__ピッ。ピッ。ピッ。 遠くから近づいてくる、規則正しい電子音。 穏やかな波にゆらゆらと揺られ心地好く漂っていたのにも関わらず、この音はいつも私を“あの”世界へと引き戻そうとする。 ……やめてっ! 必死にこの世界にしがみつくように瞼に力を入れるけれど、その音はどんどん大きくなり虚しくもこの意識はゆっくりと引き戻さてしまった。「……待って!」 と、いつの間にか伸ばしていた手が虚空を掴み落ちていく。 頬には涙が伝い、拭う度に鮮やかだった光景は滲んで色を喪う。 それはまるでそっと触れた時の水面のように脳裏に広がり、やがて最後には全てが消えてこの胸にはただただ虚し…続きを読む