靴を洗う事を思いつく→さっさと靴をあらうまたは→靴を洗う必要性について熟考し、そこに虚しさを見る 例えば、靴を洗うことが自分らしくない行為だ 自分は靴の汚れみたいなことに気を使わない人間であるべきだと思い込む そうして靴を洗わないという選択をするそれに関わらずそれ以降も靴を洗う必要性が訪ねくるトントントン「毎度どうも、私コアラですけども、お宅の靴は汚れているので、洗う必要があります。」「帰ってくれ、そんなことはお門違いだ」ピシャリとドアを閉める。「お待ちください。わたしにはあなたのお気持ちがよくわかります。少し話をさせて下さい。あまり知られておりませんが私どもは爪を木に立てて研ぐ…続きを読む
東の農場で育った豚が南農場に移された東の豚は南農場の豚の生活の中に混じった東育ちの豚は新しい集団の豚たちがする、奇妙な行いなんとも素敵に見える行い非道に思える行いどの行いも尊重するように努めた豚はその集団に溶け込む必要を感じた理解できないことでも理解しようと熱心に取り組んだこの集団に受け入れられないと一人でする泥浴びなんて哀しいだけ東から来た豚は食事の食べ方を周りに倣って真似をし、泥浴びの仕方も周りのやり方にならった 強迫的にそれから今までしてきた泥浴びのやり方夢中に餌に食らいついていたのも忘れた豚は空っぽになってしまった食事もできなくなり、泥のことも…続きを読む
不思議なカメレオン団と"私"について男はスクランブル交差点を歩いている。くたびれたスーツに、ビジネスバッグをぶら下げていた。左のポケットにはショートホープとライターが、右のポケットには名刺入れが入っている。すれ違う人たちの足元だけを見ながらぶつからないように歩を進める。彼の頭の中にはもはや、破壊衝動すらも無かった。疲労だけが漂っている。首を垂れながら、それでも歩く彼は、人々の靴を見ながら、いつもと少しだけ違うことが起こっているのに気がついた。人々の足が時々、こちらを向いているような気がしたのだ。それは、男の気のせいではなかった。ゆっくりと顔を上げると、何人かが、歩きながらたしかに…続きを読む
この街は電子回路みたいだ。もしくは、高性能な蜘蛛の巣か、ゲーセンのピンボールマシン。そんで、建物は、デタラメに並べたドミノか、もしくは、オモチャ箱の底でバラバラになったルービックキューブあたりかな。となると、ここに住む人達は、なんだろう、何がいいだろう。などと、愚にもつかない事を考えながら、ベランダで煙草を吸って、夜風にあたっていた。ベランダ用のスリッパのサイズが合っていないので、思考と無意識の狭間くらいの所では、窮屈だなあ、新しいの買おうかなあ、などの声がしている。ああ、紹介しよう。こちらにいるのは、僕の食後の一服の時、いつも隣に同席してくれているエアコンの室外機君だ。僕の吸…続きを読む
僕がこの家にやってきて今日で六ヶ月になるが、ここでの生活にはもううんざりしている。この家の持ち主の男は、この街で唯一の医者であり、ここはただ一つの診療所である。故に、この家には日夜問わず客がやってくる。僕の主と言ったら、その絶えることのない来客を、一人も拒む事なく受け入れてしまうから、呆れる。僕はいつも同じ所から、彼の診察をただ眺めているのだ。あまりにも退屈なので、最近よく昔の事を思い出す。僕の前の主は港町に住んでいた。無名の画家で、毎日海沿いの繁華街に僕を連れて行った。明るい街頭や人々の喧騒、漂ってくる潮風の香りを、今でも思い出せる。ああ、僕はこの狭い診察室で一生を終えるのか。部屋の…続きを読む
火曜日の朝、友人の國枝からキャンプの誘いがあった。今日の昼から出発して、水曜日の夕方に帰る予定だと言う。僕はそれを聞いて今朝の天気予報を思い出した。「火曜日から水曜日にかけては、雨が降るらしいぞ」「知っているよ。雨の中、山中の静かな池のあたりで詩心に浸ろうと思う。本とギターと笛と斧を持っていく。」たしかに雨であれば、人は少ない、というか、いないだろう。僕は、彼の誘いを受けて、早速支度をし始めた。大きなバックパックに服と靴下とパンツ、毛布に寝袋、懐中電灯、ノートとペン、お気に入りの詩集を数冊入れて、財布をポッケに差し込んで家を出た。数時間後に駅で落ち合い、互いに大きな荷物を…続きを読む
サイバーパンクシティ「マッドアオモリ」の繁華街。僕はこの街の中枢である超時空電車の駅に用がある。そこに併設された商業施設「キングオブアオモリ」の168番街にある魔改造百貨店「マヨ・ソース・ザ ・アオモリ」に向かっているのだ。ここは繁華街だけあって若者で溢れかえっている。皆が流行りのファッションに身を包み、肩で風を切りながら歩いている。「おっと、あそこの超合金コンビニの前で話してる女の子達、超イケてるな。」2人は今朝のテレビ番組「爆裂充血目覚まし」のニュースでも取り上げてられていた最新のファッションである「ガンダムスーツ 百式」を身に包んでいたのだ。しかし、この娘達に気を取ら…続きを読む