「一同、ご起立ください。只今よりヒーロー株式会社の入社式を執り行います。新入社員、入場。拍手でお迎えください」 落ち着いた女の声のアナウンスが響き、約五十名の参列者は起立した。拍手で迎えられたのは黒いスーツに身を包んだ新入社員。緊張して萎縮している者、頬を染め高揚している者、異様に落ち着いている者など様々だった。「一同、ご着席ください。それでは、初めに社長のウルトより挨拶をいただきます。新入社員、起立」 聴衆の前を大きな銀色のアーモンドアイが移動した。ウルト・デッカードだ。「ご紹介に預かりましたウルトです。本日は—」 ウルトが喋り出した瞬間、突然外が薄暗くなった。ビルの側面…続きを読む
お洒落な友達に教えてもらった、雰囲気のあるバーのカウンター。少し大人っぽい服を着た私は、薄暗い店内で、シャンデリアの淡い光を纏う。 シャンパンを頼んだ。すぐに飲み終わってもう一杯。いつもより少し早いペースだ。 ちなみに、私はこれまで酔って記憶を無くしたことはない。これ以上は危険だと感じると、そっと自分を抑える。お酒なんかに執着しない。 だからきっと今日も大丈夫。酔っても潰れたりしないと思う。 さぁ、次は何にしよう。 相談したいことがあると言って、私は彼を呼び出した。でも、彼には彼女がいる。 悪いことなのはわかってる。どうせ来るわけがないだろうと思ったのに、彼は意外にもYE…続きを読む
「ミルクとお砂糖はいかがされますか?」「あぁ、ください」「私はいいです」 私はマスクを外して、砂糖とミルクを入れたコーヒーを口に運んだ。向かいに座っている妻はブラックを飲んでいる。せっかくマスクを取ったのに、大きなマグカップがまた妻の顔を半分以上隠してしまった。 思わず妻の顔をじっと見つめていた私に気がつくと、妻は目を細めてニコッと笑った。「なぁに、そんなにジロジロ見て。私の顔に何かついてる?」「いや、僕が君を見ているのは……、いつものことじゃないか」「そうね」妻のことが好き過ぎて、僕は少し変態っぽい。それでも、妻はいつもあきれながら許してくれる。**「これ…続きを読む
私を嫌いな人のことはすぐわかる。直接的に言われることはないけれど、間接的に「嫌い」って言ってくるから。 いつもあちらから。 私から人を嫌いになることはあまり無い。たまに嫌いになる人もいるけれど、だからといってその人を攻撃する気にはなれない。 対して、私を嫌いな人はいるだろう。その中で攻撃してくるのはごく一部だろう。大抵の人は嫌いでも、攻撃しないようにしているだろう。 攻撃してくる人は、私のせいで嫌な思いをしたり、単に不快だったのだろう。さらには私が反論しないから、余計に言いたくなるのだろう。 だから友人のふりをして、あるいは紳士の仮面をつけて、他人の悪口を言うフリをしながら、…続きを読む
AI戦記2100https://monogatary.com/story/252317ハリウッド映画のような怒涛のエンタメ作品を!と意気込んで、現在執筆中の、まさに未完成の物語です。本編、エピソードゼロが別にあって今後大きく変更するかも💦なお話です。TEAM jackpots企画で本作のAI監獄編に登場する囚人AIの物語を募集しようかと密かに意気込んでいだ物語でもありましたが、自分自身でまずお話を完結させる必要があるなと思い、見送りました。最後まで書き上げられるようにまずは自分で頑張りたいと思います。ここではお話の世界観を少し楽しんでいただければと思います。…続きを読む
時々、故人が遺したものを見たり、聞いたり、読んだりしているときに、その人が今は「死んでいる」という事実を受け入れ難く感じたことがある。「生きている」と感じるからだ。 故人が書いた小説、特に一人称の語り言葉なんかで書かれているものやエッセイは、まるで故人が私の頭の中に直接語りかけてくれているような、息遣いすら感じるような、強烈なリアリティを感じる。 私たちに|生命《いのち》がある限り、誰一人として、肉体の「死」から逃れることはできない。 そんな当たり前のことを、「魂」と呼ばれるような、信じるものと信じないものに二分されるようなことを用いてあえて語るとしたら、肉体に宿る「魂」の死が訪れ…続きを読む
牙っていうと、やっぱ獣の牙とか「牙を抜かれる」なんていう言葉が思い浮かぶでも、今の私は深夜のハイテンション頭の中には林檎の「キラーチューン」が流れてるなんでもできそうな気分こんなこと恥ずかしくって昔の私ならブログに書きなぐって一瞬あげて恥ずかしくなってすぐに消してそして永遠に下書きのままだったそれも匿名で何の勇気もない何のプライドもない意気地のない女だったいや逆にまだギリギリの恥じらいがあるかよわい女子だったのか今は違う牙が生えてる女子は強くなったやりたいことは主張するそしてやる文句を言われても「負けないぞ」って思うようになった…続きを読む
聖なる夜の午後七時、私は冷たいガラスの扉を押して中に踏み入った。 どこかホッとするコーヒーの香りに包まれ、ウェイターに窓のそばの席を案内される。カラフルなソファに身体を沈めながら、さりげなく店内にいる人々の顔を眺めた。 頬をピンク色に染めて見つめ合うカップル。時折歓声を上げながら楽しそうに談笑する人達。 ため息を一つついて、窓の外を見た。 久しぶりの雪が降っている。一年振りだろうか。赤や青のイルミネーションが街路樹を幻想的に彩り、その前を絶えず人が移動している。 代わり映えのない光景だ。去年の今頃とここは何も変わっていない。でも確かなことは、世界は今も時を刻んでいるということ。…続きを読む
聖なる夜の午後七時、私は冷たいガラスの扉を押して中に踏み入った。 どこかホッとするコーヒーの香りに包まれ、ウェイターに窓のそばの席を案内される。カラフルなソファに身体を沈めながら、さりげなく店内にいる人々の顔を眺めた。 頬をピンク色に染めて見つめ合うカップル。時折歓声を上げながら楽しそうに談笑する人達。 ため息を一つついて窓の外を見た。久しぶりの雪が降っている。一年振りだろうか。赤や青のイルミネーションが街路樹を幻想的に彩り、その前を絶えず人が移動している。 代わり映えのない光景だ。去年の今頃と、ここは何も変わっていない。でも確かなことは、世界は今も時を進めているということ。…続きを読む
いつか、あなたの胸に顔を埋めて泣いた温かくて、優しくてからっぽだったでも生きていたあなたの鼓動が規則正しくて私より少し速くて落ち着かなかった悲しかったあなたの悲しみの果てが無くて遠くを見ているあなたが笑わなくてよかったのにね笑わなくてよかったのにあなたは「癖になっちゃったんだ」ってあなたが笑うと、みんなが笑うからみんなが笑うと、あなたは安心するからでも死んだら、意味ないよあなたがいないと意味ないよ私があなたの胸のつかえを取れたらよかったのにね笑わなくてよかったのにせめて、私の前でだけは愛してくれてありがとう愛してたよ、私…続きを読む