「聖戦、革命、政治思想の対立、国際法違反への制裁、テロ対策、国際平和のための戦争。人は言う、これは”正義“の戦いだ。と。”正義“は我らにあり。と。果たしてそうであろうか。否!そこに”正義“はない!そこにあるのは”欲“だ!皆、己の“欲”を満たさんと拳を振り下ろす!その先に皆が等しく得るものがある!それは“幸福”ではない。“報復”である!すべての争いは多様性を認めないことから始まる!この世の中に同じ人は1人としていないのだ!人種、性別、思想、宗教、慣習、すべての人が同じはずがない!この多様性が世界を作っているんだ!我々は多様性を否定する“戦争”を決して認めない!そして…続きを読む
“次はあれにしよ!“”もう帰るよ“そうやって手を引かれて帰ったなぁ「次はこれ!」「ほら、もう帰るよ…」…続きを読む
男というものはそれが親父の口癖だった男というものは何が起きてもドンと構えているべきだ男というものは一度決めたら最後までやり通すべきだ男というものは弱さを他人には隠すべきだ男というものは仕事終わりの一杯が生きがいなんだそう言っていつも親父はニィッと笑ってみせた「大丈夫?今日ぐらい無理しなくていいんだよ?」「あぁ、母さん。大丈夫だよ。父さん言ってたじゃないか、門出に涙は縁起悪いって。俺は大丈夫だから…」男というものは涙は死ぬまで流さないニィッと笑ってみせてやれそうだよな、父さん…あぁ、雨が降ってきやがった…続きを読む
-ある老人の話-彼の朝は誰より早い彼の日課は早朝散歩次第に白む山々を背に彼の視界も明るさを増す体の熱が抜けてゆき 天にも登る心持ち地に耳を当て目を閉じる彼の朝は誰より早い-ある従業員の話-彼女はいつもせっかちで彼女の辞書に“待つ”はない今日も今日とて時計を見てはわずかに苛立ち右左300円を握りしめここぞとばかりに歩みを進める目にも止まらぬスピードで向こう岸へと渡ってしまう彼女はいつもせっかちで-ある学生の話-彼はみんなの注目の的彼はその場を盛り上げたくて先輩たちと飲み比べあれよあれよと勝ち続け数えきれない空ジョッキそして最後の飲み比べ空ジ…続きを読む
「…しかし、20余年にわたる景気の低迷に加え、生産年齢人口の減少等により税収は年々減少の一途辿るばかりです。この経済政策の財源の確保は現状容易ではありません。」「ご指摘いただいた件につきましては、新規国債を発行し、財源を補填する所存であります。先程、ご説明いたしました我々の試算から申し上げますと、十分に現実的であり、実行可能であると判断しているところであります。さらに…」「…以上の観点から今、税率の引き上げを行うということは得策であるとは言えません。」「我々の打ち出した経済政策により、先程もご説明いたしましたとおり、株価の上昇や為替レートの減価、雇用の増加等の実績があり…続きを読む
ある雪の降る夜、吾作が歩いていると山道に一匹のきつねが現れた。この辺りの伝承できつねは厄病神として忌み嫌われ、恐れられていた。吾作は咄嗟に身を隠し、息を潜めてやり過ごそうとした。ドサリ。近くで何やら音がした。吾作は恐る恐る音の方を確認すると、そこにはきつねが一匹横たわっていた。今のうち、とそそくさとその場を立ち去ろうとしたが、どうにもきつねが気になり、近づいた。酷く痩せ細ったきつねの足には一本の矢が刺さり赤黒い血が流れ出ていた。腹を空かせて畑にでも入ったのだろう。逃げるところで射られたのか。放って置けない吾作はきつねを抱えて家に帰った。囲炉裏に火を焚き、湯を沸かし、弟切草の煎…続きを読む
とある国 とある街の美術館“今世紀最大の問題作 半生を描く25点”No.1 踏み潰された1匹のありNo.2 トンボの羽をむしる少年No.3 タイヤに轢かれた白い猫…No.9 悲痛を浮かべる2つの裸体No.10 林の中に吊られた男No.11 椅子に腰掛け泡吹く女…No.17 眉間を貫く2つの銃弾No.18 首を抱えた首なし男No.19 炎に包まれ叫ぶ女…No.25 暗闇に不敵な笑顔を浮かべる男彼はまだ格子の中で描き続ける…続きを読む
「ただいま!」「お邪魔します。」久々の実家に出迎えてくれる母いらっしゃい、の一言に小さく彼は会釈する居間に通されソファに座る対面に座る父はというと大きく広げた新聞と一世一代睨み合い「お父さん、ただいま。」おぅ、と一言言葉を発しバサリとめくる新聞紙母が遅れてソファに座る響く無音が居間に広がる「本日は、お時間いただきありがとうございます。」その一言が静寂を切るこちらこそ、母は優しく微笑みかける徐に父は姿勢を正し新聞をたたみ彼を見る「単刀直入に申し上げます。娘さんとの結婚をお許しください。」「お願いします。」2人で深く頭を下げる再び無音が居間を走る…続きを読む