ユウキくん、ユキちゃん。この度はご結婚おめでとうございます。今日の佳き日に、ここで二人をお祝いできることを心より嬉しく思います。一度でも学校が一緒になった方々は僕のこともご存知かと思いますが…新郎新婦とは幼稚園から高校まで一緒だった幼馴染みの斎藤悠希（ハルキ）と申します。新郎新婦と僕とはとっても不思議なご縁でして。22年前の春に三人はさくら幼稚園で出会いました。実はこの三人、全く同じ字を書いて違う読みをする名前なんです。名簿を見た母たちがそれに気付いてから話すようになり、ママ友同士で仲良くなりました。そして子供の僕らも一緒に遊ぶようになったのが始まりです。あの頃は三人と…続きを読む

「きゃ〜〜っ！懐かしい〜！」可愛らしい丸文字で書かれた宛名の封書が3歳上の姉の元に届いた。「何なにそれ？」覗き込む私に姉が答える。「これさぁ。中学生の頃にテレビ局のイベントで10年後の自分宛に書いた手紙だよ！本当に届けてくれたんだ！びっくり！」早速開封して10年前の自分からの手紙を読む姉。未来の私へ夢に向かって頑張ってますか？希望の大学に行けましたか？家族とは仲良くしてますか？美人なお姉さんになってますか？カッコいい彼氏は出来ましたか？ファーストキスはもうしましたか？…等々、中2らしいような、おマセなような。まだまだ子どもらしい感じも残る文章で色んな…続きを読む

淹れたてのブラックコーヒーをお供にその時間は始まる。朝のお肌のお手入れからメイクまでの時間。ほとんどの女性にとっては朝の忙しいこの時間帯はどれだけ時短できるかが勝負。ちゃちゃっと5分で済ませる人もいるとか。私からしたらそれってアンビリーバボー！どんなに忙しくても早朝からの仕事があってもお手入れには1時間以上、メイクにも1時間近くかける。お手入れもメイクも穏やかな気持ちですると仕上がりがとっても良いのよ〜。なのでたっぷり合計2時間近くの時間をとっているの。女子力高〜い！とか褒められるけど、美しくあるにはこのくらい当然よね。私にとってのリラックスタイムであり至福の時間。拭き…続きを読む

お昼を過ぎた時間のバイトは基本、楽だ。リーズナブルな価格が魅力のチェーン店のイタリアンレストラン。同じ系列のお店でも店舗によって忙しさも客層もガラッと異なる。私が働くこの店舗はオフィス街からも駅からも少し離れていて中途半端な位置にあるので、一番忙しいランチタイムですら忙しさは知れている。お昼は車で立ち寄る営業マンや近くの住宅地の主婦、お子様連れのママ友ランチのグループで賑わっているけれど、ピークの時間帯を過ぎるとホール従業員にはしばし息抜きタイムが訪れる。お昼過ぎにやってくるのは図書館代わりに居座る大学生かおさぼりの営業マンくらいか。そして夕方になると今度は様変わりして近くにある高…続きを読む

―おはよう。朝だよ。―起きてね。遅刻するよ。アラーム設定した彼の声の着ボイス。もう生で聞くことはない愛しい声。わざと止めずに何度も流す。涙が溢れて一筋。また一筋…泣き疲れないと眠ることすら出来ず時も所もお構いなしに泣いていた日々。ようやく眠れて目覚めた朝に全てが夢であったと思えたらリアルな彼が起こしてくれたなら…ルーティンの様に続く朝の儀式。たとえ涙が枯れたとしても彼との思い出を穏やかに思い返す日は来るのだろうか。眠るのも怖い。目覚めるのはもっと憂鬱。…続きを読む