「七緒なんかと出会わなければよかったのに。」 あ。また夢を見た。 私の大切な人の声が聞こえてきて、その人は私のこと…って毎日の様に考えて眠れなくなって。 でも、気が付くと夢の中にいて目が覚める。 「おっはよー!」 この人は、私の親友のユズキ。こんな調子で毎朝私のもとへ飛んでくる。 「ねえ。知ってる?」 「何のこと?」 「今日転校生くるらしいの!やばくない?しかも…」 「どうせ、いけめんなんでしょ?ユズが言うことなら予想つくよ」 私がはっきりと答えると、ユズは、「さっすがー。私の親友だ。」と言って笑って返した。 「おはようー。」担任の登場でクラスは騒めきに…続きを読む
一度も手に入ったことのないガラス玉。 「とってみたい。」その一心でラムネ瓶をこじ開けようとするが、開くはずもなく…。 「取り出せるかな」と考え、ラムネ瓶を石段に思い切り叩きつけてみるが、中のガラス玉まで粉々になってしまう。 毎年夏が来ると、挑戦してみるが、記憶の限りで数えてみると、今年で12敗目を記録した。 目の前には、粉々のラムネ瓶とどこにいってしまったのかわからないガラス玉。 それを通りかかった、浴衣を着た綺麗な女性が僕を見て、「怪我してない?」とだけ言ってハンカチを差し出した。 これが僕の初恋。生まれて17度目の夏、僕の日々が動きはじめた。…続きを読む
私はずっと待っている。 大好きだった彼からの手紙を。毎日のように家のポストの前で。 「今日も来てなかったけど…」この人は顔見知りというか、もうほとんど友人みたいな郵便屋さん。たまーにだけど、一緒に遊びに行ったりする。 「いつになったら教えてくれんの?誰からの手紙待ってんの?」このことは、訊かない約束なのに、普通に訊いてくる。まぁ、そんなところがずるかったり、場を和ませる良い部分だったりもする。「何回訊かれても答えないよ?訊くだけ無駄だって。」きっとこんなことを言っても懲りずに何度も訊いてくるんだろうけど。「ねぇ。教えて。教えてくれないとさ、俺が言いたいこと言えなくな…続きを読む
またあの風が吹いた。 悲しいような、寂しいような香りをのせて。 懐かしい声をのせて。 春風は、私の心を吹き抜け風邪をひかせる。 春になれば思い出してしまう。忘れて、立ち直ったと思ったのに、すぐに走って戻ってくる。 もう、戻ってこないでよ。辛いから、会いたくないから…。 「どうかしました?桜子さん。」 「ん?大丈夫。なんでもない。行こっか、光輝くん。」 新しい道を歩んでいるのに、春風がふくとふと君を思い出す。 お別れしたのは、いつのことだったかな? なんで、春風がふくと君のことを思い出してしまうのかな? そんなことを思い出すような思い出なんてあったっけ?…続きを読む
キミの隣に居られるなんて思ってなかった。 美しいキミの存在をただ遠くで見ているだけだとずっと思ってたし、なんならキミにひかれると思っていた。 学年イチの人気者のキミが隣で笑っているなんて誰が想像したことか。 キミは私より背が高くて、キミを近くで見るには見上げなきゃいけない。 いつもは無表情なのに不意に見せる笑顔や、少し怖そうなのに誰にでも優しいとことか全部が好き。 こんな完璧な人がいることに驚いたけど、そんな人が私の隣で笑顔を見せてくれることに1番驚いてる。 「寒くない?」いつも通り無表情で私に聞いてくれるけど、その表情の奥に優しさが見える。 「…ん。」とだけ言…続きを読む
寂しいぐらいに静まり返った部屋に僕の『おはよう』が響いて、はね返る。 もし、僕の周りにたくさんの人がいれば、その人々の笑顔でこの部屋は明るく光り輝くのかもしれない。まあ、そんなことを考えても無意味だと分かっているけれど。 「おはよう!」君の声がきこえると、僕は勝手に嬉しくなる。「おはよう!君だよ?」僕の目の前に来て君は言うけど、僕は気づいてないふりして無視をした。君は、きっとほっぺを膨らませていってるのかな?そんな姿が目に浮かぶ。考えているだけで笑みがこぼれてくる。 君は、どんなに僕が周りに嫌われて1人になろうと、僕を1人の知人として「おはよう」と言ってくれるね。 君の「おはよ…続きを読む