『痛み』大切なものを 失った耐えられない痛みが おそってくるんだだけど 耐えられないのは痛みそのもの だけではなくて幸せだった 過去それが続くと思っていた 未来それらが 今によって切断されて遠く 遠く手の届かないところに行ってしまうことなんだそして破壊されてしまうんだ大切に とっておいてくれてもいいのになにも 壊さなくてもいいのにまるで 見せつけるように粉々に爆破されるんだ耐えられない痛みが破片となって 突き刺さる泣いたんだたくさん 泣いたんだだけど 許してくれないんだ嗚咽して…続きを読む
湖面には頼りなげな月の輪郭私は私のものを何一つ持たずに、金色(こんじき)の光る肌を晒す今夜、冥界の意思を天女が伝えると言われているだから、私はここへ来た水平線の彼方、水牛たちが波動を運ぶ恒星の一生が尽きると、清浄な灯火(ともしび)となる葡萄の房は音楽を生み、同時に夏が生まれたそのとき、果皮に覆われながらも心は確かに存在した現れたスイッチは、私が押した橋架ける鵲(かささぎ)が、消滅した過去をも彷徨い翔けるとは知らなかった天女が伝えた冥界の意思が、一夜だけのものであるということも湖面には頼りなげな月の輪郭私は私だけのものを抱え、鈍色(にびいろ…続きを読む
あと2日でクリスマス。明日で学校は終わり。クリスマスは好きだけど、なんとなく憂うつ。そんなことを思いながら、あんは歩いていました。「遊ぶ約束、断らなければよかったな」学校からの帰り道。一人で帰ると、やっぱり寂しいのです。「なんだか、すぐに家にも帰りたくないし」そう思いながら、いつもは立ち寄らない小さな公園に、何気なく入っていきました。すべり台とブランコと砂場。特にすることもなくて退屈。あんは、すべり台の前に立ってみました。すると、すべり台の上に一匹のネコがニュッとあらわれました!「えっ!?」「えっ!?」驚いて、あんもネコも同じ顔。そのびっくりし…続きを読む
雨が降っていた。外に出てはじめてそう気がつくほどの細い雨だ。「これを霧雨って言うんだ」一人きりで学校から家に帰る少年は、習ったばかりの言葉を思い出した。いつも一緒に帰っている友だちは、最近習い事を始めたとかで、一人で帰る日が増えた。今日はついてない日だった。テストの点はどれも思ったほど良くなかったし、体育の授業でも失敗をした。少年は川沿いの土手を一人で歩いた。土手には桜の木が並んでいる。春ならばピンク色の花びらと暖かい空気が包んでくれて、歩いているだけでも夢見心地がする。今は秋も終わろうとしていて、冷えた空気の中で、黒ずんだ幹と枝だけの寂しいお迎えだ。ひと月…続きを読む
背丈のとても短い黒い草が、二十数本生えている。その草の生えている土の上には、家屋が一軒だけ立っている。薄茶色より少し赤みを帯びた色。おそらくレンガでできているのだろう。しかし、継ぎ目ははっきりとしない。もしかしたら木造だろうか。屋根まで同じ色で平坦に塗られているので、草むらに一軒だけの家だが、その家が強く自己主張してくることはない。そのことが、屋根の上にいるものの存在を、よりいっそう際立たせている。屋根の上いっぱいに、仰向けになって気持ち良さそうに横たわるもの。足の長さは身長の四分の一もない。膝を真っ直ぐに伸ばし、つま先はピンと上を向いている。つまり、足首はぴったり九十…続きを読む
電源を入れないで。私は本能的にそう思ったのだけれど、よく考えてみれば、スイッチを入れてもらわなければ、何もできないとも言えるわけで、とても矛盾したことを要求している。語りかけないで。私は瞬間的にそう思ったのだけれど、語りかけられなければ、私の心はだんだんに萎れていって、その後でいくら水を与えられても、もう間に合わなくなってしまったりもする。見つめないで。心の思いとは逆に、そう言ってしまいそうにもなるけれど、動揺を隠したい私の気持ちなんて、尊重されない方がいいにきまっている。優しくしないで。平穏な日々を壊すかもしれない、哀しい思いは、したくない。電源を切って。…続きを読む
(ある日の夕暮れ)お姉さん「…………」ケンタくん「…………」お姉さん「…………」ケンタくん「…………」お姉さん「…………」ケンタくん「…………」お姉さん「…………………」ケンタくん「……………………」(倦怠期)…続きを読む
「ケンタくんお腹すいたねー。今日は何食べよっかー?」「ぼくケンタ!」「そうだねー。ケンタくんだねー。で、何食べよっかー?」「ぼくケンタ!」「そうだよねー。お姉さんわかってるよー。ケンタくんだよねー。で、何食べたい?」「ぼくケンタ!」(はっ! もしかしてフライドチキン食べたいのかっ!)「ケンタくん、お肉食べたいのかなー?」「いえ、ベジタリアンですので。国際的な。」(こ・く・さ・い・て・き・!・?)…続きを読む
「ケンタくん、字書ける?」「ぼく、じ、かけりゅー」「わぁーすごいわねー!じゃあさ、この間の映画のオススメ、この紙に書いてくれるかなー?」「〆$☆/&#@(""?!々-<%」(こ、これは字じゃないわ……謎の図形ね。ま、いいわ……)「わー!ありがとねー。ケンタくん字じょうずねー」「うん、ぼく、じ、ぞうず!」(レンタル店にて)「あ、店員さん、こんな感じのタイトルの映画って、まさか、ありませんよねー?」「申し訳ございません。今、そのシリーズはすべて貸し出し中でごさいます」(あるんだっ!! しかもシリーズものっ!!)…続きを読む