全作品で一つのミステリになっています。お楽しみいただくために、どうぞ発表順にお読みください(*^^*)!!(前から68作品目まで)
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花言葉さんが、ものすごく素敵な挿絵を描いてくださいました。現在のアイコンです。
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謎解き後の午餐 カメレ本さんが物語を書いてくれました。
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フーダニット カメレ本さんが最大の謎を解いてくれました。
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目が覚めた。周囲を見渡す。 壁には、数々の大好きなサッカー選手のポスター。みんな、輝かしいプレーを見せてくれた。 駆け抜けるドリブル。 華麗なパス。 反則ギリギリのラフプレー。 いつも胸躍る。 だが、今日、伝説の選手たちすら足下にも及ばないプレーが見れる。 朝から胸のドキドキが止まらない。 おかげで、昨日はよく眠れなかった。 波平さん、いったいどんなプレーをするのか? もう、楽しみで仕方がない。 最初に言っておく。 これはサッカーの話ではない。 波平さんは、うちの部署の課長さんだ。 もう二年の付き合いになる。 ちなみに、波平さんには、別に本名が…続きを読む
「さぁ、場面は三回変わる。頑張りたまえ」 目の前の軍服を着たひげを生やした中年男性が、狂ったように笑いながら言った。 僕には、何が楽しいのか全然分からない。 広い、何もない、暗い部屋。 僕は今、無理矢理、肘掛けのある木の椅子に座らされている。腕は、大きな結束バンドで肘掛けに固定されていた。両足も同様に、椅子に縛られている。 僕の真横には、顔を白塗りにした腹の出た男が、上半身裸で立っている。腰回りはワラのようなものが巻かれていた。肌は濃い茶色。槍を持っている。体中に、紫色の点々が塗られていた。絵の具だろうか。意味もなく、さっきからへらへら笑っている。 僕の正面には、大きなモニタが…続きを読む
※※※ 作品中の専門用語解説 ※※※「輪行」とは、自転車をばらしてバックに詰めて旅行することを指す。電車で移動できるため、遠い場所からでも自転車で旅をすることができる。「駅寝」とは、最終電車が行った後の無人の駅で一夜を明かすこと。駅寝に向いている駅と、向いていない駅がある。「青春十八切符」とは、普通列車が乗り放題になる五枚綴りの期間限定の乗車券である。時間に余裕がある人であれば、格安で遠くまで旅行ができる。時刻表を見て、乗り継ぎをちゃんと計画する必要がある。「電話ボックス」とは、公衆電話を内蔵したガラス張りの箱のことである。電話を掛けるために設置されている。最近では、携帯電話が…続きを読む
初めてエッセイ・ノンフィクションのジャンルを書きます。 慣れない分野なので、不備不満があっても、どうぞお目こぼしを・・・。 お題は、カワウソ。 カワウソには、思い入れがあります。 うちは、わたし、奥様、娘の三人家族です。 うちには以前、カワウソが出ました。 なんのことはない、わたし自身なのですが・・・ 昔から、ふざけるのが大好きなわたしは、娘が小学校にあがる前、カワウソのまねをしてました。 お風呂に入る前、Tシャツの背中の部分を引き上げて、パーカーの帽子のように頭にかぶります。 それから、「カワウソだよ」って娘に言います。 まだ小さかった娘は、普段とビジュアルの…続きを読む
前園一馬は、ニヤニヤしながら部室で本を読んでいた。窓の外は快晴。自分が生まれた五月は、本当に読書向きの気持ちのいい季節だ。 読んでいる本は、児童書。ハードカバーで茶色い表紙は、まるで西洋の魔法の書のようだ。「一馬、何、にやにやしてるの?」 頭をかき、あくびをしながら、ソファにいた指原歩が話しかけてきた。「あゆむ、起きたんだ。今日もよく寝るね」「いくら寝ても、眠いんだ。これ、病気かなぁ。春眠、暁を覚えず、覚えず・・・」「確かに、春はいい季節だよね」 本から視線を離して、窓の外を見る。差し込んでくる朝の光は強すぎず弱すぎず、心地よいぐらい温かい。 あらためて歩を見ると、またうと…続きを読む
「大人の事情ってなんですか?」 僕は、居酒屋で息巻いた。 さっきから、飲み過ぎて頭が痛い。 でも、高ぶる感情を抑えきれない。 今日、部長からプロジェクトの中止が言い渡された。その理由が、「大人の事情」ってヤツだった。「あんなに頑張ったんですよ。内容だって、すごくいいものだし。先輩だって、そう思いますよね?」「港くんは、今回が初めての大人の事情だもんねぇ」 目の前には、同じく飲み過ぎて顔を赤らめている茜先輩がいる。 お酒のせいか、いつもよりも、ちょっとゆっくりで、のんびり気味。 普段はハキハキ・バリバリのキャリアウーマンだ。「大人の事情じゃ、全然納得できないです。これか…続きを読む
我が名は、徳川家康。 戦国時代を生き残り、徳川幕府を作り上げた。人が血を流す日々が、今、ようやく終わる。 今朝は、雲一つない晴天だ。暮らす屋敷の廊下にて、深呼吸をする。朝の空気は冷たくて美味しい。見渡す庭は緑にあふれ、穏やかな自然が広がっていた。「殿のおかげです。戦乱が終わるなんて・・・未だに信じられません。殿、本当に良い朝でございますな」「あぁ、そうだな」 長年、苦楽をともにした老中が顔をくしゃくしゃにして笑っている。それがもう、笑っているのか、泣いているのか、よく分からない。老中の目頭にきらりと光るものが見えた。「お前にも、ずいぶん苦労をかけたな。あとの余生は、ゆっくりする…続きを読む
ここは、カイワレ王国。 狭いパックで、陣地の取り合い、せめぎ合い。 我先にと背を伸ばす。 群雄割拠、ここにあり。 若き暴君 カイワレA「ここは俺の場所だって。横のお前、どけよ。弱いヤツは引っ込んでろ。強いヤツだけ伸びるんだって、いつも言ってんだろう。弱いヤツは引っ込んでろ」 老害長老 カイワレB「お前こそ、ひっこめ。若造は、年長者を敬え。俺は長年ずっと頑張ってきたんだ。お前らとは年期が違う。いいか、俺が若かったときは・・・、ん、何言うか忘れたなぁ・・・とにかく、偉いんだ」 若き暴君 カイワレA「はいはい、分かりました。分かりましたよ。それより、なんか、国民がうるさいん…続きを読む
「終末、どこ行きたい?」 奥様が、ミルクティーをテーブルに置きながら聞いてきた。「とりあえず、スーパーにでも買い出しに行こう」「それは、週末の話でしょ。私が聞いているのは、終わりの終末。この世が終わるとか、死ぬ間際に、どこに行きたいかって話」 笑いながら、僕の向かい側の椅子に腰掛けた。向かい合って、熱々のミルクティーを飲む。テーブルの上には、美味しそうな手作りクッキー。夕食後の憩いの時間だ。 結婚して、五年。まだ子どもはいない。結構、仲の良い夫婦だと思う。科学的には、三年で愛情は無くなるらしい。でも、未だに奥様を可愛いと思っている。科学は、意外と当てにならない。「あなたは、自転…続きを読む
まさか、こんなに足が震えるなんて・・・。 俺、神崎竜一は、幕前の待機場所にいた。だだっ広い空間。遠くから声援が聞こえる。自分たちのいる場所は、少し照明が暗い。人の顔がやっと見えるぐらいだ。 足の震えを止めるべく、軽く太ももをつねった。さっきから、呼吸が荒い。口の中が乾ききっている。口内の皮膚と皮膚が張り付いている。のどがやけに乾いていた。 ここは、漫才大会の決勝の場。賞金一千万をかけて、生放送で優勝者を決める。今、前の組が必死で漫才をしている。次は、俺たちの番だ。 隣では、相方の原中修二がいつもどおりぼーとして立っている。余裕があるというか、動じないというか。 少し小太りで、二十五…続きを読む