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戦いの果てに ~桃太郎異聞録~ 完結

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義理の祖父母に鍛えられ、鬼ヶ島へと向かう最中、屈強の者たちと出会う桃太郎。その戦いの果てに、いかなる展開を見せるのか。

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 むかしむかし、あるところに、おじいさんとおばあさんがおりました。

 おじいさんは山へ、破壊神シバの名を冠せられた巨大猪狩りに。

「くくくっ、今日も決着は付かずか。だが、いずれひれ伏せてやろうぞ」

 おばあさんは川で、選択をしていました。

「今日は食人植物と、巨大蜘蛛と、双頭蛇がおるのお。さてさて、誰から屠ってやろうかの?」

 ある時、おばあさんが川でピラニアモドキの群れをさばいていると、川上から大きな鉄製の桃がどんぶらこ、どんぶらこと流れてきました。おばあさんは直径一メートルはあろうかというその桃を拾うと、片手で軽々と掲げながら帰宅しました。

 おじいさんが拳を何度も叩き込むと、やがて鉄の桃は砕け散り、中から可愛らしい男の子が出てきました。

「あの、すみません。ちゃんと開閉ボタンがあるので、いきなり破壊するなんてやめてもらえませんか。というか、象が踏んでも戦車が踏んでも壊れないはずなんですが、どうなってるんでしょう」

 やがて、桃太郎と名付けられた少年は、おじいさんからは近接格闘術や剣術、おばあさんからは関節技や射撃術などを学び、生死の境目をさまよう猛特訓の日々を続けておりました。

 桃太郎が青年になったころ、鬼ヶ島に住む鬼たちが村に現れては略奪を繰り返していました。これに困った村人たちが中央政府に訴え出るもまるで相手にされず、ほとほと困り果てていました。

 そこで桃太郎は決意しました。

「おじいさん、おばあさん。これまでの恩返しに、鬼退治に出かけたいと思います。というか近頃、三途の川で常連客扱いされ始めてるのが、正直怖いです」

 おじいさんは桃太郎に鉄をも切り裂くという名刀を、おばあさんはどのような怪我をも回復させるというきび団子を、桃太郎に与えました。

 桃太郎が意気揚々と鬼ヶ島へ向かっていると、普通の犬の数倍ほどの大きさを思わせる青い体毛の狼が現れました。

「そこへ行く若者よ。只者ではないと感じた。どこへ行くか」

「鬼ヶ島へ鬼退治に」

「ふはは、『畏怖の青』と恐れられたこのワシですら、そのような無謀なことなど考えもしなかったわ。ましてお前のような若造にそれが出来るとは思えん」

「ならば、試してみますか」

 桃太郎が身構えると、狼は牙を剥いて襲い掛かりました。狼の鋭く素早い動きにも、桃太郎は憶することなく、刀を振り回しては牙を受け流し、隙を見つけては斬りかかり、やがて狼は疲れ果ててしまいました。

「くっ、この刀の使い方、身体のさばき方。まさかと思うが、どこでこのような技を習ったのか」

「私を拾ってくれたおじいさんとおばあさんに教えてもらいました。というか、でっかいアリとか、でっかいミミズとか、なぜか化け物ばかりがやたらと現れるような物騒な村ですけど」

「ま、まさか。バトルフィールドに立つ者すべての憧れ、『偉大なる父(ザ・グレイトフル・ファーザー)』の薫陶を受けた者とは。ふあはは、道理で勝てぬはずよ。分かった、お前ならやれるかも知れん。私も同行させてもらいたい」

「では、おばあさんからもらったきび団子がたくさんあるので、あなたにも分けてあげましょう」

「おお、これは。バトルフィールドを支える者すべての憧れ、『崇高な母(ザ・ノーブル・マザー)』が作るという伝説のきび団子。このような貴重なものを頂けるとは、まさに夢のようだ」

 こうして狼を仲間にした桃太郎が、さらに歩いていると、体長が三メートルはあろうかという灰色の体毛に覆われた巨大は熊が現れました。

「そこへ行く若者よ。只者ではないと感じた。どこへ行くか」

「鬼ヶ島へ鬼退治に」

「ふはは、『壊滅の灰』と恐れられたこのワシですら、そのような無謀なことなど考えもしなかったわ。ましてお前のような若造にそれが出来るとは思えん」

「ならば、試してみますか」

 桃太郎が身構えると、熊を爪を立てた拳を振り回してきました。熊の力強く威圧感のある動きにも、桃太郎は憶することなく、素手でこれをさばいては、みぞおちにジャブを叩き込んだり、腕や足に関節技を駆使したりして、やがて熊は疲れ果ててしまいました。

「くっ、この拳の鋭さ、関節技の巧みさ。まさかと思うが、どこでこのような技を習ったのか」

「この先にある超絶に厄介極まりない村で、おじいさんとおばあさんに」

「おお。バトルフィールドに立つ者すべての憧れ、『偉大なる父(ザ・グレイトフル・ファーザー)』に、バトルフィールドを支える者すべての憧れ、『崇高な母(ザ・ノーブル・マザー)』のご夫婦か。それならお前の強さも納得である。分かった、お前ならやれるかも知れん。私も同行させてもらいたい」

 こうして熊も仲間にした桃太郎が、さらに歩いていると、空を覆うような巨大な羽根を持つ赤い体毛の鷲が舞い降りてきました。

「そこへ行く若者よ。只者ではないと感じた。どこへ行くか」

「鬼ヶ島へ鬼退治に」

「ふはは、『狂奔の赤』と恐れられたこのワシですら、そのような無謀なことなど考えもしなかったわ。ましてお前のような若造にそれが出来るとは思えん」

「ならば、試してみますか」

 桃太郎が身構えると、鷲は空中を自在に飛びながら、爪や嘴で襲ってきました。鷲の巧みで軽やかな動きにも、桃太郎は憶することなく、刀でこれをいなしては、羽根や足に細かく斬り付け、やがて鷲は疲れ果ててしまいました。

「くっ、この対処の仕方、鋭い切っ先。まさかと思うが、どこでこのような技を習ったのか」

「この先にある悪魔みたいな怪物ばかりが出没するような村で、おじいさんとおばあさんに」

「おお。バトルフィールドに立つ者すべての憧れ、『偉大なる父(ザ・グレイトフル・ファーザー)』に、バトルフィールドを支える者すべての憧れ、『崇高な母(ザ・ノーブル・マザー)』のご夫婦か。それならお前の強さも納得である。分かった、お前ならやれるかも知れん。私も同行させてもらいたい」

 こうして三匹の仲間を得た桃太郎は、さらに鬼ヶ島へ向かって進んでいきました。

 船を手に入れた桃太郎一行は、鬼ヶ島へ乗り込むと、縦横無尽の活躍で、あっという間に鬼たちを退治していましました。

 後に、生き残った鬼たちはその想像を絶する恐るべき敵襲にトラウマ状態となり、悪夢に悩まされる者も多く、隔週に一度、メンタルケアを受けているそうです。

 ともあれ、鬼ヶ島から金銀財宝を奪取した桃太郎一行は意気揚々と村へ戻ってきました。

 めでたし、めでたし。

「えー、こちら、桃太郎さんのお宅でよろしいですね?」

 数日後、桃太郎は役人たちの訪問を受けました。

「鬼ヶ島の鬼たちからの訴訟が起こっております。不当な侵略を受け、さらに私財を奪われたとのことですが、間違いないでしょうか」

「いやいや、待って。たしかに鬼ヶ島に行きましたけど、村人から奪ったものを取り返しにいっただけですよ」

「その中には、鬼の物も含まれていたはずです。それに侵略の事実は間違いありませんよね。そのような行いは、秩序を乱すものではありませんか。出頭命令が出ておりますので、御同行願います」

 すると、役人たちの前におじいさんが立ち塞がりました。

「待てい。そもそも、鬼たちに襲われたから助けてくれという訴えを退けたのはそちらではないか。それを今さら、勝手に行動したとはなんという言い草か。その上逮捕しようとは、どういう料簡じゃ」

「法の秩序が第一です。身勝手な申し分は受けません」

「ええい、身勝手なのはどちらじゃ。民の安全を考えぬ政府なぞ、もはやいらぬ。我らはここに独立を宣言する。さあ、者ども、かかれっ!」

 桃太郎と同行してきた狼と熊、そして鷲も役人たちの前に立ちはだかりました。

「ははっ。すべては、バトルフィールドに立つ者すべての憧れ、『偉大なる父(ザ・グレイトフル・ファーザー)』と、バトルフィールドを支える者すべての憧れ、『崇高な母(ザ・ノーブル・マザー)』。

 そして、我らの主君、高尚たる桃太郎さまのために」

「あの、みんなちょっと待って。何か話がおかしな方向に行ってない? ちょっと、役人を襲っちゃだめだって。待って、待って」

 こうして、新しい秩序のために立ち上がったおじいさんとおばあさん、そして三匹の仲間たちによる、桃太郎を頭領とする独立国家建国のための、血で血を洗う闘争の日々が始まることになったのですが、その経緯については、またいずれの機会に。

 めでたし、めでたし。

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初っ端から笑ってしまいました(笑)
とても面白かったです!

Mia.

2017/11/12

2

電車の中で吹き出しました。
面白い〜!

Ugyo

2017/11/13

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とじる

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