通し、県民の腹を満たしているのだ。

 スーパーの魚売り場には、必ずといっていいほど『モロ』が並んでいる。

 余談だが『サガンボ』というものも一緒に売られている。

 こちらはアブラツノザメ(ムキサメ)で主に煮物に、『モロ』は揚げ物にと使い分けることが多い。

 

 ある日、仕事の都合で離れて暮らしている兄が帰ってきた。

 それでテンションが上がった母は、ご機嫌で普段は嫌がる揚げ物の準備を始めた。

 ハマっているあの食材を兄に食べさせようと張り切って。

 私もキャベツを切ったり、衣をつけるのを手伝っていく。

 

 キッチンには、いつもと違う熱気と油のにおいが立ち込める。

 そしてジュワワワワ……という音と一緒に、パン粉の焦げるいい香りが家中に漂ってきた。

「今日はヒレカツよ」

 母はそう言って、揚げ物の乗ったお皿をテーブルに置いていく。

 すると兄は、

「この肉、柔らかくてうめぇ!」

と絶賛しながらバクバク食べた。

 『モロ』はフライにすると、やや柔らかいトンカツのような食感になる。

 お肉といっても鶏肉に近い淡白な味わいで、魚っぽさはあまり感じられない。

 そのためソースをかけてしまうと、お肉を食べているような錯覚に陥るのだ。

 兄が帰省すると、揚げ物が必ず食卓にあがった。

 そう、『モロ』のフライが。

 そのたび兄は、お肉だと信じ切って美味しそうに平らげた。

 そして真実に気付いたのは、数年後に再び実家で暮らすことになってから。

 兄はこう言った。

「俺がずっと食ってたの、詐欺フライじゃねぇか!」

 栃木県民には同じように騙された人がたくさんいるだろう。

 私の周りには、そんな人が少なくとも5人いる。

 ――私も初めて食べたときに騙された。

「どんな味か気になる」というあなた。

 『モロ』がメニューにある食堂も多少ながら存在する。

 栃木に来る機会があれば、ぜひご賞味いただきたい。

【モロフライの作り方】

★材料

・モロの切り身………人数分

・小麦粉、卵、パン粉、塩コショウ………適量

★作り方

・モロに塩コショウで下味をつける

・小麦粉、卵、パン粉を順番につける(バッター液でも可)

・適温になった油できつね色になるまでカラッと揚げる

★ソース以外にも、タルタルソースをつけても♪

★温かいうち食べるとなお美味しい

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ご当地もの、気になります。日光にいく予定があるので探してみます!

さなお

2018/10/10

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さなお様
コメントありがとうございます(*´∀`*)
日光に行かれるのですね!
「モロフライ」で検索すると食べられるお店が出てくるので、お時間があるならぜひ♪

作者:文月八千代

2018/10/10

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とじる

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