青い瞳に恋をした。いつも通りの退屈な日だった。電車を待つホームで、少し離れた場所に彼女が立っていた。東京まで特急を使っても2時間かかるこんな片田舎に、ブロンドヘアーでブルーアイの彼女はどう見てもそぐわなかった。何気なく見ていたら急に彼女がこちらを向いた。驚いた。横顔でブルーに見えた瞳の反対側は燃えるような深い赤だった。こんなオッドアイは見たことがない。電車が来て彼女が隣の車両に乗ったのを見て、こっそり同じ車両に移動した。後をつけるとガランとした車両の端に姿勢良く座る彼女が居た。青と赤の瞳は真っ直ぐ窓の外を見つめている。何かに耐えるような、思いを馳せ…続きを読む
「寝る前にしている妄想を先生に投稿してください」 国語の授業で先生がそう言ってプリントを配った。「なんでもいいですよ。誰かに見せることもしません。配った原稿用紙一枚分で文章を書くということに慣れましょう。次の国語の授業までの宿題です」最近この中学校に赴任した若い先生は、妙案だ、とばかりに軽く手を叩いた。「先生はまだこの学校に来て日が浅いので、みんなのことをもっと知っていきたいと思っています。眠る時って無意識の考えが出てくるって言うでしょ? どんなことでもいいから、自由に書いてみてね」優しそうな笑顔で先生が笑った。黒板の上まで手が届かないくらい小さい先生は陰でコロポックル…続きを読む
小さなサルが旅に出た。目指すは都会。人並みの大海原。リュック1つで家を出た。犬には吠えられるし、人間には追いかけ回される。それでもサルは諦めないで旅を続ける。目指すべき目的に向かって。そのサルが目指すもの。大事な、大事な、それはーーーー。…続きを読む
マックのグラコロ。あれが発売されると「もうそんな時期かぁ」て思う。月見バーガーがでると「今年もたくさん食べるぞ!」て思う。食べるの大好きっ子。美味しいものは止められない。冬のころはさらなり。…続きを読む
駅のトイレに行った。大のほうだったから個室に入ったら「転生ボタン」なんてものがあった。何これ? 音姫の何か?気になったから押してみた。その瞬間、隣の個室に入ってたらしい知らないサラリーマンに転生していた。全然知らないズボンとパンツと、その人の下半身が見えた。訳がわからず、しばらくボーッとした後に思ったこと。この人のケツ、俺が拭くんか?…続きを読む
初めて物語を書いたのは小学校の国語の授業。宿題で原稿用紙10枚分の話を書いた。題材は「学校の怪談」。登場人物は友人や親など身近な人ばかり。担任の先生が「続きが読みたくなりました」てコメントをくれたのを今でも覚えてる。次に書いたのは20代になってから。当時のとても私的な心情を全部吐き出したような内容だった。正直、泣きながら書いてた。そんな作品に運良く目を止めていただいて、出版をすることになった。そして今も、新しいものを作り出そうと書いている。とても疲れるし、しんどいなと思う時もあるけど、何故か書くとこを辞めたいとは思わない。それは自分が、沢山の物語に力をも…続きを読む
『死人に口なし』なんて言いますけどねえ。とんでもないことでさあ。 現にこうして、貴方様とアッシはお互いの言ってることがわかるじゃあありませんか。 え? 分からない? だんなぁ、嘘ついちゃあいけませんぜ。 アッシの話に応えてる時点で、旦那はちゃあんと、アッシの声が聞こえてるって分かってるんでさあ。 今日旦那のところに化けて出たのは、他でもねえ。ちょいとアッシの身の上話を聞いてもらいたかったんですよ。 アッシはね、売れない刀職人の家に生まれたんでさあ。父親は、怒るとそりゃ怖い人でね。 悪さをしては、刀を鍛える金槌で叩かれたもんでさあ。 そんな家なもんで、アッシも親父の跡…続きを読む
大好きだから。君にもこの気持ちをわかって欲しかった。でも、いくら言葉で伝えても君には全然届いてないみたい。いつもスマホをいじって気のない返事をする。もっとこっち向いて。ちゃんと話を聞いて。『好き』をちゃんと受け取って。言っても言っても伝わらない。なんでこんなに好きなことをわかってくれないのか、どんどん君が分からなくなっていった。それが寂しくて寂しくて、ふと気がついたら君が倒れて鼻から血を流していた。怯えた顔で何かを叫んで暴れてる。妙に右手の拳が痛い。何かにぶつけたっけ?ああ、怖がらないで。大丈夫だよ。叫ばないで。好きって言うから、ちゃんと聞いて。…続きを読む