大切にされる事と、焦らさられる事は別だ。もう暫く、私は大切にされている。1回目はそれだけで十分だった。2回目も確かにそれを望んでいた。3回目も4回目も、おじさんはそれはもう大切にしてくれた。これから先もずっと大切にしてくれるだろう。でも、私はいつまでも子供じゃないのだ。「おじさん。」呼びかければ、タレ目がちな優しい瞳がこちらを見る。そして、何も言わずに、私の次の言葉を待っている。おじさんの瞳は私をひどく迷わせる。見つめられると、ひとたまりもない。息苦しくなって、切なくて、泣きたくなる。「おじさんをもっと頂戴」おじさんの優しい瞳が揺れた。…続きを読む
私を幸せにするのは1パイントのチョコレートアイスでも帰り道のカレーの匂いでもいつもよりゆっくり入るお風呂でもうさぎちゃんでも6月の雨音でも流行りのラブソングの歌詞でも好きな人との電話でも寝る前のホットミルクでも好きなアニメのオープニングでも朝寝坊と二度寝でもプールの後の着替えでも小さい頃に読んだ絵本の表紙でも勧められるまま見た映画のエンドロールでもクリスマスの飾り付けでもいつもより綺麗に巻けた前髪でもピカピカの爪先でもはだかんぼで包まる毛布でもうなじに受ける陽射しでも図書館の死角でも歩きながらする考え事でも憧れのあの子のパンツの柄でもなんでもない日…続きを読む
ネガティブな感情が他人に受け入れられなかった絶望とこの世に1人の優越感で溶けて固まって私ができてる糞食らえ死んじまえばーか終わりだ殺す…続きを読む
もう、一年近く泥を捏ねている。ぎこちない手つきで不恰好な舟を作る。意識の外で携帯が光る私たちが作った二艘の泥舟は沖へは出ない。水に浮かべれば、沈むしか無い。差出人は見ずともわかるわかっているのに、どうしたって漕ぎ出さずにはいられない。会いたい何よりも近づく二つの舟は、決して交わりはしない。返信はせずに画面を閉じる沖にも出られず、交わりもしない。私たちは、沈んだ後も、一人と一人なのだろう。喧騒の中では教師の声は遠くたとえ交わらなくとも終わる瞬間も一緒にいられたら。私を連れ出すエンジン音が聞こえた気がした…続きを読む
僕は時たまドロドロ溶け出すんだ。ドロドロのまんま、君のところへ。君には見えないけど、僕は君の一部になる。そうして、君の一部の僕は、君の気持ちを考える。やっぱり君はわからない。一部になってもわからない。そうして僕はわからないまま僕は個体に戻るんだ。疑問だけが宙ぶらりん。それを捕まえないと、僕は僕に戻れない。なんだかわからない肉片のまま、空気に触れて腐りだす。腐敗したら僕は僕に戻れない。早く、速く、はやく、ハヤク、君の気持ちがわかりたい。わからないと戻れない。ワからなイと戻れない。わカらナイと戻レナい。ワカラナイト戻レナイ。僕に誰?誰は君?君の僕…続きを読む
あなたは私が死んだら悲しいフリだけするんだろうなって思うと私のコレはなんなんだろう。なんて一方通行なモノなんだろう。私はあなたが死んだら昼間は普通に振舞って。夜になったら。明日もあなたがいない事実を受け止めきれず枕を涙で濡らすんだろうと思うと私は本当にあなたのことが好きなんだろうな。嘘だけど。…続きを読む
最高気温18度の夏に、私は瓦解した。きっかけは大したことではなかった。私は虚無ではなかった。それだけが救いであった。それと同時に私を守る盾は無いと言うことだ。虚無はいい。その身に降りかかる不幸に鈍感になれる。「しかし、人間は考える葦である」思考こそ至高。考える術を持たぬものは人間では無い。虚無である事は弱き一本の葦に成り下がる事だ。私の早すぎる死への身辺整理、人間関係の断捨離私は私から脱却するのだ。私という葦をもう一度見つけるために。…続きを読む