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ぐるぐるに恋をして 完結

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  僕は最低の男だと自分でも思う。

毎日コンビニで、カップ麺とポテチ、そのうちどんどんデブになって、仲間が一人ずついなくなっていったのだ。

萌え系のコンサートで踊れば踊るほどアイドルには完全に無視され、あれだけ何年も応援し続けてきたユリ科ちゃんに当然のことながら付きまといすぎてビンタンを食うことに。

「もう、ウチの前に現れないデェ、キモっ」

それでも僕、ビンタンをいただいたほっぺを一週間洗わなかった。

派遣先のパートのおばちゃんにまでバカにされ。

最終的に俺自身でやめてきた。

「おい、そこのデブ。先にトイレを使わせてくれよ。頼むから、いや、お願いしますッ。おデブちゃん」

「ちゃんと俺並んでたんだから、俺が先だろう。頼まれたって、俺も早くしたいし」

「そんなんじゃねぇ、テメぇーの後はクセェからだよっ。気がきかねーな」」

そのあと結局、トイレは使えず、思いっきり漏らしてしまった。そこにいた高校生女子は鼻をつまみながら逃げまとい。東京に来て、野球チームに入った時も、ライトでうんこを漏らしてしまった。それから、あだ名は、ライベン。

ちょうど応援席にいたのがチアダンスのユリ科ちゃんたちで、その頃から、軽蔑な目で見られてたに違いない。

と、ブツブツ言いながら歩いていると、OL女子に打ちあったってしまい

「すいませんっ」

その時落とした黒縁の大きなメガネも、お姉さんのハイヒールで踏み付けられて、それだけじゃなくて

「デブ、近寄るなッ、くせぇんだよっ」

で、僕は考えた。

考えに考えて、

 僕は今、海岸沿いの崖っぷちに立っているのだ。

 こうなった理由とか細かいことどうのこうのよりも、(この世とさよならしたいっ)ただそれだけの理由でここにいる。

その事の何が悪い。

周りのみんなも好き勝手に生きてるんじゃないだろうか。

自分が自分で死んで何が悪いんだ。

 そうやってここでうろうろ怪しい動きをしてしまっていると、麦わら帽子のおじさんが近寄ってきた。

「君、何してるの?」

「いえっ」

静かに確実に転生やろうと思っていたのに邪魔が入りやがった。

っていうか、いまから死を選ぶ僕には関係ないねっ。

とかなんとか独り言を呟いていると、さっきのおじさんが軍手をはめた手でチラシをくれた。そこには、

「萌え系キャラ、ユリ科のAI抱き枕限定発売」

と、書いてあった。

「これ、東京じゃ買えないっすよ」

「あぁ、そこの売店。いつも変わったもん仕入れてくるんだ。若いもんに元気出してもらうためだってさぁ」

「あっはい」

それで、チラシを広げながら熱したフライパンのようなアスファルトの上をヨタヨタ歩きながら、さっきおじさんにもらった店の宣伝用の手ぬぐいで汗を何度も拭うのだ。

すると、目の前に、いかにもマニアックそうな、オタッキーな店があった。一見、駄菓子屋のようだけどっ。

「すいませぇん」

「誰もいないのかぁ、物騒だなぁ」って思いながら、もう一度、さっきよりも大きな声で叫んだ。すると、奥の方から、おばあちゃんの声だけがした。

「なんのようだね、郵便局の人かぁ」

「違います、チラシを見て」

「チラシ?」

と、腰の曲がった小さなおばあさんが奥の暗闇の部屋から出て来た。

「あら、お兄ちゃん。どこから来たの」

「東京です、チラシ見たもので」

「あっ、それ、ユリ科ねっ。そこに、置いてあるじゃろっ」

「じゃ、それください」

「一つしかなかったからね。貴重だけど、五千円でいい」

「本当ですか、これ東京だと、もっとする」

それは、萌え萌えのユリ科がミニスカート履いて立ってる全身裏表横の抱き枕。

ガラスのケースに収めてあって、おばあちゃんは飾っておくつもりだったらしい。でも、僕はそれを見て、一目惚れをしてしまった。

と言う事で、このユリ科ちゃんに、僕が崖から飛び込むところを見てもらおうじゃないのっ。

そうこうしているうちに、夜も遅くなり、誰もいない。あのおじさんもいない。

(よし、決行するぞっ!)

防犯カメラの無い場所を選び、下を覗き込む。真っ暗闇でごつごつの大きな頑丈な岩に荒波があたる音だけがする。

よし、これなら確実だ。

そして、飛びこもうと思った瞬間、ユリ科ちゃんが喋り出した。

(らいべんっ!!)

やってみっ

飛んでみっ

一生懸命死んでみっ

立ち上がってみっ

無理やり喜んでみっ

息吸ってみっ

空見てみっ

星見てみっ

力抜いてみっ

許してみっ

声だしてみっ

わがまま言ってみっ

見つけてみっ

愛してみっ

迷惑かけてみっ

つねってみっ

つねられてみっ

許されてみっ

泣いてみっ

怒ってみっ

歩いてみっ

走ってみっ

汗拭いてみっ

悩んでみっ

相談にのってみっ

騙されてみっ

読んでみっ

痩せてみっ

イケてみっ

僕は、涙をボロボロ流して、ユリ科を抱きしめた。強く強く。

「生きる」

そう決めた。

そしたら、暗闇から昼間のばあちゃんが、

「おーい、何してるんや、早まったらあかんっ」

そのあと、ばあちゃんの家でご馳走になり今までの東京での出来事を全部話した。

「ライベン、ほんなら、風呂入ってこい。ウチはもう、だれもいないんやから、ここにいて、お前のその体、イケてるに変えたろうやないのっ」

「え?」

「明日から、とっくやっ、ライベン!」

「はい、よろしくお願いします」

次の日から始まった特訓は過酷なものだった。

おばあちゃんをリアカーに乗せ。その横に抱き枕のユリ科。

ばあちゃんは、そのリアカーを引っ張る僕を、後ろから布団叩きで馬のように叩いた。

「こらっ、ライベンそんなことで、東京の奴らを見返すことなんかできんぞ、次は、そこの坂を登れっ」

そして、やっと夜ご飯にありつけると思ったら、全て山菜料理。

「ばあちゃん、これだけ?」

「当たり前やろが、この辺にはコンビニもないでなっ」

そして、なんやかんやと町の人たちとも仲良くなり、みんなばあちゃんの息子だと思ってくれてるみたいだ。

「うちの子は小さい時東京に出ていって、交通事故でえんようなった」

「そうだったの、それで、町の人も知らないんだ」

そして、一年と二ヶ月。

僕は、町のお祭りで法被を着て、お神輿のてっぺんで、大きなうちわを仰いだ。

「ライベン、お前、頑張ったなぁ」

それから、一週間後、東京に立つ僕。

早速、ユリ科のスタッフオーディションに参加、一発合格だった。

ユリ科のコンサートクライマックス。僕がユリ科だけを見ていると。

大勢の観客がいる前で、マイクを持ってユリ科が話す。

「ライベン?

いるんでしょ?」

「え?」

「舞台に上がってらっしゃいよッ」

で、僕は、感づかれるはずがない。ここまで痩せてイケてる男になって別人のはず。

恐る恐るスポットライトが当たる壇上に、すると、ユリ科が

「お帰り、ライベン。ずっと、心配してたんだからねッ、スタッフのみんなだってずっと」

「本当かよって それ」

「みんな反省してた。あなたが一番応援してくれて頑張ってたのに、甘えてたのよ」

「でも、こうやってイケてる男子に変身したからいってるんだろ」

「違う、姿形は関係ない。こころ、こころ」

俺が、呆然と立っていると、ユリ科がなんと大勢が見つめる舞台の上で僕を抱きしめた。それで、僕も、おの時の抱き枕のように、思いっきり、抱きしめ、耳元で話した」

「なんで、僕ってわかった?」

「ライベンが出会ったおばあちゃん。うちの会社の会長よ」

「えぇ!」

「来週から、私とあなたと、ドラマの主役。キマちゃってるよ」

「っていうことは、あのばあさん、ドラマの主役作りしてたのかぁ」

「だって、あそこの町の人みんな、エキストラだから」

僕とユリ科は、スポットライトを蹴飛ばして、静かにキスをした。

そう、ユリ科はバーチャルアイドル。

現実の世界に彼女はいないけど、ぼくの思い出の中に彼女はい続けているのだ。

肝心の僕は、バーチャルディスプレイをつけたままポテチにかぶりつく。

デブデブのままであるのだ。

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とじる

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