「ママ、テレビみてー。あおいよー。」「ブルーライトアップね。これはね、今ウイルスで病気の人がいっぱいいるでしょ。だからね、お医者さんや看護師さんがとても忙しく大変なの。だから、ありがとうと頑張っての気持ちを青い色で伝えようね。って事なの。」「そうなんだー。」「まりちゃんはねぇ、今とっても元気だけど、赤ちゃんの時には入院した事があるのよ。左手に、今でも傷が残ってるよね。この傷は点滴の痕なの。」「にゅういんってなに?このきずの、てんてきって?」「入院ってね、病気とかケガをした時に病院でお泊りして、先生に治してもらう事なのよ。その時にお手てから注射したの。その痕が、今でも残っちゃ…続きを読む
僕はあっくん。保育園でいじめられっ子なんだ…。保育園の友達にオモチャを取られたり、遊具の順番で横入りされたり…。僕はいつも、泣いているだけで何も出来ない。弱いからだ…。僕は、同じクラスのさきちゃんが大好きなんだ。内緒だけどね。でも、さきちゃんは一つ上の、りっくんの事が好きなんだ。たぶんね。だって、りっくんが逆上がりをした時のさきちゃんの顔、ほっぺが赤かったんだ。僕と遊んでる時には見たことがない顔だったんだ。僕は逆上がりは出来ないけどね。春になったから、りっくんは小学校に行ったんだって。やっと、僕がさきちゃんに振り向いてもらえるチャンスが来たんだよ。でもね、給食…続きを読む
僕は、またやってしまった…仕事で大きなミスをし、同僚に迷惑をかけてしまった。仕事を終え、駅から自宅までのいつもの帰り道、落ち込みながら歩いていた。曲がり角に差し掛かる時、一件の喫茶店が目に入ってきた。昔ながらの雰囲気のある小さなお店だった。コーヒー好きな僕は、帰り道にいつも気になりながら通っていたが、入った事のない店だったのだ。今日はさすがに、このまま帰りたくない気分だったので立ち寄ってみる事にした。初めて入る店は、ドキドキとワクワクが折り重なる。その感情を心地良く感じながら、ドアをゆっくり押した。カラーン…ドアに付けてある鈴の様な物がいい雰囲気で鳴った。…続きを読む
私は半年前にブログを始めた。今まで生きてきて、『文』という文字に全く程遠い生活をしてきた。いや、自ら避けてきた程苦手分野だった私がブログで文章を書いている。自分でも驚きである。なぜ始めたかと言うと、息子が中学受験を経て中高一貫校に合格した。そして、6才下の娘もその学校を目指す。息子の経験を生かして、娘も受験に向けて頑張っている事をブログに書いたら?と旦那の提案だった。私は、機械などパソコンも苦手であった。旦那もその事は長い付き合いでよく知っていた事だった。…が私は「いいじゃんー!楽しそう!」というわけで始めた。初めの投稿は簡単に自己紹介。だが、なぜか記事が消えた…ここが…続きを読む
暖かく穏やかな風になびかれた桜の花びらが、普段着慣れないツイードのジャッケットの胸元のコサージュにヒラリと触れて落ちた。足元は履き馴れないヒールをコツコツと響かせ、春の匂いを感じながら私は校門をくぐった。息子は小学校時代、勉強に明け暮れていた。小学生なら本来、長期休みに入ると楽しい遊びのスケジュールに追われるものだろう。息子が、担任の先生にポロッと言った。「夏休み、地獄。」だそうだ。長かった地獄の日々が過ぎ去った。今日私は、息子が念願だった志望校の講堂の椅子に、カメラを構え座っている。生徒が順番に名前を呼ばれ、返事をしながら立っていく。息子の名前が呼…続きを読む