Twitterはじめました@b0n_6on
創作漫画も描いてみてます😃
読んでいただけたらうれしいなあ。
『猫珈琲』
https://monogatary.com/story/199333
『土壇場』
https://monogatary.com/episode/251757
『心臓』
https://monogatary.com/story/270141
『猫珈琲の猫』
https://monogatary.com/story/202680
『たわしの話』
https://monogatary.com/story/224855
彼の前に握りこぶしをふたつ、つき出す。「右と左どっちがいい?」一瞬驚いた顔をして、ノリのいい彼はすぐにノってきた。「何?何かくれんの?」握りこぶしにギュッと力をこめて、彼の目の高さに再度つき出す。「あまいの、あげる」彼はあごのあたりを少しさすって首をかしげて、右と左の握りこぶしを交互に眺めて数秒悩む。「うーーん…左!」パッと左のてのひらを開く。「やった!あたり!」彼は私のてのひらの中のチョコレイトをひょいとつまんで、キャンディ包みの両端を引っ張ってくるり。カサカサとくちびるに当ててチョコレイトを口に入れた。「握りすぎ!ちょっと溶けてるし…続きを読む
都合が悪くなるといつも優ちゃんは何も言わずに私の部屋から出てく。それで次に来る時は玄関でチョコレートをくれる。それは私の好きなアーモンドチョコレートで、扉を開けた私を通り越して優ちゃんは当たり前みたいに私のベッドに腰かける。片方がひっくり返った優ちゃんの靴を揃えて部屋に戻ると、優ちゃんはすっかりくつろいでベッドで横になってスマホを見てた。私は部屋の真ん中にあるローテーブルの前の床にへたりこむように座って、いつものように肘をついてチョコレートの箱のフィルムを剥がして引き出した箱の緩衝材の紙をめくる。だけど今日の私はいつもとは違う。優ちゃんは絶対「ごめん」って言わない人だから、…続きを読む
会社までの道を歩きながら、チョコレートの物語を考えてぼんやり見上げた空の、曇ったグレーはよく見ると模様に見えて『空模様』っていい言葉だなと思った。2022.2.10今朝の空模様濃いグレーと薄いグレーの色の雲が細くまばらに、パグ犬の皮膚の『うね』のように並んでいた。パグのうね模様…続きを読む
幼なじみのユヅルはSNSに女装アカを持ってる。去年のハロウィンの時に、絶対かわいくなるからと、この春から美容師になった私が無理矢理女装させたのがきっかけで、ハマった。それから週に一度のペースで私の家にやってきてメイクと写真撮影をしている。撮影したユヅルの写真の画面越しに大きめの姿見に映る自分が並ぶ。スッピンにラフな部屋着。「やっぱかわいいわ、ユヅルちゃん。いやあ、隣に並んでみると、こうゆうの何て言うんだっけ?月とすっぽん?美女と野獣??」「ヒマリもメイクすりゃいいのに。専門の時はもっとしてなかったっけ?」メイク落としシートの使い方も慣れたもので、ユヅルはスルスルとメイク…続きを読む
俺はポエマーだ。だけどポエムは詠まない。俺が近所の喫茶ポエムに足しげく通うのは、マスターの娘のナオちゃん目当てだからに他ならない。ナオちゃんはかわいい。小さな顔の中にバランスよく配置された大きな目、小さな鼻、ピンクのくちびる。「いらっしゃいませ」と一緒に繰り出されるふわふわとした笑顔、そして注文を取りに来るとたわわなお胸がちょうど視線の前に来る。喫茶ポエムのコーヒーは普通だ。サンドイッチもナポリタンもごくごく普通だ。だけどナオちゃんは特別だ。アイドルだ。いや天使で女神でスペシャルだ。朝に夕に、ナオちゃん拝みたさに通っている。最近同じメンツが揃うことが多い。いわゆる常連…続きを読む
生きることに必死になる必要がなくて毎日は平穏でなのにつまらないようにも思えて暇をつぶすかくような時間があることがしあわせなのだとこれは幸福にちがいないと四角い画面に指を滑らす…続きを読む
目の前には上がったまんまの便座、便器のフチと床にあの汚れが数滴。「はあ」と深いため息をついて、私はトイレットペーパーにトイレ掃除のスプレーを吹き付けて拭き取る。3回目のデートで某有名ランドへ行って、あのお城の前でヒロトが「付き合って下さい」と告白してくれたのは3年前のこと。一緒に暮らしだして半年、トイレ掃除をする私の今の気分は、まさにシンデレラだ。毎日毎日、こうして何回便座を拭いてるんだろう私…。ああ、おとぎ話みたいに魔法使いが現れて素敵な王子さまの待つ舞踏会へ連れて行ってはくれないだろうか。リビングに戻るとヒロトは二人がけのソファを占領して寝そべってスマホを見ていた。…続きを読む
はじめての彼とはじめてのお泊まり。親には女友達のとこへ泊まるなんて、はじめての嘘。はじめてのホテル。私のはじめてづくし。はじめての経験は、上手くいかなかった。何だか怖くなって最後までできなかった。私は頭が埋もれてしまうくらいのふかふかの枕に顔を伏せて小さく呟いた。「…ごめんね」彼はポンポンと私の後頭部を優しく叩いて、ベッドからおりた。バスルームの方から水の音が聞こえて、そちらを見ると、彼は小さなパッケージの空き袋を私の方に向けて振ってヒラヒラとさせながら笑った。「何か泡風呂できるやつあったから、入れてみた」お湯が溜まるまでの間、彼とふたりでベッドに寝転がっ…続きを読む
「かならず勝ちたいから、勝てる相手としか勝負しない」マイはポツリと言った。「それはすごい!」ユアは拍手して褒めた。「何よ大袈裟に!バカにしてるのね!ほんとは格好悪いと思ってるんでしょ」ユアは大きく首を横に振った。「すごいよ。だって勝てる相手かどうか見極められてるってことでしょ?」マイは大きく目を見開いた。ユアはニコニコしてマイの大きな瞳を見つめて力説した。「かならず勝ちたいって強く思えるのもすごいことだよ。ボクはいつも勝ちたい気持ちを隠してしまう。それから、負けたときの言い訳を考えてしまう。勝負に挑むことそのものに価値を見出だそうとしてしまうもの」「おバカさ…続きを読む