【シミ取り承ります】真っ白な生地に、緋色で書かれた暖簾。青と白の縞模様の看板は森下クリーニング店と書いてある。「いらっしゃいませ」受付の担当は、長女の桜。奥で黙々と作業しているのが、父の慎一。アイロンをかけているのが母の優子。シミ取り作業をしているのが、次女の茜。「ただいまー!」元気に帰ってきたのは、年の離れた弟、慎太。ここは、知る人ぞ知るクリーニング店だ。シミ取りが評判で隣町からもお客がやってくる。「いらっしゃいませ」明るく活発な桜は、休みの日は町内のソフトボールに助っ人として呼ばれる、ちょっと知られた存在だ。「すみません。シミ取りお願いしたいんですが・・…続きを読む
「先生!おはよう!」「ああ、おはよう。静流。」いつも、私を元気いっぱいで起こしにくる静流は中学2年生の女の子だ。ちょっとした縁がきっかけで、知り合いとなり、何故か気に入られたようで、通学路を外れてる私の家へわざわざ起こしに来てくれる。「先生、カーテン開けとくね!今日もお仕事頑張ってね!」「じゃあ!私行くね!行ってきまーす!」「ありがとう、行ってらっしゃい。」「うん!」静流は笑顔で手を振り、我が家の重そうな扉を押して出ていった。私の家は擬洋風建築といって、昔の大工が洋風建築を真似て造ったかなりレトロな建物だ。明治初期頃建てられたらしく、家の入口の重そうな扉(…続きを読む
またやってしまった!今日も朝ごはん抜きだ・・・!朝支度のショートバージョン。テレビの時計をチェックあのバスにギリどうか・・・一人暮らしに慣れ始めた僕は、バス停まで駆けていく。ブロロロー・・・あー。ついてない。えーと、次はと、時刻表を見る・・・「でさー!そんな言ったらさー!あいつ何て言ったって思うー?」「・・・笑!」「ウケるっしょー!」「・・・あははー!」女子高生は苦手だ声のボリュームが大きすぎる。僕は興味がない話を聞かされながらバスを待った。やっと来たバスに逃げるように乗り込んだ。しまった・・・。逃げたつもりが、逃げ場がなくなった。「おはよ…続きを読む