〇RAYARD MIYASHITA PARK・施設内 自由と活気のあふれる、渋谷の商業施設。多くの若者たちが買い物を楽しんでいる。 あなたは立ち止まり、ぼんやりと白いパネルを眺めている。 後ろから男が声を掛けてくる。 男 「おまえさんも準備してきたのかい?」 男、買い物袋を提げている。 あなた「何、買ったの?」 男 「これからの戦いに必要なものに決まってるだろ。」 あなた「やっぱりか。声を掛けてきたからあなたも同類だと思ったよ」 男 「……」 男、袋からピカピカのボウリングボールを取り出す。 自分はリュックサックの中から使い込まれたマイボウルを出…続きを読む
初雪だ。朝起きると窓から見る景色が白く染まっていた。道まで積もっている。昼からのアルバイトに行くのが大変だなとしか思えない自分が嫌になる。以前はそうでもなかったのにな。 前にこんなに雪が積もったのはいつだっただろうか。少なくともまだ、あいつと一緒に暮らしていた時だった気がする。その時も朝起きると外の世界が変わっていた。「朱里見て見て、雪積もってる。外出ようよ」匠真は無邪気に喜んで、私を誘う。 付き合い初めてからも、同棲してからもこれ程雪が積もったことはなかった。銀世界でこんなテンションが上がる人なんだと、新たな一面を知れて嬉しかった記憶がある。「えーー寒いよー。今行くのー?」…続きを読む
「ねえ、リーダーに必要な条件ってなんだと思う?」彼女は最近この話題をよくする。きっと彼女の今のトレンドなんだろう。「リーダーシップをとろうとすることのできる人じゃないかな?普通の人は皆から頼られることになれていないし、集団で自分から動こうとしない」今まで所属してきたコミュニティのことを考えながら僕は答える。今ではフィクションの影響もあって、各々が理想のリーダー像を持っていると思う。だが彼女はこの答えに満足していないようだった。「誰もリーダーになろうとしない場合、誰かが強制的にならざるを得ないよね。あなたはそれでもその人をリーダーであると認めるの?」「違うよ。確かに誰かが強制的にし…続きを読む
―5歳児サイド「見て見てー。カニさんが2匹いるよ。」「ほんとだね〜。カニさんは僕達に見られているってことに気がついているのかな?」「えー気がついてないんじゃない。移動することで精一杯だもん。」「動いているのも可愛いね。カニさんの写真撮ろうよ。ママにおもちゃのカメラ買ってもらったんだ。」「いいなー羨ましいなー。撮ろう撮ろう。」「カニさんこっち向いてー。」カシャ―12歳児サイド「またあの2人海辺で座ってるじゃん。ほんとあの場所好きだよね。私たちに見られてるって気がついて無さそうなぐらい海見るのに熱中してるもんね。」「ここ1週間ぐらい毎日のように2人揃って海に通ってるもんね。まぁ…続きを読む
冬になり、通学路の桜が枯れ木になっているのをよく見かける。桜は、春になると、つぼみの状態でも人々を期待させ、満開の花をつけてにぎわっている。しかし、寒くなると、わずかな葉を残し裸になってしまう。枯れ木が与える寂しさのようなものが、見るたびに頭によぎる。彼氏も作らず大人になると、自分も名も知らない木のように、寂しい思いをして過ごさなければならないのか――。 中学生になって枯れ木に自分自身を重ねることが増えた。友達との会話の多くが恋愛に関することでもちきりだからだろう。私はまだ恋愛というものに興味を持ったことがない。私は男子に興味がないのかと自問自答したりしたこともあったけど、そうじゃないと思…続きを読む