「ねぇ、どうして?」「私、ツナピザがいいって言ったよね?」 彼氏にリーズナブルな値段のツナピザを買ってきてと頼んだら、蟹入りシーフードピザを誇らしげに買ってきた。「別によくない? 蟹入りだよ蟹入り」「金は? 蟹の前に 金は?」「ツナピザと蟹入りシーフードピザでは値段が600円も違うんだけれど」「だってさ、店員さんがこの蟹入りピザを今だけの限定だからって勧めてくるから。つい、食べたくなっちゃって」「あ〜可愛かったんだ」「その店員さんが可愛かったから、私じゃなくて可愛い店員さんの言うことを聞いたんだ〜」「いや違うよ……」「あれ? マイコちゃん蟹、好きじゃなかった?」…続きを読む
ブルー「あ~倒した、倒した」グリーン「ブルーさんお疲れっす!」ブルー「おお、グリーンか。お疲れ!」グリーン「どうしたんすか? やるせない顔して」ブルー「今日もまた、見せ場を持っていったのはレッドだった。俺もレッドに憧れっど」グリーン「まあ、そうっすね」ブルー「グリーン。お前は悔しくね~のか?」グリーン「確かに俺も悔しいっす。だけど俺の場合は、ブルーさんの立ち位置が欲しいっす」グリーン「2番手のブルーさんにとっては、レッドさんが憧れかもしれませんが、3番手の私にとってはブルーさんの立ち位置が欲しいんです」ブルー「俺の立ち位置って、お前とあんまり変わんないだ…続きを読む
「宝くじが当たりますように!」 1等は色々と不安なので2等くらいが丁度いいです。「3日前に戻れますように」 数字式の宝くじの当たり番号を覚えているので、その番号を買います。「できれば明日も生きていられますように」 当たり前だけど当たり前じゃない。何事もなく、明日も生きられればそれだけで幸せです。…続きを読む
「俺はさ、漫画家になりたいからさ。それまでは恋愛とかキスとかさ、そういうのはしないようにしようと思っている」 私の幼馴染であり、大好きな人である拓未はそう言った。 拓未は、夢を叶えるためには、他のことを考えている場合じゃない。恋愛にうつつを抜かしているような人間は成功しないと思っているタイプらしく。 拓未は昔から、真面目でストイックだった。自分で言ったことは、最後までやり遂げないと気が済まない人だった。 「二重跳び。絶対成功させてやる」 そう言って、縄跳びの練習を始めた拓未は跳べるようになるまでずっと公園で練習をしていた。拓未につきあっていて、家に帰るのが遅くなって、私、お母…続きを読む
担当している小説家の先生と取材を兼ねた旅行に行った時の話を1つ。「あれっ先生、食べないんですか?」 旅館の朝食を客室で食べるなんてことは、当時は珍しくありませんでした。 先生が、腸詰めを、一口も食べずに残している事が、気になったので、尋ねてみたのです。腸詰めといえば当時、高級品として知られていたため、「他人のものを奪ってでも食べろ」と言われていました。「はい、腸詰めは、嫌なことを思い出してしまうので食べないようにしているのです……」「も、申し訳ありません。余計なことを尋ねました」「いえ、話していなかった私にも責任はありますので、君が案ずる必要はありませんよ」 先生のタブ…続きを読む
夏ということで1つ、不思議な話でも…… といっても怪談やサイコスリラー的な話ではないので、怖がりの皆さんも十分楽しんでもらえるかと思います。 あれは、泣く子も黙るほどの暑い日でした。 私の祖母、はちえが亡くなったんです。 85歳、長寿で入退院を繰り返していた状態でしたから正直、いつ亡くなってもおかしくないという状態でしたので、悲しかったですが、立ち直れなくなるほど落ち込むことはありませんでした。それが人として正解かどうかは分かりません。何も手につかないくらい悲しむ事と前を向いて元気に楽しく暮らす事、どちらが故人にとって嬉しい事なのかは分かりません。死んだものの気持ちを知るすべはないので…続きを読む
友人の熊井と定食屋に入った時の話。熊井という男は、何かといちゃもんをつける男だ。 この時、俺は色々な種類の食べ物を食べたくてミックスフライ定食を注文したのだが、案の定、熊井がこんなことを言ってきた。「あーお前馬鹿だわ、ミックスフライ定食は馬鹿だ、馬鹿だ……」 「は? 何でお前にそんなこと言われなきゃいけないんだよ?」 と普通の人なら思うかもしれないが、俺は怒らない、大丈夫、大丈夫。熊井がそういう人間だって知っているから。こいつがひねくれもんのいちゃもん野郎なことは知っている。だから、簡単に許せる。そればかりか、最近はこいつのいちゃもんを楽しめるようになった。「馬鹿って、なん…続きを読む
「人を殺したときの気持ち? 俺は殺したことはありませんので推測になりますが、殺してやった、やっと目的を達成できたと高揚感に浸るか、我に返り、とんでもないことをやってしまったと自責の念にとらわれるかのどちらかだと思いますよ」「そうなんですか。へぇ〜」 咲希の返事は、テキトーな感じだった。 モヤモヤした気持ちのまま、席に戻ると、6人いたはずが2人になっていた。 咲希とはさっきすれ違ったが、タイガーとキャミーはどこいった?「あれ? お二人ですか?」「はい。2人は帰りました」 か、帰った……? 今の所、限定ナポリタンを食べて、そのことを咲希に指摘されただけ。やっと全員揃って…続きを読む
「人を殺したときの気持ち?」「それは、一言では表せないよ」 咲希の質問に回答するにあたり、少しばかり俺の過去についての話す必要がある。 結論から言うと、俺は人を殺したことがある。元気で優しくて、強い素敵な女性だった。この世には必要不可欠な人だった。* 俺には、仲のいい女友だちがいた。名前は川越茉奈。俺も同じ川越って苗字だったことがきっかけで仲良くなった。仲良くしてもらっていた。 最初は、よそよそしく、互いのことを「川越さん」と呼び合っていたが、ある日彼女が、「私が、川越さんで君も川越さん。なんか変だよね。だから、ニックネームで呼び合おうよ」「私が、カワリンで、…続きを読む
「そんな顔しないでくださいよ……」「大丈夫です、このことは誰にも言いませんって」 人を殺した経験はある。実の父親をワケあって殺した。まさか咲希はそんなことにも気付くのか? もし本当に分かるとしたら、もうそれは、推理小説好きの女の子ではなく、ただの探偵だ。 警察って可能性も捨てきれない。もしかしたら、他の4人もみんなグルで、俺を捕まえようとしているのかもしれない。 ただ、俺は捕まりたくはない。 悪い人間は裁かれないといけないことは知っている。街の平和を守るために警察官という職業が必要なことも分かる。警察官に捕まる事が嫌なのではない。父親が、被害者とされるのが嫌なのだ。「本当…続きを読む