京都から大阪へ向かふ汽車に乗つてゐた主人公大浦はかつての大学の学舎を窓から眺めてゐた。刹那で過ぎていく嘗て(かつて)の学舎の面影に様々な記憶が湧き上がる。その昔、大浦学生は学費を払ふ為に、ゐをんでストリツプを行ひ、齢18なる麗らか(うららか)な肉体をくねらせ聴衆の目を釘付けにした。若い未だ穢れを知らぬ18の女体は何時の時代も大変貴重なのであらう。さふでなければこんなにも聴衆は群がらぬ。聴衆も活力が有り余り、大浦へ体の関係を求めた。当時交際していた男が居るも、多額の金を積まれ、やむを得ず聴衆にその体を貸したのである。夜遅く帰ると、彼への罪悪感を消しさるように夜の営みを欠かさず…続きを読む
寒さが溶け、冬服もタンスへしまおう。と感じさせる天候が続く。確か去年の今頃は、私の故郷の桜は満開だった。故郷はド田舎でも、楽しい街でもない。最低限の人間が楽しめるような施設が揃っているどこにでもある普通の街だ。しかし、そんな町が私は好きだった。東京や横浜なんぞの大都会に比べたら圧倒的につまらぬ街だろう。でも、その空気で育ちその方言で育った私は日本人というアイデンティティの前にその町の住人であるという意識が強いことを今の町は鮮烈に教えてくれる。社会人になってから新しい馴染めぬ新天地へと移り住み、1年が経とうとしている。馴染めぬ、好きになれぬ街の中で私はひたすら春の匂ひを呼吸…続きを読む
この日になると毎年のようにここはお祭り騒ぎになる。渋谷のスクランブル交差点も例外ではない。右の人間と左の人間の塊がそれぞれに自分の主義、主張を訴え叫びながら進んで行くのだ。アカなのかシロなのかよく分からぬ紅白戦とも言うべきか、喧騒はアスファルトにこだまするやかましいセミの声をもかき消して行った。だが、その場にいる何の興味も示さぬ大多数の人間は無視を決め続けながらいつも通りの日常を過ごしている光景はどこか違和感を感じざるを得なかった。この大多数の国民は自分たちの国をどうも思っていないどころか、どこかその喧騒を他人事のように傍観さえしないのだ。そんな塊の行列に道を譲るように2…続きを読む
彼女が俺の事を好きだということは 前から気付いていた。 バスのエアーが漏れるような音を吹かしながらマニュアルのレバーを切り替え、坂道を進み通学路へと向かう。俺の学校は地元から少し離れているので中学の同級生が乗る便より大体2、3本早いやつに乗る。ほとんど同級生と会うことがない。しかし、どの事象にも例外が存在する。彼女、といっても恋人ではない同級生の女の子はよくバスで一緒になる。顔は整っており、噂では彼女を一目見ようとその教室前に盛んな男子が列を成しているということを聞いたことがある。俺はその子が自分に好意があることが分かっていた。他の女の…続きを読む
ものを食う時に口の中を噛み切ってしまう、口が小さいせっかちな私によくある事だ。その結果として口内炎が遺る(のこる)。下宿先の近くの電車の音、明日のスケジュールが詰め込まれた日記、革靴が叩くアスファルトの音、信号機のカッコーの鳴き声、そしてこの口の中のデキモノが我々を大いに傷つけるものとして今も機能している。口の中と外の外気音が私を苦しめる中、私は校舎へ向かう。高校生活と言えば世間から見たら楽しい生活という概念として定着しているが、それは大衆の考え。有名や一流と世間で呼ばれている大学へ合格したものの殆どが苦しい思いをするのが高校3年だ。私の高校もその類に入ると自負しているところ…続きを読む
iPhoneの嫌な音が朝の訪れを告げる。目を開けて私の視界に入ってきたのは丸で囲まれた二等辺三角形だ。エロ動画を見て寝落ちしていたことを思い出しながら歯を磨き、好きでもない仕事場へ向かう。大学生時代は社会人はさぞかし、金を持っているのだろう。と考えていたもののいざ社会人として働いてみたら給料は学生時代のアルバイトの2倍の月収、ボーナスという学生の私では考えられぬ金を貰いながら雇い主にこき使われている。私はモノカキである自覚も自負もない。何故ならば、私の書いた文はタダで読めるのだ。トンネルの落書きのように見たい時になんの手間もなく読める。金などとられぬ。この文は落書きなの…続きを読む
仕事なんてしたくないし、休みたい。 現在働いているほとんどの人間が思うことだ。俺だって休みたい。人間の世界に憧れ、人間に化けて30年間この誰でも出来る作業を終わらせたい、辞めたい、エロ動画みたい、キャバクラ行きたい、風俗行きたい。なんて考えながら無機質なパソコンとにらめっこする毎日が続いている。そんな考えが倍増する期間(ピリオド)がある。 年末年始だみんな休みたいし交代なんてしちゃあくれないかなんて考える中、俺が気に入らない新入社員がいる。その女はみんな頑張ってる中、課長に甲高い声を張り上げていた。今年…続きを読む
低脳の貴様らに分かりやすひやうに、あへてひらがなと漢字で書ひてやる。俺たちの国は昭和20年8月15日に地図から消へた。そして俺たちが使われるのは変な異国から態々(わざわざ)やつてきた元々この国に無い言葉だ。メイク(化粧)、リモート(離)、リコメンド(助言)日本語を使へば良ひものを今のはづかしき日本人はこのやうなことでしか我らで遊んでくれぬ。新聞、公文書、詔勅、和歌、教科書、至る所で俺たちは使われてゐた。今の扱ひは見るに耐えられぬ。我々は捨てられたといつても過言では無からう。言葉は使われ、読まれるうちは生きてゐるのだ。我々カタカナもひらがなも漢字も同様に生きてゐる。…続きを読む
私の心をかくも削り取る秋風が吹いている。しかし、私は秋が好きだ。様々な女子高生の脚が拝見できる。ニーハイ、ハイソックス、生脚、タイツ、千差万別の脚を見ることが出来る。そりゃもう…選り取りみどりですよ。女子高生、JKというブランドは如何に凄いか。そのブランドは女に既存よりも遥かに優れた戦闘力を授けてくれる。「休みの日は女子高生の脚を眺めて楽しんでます。」なんて大声で言えないなんとも不自由で縛られたこの国ではあくまで取り繕った普通を装うしかない。ここにするか、伊勢丹の2階のベンチで戦闘糧食のマクドナルドを片手にすれ違い様になる生脚を拝見しては一日を終える。しかし、…続きを読む
去年からオイラは田舎から地方都市に仕事で移住している。仕事をしだしてからは、忙しくて親にも連絡が取れていない。社宅から職場へ向かい、週5で働いて社宅で飯を食べるルーティンをよくもまあ飽きずに12ヶ月やっていた。あろうことか私は3週間後に四連休が与えられることになって急遽時間が出来た。休暇中に新人は戦力にならぬので、休めという命令を受けた。しかし、私の田舎はここから空港を使ったとしても1日しか実家で休めない。帰ろうにも帰れぬ。2日後、社宅に荷物が届いていた。季節が変わることを察してか母が実家から服を送っていたのだ。ダンボールの中を開けると、学生時代に良く着ていたユニクロの…続きを読む